マスターキングミノタウルス
俺はガキーンに会いに来た。
「頼もう!」俺は偏屈屋のドアに入り大声で叫ぶ。
「何だ、五月蠅いぞ。」ガキーンが奥から出てきて言う。
「おぉ、久しぶりだな。」俺は手を挙げて言う。
「なぁ、ムサシか、この野郎、久しぶりじゃねえか。」ガキーンが俺の背中を叩きながら言う。
「痛いからよせ。」俺はガキーンの手を払う。
「で、今回は何だ?」
「あぁ、王都の肉ダンジョンに行ってきたんだが。」
「おぉ、マジか。」
「で、組合に納品する前に、ガキーンが欲しい物があったら譲ってやろうと思ってな。」
「かぁ~、ムサシ、恩に着るぜ。」
「で、今回は皮を持って来たんだが。」
「おぉ、何があるんだ?」
「ミノタウルス42、マスターミノタウルス32、マスターキングミノタウルス1だ。」
「なん、だと、マスターキングミノタウルスだと?」
「あぁ、今回の肉ダンジョンの最下層に出た。」
「また踏破したのか?」
「あぁ。」
「マジかぁ。」
「で、どうする?」
「マスターミノタウルスを10とマスターキングミノタウルスをくれ。」
「あぁ、良いぞ。」俺はそれをガキーンに渡す。
「で、支払いは300000Gで良いか?」
「え? 貰い過ぎじゃないか?」
「オークションならその辺りが落札額だと思うが。」
「そうか、ならそれでいいや。」
「んじゃ、カードを貸せ。」
「あぁ。」俺は組合のカードをガキーンに渡す。
端末を操作したガキーンは、カードを俺に返してきた。
「きっちり振り込んでおいたぞ、あぁ、例の圧力鍋の売り上げの2割も一緒に振り込んだ、確認してくれ。」
「あぁ、信用している。」俺はカードを受け取りミロクに渡した。
「んじゃ、俺はこれで帰る。」
「え? 飲んでいかないのか?」
「あぁ、本来の納品に行くからな。」俺はリーンのところに行った。
*******
「まぁ、旦那様、いらっしゃいませ。」リーンが俺に抱き着いてくる。
「ちっ、死ねばいいのに。」
「リア充爆発しろ。」
俺とリーンの絡みを見た組合員が毒を吐く。
「で、今回はどのような?」
「あぁ、オークロード98、ミノタウルス42、マスターミノタウルス22、マスターオークロード45、マスターコカトリス28を狩ってきた。」
「何ですか、また王都の肉ダンジョンを踏破したのですか?」
「あぁ、成り行きで?」
「あぁ、緊急案件の依頼ですね。」リーンが言う。
「ははは、そうだな。」
「階層主がありませんが?」
「あぁ、ガキーンに売ってやった。」
「何と?」
「マスターキングミノタウルスだったが、どうせ国王とガキーンのオークションになる奴だろう。」
「かぁぁ、組合の手数料の中抜きが。」リーンが吠える。
「中抜きって言っちゃうんだ。」
「はて、何のことやら?」リーンが惚ける。
「今回は皮も持って来た。」
「まぁ、それならミノタウルスとマスターミノタウルスの皮は全部納品してください。」
「おぉ、良いぞ。」
「ありがとうございます。」
「マスターミノタウルスは1頭分5000Gなので110000Gです。」
「おぉ。」
「ミノタウルスは1頭分が50Gなので42頭で2100Gです。」
「あぁ、肉は良いのか?」
「オークロードとミノタウルスを30kgづつ納品してください。」
「あぁ、良いぞ。」
「オークロードは1kg2Gなので60Gです。」
「あぁ。」
「ミノタウルスは1kg5Gなので150Gです。」
「あぁ。」
「マスターキングミノタウルスは後で食べさせてください。」リーンが俺に口づけをしながら言う。
「かぁ~、やってられないぜ!」
「マジで捥げれば良いのに!」
外野が五月蠅い。
「では決済をしますので、組合のカードを。」リーンが俺に言って来る。
「あぁ。」俺は組合のカードをリーンに渡す。
「振込完了しました。」リーンが笑顔で俺にカードを返してくる。
「あぁ。」俺はそれを受け取った。
「そう言えば、ドレスの材料は何が良いんだろう?」俺はリーンに聞く。
「はぁ? ドレスとは?」
「第三王女のカリナ様に献上しようと思ってな。」
「まぁ、妬けます事を。」
「何が良いかな?」
「そうですね、マスターキングモスの繭から採れる糸が良いのではないでしょうか?」
「マスターキングモス?」
「はい、なんでもここから西に4日ぐらい進んだ森の奥にいるという噂があります。」
「マジか?」
「くふふ、その通りだね。」
「ありがとう、リーン。」俺はリーンに口付けをする。
「いえ、旦那様のためなら。」
「くそお、見せつけやがって!」
「マジで呪ってやる。」
さらに外野が五月蠅い。
家に帰って、マスターキングミノタウルスの焼き肉を準備した。
マスターキングミノタウルスの肩肉を薄切りにして、俺特製の焼き肉ダレに漬け込む。
「野菜も切っておこう。」俺はニンジン、ピーマン、椎茸、南瓜を切ってバットに入れた。
「ただいま。」リーンが帰ってきた。
「お帰り。」俺はリーンを迎え入れて口付けをする。
「ただいま戻りました、旦那様。」俺の腕の中でリーンがうっとりする。
「今日はマスターキングミノタウルスの焼き肉だ。」俺は机の上にコンロと肉と野菜を乗せて言う。
「楽しみです。」リーンが笑う。
「よ~し、焼いていくぞ。」俺はコンロにフライパンを乗せ、マスターキングミノタウルスの肉を漬けダレから取り出してフライパンに乗せた。
「じゅわわぁ~。」とたんに広がる脂が焼ける匂い。
「あぁ、これは駄目な奴だ。」俺はそう思いながら、肉を焼く手が止まらない。
「くふふ、食べさせろ。」
「あぁ、ほれ。」俺は焼けた肉を箸でミロクの口元に差し出す。
「パクリ。」
「ふわぁ!」ミロクが撃沈した。
「焼けてきたな。」俺は肉を見ながら言う。
「食べてもいいですか?」リーンが俺に聞いてくる。
「あぁ、付けダレはこれだ、心して食べろ。」俺はリーンに言う。
「解りました。」リーンは焼けた肉を箸で持ち、付けダレに漬けて口に入れる。
「ふわぁ!」リーンも撃沈した。
「ムサシ、良い匂い。」シーナが言って来る。
「あぁ、シーナに献上。」
「ありがとう。」そう言いながらシーナも焼けた肉を付けダレに漬けて口に入れた。
「はぅ!」シーナがフリーズする。
「そこまでやばい肉なのか?」俺はマスターキングミノタウルスの肉を鑑定する。
マスターキングミノタウルスの肉
食べると状態異常解除。
HP、MP全回復。
生命力、力、魔力の上限UP。
「マジかぁ。」
だがそれ以上に味が気になる。
俺はその肉を口に入れた。
「はぅ!」俺は驚愕した。
肉の脂が口いっぱいに広がる。
その後に肉の旨味が口に広がる。
その旨味が、咀嚼する都度口の中に広がる。
「至福だ。」
俺は、心を持ちこたえ、マスターキングミノタウルスの肉を食べた。
「くふふ、ステータスが上がったね。」ミロクが俺に言う。
「良いんだ、美味い物を食うのは正義だ!」
「くふふ、ステータスが凄くないかい?」
「あぁ、そうだな。」俺は俺のステータスを見ながら言う。
名前 :ムサシ。
ジョブ :神の身代わり レベル152
生命力 :890 一般成人男性の平均は15
力 :980 一般成人男性の平均は10
魔力 :1200 魔力適正者の平均は30
魔法適正:有り
使用魔法:4大属性魔法 (火、水、地、風)、天、闇、時、空間、?
スキル :剥ぐ者、統べる者 威圧 料理人 創造者
耐性 :炎無効 水及び氷無効 土魔法、大地魔法無効、風魔法、暴風魔法無効、毒無効、麻痺無効、精神障害無効、幻術無効、石化無効、汚染無効、即死無効、呪い無効、時魔法無効、睡眠耐性、飢餓耐性、排泄耐性、水分補給耐性
「くふふ、人外化が進んでいるね。」
「あぁ、そうだな。」
「其れだけ?」
「それ以上何が?」
「くふふ。」
「俺は、マスターキングミノタウルスの肉を食べ続けた。」
*******
翌朝、俺は西の門に向かった。
「この門からは出ないことを、何だムサシさんか、行ってらっしゃい。」門番が俺に言う。
最早、俺が森に入ることは公認らしい。
俺は金鶏以上だけ獲れるように闘気を調節して森を走った。
「獲れすぎだろ。」俺は金鶏78,オーク54,コカトリス43を狩って言う。
「くふふ、もう少し闘気を強くした方が良いかもね。」
「あぁ、そうする。」俺は闘気を調節してマスタークラスだけ出てくるようにした。
「全く出てこないんだが。」ある程度森を進んだ俺が言う。
「くふふ、マスターがいる森は脅威度ランクSだよ。」
「え?」
「マスタークラスの魔物は、一体で国を亡ぼせるよ。」
「はぁ?」
「くふふ、君の脅威が上がったって事だね。」
「俺を魔物扱いするな!」
「くふふ、今回は諦めて目的を果たせば良いじゃないか。」
「あぁ、そうする。」俺は闘気をそのままにして森の奥に走った。




