沼の王
「さて、沼のナマズ退治か。」俺はそう言いながら解体用のナイフを研ぐ。
「くふふ、殊勝な心掛けだよ。」
「ナマズなら食ったことがある。」
「くふふ、いいこころがけだよ、頼もしいねぇ。」
「茶化すなよ。」
「くふふ。」
「朝ごはん食べれますよ。」テトがドアをノックしてくる。
「あぁ、今行く。」俺はそう言って部屋を出る。
「お好きな席に座ってください。」テトが俺を見て言う。
「あぁ、俺はすぐ傍の机に腰を下ろす。」
机には、パンと、卵焼きとベーコンを焼いたものが置かれている。」
「はい、スープです。」テトが深めの皿を持ってくる。
「お手伝い偉いな。」俺が言う。
「いえ、普通です。」テトが振り返って舌を出す。
(かわいいじゃないか。)俺はそう思いながら、スープを口にする。
「美味いなぁ。」
「本当?」テトがテーブルに手を置いて言う。
「あぁ、美味いぞ。」
「にへへ、それ、あたしが作ったんだ。」
「へぇ~、テトは料理も上手いんだな。」
「にへへ、ありがとう。」
「いや、本当の感想だ、他意は無いぞ。」
「うん、普通にうれしいよ。」
「そうか。」俺は朝食を食べ進めた。
「はい、これ、お弁当。」テトが俺の机にそれを置く。
「おぉ、ありがとうな。」俺はそれをミロクに渡す。
「くふふ、預かるよ。」弁当は一瞬で消える。
「え? 何処に消えたの?」
「あぁ、気にするな、俺の魔法だ。」
「ムサシさんは凄いんだね。」テトが俺を尊敬の目で見る。
「いや、俺は只の荷物持ちだよ。」そう言いながら朝食を食べる。
「そんなことないよ、すっごく尊敬する。」テトがキラキラした目で俺を見る。
「ははは、凄くむず痒い。」
「それじゃあ、行ってきます。」朝食を食べ終え、狩の体制になった俺が言う。
「はーい、行ってらっしゃい。」
テトに見送られて、宿から門に向かう。
「んで、この村の西の門を出れば良いんだな。」
「うん。」
俺は西の門に向かった。
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「見ない顔だな。」その門を守っている村の剣士が言う。」
「あぁ、訳があって、沼のナマズを退治する。」
「な? マジか?」
「あぁ、マジだ。」
「それは、助かる、どうぞ通ってくれ。」
「あぁ、ありがとう。」
俺は、その門を潜ると、真っ直ぐ沼に向かった。
「くふふ、いるね。」
「あぁ、今の俺でも判る、化け物じゃないか。」
「くふふ、ちょろいね。」
「え?」
「ただ体が大きいナマズだよ。」
「そうなの?」
「こいつは、一瞬。」ミロクが良い顔で笑う。
「何でそんな奴に、神気を喰われたんだ?」
「すごく気持ちがよかったんだよ。」
「はぁ?」
「ものすごく気持ちが良い眠りで、神気が食われている事に気付けなかったんだよ!」
「へぇ。」
「なに、その反応。」
「いや、そんな眠りなら、体験したいなって。」
「そのうち体験させてあげるよ。」
「え?マジで?」
「約束する。」
「んで、こいつはどう退治するんだ?」
「くふふ、任せて。」そう言いながらミロクは縄のようなものを作って沼に投げ込んだ。
「え? 縄を投げ込んでどうするんだ?」
「くふふ、見てれば解るよ。」
「おぉ。」
「捕まえた。」
「え?」
「くふふ、私の神気に反応すると思ったよ。」
「はい?」
「神気が繋がってるから、このまま引き上げるよ。」そう言いながらミロクが何かを沼から引き釣り出す。
「グモオオオオオ!」その存在が悲鳴に似た声を上げる
それが、目の前に引き上げられた。
俺は、条件反射のようにナイフを持ってそれに向かって走る。
「てい!」俺はナイフをそいつの首元に突き入れると、尻尾に向かって走る。
「グモオオオオオ!」その悲鳴と共に、そいつの内臓がそこに広がる。
「肉は美味しく食べられるよ。」
「あぁ。」
「皮は、う~ん、微妙かな。」
「捨てる。」
「後は魔石だけかな。」
「あぁ。」俺は、てきぱきとその肉を解体した。
肉を剥いだ後の残骸を消しながらミロクが言う。
「くふふ、ナマズの肉は10kgが5Gになるよ。」
「え? いま2000kgぐらい持ったよな?」
「うん。」
「組合に、どの位納品するかは君次第だよ。」
「おぉ。」
「因みに、魔石は50Gだと思うよ。」
「あぁ、そう。」
俺は魔石を拾いながら言う。
「それも持つよ。」
「あぁ、宜しく。」俺は魔石をミロクに渡す。
「くふふ、任せて。」
俺は、町に帰った。
「おぉ、帰ったのか?」門番の剣士が俺に声をかける。
「あぁ。」
「ナマズはどうなった?」
「あぁ、退治したよ。」
「おぉ、本当か?」
「あぁ、今から組合に報告してくるよ。」
「おぉ、ありがとう!」その剣士が首を垂れる。
「仕事だ。」俺はそう言うと、この町の組合に向かった。
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「こんにちは、初めての方ですね?」
「はい。」
「今回は、どのような御用でしょうか?」
「あの。」
「ギルドの立上げ申請なら、1番窓口へ。」
「ギルドの規模拡大申請なら2番の窓口へ。」
「その他、ギルドの解体、他ギルドへの吸収合併、その他は3番の窓口にお進みください。」
「俺は、神の身代わりだ。」虹色に輝く石を見せながら言う。
「はい?」
その後、ここの組合長が飛んできて、その後はすんなりと終わった。
ナマズの肉は。1000kgだけを納品した。
500Gが組合のカードに入金された。
ナマズの魔石は温存した。
お金に困ったら売ろうと思う。
テトの宿にナマズの肉を50kg渡した。
偉く感謝されたが、テトを思いっきりもふらせてくれることで、対価とした。
テトが、顔を赤くして、耐えていたのがツボだった。
「くふふ、次の獲物だよ。」
ミロクの言葉に、俺は緊張する。
「次は、バジリスクだよ。」
「はぁ?」
「くふふ、石化しないようにね。」
ブクマが増えないのは心に来ます。
読み続けてくれなくても良いので、ブクマを、評価を