レオナルド
「旦那様、いかがですか?」ガキーン謹製のシャツを着たリーンが言う。
「おぉ、似合ってるじゃないか。」
「このシャツは本当に凄いです、私の周りだけ温度が一定で、汚しても一瞬で元に戻ります。」
「へぇ、一瞬か、凄いな。」
「それにすこし大きめかと思いましたが、着たとたんに身体にぴったりになりました。」
「あぁ、この鎧もそうだ。」
「色も好きな色に変えられるのですよ。」そう言いながら、リーンはシャツの色を変えていく。
「おぉぉ、数色だけかと思ったが本当に多いんだな。」
「すごく気に入りました。」
「良かったな。」
「旦那様、これをもう数着納品してくださいませんか?」
「どの位だ?」
「そうですね、3着ぐらいで、デザインを少し変えて。」
「う~ん、ガキーンに頼んでみるか?」
「前にも言いましたが、一着700000Gお払いします。」
「その額で納品して、誰が買うんだ?」
「貴族の方たちです。」
「あぁ、そうか。」俺はウランを思い出して言う。
「殺し合いが始まるんじゃないか?」
「抽選で販売して、その場で私と同じように魔石に口づけをしてもらいます。」
「あぁ、それなら諦めもつくか。」
「実際に、私に譲れと言ってきた貴族がいましたが、シャツを渡した途端に諦めて帰って行きました。」
「成程なぁ。」
「はい、旦那様。」
「流石はガキーンと言う事だな。」
「はい。」
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「と言う事で、又やって来た。」
『歓迎します、ムサシ様。』
「悪いな、又肉を提供するから糸を提供してくれないか?」
『はい、喜んで。』
「おぉ、悪いな。」
『いえ、いえ。』
「んじゃ、落ちている枝を拾って。」俺は準備する。
『いきますよ、フン!』マスターキングモスが糸を吐く。
「おぉぉ。」俺は落ちている枝を拾いながらその糸を絡め取っていく。
「おぉ、これ位で良いぞ。」俺は5本目の枝を纏めながら言う。
『もう良いのですか?』
「あぁ、前回と同じになったからな。」俺はオーク肉を置きながら言う。
「前回と同じオーク肉を進呈する。」
『ありがとうございます。』
「んじゃ、又注文があったら宜しくな。」俺はそう言いながら城塞都市に走った。
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「ガキーンいるか?」俺は偏屈屋に入る。
「五月蠅いぞ、って、ムサシか?」
「あぁ、俺だ。」
「今回はなんだ?」
「あぁ、すまないがこれでシャツを3着作ってくれ。」
「おぉ、マスターキングモスの糸か?」
「そうだ。」俺は答える。
「王女様がご所望か?」
「いや、組合から頼まれた。」
「がはは、そうなるとは思ったよ。」ガキーンが笑う。
「うん?」
「俺は、縫製は中々やらないからな。」ガキーンが良い顔で言う。
「おぉ、」
「ムサシにドレスとシャツを作ってやったから、目聡い貴族は組合に注文を出すと思ったぜ。」
「あぁ、そう言う事か。」
「んじゃ、受けなくても良いぞ。」
「え?」
「なんか悔しいから、このままマスターキングモスの糸を組合に納品する。」
「結局俺に依頼が来るじゃないか。」
「俺の依頼だと料金が発生しないだろう。」
「あぁ、そう言う事か。」
「俺にはマスターキングモスの糸を納品した金が入る。」
「おぉ。」
「ガキーンには組合から依頼料が入る。」
「おぉ。」
「で、組合は、シャツを売って儲けが出る。」
「そうだな。」
「全員ウィンウィンだな。」俺が言う。
「何だ、ウィンウィンって?」
「あぁ、誰も損をしないって事だ。」
「んじゃ、今回の迷惑料だ。」俺はミロクからウイスキーを5本貰ってそこに置く。
「がははは、悪いな。」ガキーンはウイスキーの蓋を開けてラッパ飲みする。
「と、言う事で、シャツの納品はなしだ。」
「はぁ?」リーンが戸惑う。
「シャツ3着分のマスターキングモスの糸を納品する。」
「はい。」
「どこに出せば良い?」
「はい、こちらの糸巻き機に。」リーンは俺を特別な部屋に案内する。
「この機械に糸を巻いて下さい。」
「えっと、どうやるんだ?」
「この部分に糸の先端を付けて後は機械が自動で巻き取ります。」
「そうか、やってみるよ。」俺は機械の前に座って糸を巻き取らせる。
「はぁ、疲れた。」俺は全部をやり終えて言う。
「はぁ、62400mの糸を納品されるとは思いませんでした。」
「いや、シャツを作るにはその位必要だろう?」
「ほほほ、その通りですね。」
「決裁してくれ。」俺はリーンにカードを渡す。
「天文学的な数字が、187200Gを振り込みました。」
「ははは、凄いな。」
「それを納品する旦那様が破格かと。」
「ははは、褒めるなよ。」
「褒めていません。」
「あれ~。」
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「俺は王城に来ていた。」
「おぉ、ムサシ待っていたぞ。」アルゴンが言う。
「あぁ。今回は何で呼ばれたんだ?」
「カリナとの結婚式の打ち合わせだ。」
「はぁ、それか。」
「ムサシ様は、私との結婚が不満なのですか?」カリナ様が俺に言う。
「不満はありません。」
「まぁ。」
「ですが、私には押しかけ女房的なエルフの嫁らしきものがいます。」
「あらあら、そんなもの私が正妻であれば、妾を何人囲おうと問題ありません。」カリナ様がころころと笑う。
「ムサシ、強者が複数の妻を娶ることは普通のことだぞ。」アルゴンが言う。
「その割に、アルゴンには妾がいないようだが?」
「ほほほ、他の女に情を移す前に私が搾り取っています。」セレンさんが良い顔で言う。
「ははは、ご馳走様。」
「ふふふ、ムサシ様。私もお母様に負けないように頑張ります。」
「はぁ、お手柔らかに。」
「ふふふ。」
********
そして、結婚発表の当日になった。
王城の周りには、多くの国民が集まっていた。
「皆の者、よく集まってくれた。」アルゴンが国民に言う。
「「「おおぉぉぉぉ!」」」」民衆から声が上がる。
「この度、神の身代わりであるムサシ様と、我が娘カリナが婚姻することになった!」
「おぉ、それはめでたい!」
「お伽噺の主人公が、カリナ様と結婚するのか!」
「カリナ様、おめでとうございます!」
「皆、二人の結婚を祝福してくれ!」アルゴンが宣言する。
「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」民衆が声を上げる。
「意義あり!」その声で辺りが静寂に包まれる。
「誰だ?」アルゴンが声の主に問う。
「カリナ様は、私と婚約をしていたはずです。」その男が言う。
「むぅ、公爵家の長男のレオナルドか?」
「はい、そうです。」
「すまないが、その婚約は解消する。」アルゴンが言う。
「何故です?」
「神の身代わり様が現れたからだ。」
「その結婚にカリナ様の意思はあるのですか?」
「私はムサシ様をお慕いしております。」カリナ様が爆弾発言をする。
「なぁ?」
「ムサシ様こそ我が夫に相応しいお方。」カリナ様がうっとりとして言う。
「私はムサシに決闘を申し込む!」レオナルドが宣言する。
「何と?」
「まぁ。」アルゴンとカリナ様が嬉しそうに反応する。
「はぁ、面倒くさい。」俺はため息を漏らす。
「ムサシ、私が勝ったらカリナ様との婚約を解消しろ!」レオナルドが叫ぶ。
「では、俺が勝ったらどうなるんだ?」
「カリナ様との結婚を認めてやろう。」
「はぁ? 馬鹿なのか?」
「何だと?」
「俺にだけ一方的に不利な条件じゃないか。」
「いや、そんなことは。」
「俺が勝ったら、お前の財産の半分をよこせ。」
「なぁ!」
「なんだ、自信がないのか?」俺はレオナルドを煽る。
「良いだろう、その申し出を受けよう。」レオナルドが宣言する。
「くふふ、酷い事を。」
「知らない、相手が馬鹿だったって事だ。」
「くふふ。」
「で、どこで何時やるんだ?」俺はレオナルドに聞く。
「ここに民衆が集まっている、今ここで決闘だ!」
「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」民衆が騒ぐ。
「アルゴン。」
「はい、ムサシ様。」
「と、言う事らしい。」
「解りました。」
「ルールは何でもありだ。」俺が言う。
「え?」アルゴンが固まる。
「武器の使用は無制限。」
「はぁ?」
「魔法も無制限。」
「はぁ?」
「アイテムや道具も無制限で良いぞ。」
「レオナルドもそれで良いのか?」アルゴンがレオナルドに聞く。
「願ったりだ。」レオナルドが言う。
「そうか、では庭の真ん中に来い。」アルゴンが俺たちに言う。
「命乞いをするなら手加減をしてやる。」レオナルドが言う。
「それはどうも。」
「ふぅ、身のほど知らずが。」レオナルドが言う。
「では私が見極め人となる。」アルゴンが宣言する。
「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」
「初め!」
「てやぁぁぁ!」レオナルドが叫びながら突っ込んでくる。
「はぁ。」俺はため息をつきながらその剣を練習用の剣で受ける。
「何だその剣は!」レオナルドが叫ぶ。
「あぁ、刃を潰した練習用の剣だ。」俺が答える。
「貴様、俺を愚弄するのか?」
「はぁ? 相手の力量も分からない奴を愚弄する必要はないだろう?」
「貴様!」レオナルドが叫ぶ。
「笑止!」俺はレオナルドの剣を弾き飛ばし、レオナルドの首に剣を当てる。
「勝者、ムサシ様。」アルゴンが宣言する。
「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」
「認めないぞ!」レオナルドが叫ぶ。
「はぁ?」
「レオナルド殿、まごう事なき貴方の負けです。」アルゴンが言う。
「何かの間違いだ。」
「何を言っているのですか?」
「私が負けるはずがない。」
「今実際に負けてるがな。」俺が言う。
「ありえない。」
「は?」
「今のはノーカンだ!」レオナルドが叫ぶ。
「はぁ?」アルゴンがひいている。
「はぁ、良いよアルゴン、世の中には強者がいると教えてやる。」俺は良い顔で言う。
「そう言う事なら。」アルゴンが構え直す。
「初め!」
「てやあぁぁあ!」レオナルドが叫びながら突っ込んでくる。
俺はレオナルドを張り倒した。
「ぶぎゃぁぁ。」変な声を出しながらレオナルドが飛んでいく。
「ぐはぁぁ。」レオナルドが悶絶しているが、俺はそこに攻撃した。
「ぶぎゃ!」
「はぎゃ!」
「ぶへい!」
「そろそろ降参しろよ。」
「なんの!」
「あぁ、そう。」俺は更に攻撃をする。
「ふぎゃ!」
「むぎゃ!」
「あぎゃあ!」
「ずびまぜん、じゃめでくだざい。」レオナルドが懇願する。
「え? もっと攻めて下さい? お前Mだな。」そう言いながらレオナルドをいたぶる。
「ずびまぜんでじたぁ、あじゃまりまずからみのがして下さい。」レオナルドが言う。
「ちっ。」
「くふふ、酷い事を。」
「自業自得だ。」




