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城塞都市の孤児院

「「「「「ご馳走様!」」」」」孤児たちは食事に満足したようだ。

「はい、お粗末様。」俺はにっこりと答える。


 みんなが使っていた机やいす、竈や調理台を消して皆に言う。



「コホン、では風呂の使い方を説明しますね。」俺はコバルトさんたちを先導して風呂に行く。


「孤児の一人、うん、お前で良いや、来い。」俺は男の孤児のうち、比較的小さい男の子を呼んだ。

「な~に?」その子が俺のもとに来る。


 比較的小さい子を選んだのは、まだ羞恥心が薄いと思ったからだ。


「コバルト先生と、他の先生に風呂の使い方を教えるから協力してくれ。」俺はその孤児に言う。

「うん、良いよ。」その孤児が答える。


「コバルトさん、この子の着替えを用意してください。」俺はコバルトさんに言う。

「解りました。」コバルトさんは着替えを取りに行った。


「さて、ここで靴を脱いで脱衣所に入るんだ。」俺は玄関で皆に説明する。

「「「「「は~い。」」」」」孤児たちが返事をする。


「こっちは男湯だけど、今回だけは説明のために女の子も入って良し。」俺は言う。

「「「「「は~い。」」」」」


「着替えを用意しました。」コバルトさんが息を切らせて入ってくる。


「ここが脱衣所です、来ていた服を脱いで、この籠に入れてください。」俺は男の子の服を脱がせて籠に入れる。


「で、服を脱いだら洗い場に入り、全身をきれいに洗います。」俺は石鹸を両手で泡立たせて男の子を洗っていく。


「髪の毛もきちんと洗います。」俺はそのまま頭も洗っていく。


「洗い終わったら、シャワーや桶に汲んだお湯で洗い流して、浴槽に肩まで浸かり、100数えたら身体を良く拭いて、新しい服に着替えて終わりです。」俺はそう言いながら男の子を着替えさせた。


「後は、自由に使って下さい。」俺はそう言って風呂を出た。



「ムサシ様、なんとお礼を言ったらよいか。」コバルトが感極まって言う。

「神の身代わりの義務です。」俺はそう答える。


「くふふ、そんな義務はないよ。」


「五月蠅いな、このまま国王アルゴンに会いに行くぞ。」俺はそう言って王城に向かった。


国王アルゴンに面会したい。」俺は門番に言う。

「はい、承りました、一緒に来てください。」門番の一人が門に入っていくので後に続いた。


 そして、正門の所に行くと執事が待っていたので、門番は執事に俺の案内を引き継いだ。

「こちらで御座います、ムサシ様。」執事が俺を案内する。


「国王様、ムサシ様を御案内致しました。」執事が言う。


「通せ。」国王が言う。

「あぁ、邪魔するぞ。」俺は其処に入る。


「おぉ、ムサシ様、今回はどのようなご用件で?」国王アルゴンが俺に聞いて来る。


「あぁ、事後で悪いが、王立の孤児院に風呂を寄進した。」俺は答える。

「はぁ?」国王アルゴンが固まる。


「どうした?」俺が聞く。

「孤児院に風呂を作ったと聞こえましたが。」

「あぁ、その通りだな。」俺は答える。


「ムサシ様、風呂なる物はそう簡単には。」国王アルゴンが言うが。


「あぁ、ムサシ様は旅の途中でもお風呂を用意してくださいました。」カリナ様がうっとりとして言う。


「なぁ?」国王アルゴンが呆ける。

「私だけでなく、同行した商人たちにもお風呂を提供していました。」カリナ様は嬉しそうに言う。


「あぁ、そうだったな。」俺は言う。

「何と?」国王アルゴンがフリーズする。


「大したことじゃないな。」俺は言う。


「ふふふ、ムサシ様は本当に規格外ですから。」カリナ様がコロコロと笑う。

「わはは。流石は我が盟友と言う事か。」国王アルゴンが良い顔で言う。


「ではな、報告したから帰るぞ。」俺はそう言って踵を返す。

「あれ? 今回は食事は無いのですか?」国王アルゴンが俺に聞いて来る。


「悪いな、今は打ち止めだ。」俺はそう言って王城を出ていく。


「あれ~。」

「そんなぁ。」国王アルゴンとカリナ姫が残念そうに言う。


「そう言われても無い物は無いんだ。」俺は王城を出た。



「ふむ、こっちだけだと不公平か?」俺はそう思う。

「くふふ、何が?」ミロクが聞いて来る。


「風呂だ。」俺はそう言うと、城塞都市の孤児院に行った。


********


「あっ、ムサシ様だ!」孤児の一人が俺を見つけて叫び、孤児たちが集まってきた。

「まぁまぁ、これはムサシ様、この度はどのような御用で?」シスターマリーが声を掛けてきた。


「あぁ、寄進に来た。」俺は答える。

「まぁ、いつもありがとうございます。」シスターマリーがお辞儀をしてくる。


「それでは。」シスターマリーが手を出して来る。

「いや、乗らないと思うぞ。」俺は答える。


「え?」シスターマリーが困惑する。


「風呂を寄進に来た。」俺は言う。


「はぁ?」シスターマリーが残念な顔で俺を見るが無視だ。


 俺は建屋の横のスペースを見る。

「ふむ、ここは普段使っていなさそうな土地だな。」俺はその土地を検分する。


「シスターマリー、ここに作っても良いですか?」俺は呆けているシスターマリーに聞く。

「はぁ、そこは普段使っていないので良いですけど。」シスターマリーが疲れたように言う。


「おあつらえ向きに、裏は下水か、丁度いいな。」

「くふふ、楽しそうだね。」


「ミロク、水源はあるか?」

「くふふ、この下を25m程掘ればあるよ。」

「おぉ、やったな。」俺は魔法で穴を掘り始める。

 王都の孤児院と同じように、穴の周りは補強をした。

 25m程掘り進めると、ミロクの言う通りに水が湧き出した。


「よ~し。」俺はガッツポーズを取りながら、風呂を作っていく。


 水源から水を供給出来るように風呂を作っていき、途中に水をお湯に変える魔道具を設置して、男湯と女湯にそれぞれ供給する。

「冷たい水はそのまま供給できるようにして。」俺は配管を魔法で設置していく。


「ムサシ様凄い。」

「魔法って凄いな。」

「私も使えないかな、魔法。」見ている孤児たちが口々に言う。


 いつも通りに風呂桶、洗い場、脱衣所を地魔法で作っていく。

「一回やった作業だから、簡単だな。」俺は魔法を使い続け風呂を完成させた。

 当然シャワー完備、風呂桶も、脱衣籠も地魔法で作成した。

 勿論明かりの魔道具も王都の孤児院の風呂と同じものを設置している。


「よ~し、完成だ。」俺はそう言いながら男湯の湯船にお湯を溜め始める。

「お湯の温度もバッチリだな。」俺はお湯に手を入れて言う。


「ほほほ、お風呂が一瞬で出来ました、まさしく神の御業です。」シスターマリーが膝をついて祈っている。


「皆に使い方を説明するから、誰か、うんお前、協力してくれ。」俺は前回と同じ理由で一番小さい子を指名した。

「うん、良いよ。」その子は俺に応えてくれた。


「じゃぁ、着替えとタオルを持ってこい。」俺はその子に言う。

「タオルは皆と共同だよ。」その子が言う。

「マジか?」俺は聞く。

「うん。」


「タオルは何枚あるんだ?」

「え~っと。」その子が考える。

「10枚です、ムサシ様。」別の少し年長の孤児が答える。


「ちょっと待っていてくれ。」俺はそう言って孤児院から町の雑貨屋に走った。


「いらっしゃいませ。」店員が俺に言う。

「タオルは有るか?」俺は店員に聞く。

「はい有ります。」

「石鹸は?」

「そちらもございます。」


「タオルは何枚ある?」

「50枚ほどは有りますが。」

「全部でいくらだ、いや石鹸は幾つある?」

「石鹸は100個ほど。」


「じゃぁ、タオル全部と、石鹸10個で幾らだ?」俺は店員に聞く。

「全部で6Gになります。」店員が言う。

「これで決済してくれ。」俺は組合のカードを店員に渡す。

「承りました。」店員はカードを端末に差して操作する。


「決済終わりました。」店員が俺にカードを返してきたので、俺は買ったものをミロクに持ってもらった。


 そして、孤児院に走って戻ってきた。


「待たせたな、これは寄進する。」俺はタオルをそこに出した。

「わぁ。」孤児たちが嬉しそうにしている。


「ムサシ様、ありがとうございます。」シスターマリーが俺にお辞儀する。


「あと、石鹸も10個寄進するからな。」俺は其れを取り出して言う。

「ありがとうございます。」シスターマリーが更に深々とお辞儀する。


「さっきの奴、用意できたか?」俺はさっき選んだ孤児に言う。

「うん。」


「良し、では全員に風呂の使い方を教えるから、着いて来い。」俺はそう言って孤児たちを風呂場に案内する。


「脱衣所で今まで着ていた服を脱いでこの籠に入れる。」俺は孤児の服を脱がせて実行する。


「んで、洗い場で身体を洗う。」俺は石鹸を両手で泡立ててその孤児を頭から洗う。


「洗い終わったら、シャワーか蛇口から出たお湯を溜めたもので洗い流す。」俺は王都の孤児院と同じように説明する。


「洗い終わったら、湯船につかって100数えたらタオルで身体を拭いて、新しい着替えに着替えて終わりだ。」


「質問あるか?」俺は孤児たちに聞く。

「お湯はいつまでも出るの?」

「あぁ、水源が枯れるまでは出るぞ。」


「掃除は?」

「おぉ、よく気が付いたな、このバブルをひねれば湯船にお湯が供給されなくなるから、この蓋を外してお湯が無くなったらタワシで擦れ。」

「わかったぁ。」孤児が元気よく答える。


「ムサシ様、これは私たちも使っていいのでしょうか?」シスターマリーが俺に聞いて来る。


「まったく問題ありません、と言うか、一緒に入って孤児たちを洗ってあげれば良いじゃないですか。」俺は答える。


「おぉ、そうでした。」シスターマリ―が何かを悟る。


「さて、夕食の時間になりましたね。」俺は言う。

「そうですね。」シスターマリーが答える。


「今日の夕食は何ですか?」俺は聞く。

「ランナー鳥の肉料理にしようかと。」シスターマリーが答える。


「おぉ、それでは俺が作っても良いですか?」俺は聞く。

「えぇ、別に構いませんけど。」シスターマリーが答える。


「解りました。」俺はにやりと笑う。


 そして、王都の孤児院で行われたランナー鳥の唐揚げ祭りと同じ事が開催された。

 勿論、シスターマリーとシスタークロエには金鶏の唐揚げだ。


 勿論、冷えたラガーも提供した。


「鬼なのですか?」シスターマリーが俺に言うので、「いえ、神の身代わりです。」と素で答えておいた。


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