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レニウム求婚

「レオナルドの謀反により、公爵家を取り潰す。」アルゴンが宣言する。

「なぁ、それだけは。」レオナルドがアルゴンに詰め寄る。


「安心しろ、ここにいるムサシ様が公爵になってお前の家の代わりになる。」アルゴンが言う。


「あぁぁ。」レオナルドが錯乱する。

「国王の前で狼藉を働いた奴が何で錯乱するんだ?」

「くふふ、自分の行動が正しいと思っていたんだよ。」


「馬鹿なのか?」

「くふふ。」


「連れていけ。」アルゴンが周りにいた者に言う。

「は!」近衛兵がレオナルドを連れていく。


「公爵家の人間を一網打尽にせい!」アルゴンが言う。

「御意!」近衛兵と暗部の人間が返事をしてその場から消える。


「ムサシ様、お見苦しい所をお見せしました。」アルゴンが言う。

「さて、何のことやら?」

「ははは、お優しい。」


「これで、俺はカリナ様を嫁に迎えられる、と言う事で良いのかな?」


「ムサシ様、勿体無いお言葉です。」アルゴンがその場でひれ伏す。

「ムサシ様、御前に。」カリナ様が俺の前でひれ伏す。


「え?」俺は動揺する。


「おぉぉぉ、国王様がムサシ様にひれ伏した。」

「新しい夜明けだ!」

「ムサシ様が統治する王国が始まるんだ!」

「「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」民衆が叫ぶ。


「あぁ、アルゴン。」

「はい。」

「俺は国を治める事は出来ないぞ。」

「はい、それは今まで通り私と私の部下が行います。」

「んじゃ、俺は何をすればいいんだ?」

「只、そこにいて下さい。」

「はぁ?」


「ムサシ様が其処に居る事が統治です。」アルゴンが恭しく言う。


「何それ?」

「くふふ。」

「あぁ、お慕いしております、ムサシ様。」カリナ様が俺に傅く。


「止めろ。」

「いえ、お納めください。」アルゴンが俺の靴に額を付ける。

「ムサシ様、御前に。」カリナ様も俺の靴に額を付ける。


「「「「おおおおおぉおぉぉ!」」」」」民衆が騒ぐ。


「国王陛下だけではなく、カリナ様までムサシ様、にひれ伏した。」

「もはやムサシ様こそこの国の神。」

「おぉぉ、ムサシ様!」

「ムサシ様!」

「ムサシ様!」エールが始まる。

「勘弁してくれ。」俺は頭を振る。


 結局俺はこの国のトップになった。

「俺の知らない処で、この国の政が決まっていく。」

「俺、必要?」


「くふふ、もう暫くは我慢しろ。」ミロクが言う。

「何それ?」


 そして、カリナ様との婚礼の日が訪れた。


********


「お祭り騒ぎだな。」俺は道を歩きながら言う。

「くふふ、お祭りだよ。」


 俺の格好は、いつも通りガキーン謹製の皮鎧だ。

 結婚式だろうと、冒険者の正装はこれで良い。


 周りの人間は、俺がムサシだと気付いても普通にしてくれている。

 俺がそう望んだからだ。


「おや、王城前が賑やかだ。」俺はそこを見て言う。

「くふふ、レニウム王子が愛想を振り撒いているよ。」


「おや?」俺は気が付く。

「レニウムが着ているのは俺と同じガキーン謹製の皮鎧か?」



「おや、ムサシ様、ごきげんよう。」レニウムが俺に微笑む。

「おぉ、レニウム兄、鎧が出来たんだな。」

「あぁ、ムサシ様のおかげだ。」

「様付けは止めて下さい。」

「あぁ、そうだったな、ムサシ。」


「俺とは色違いですか?」レニウムの鎧を見て言う。

「あぁ、王家だから金色だ。」


「ふむ。良いですね。」

「そうか、俺も気に入っているんだ。」レニウムが白い歯を見せる。


「ムサシ!」後ろから声がかかる。

「え?」俺は声がする方に振り返った。


「姉御?」

「おま、お前、第3王女と結婚するんだって?」


「あぁ、成行きでそうなった。」

「おま、お前、あたいと言う物がありながら!」姉御が俺に詰め寄る。


「む、ムサシ、その御婦人は誰だ?」レニウムが俺に聞いてくる。

「え?」俺は躊躇する。


「私の好みにドストライクだ!」レニウムが言う。

「え?」

「はぁ?」俺と姉御がフリーズする。


「ムサシ、是非に紹介してくれ!」レニウムが詰め寄る。


「あぁ、ギルドで俺を鍛えてくれた姉御だ。」

「おぉぉ、美しい、私の理想だ!」レニウムが姉御の前で膝まづく。

「私と結婚して欲しい。」レニウムが姉御にプロポーズする。


「はぁ?」姉御が固まる。

「「「「「「「おぉぉぉぉ、レニウム王子が女性にプロポーズをした!」」」」」」


「はぁ?」姉御が固まる。


「はぁ、良いんじゃないか?」俺は言う。

「あたいは、礼儀作法とか知らねーぞ。」

「そんなものはどうでもいい。」レニウム王子が叫ぶ。


「俺は貴方を娶りたい。」


「「「「「「おぉぉぉぉぉぉ、レニウム王子が潔い!」」」」」」民衆が騒ぐ。


「レニウム王子に嫁が決まった!」

「ムサシ様と同時にめでたい事だ!」

「おぉ、めでたい!」


「あたいはムサシと結婚しに来たんだが。」

「そう言わず、是非に私と結婚してください!」レニウムが推す。


「いや、でも食材が。」姉御が躊躇する。


「姉御、王族だぞ、どんなものも食えるぞ。」俺は姉御に耳打ちする。

「なぁ?」


「レニウムは優良物件だと思うぞ。」俺は更に姉御に言う。

「はぁ?」


「其れに俺はカリナ姫と結婚して、更にエルフの嫁さんもいるからそれ以上はきついぞ。」

「何だと、お前エルフも手籠めにしているのか?」

「人聞きが悪いな、押しかけ女房的な奴だが手を出してはいない。」


「相変わらずヘタレだな。」姉御が言う。

「ほっとけ!」


「ムサシ、そのお方との戯言は止めて私に主導権を渡してくれ。」レニウムが言う。

「あぁ、悪かったな、後は任せるぞ。」俺はそう言いながら王城に入っていく。


「名前を教えてほしい。」レニウムが言う。

「あたいかい? エリスだよ。」

「おぉ、エリス、素敵な名前だ!」レニウムが感激する。


「おぉ、あのお方はエリス様とおっしゃるのか。」

「エリス王女様だ。」


「レニウム王子万歳!」

「エリス王女万歳!」


 民衆からエールが起こる。


「あたいの気持ちは無視かい。」

「きっと幸せにする。」レニウムが良い顔で言う。


「はぁ、解ったよ、あんたの嫁になってやる。」

「おぉ、素晴らしい。」レニウムがエリスに抱き着く。


「ちょ!」エリスが顔を真っ赤にして抗う。


「絶対に幸せにする!」レニウムが宣言する。


「「「「「「「おぉぉぉぉ、目出度い!」」」」」」

「「「「「「宴だ!」」」」」」

「「「「「「飲んで踊るぞ!」」」」」」民衆が騒ぎ出す。




「アルゴン、なんか凄い事になっているな。」

「ははは、ムサシ様、些少なことです。」

「そうなのか?」


「むしろ、レニウムの嫁が決まって喜ばしい事です。」

「そうなの?」


「あ奴は朴念仁でしたから。」

「はぁ?」


「むしろ、ムサシ様のお知り合いが嫁に来ていただけるのは僥倖です。」

「そういうもんなのか?」


「はい。」

「そう言う事ならいいか。」俺は納得する。


 貴族連中が王城に来て、婚礼の儀が執り行われる。


「皆の者、此度はムサシ様と我が娘カリナの婚礼を執り行う!」アルゴンが宣言する。

「おぉ、めでたい!」

「王国の未来に栄光あれ!」貴族連中が騒ぐ。


「何なんだ?」

「ははは、貴族連中は自分の娘が選ばれなかった事で、興味が無くなったのです。」アルゴンが言う。

「はぁ、そう言う事か。」俺はそう思う。


 姉御、良かったな。俺はそう思った。

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