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緊急案件の依頼

「ムサシ様、組合より緊急案件の依頼が来ています。」カロリーヌさんが俺に言う。

「緊急案件?」


「はい、なんでも肉ダンジョンの11階層で討伐していたパーティーと連絡が取れなくなったそうです。」

「はぁ? たかが11階層でですか?」俺はカロリーヌさんに言う。

「ムサシ様なら楽勝かもしれませんが、ほかのパーティーでは無理な場所です。」


「はぁ、遭難しているのは?」

「何でも、ダンジョン前で勧誘をしている冒険者らしいです。」


 脳裏に、ダンジョン前で声を掛けてきた冒険者の姿が浮かんだ。

「あいつらか。」


「はぁ、まぁ行ってみるだけ行ってみますか。」俺はため息をつきながら立ち上がった。


*******


「緊急案件を処理しに来た。」俺はダンジョン前の組合に入って、受付に言った。

「ムサシ様ですね、お待ちしていました。」

「冒険者が11階層で連絡が取れなくなったと聞きましたが?」

「はい、そうです。」

「誰かからの依頼ですか?」

「いえ、違います。」


「冒険者は自己責任じゃないんですか?」

「はい、ですから依頼は、同行したポーターの救出です。」


「ポーター?」

「ムサシ様もご存じの、『ルチア』と『アデル』です。」


「あぁ、あの二人か、それなら受けるぞ。」

「ありがとうございます、彼女たちならきっと11階層の安全地帯にいるはずです。」


「そうか、では早速行ってくる。」そう言いながら俺は組合を出てダンジョンに潜った。


*******


「くそぉ、へましちまった。」

「今更だ、ルチア。」


「奴らの口車に乗ったのが失敗だった。」

「その通りだな、ルチア。」


「まさか奴らが、オークロードにケンカを売るとは思わなかった。」

「あぁ、しかも一瞬でやられるとか無いわ。」


「とりあえず、荷物を捨ててここまでたどり着いたけど。」

「あぁ、助けが来れば良いなぁ。」

「諦めたらそこで終わりだ、気をしっかり持てアデル。」

「そうだな。」


「しかし、携帯食料まで捨てたのは失敗だった。」

「あぁ、もう2日も何も食わずだからな。」


「だが、安全地帯に湧水があって良かったな、アデル。」

「水があれば、一週間ぐらいは何とかなるからな。」

「あぁ。」


*******


「ダンジョンが変わっているな。」俺は闘気を全開にしてダンジョンを潜っている。

「くふふ、前回と違って3階層以降が迷路化しているね。」


「あぁ、厄介だ。」そう言いながら闘気を無視して襲い掛かってきたオークを一刀両断にする。


「おかしい、俺の闘気が通用していない?」

「くふふ、闘気耐性のあるモンスターが何匹かいるね。」


「本当に厄介だ!」

「くふふ、君が前回最下層まで行ったから、ダンジョンが変わったんだよ。」

「マジか、俺のせい?」

「くふふ。」


 倒したオークはもちろん解体した。


*******


「前回は1時間も掛からずに10階層まで行けたのに、1時間でまだ5階層か。」

「くふふ、迷路と解体に時間を取られているからね。」

「お肉が勿体ないじゃないか、あと魔石も。」

「くふふ、そうだね。」


「さぁ、がんがん行くぞ!」俺はダンジョンを進んだ。




「8階層なのに、オークロードが居やがる。」言葉とは裏腹に俺の口角が上がる。


「ははは、良い展開だ。」俺はオークロードを狩って解体する。

「くふふ、本来の目的を忘れていないよね。」


「えっ? ・・・も、勿論だ。」

「くふふ、忘れていたね。」


「・・・何のことやら?」

「くふふ。」


*******


「何だよ、今までと違うじゃないか。」斥侯の男が泣き言をいう

「泣き言を言うな、その暇があったら戦え!」戦士の男が斥候に声を掛ける。

「MPがもう無い!」魔術師の女が言う。

「MPポーションはあと2本しかないよ」僧侶の女が言う。


「ぐもぉぉぉぉ!」ミノタウルスが吠える。

「くそぉ、俺が食い止めるから、その間に逃げろ!」タンクの男が叫ぶ。


 ミノタウルスは右手に持った棍棒を振り下ろした。

「ぐおぉぉぉ!」タンクの男が受け止める。


「せめて一太刀!」戦士の男がミノタウルスに切りかかる。

「よせ、逃げろ!」タンクの男が叫ぶ。


「ぐもぉぉぉぉ!」ミノタウルスは戦士の男を左手で払った。

「ぐはぁぁぁ!」戦士の男は叫びながら俺に向かって飛んできた。


「よっと!」俺はその男を受け止めた。


「よぉ、苦労しているみたいだな? 助けはいるか?」俺はタンクの男に聞く。

「あぁ、頼みたい、報酬は弾む。」タンクの男が言う。


「よし、言質取ったぞ。」俺はそう言うと天叢雲剣でミノタウルスの首を落とす。


「な! 一瞬で?」タンクの男が言う。


「報酬はこれ(ミノタウルス)で良いぞ。」俺はそう言うと、ミノタウルスを解体する。

「なぁ、見事な。」

「凄い、こんなに早く。」


「あぁ、魔石と内臓は貰うけど、皮とお肉はやるよ。」俺はにこやかに言う。


「え?」タンクの男が呆ける。

 いや、そこにいた全員が呆けた。


「良いのか?」タンクの男が言う。

「あぁ、間に合っているからな、んじゃ俺は行くぞ。」俺はダンジョンを進もうとする。


「待ってくれ!」タンクの男が俺に声を掛けた。

「ん~?」俺は振り向く。


「俺たちをダンジョンから連れ出してくれないか?」

「いや、そのまま帰ればいいじゃないか。」


「俺たちの力量じゃ無理なことが分かった。」タンクの男が言う。

「あ~、でも俺は緊急案件の依頼の途中だから、無理だな。」


「そう言わずに頼む、この通りだ。」タンクの男以外全員がその場で俺に頭を下げる。


「くふふ、助けてやれば良いじゃないか。」

「はぁ、んじゃ着いてこい、俺の依頼が終わったらダンジョンの外まで連れて行ってやる。」


「おぉ、頼む、俺はこのチームのリーダーのタンク、タンクローだ。」タンクの男が言う。

「あぁ、俺はムサシだ、さっさと行くぞ。」俺はダンジョンを進む。


「どこまで行くんだ?」タンクローが聞いてくる。

「11階層だ。」俺は答える。


「なぁ、俺たちでは無理だ。」タンクローが言う。

「俺に着いてくれば大丈夫だ。」俺はそう言いながら先に進んだ。


「俺たち死んだ?」戦士の男が魔術師の女に聞く。

「知らない。」魔術師の女はぞんざいに答える。


「少なくともソロでここまで来ている事態が異常ですね。」僧侶の女が失礼なことを言う。

「着いていくしかないですね。」斥候の男が言う。


*******


「マジですか?」タンクローが言う。

「何がだ?」俺は聞き返す。


「ここまでに、オークロード20匹、ミノタウルス15匹を瞬殺って。」

「あぁ、ただの作業だな。」俺はそう言いながらミノタウルスを解体してミロクに渡す。


「さて、あと1階層だな。」俺は躊躇なく11階層への階段を下る。

「待ってください。」そう言いながらタンクロー以下メンバーが俺に続いた。


*******


「ん?」俺はそれに気づく。

 そこにはギルドカードが落ちていた。


 ダンジョンで死んだら、肉体や装備はダンジョンに吸われる。

 だが、ギルドカードだけはそこに残る。


 俺はそのギルドカードを拾った。


「オークロードに喧嘩を売ったのか? 馬鹿なのか?」俺はカードの情報を読み取って言う。

「なぁ、ギルドカードの情報が分かるのか?」タンクローが言う。


「あぁ、普通だろ。」俺はそれをミロクに渡す。

「マジかぁ。」


「安全地帯はもう少し先か。」俺はそこに向かった。


「ぐもぉぉぉぉ!」マスターミノタウルスが襲い掛かってきた。

「なぁ、マスターミノタウルスだと?」タンクローが言う。

「あぁ、終わった。」魔術師の女が言う。

「あたしの人生ここまでかぁ。」僧侶の女が言う。


「わははは、お肉だ!」俺はマスターミノタウルスに飛び掛かって一瞬で首を跳ねた。

「お肉、お肉~。」俺はマスターミノタウルスを解体してお肉と内臓、魔石と皮をミロクに持ってもらった。


「くふふ、前回は皮を見逃したからね。」

「あぁ、今考えると勿体無かったが、終わった事は仕方が無い。」

「くふふ。」


「何者なんだ、ムサシ、様。」タンクローが俺に聞いてくる。

「俺か? ただの神の身代わりだ。」


「神の身代わり?」

「あぁ、俺がそうだ。」俺は組合のカードを見せる。


「おわぁ!」タンクローが叫ぶ。

「伝説の?」

「お伽噺の?」魔術師の女や僧侶の女が言う。


「ははは、俺たちは凄い人に助けられたんだな。」斥候の男が言う。


「良いから進むぞ。」俺は安全地帯に向かって歩を進めた。


*******


「やばい、安全地帯の効力が消えそうだ。」

「落ち着け、ルチア、まだあと数時間は持つ。」


「しかし、その後はどうするんだ?」

「なるようにしかならない、ここで終わればそれだけだったと言う事だ。」

「アデル、お前達観しているな。」

「性分だ。」

「はぁ。」


*******


「ぐもぉぉぉぉ!」ミノタウルスの叫びが聞こえる。

「ひっ!」

「落ち着けルチア。」

「だって。」


「どうにもならない。」

「はぁ、本当に達観してるなアデル。」

「褒めても何も出ないぞ。」

「褒めてない。」


「ぐもぉぉぉぉ!」ミノタウルスが安全地帯に入ってきた。

「もうだめだ。」そう思った時。


「ぐぎゃぁぁあぁ!」ミノタウルスの断末魔が響いた。

「え?」ルチアがそこを見る。


「おぉ、お前ら無事か?」俺は二人に声を掛ける。

「ムサシ様?」

「旦那?」


「あぁ、俺はムサシだ。」俺は二人に応える。


「あぁ、助かった。」そう思った瞬間にルチアは身体の力が抜けた。

「ちょ、ルチア。」アデルがルチアを抱きかかえた。


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