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レオナルド

「旦那様、いかがですか?」ガキーン謹製のシャツを着たリーンが言う。

「おぉ、似合ってるじゃないか。」


「このシャツは本当に凄いです、私の周りだけ温度が一定で、汚しても一瞬で元に戻ります。」

「へぇ、一瞬か、凄いな。」

「それにすこし大きめかと思いましたが、着たとたんに身体にぴったりになりました。」

「あぁ、この鎧もそうだ。」

「色も好きな色に変えられるのですよ。」そう言いながら、リーンはシャツの色を変えていく。


「おぉぉ、数色だけかと思ったが本当に多いんだな。」

「すごく気に入りました。」

「良かったな。」


「旦那様、これをもう数着納品してくださいませんか?」

「どの位だ?」


「そうですね、3着ぐらいで、デザインを少し変えて。」

「う~ん、ガキーンに頼んでみるか?」


「前にも言いましたが、一着700000Gお払いします。」

「その額で納品して、誰が買うんだ?」


「貴族の方たちです。」

「あぁ、そうか。」俺はウランを思い出して言う。


「殺し合いが始まるんじゃないか?」

「抽選で販売して、その場で私と同じように魔石に口づけをしてもらいます。」

「あぁ、それなら諦めもつくか。」


「実際に、私に譲れと言ってきた貴族がいましたが、シャツを渡した途端に諦めて帰って行きました。」


「成程なぁ。」

「はい、旦那様。」

「流石はガキーンと言う事だな。」

「はい。」


********


「と言う事で、又やって来た。」

『歓迎します、ムサシ様。』


「悪いな、又肉を提供するから糸を提供してくれないか?」

『はい、喜んで。』

「おぉ、悪いな。」

『いえ、いえ。』


「んじゃ、落ちている枝を拾って。」俺は準備する。

『いきますよ、フン!』マスターキングモスが糸を吐く。


「おぉぉ。」俺は落ちている枝を拾いながらその糸を絡め取っていく。


「おぉ、これ位で良いぞ。」俺は5本目の枝を纏めながら言う。


『もう良いのですか?』

「あぁ、前回と同じになったからな。」俺はオーク肉を置きながら言う。

「前回と同じオーク肉を進呈する。」

『ありがとうございます。』


「んじゃ、又注文があったら宜しくな。」俺はそう言いながら城塞都市に走った。


********


「ガキーンいるか?」俺は偏屈屋に入る。


「五月蠅いぞ、って、ムサシか?」

「あぁ、俺だ。」

「今回はなんだ?」


「あぁ、すまないがこれでシャツを3着作ってくれ。」

「おぉ、マスターキングモスの糸か?」


「そうだ。」俺は答える。

「王女様がご所望か?」


「いや、組合から頼まれた。」

「がはは、そうなるとは思ったよ。」ガキーンが笑う。

「うん?」


「俺は、縫製は中々やらないからな。」ガキーンが良い顔で言う。

「おぉ、」

「ムサシにドレスとシャツを作ってやったから、目聡い貴族は組合に注文を出すと思ったぜ。」

「あぁ、そう言う事か。」


「んじゃ、受けなくても良いぞ。」

「え?」


「なんか悔しいから、このままマスターキングモスの糸を組合に納品する。」

「結局俺に依頼が来るじゃないか。」


「俺の依頼だと料金が発生しないだろう。」

「あぁ、そう言う事か。」


「俺にはマスターキングモスの糸を納品した金が入る。」

「おぉ。」


「ガキーンには組合から依頼料が入る。」

「おぉ。」


「で、組合は、シャツを売って儲けが出る。」

「そうだな。」


「全員ウィンウィンだな。」俺が言う。

「何だ、ウィンウィンって?」


「あぁ、誰も損をしないって事だ。」


「んじゃ、今回の迷惑料だ。」俺はミロクからウイスキーを5本貰ってそこに置く。

「がははは、悪いな。」ガキーンはウイスキーの蓋を開けてラッパ飲みする。




「と、言う事で、シャツの納品はなしだ。」

「はぁ?」リーンが戸惑う。


「シャツ3着分のマスターキングモスの糸を納品する。」

「はい。」


「どこに出せば良い?」

「はい、こちらの糸巻き機に。」リーンは俺を特別な部屋に案内する。


「この機械に糸を巻いて下さい。」

「えっと、どうやるんだ?」


「この部分に糸の先端を付けて後は機械が自動で巻き取ります。」

「そうか、やってみるよ。」俺は機械の前に座って糸を巻き取らせる。




「はぁ、疲れた。」俺は全部をやり終えて言う。


「はぁ、62400mの糸を納品されるとは思いませんでした。」

「いや、シャツを作るにはその位必要だろう?」


「ほほほ、その通りですね。」

「決裁してくれ。」俺はリーンにカードを渡す。


「天文学的な数字が、187200Gを振り込みました。」

「ははは、凄いな。」


「それを納品する旦那様が破格かと。」

「ははは、褒めるなよ。」

「褒めていません。」


「あれ~。」


********


「俺は王城に来ていた。」

「おぉ、ムサシ待っていたぞ。」アルゴンが言う。


「あぁ。今回は何で呼ばれたんだ?」

「カリナとの結婚式の打ち合わせだ。」

「はぁ、それか。」


「ムサシ様は、私との結婚が不満なのですか?」カリナ様が俺に言う。

「不満はありません。」

「まぁ。」


「ですが、私には押しかけ女房的なエルフの嫁らしきものがいます。」

「あらあら、そんなもの私が正妻であれば、妾を何人囲おうと問題ありません。」カリナ様がころころと笑う。

「ムサシ、強者が複数の妻を娶ることは普通のことだぞ。」アルゴンが言う。


「その割に、アルゴンには妾がいないようだが?」

「ほほほ、他の女に情を移す前に私が搾り取っています。」セレンさんが良い顔で言う。


「ははは、ご馳走様。」


「ふふふ、ムサシ様。私もお母様に負けないように頑張ります。」

「はぁ、お手柔らかに。」

「ふふふ。」


********


そして、結婚発表の当日になった。


 王城の周りには、多くの国民が集まっていた。


「皆の者、よく集まってくれた。」アルゴンが国民に言う。


「「「おおぉぉぉぉ!」」」」民衆から声が上がる。


「この度、神の身代わりであるムサシ様と、我が娘カリナが婚姻することになった!」

「おぉ、それはめでたい!」

「お伽噺の主人公が、カリナ様と結婚するのか!」

「カリナ様、おめでとうございます!」


「皆、二人の結婚を祝福してくれ!」アルゴンが宣言する。


「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」民衆が声を上げる。


「意義あり!」その声で辺りが静寂に包まれる。


「誰だ?」アルゴンが声の主に問う。


「カリナ様は、私と婚約をしていたはずです。」その男が言う。


「むぅ、公爵家の長男のレオナルドか?」

「はい、そうです。」


「すまないが、その婚約は解消する。」アルゴンが言う。

「何故です?」


「神の身代わり様が現れたからだ。」

「その結婚にカリナ様の意思はあるのですか?」


「私はムサシ様をお慕いしております。」カリナ様が爆弾発言をする。


「なぁ?」

「ムサシ様こそ我が夫に相応しいお方。」カリナ様がうっとりとして言う。


「私はムサシに決闘を申し込む!」レオナルドが宣言する。

「何と?」

「まぁ。」アルゴンとカリナ様が嬉しそうに反応する。


「はぁ、面倒くさい。」俺はため息を漏らす。

「ムサシ、私が勝ったらカリナ様との婚約を解消しろ!」レオナルドが叫ぶ。


「では、俺が勝ったらどうなるんだ?」

「カリナ様との結婚を認めてやろう。」


「はぁ? 馬鹿なのか?」

「何だと?」


「俺にだけ一方的に不利な条件じゃないか。」

「いや、そんなことは。」


「俺が勝ったら、お前の財産の半分をよこせ。」

「なぁ!」


「なんだ、自信がないのか?」俺はレオナルドを煽る。


「良いだろう、その申し出を受けよう。」レオナルドが宣言する。


「くふふ、酷い事を。」

「知らない、相手が馬鹿だったって事だ。」

「くふふ。」


「で、どこで何時やるんだ?」俺はレオナルドに聞く。


「ここに民衆が集まっている、今ここで決闘だ!」

「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」民衆が騒ぐ。



「アルゴン。」

「はい、ムサシ様。」


「と、言う事らしい。」

「解りました。」


「ルールは何でもありだ。」俺が言う。

「え?」アルゴンが固まる。


「武器の使用は無制限。」

「はぁ?」

「魔法も無制限。」

「はぁ?」


「アイテムや道具も無制限で良いぞ。」

「レオナルドもそれで良いのか?」アルゴンがレオナルドに聞く。


「願ったりだ。」レオナルドが言う。



「そうか、では庭の真ん中に来い。」アルゴンが俺たちに言う。


「命乞いをするなら手加減をしてやる。」レオナルドが言う。

「それはどうも。」


「ふぅ、身のほど知らずが。」レオナルドが言う。


「では私が見極め人となる。」アルゴンが宣言する。

「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」


「初め!」


「てやぁぁぁ!」レオナルドが叫びながら突っ込んでくる。

「はぁ。」俺はため息をつきながらその剣を練習用の剣で受ける。


「何だその剣は!」レオナルドが叫ぶ。

「あぁ、刃を潰した練習用の剣だ。」俺が答える。


「貴様、俺を愚弄するのか?」

「はぁ? 相手の力量も分からない奴を愚弄する必要はないだろう?」


「貴様!」レオナルドが叫ぶ。

「笑止!」俺はレオナルドの剣を弾き飛ばし、レオナルドの首に剣を当てる。


「勝者、ムサシ様。」アルゴンが宣言する。


「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」


「認めないぞ!」レオナルドが叫ぶ。

「はぁ?」


「レオナルド殿、まごう事なき貴方の負けです。」アルゴンが言う。

「何かの間違いだ。」


「何を言っているのですか?」

「私が負けるはずがない。」


「今実際に負けてるがな。」俺が言う。


「ありえない。」

「は?」


「今のはノーカンだ!」レオナルドが叫ぶ。

「はぁ?」アルゴンがひいている。


「はぁ、良いよアルゴン、世の中には強者がいると教えてやる。」俺は良い顔で言う。


「そう言う事なら。」アルゴンが構え直す。


「初め!」


「てやあぁぁあ!」レオナルドが叫びながら突っ込んでくる。


 俺はレオナルドを張り倒した。


「ぶぎゃぁぁ。」変な声を出しながらレオナルドが飛んでいく。


「ぐはぁぁ。」レオナルドが悶絶しているが、俺はそこに攻撃した。


「ぶぎゃ!」

「はぎゃ!」

「ぶへい!」


「そろそろ降参しろよ。」

「なんの!」


「あぁ、そう。」俺は更に攻撃をする。

「ふぎゃ!」

「むぎゃ!」

「あぎゃあ!」


「ずびまぜん、じゃめでくだざい。」レオナルドが懇願する。

「え? もっと攻めて下さい? お前Mだな。」そう言いながらレオナルドをいたぶる。


「ずびまぜんでじたぁ、あじゃまりまずからみのがして下さい。」レオナルドが言う。

「ちっ。」


「くふふ、酷い事を。」

「自業自得だ。」


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