ウラン
「まぁ、私にですか?」カリナ様が嬉しそうに言う。
「はぉ、ムサシからのわが娘への贈り物か。」アルゴンが羨ましそうに言う。
「ははは、大したものではありません。」俺はそう言いながらガキーンの作った花嫁ドレスを取り出す。
「なぁ、それは?」アルゴンが驚愕する。
「あら、素敵なドレス。」カリナ様はニコニコしながらそれを受け取る。
「むむむ、ムサシ様。」
「何だアルゴン?」
「其れはマスターキングモスの糸で織られたドレスですか?」
「おぉ、アルゴン良く解ったな。」
「なぁ?」
「あぁ、カリナ様、そこにある魔石に口づけしてください。」俺はカリナ様に言う。
「こうですか?」カリナ様は魔石に口づけする。
ドレスが一瞬輝く。
「これで、そのドレスはカリナ様以外は着れません。」
「まぁ、そうですの?」
「はい、そしてもう一着、このシャツの魔石にも口づけしてください。」俺はミロクからシャツを貰ってカリナ様に渡す。
「はい。」カリナ様はシャツの魔石にも口づけをした。
同じようにシャツも一瞬輝いた。
「ムサシ、お前、そのシャツの価値が解っているのか?」アルゴンがわなわなと震えながら言う。
「へ? ただのシャツだろう?」
「ムサシ、そのドレスとシャツは騒動になる。」アルゴンが言う。
「へ? 何で?」
「貴族連中が我先にと奪いに来る。」アルゴンが言う。
「いや、無理だと思うぞ。」
「何故だ?」アルゴンが俺に問う。
「今見ていただろう。」
「え?」
「カリナ様が魔石に口づけしたのを。」
「あぁ。」
「カリナ様以外は着れない。」
「何と?」
「ガキーン謹製のドレスとシャツだぞ。」
「俺のこの皮鎧もそうだが、別の者が着ようとしても弾かれる。」
「おぉ。」
「試してみればいい。」
「其れは。」アルゴンが言う。
「まぁ、素敵なドレス。」どこから現れたのか、一人の女が部屋に入ってくる。
「ウランお姉さま?」カリナ様が言う。
「ウラン、お前は侯爵家の嫁に出した、何故ここにいる?」アルゴンが言う。
「まぁ、お父様、あなたの娘がここに来てはいけないと?」ウランが言う。
「当然だ。」
「あら?」
「王家より嫁に出たら、その者は王族ではない。」
「あら、あら。」
「でも、そのドレスに興味があります。」ウランがカリナ様に近づいて言う。
「少しだけ貸してくださいな。」そう言いながらウランがドレスに手を伸ばす。
「駄目です!」
「バチン!」カリナ様の言葉とドレスの拒否反応が同時に起こった。
「なぁ?」ウランが呆ける。
「誰ぞある? その者を表に放り出せ。」アルゴンが言う。
「御意。」国王の暗部がウランの周りに現れる。
「そこの貴方、私にドレスを献上しなさい。」ウランが俺に言う。
「はぁ? 何で俺が貴女にドレスを献上するのですか?」
「私は侯爵夫人です、下々の者は私に献上する義務があります。」
「だってさ、アルゴン。」
「ムサシ様は神の身代わりだ、お前風情がどうこう出来るお方ではない!」
「え?」
「さらに言えば、ムサシ様には公爵を叙爵する、お前如きが命令する立場ではない!」アルゴンが言う。
「何と?」
「放り出せ。」アルゴンの言葉でウランが部屋から出される。
「本当に私以外は着れないのですね?」カリナ様が言う。
「はい、私を愛してくれた証です。」俺はカリナ様の靴に口づけして言う。
「あぁ、ムサシ様。」カリナ様が俺を抱き上げる。
「カリナ様?」
「ムサシ様、お慕いしています。」カリナ様が俺に抱き着いてくる。
「ははは、ムサシ、お前の誕生日は何時だ?」アルゴンが聞いてくる。
「本当かどうかは知らないが、来月らしい。」
「おぉ、では来月の最終日にムサシの叙爵とカリナの婚姻を執り行うと発表しよう。」
「ははは、逃げ道を塞がれた。」俺はそう言いながら王城を出ようとした。
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「そこのお前。」俺に声を掛ける奴がいた。
「はぁ?」
「我妻にドレスの献上を断ったそうだな?」
「はぁ?」
「侯爵様、彼のお方は神の身代わり様です。」近くにいた近衛兵が言う。
「だから何だ? 我は侯爵だぞ。」その男が叫ぶ。
「あぁ、さっきのウランとか言う人の旦那さん?」
「なぁ、何だその物言い?」
「侯爵様、もう一度言います、彼のお方は神の身代わり様です。」
「だから何だ?」
「国王様のお触れが届いていませんか?」
「あぁ、神の身代わりには逆らうなというあれか?」
「そうです。」
「たかが平民なのだろう?」
「いえ、此度叙爵して、公爵へなられるお方です。」
「なぁ?」
「なぁ、何でお前は俺からドレスを献上されると思ったんだ?」
「いや、たかが平民が、侯爵家の依頼を断ったと聞いてな。」
「念のために言っておく、俺は爵位には興味ない。」
「え?」
「たとえ誰であろうとも、俺もしくは俺の家族、関係者に仇名す奴は消す。」
「なぁ?」
「カリナの姉だと言っていたが、お前諸共消してやろうか?」
「ひぃ!」
「すびばせんでじたぁ!」その男がその場で土下座する。
「あなた、何で土下座をしているのですか?」ウランがそこに来て言う。
「控えろ。」侯爵が言う。
「何故、私が蔑ろにされるのですか?」ウランが叫ぶ。
「止めるのだ!」侯爵がウランを止める。
「何故ですか?」
「彼のお方は神の身代わり様だ。」
「だから何ですか?」
「あぁ、一緒に消滅するか?」俺は威圧を開放して言う。
「ひぃ。」ウランが卒倒する。
「ムサシ様、お慈悲を。」侯爵がその場で土下座する。
「お前とは義兄弟となるらしいからな、今はこの程度で止めてやる。」
「ははぁ。」
俺は王城を後にした。
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「あなた、納得できません。」ウランが言う。
「あぁ、私もそうだが、勝てる見込みがない。」
「カリナに刺客を送ればいいのです。」
「カリナ姫には関係ないだろう。」
「い~え、納得いきません。」
「ウラン、止めておいた方が良いと思うが。」
「貴方が消極的なのなら、私が実行します!」ウランが言う。
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「ムサシ、カリナ姫の周りに不穏な動きがあるよ。」ミロクが言う。
「不穏な動き?」
「カリナ姫を亡き者にしようとしている存在がいるよ。」
「なんだそれ?」
「くふふ、すぐに行った方が良いかもね。」
「あぁ。」俺は王城に走った。
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「これはムサシ様、此度はどのような?」門兵が聞いてくる。
「カリナ様に面会を頼む。」
「はい、承りました。」門兵が王城に走っていく。
「どうぞお通りください。」門兵が言う。
「あぁ。」俺は全力で王城の門に走った。
「おぉ、どうしたのだムサシ?」アルゴンが聞いてくる。
「あぁ、カリナ様を守りに来た。」俺は答える。
「まぁ、ムサシ様。」カリナ様が顔を真っ赤にする。
「なんと?」
その瞬間に、侯爵の兵が雪崩れ込んできた。
「なぁ?」アルゴンが呆ける。
「スタン!」俺は麻痺の魔法を唱えた。
「くはぁ。」雪崩れ込んできた兵達が固まる。
「これは侯爵家の兵か?」アルゴンが言う。
「あぁ、そうだろうな。」
「これは、私に弓を引いたと言う事か?」アルゴンが言う。
「残念ながら、そうだな。」
「はぁ。」アルゴンは深いため息をついて言う。
「侯爵家の全員を捕らえろ。」
「はっ!」国王の暗部と近衛兵が答える。
「侯爵と、ウランを我が前に引き出せ。」
「はっ!」
「アルゴン。」
「ははは、ムサシ様、身内のやらかし謝罪します。」
「あぁ、気にしていないぞ。」
「勿体無いお言葉。」
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「何で無傷なのですか?」ウランが吠える。
「国王様、私は貴方に敵対いたしません!」侯爵が言う。
「これだけの兵を挙兵してその物言いか?」
「私ではありません、我妻ウランの仕業です。」
「お前の妻の暴挙を阻止できないことが罪だ。」
「うぐぅ。」
「ははは、アルゴン。」
「何でしょうかムサシ様?」
「もう一度だけ試してやろう。」
「はい、ムサシ様。」アルゴンが俺に頭を下げる。
「侯爵兵のスタンを解除する、その後どう動くかで結果を教えてやろう。」俺はそう言いながらスタンを解除する。
「おぉぉ、ムサシ!」
「お前を排除する!」
「奥様のために!」
あろうことか、ほぼ全員が俺に敵対心を向けた。
「はぁ。」
「ムサシ様?」
「デス!」俺は暗黒魔法の即死魔法を唱える。
「うぎゃぁ。」
「はわぁ。」
「うりゅぅ。」
「ぐはぁ。」
侯爵の兵がその場で死に絶える。
「なぁ?」ウランが狼狽える。
「お前は何てことを。」侯爵が天を仰ぐ。
「はぁ、ギルティ!」俺は言う。
「なぁ?」
「俺にだけでなく、嫁さんへの攻撃、万死に値する。」
「いえ、私は違う、私は知らなかった。」侯爵が騒ぐが知った事じゃない。
「アルゴン。」
「はい、ムサシ様、存分に沙汰を!」アルゴンが良い顔で言う。
「私は敵対しない!」侯爵が叫ぶ。
「残念だよ。」俺はそう言いながら侯爵夫妻に魔法を唱えた。




