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味噌煮

「網で焼いても似たようなもんだから、自分たちで工夫してくれ。」

「あいよ。」


「さて、フライか。」俺は海老を見る。

「良い型だな。」俺はそう言いながら海老を氷水に放り込む。


「さて、まず胡瓜を細かく切って、酒と酢を混ぜたものに漬け込む。」俺は其れを実行する。

「それは何をするんだい?」人魚が聞いて来る。

「見てのお楽しみだ。」俺はそう言いながら玉ねぎをみじん切りにして水にさらす。


「そして、鍋に湯を沸かして、卵の丸い方に包丁の角で穴をあけて湯に入れる。」俺は数個の卵を言ったとおりに鍋にぶち込んだ。


「さて、背ワタを取るのは塩焼きと同じだ。違うのは、塩焼きは殻の間から取ったが、フライの場合は殻を剥いてから取る事だな。」俺はエビの殻を剥き、背ワタを取る。

「勿論尻尾の先っちょは切って包丁でしごいて尻尾の中の水を出す。」

「何で?」


「あぁ、尻尾に水があると油で揚げたときに刎ねるんだ。」

「へぇ。」

「まぁ、色々失敗してくれ。」俺は笑いながら言う。

「失敗前提かよ!」人魚が言うが、「絶対やると思う、その心づもりをしてくれ。」俺は言う。

「ぬぅ~。」


「よし、海老の殻を剥いて背ワタを取ったら、いよいよフライを揚げるぞ。」俺は宣言する。

「あいよ。」人魚たちが楽しそうだ。


「因みに、頭を取っても良いぞ。」俺は言う。


「最初に、腹の方に包丁で数か所切れ目を入れる、」俺は其れを実行する。

「なんで?」

「海老を真っ直ぐ揚げる為だ。」

「へぇ?」

「味に違いはないが、見栄えが良いからな。」

「成程。」


「切れ目を入れたら、小麦粉をまぶし、溶き卵を潜らしてパン粉を付ける。」俺は其れを実行する。


「余分なパン粉を落としたら準備完了だ。」俺は数匹分の海老を処理して、バットに並べていく。


「で、剥いた殻だが、フライパンで炒ってスープを取ることもできるが、面倒くさかったらその脇にあるスライムの入った枠に頬り込めばスライムが処理してくれる。」俺はそう説明する。


「成程。」と納得する人魚と、

「旦那、海老の殻のスープも教えてくれ。」と向学心にあふれた人魚がいることが分かった。


「さて、揚げるぞ。」俺はそう言って揚げ鍋を準備する。

「油はたっぷり、温度は170度。」

「170度って?」人魚が聞いて来る。


「衣を油に入れて、途中まで沈んで浮かび上がってくればオッケーだ。」俺は見本を見せる。

「成程。」


「さぁ、揚げていくぞ。」俺は処理した海老を揚げていく。

「じゅわわわ!」

「わははは、良い具合だ。」


「おっと、卵も茹で上がったか。」俺は卵を茹でていた鍋ごと流水にさらして熱を取る。


「さぁ、どんどん揚げていくぞ。」俺はエビフライを揚げていく。

「おぉ、美味そうな匂いが。」


「何だい、やっぱり料理を作っているじゃないか。」魚担当の人魚がやってきて言う。

「どうしたんだい?」


「さっき、鯖と鰯をいっぱい買っていったから、どんな料理をするのか気になったんだよ。」

「いや、ここでは海老だよ。」

「そうなのかい?」


「さぁ、揚がったぞ。」俺はそう言いながらタルタルソースに取り掛かる。


「さっき酢水に漬けた胡瓜のみじん切りと水に漬けた玉ねぎをざるに開けて、水気を切ってからボールに入れる。」俺は其れを実行する。


「さらに、茹でた卵の殻を剥いてそこに入れる。」俺は茹で卵をボールに入れる。

「そして、手でぐにぐにと潰してマヨネーズと塩コショウで味を調える。」


「タルタルソースの完成だ。」

「お~。」


「揚げたエビにタルタルソースを乗っけて、ほれ。」俺は其れをミロクの口元に持っていく。

「ぱくり!」ミロクがそれを口に入れうっとりとする。

「おいひい!」

「良かったな、ソースで食べても美味いぞ。」俺は人魚たちに言う。


「食べても良いの?」

「あぁ、どうぞ。」

「わっ!」数人の人魚がエビフライに殺到した。

「押すな、まだエビは有るから自分たちでやってみろ。」俺が言う。


「よ~し。」

「やるよ!」数人の人魚が海老を処理し始める。


「ふぅ。」俺は一息つく。

「で、お兄さん。」魚担当の人魚が俺の手を持って言う。

「鯖と鰯はどう食べるの?」


「あ~、鯖は開いて塩焼きか、鯖の味噌煮も良いな。」

「塩焼き? 味噌煮?」人魚が反応する。


「鰯は叩いてつみれにしてつみれ汁か、醤油で煮込んで骨ごとバリバリと食べる。」

「つみれ汁?」


「教えろって顔だな。」

「にししし、魚は用意するからさ。」そう言いながらその人魚たちが海に消える。


「なぁ、アサリは有るか?」俺は其処にいた人魚に聞く。

「あるよ。」人魚が答える。


「くれ、幾らだ?」

「あげるよ、色々教えてくれたお礼だよ。」人魚がそれを俺に差し出す。

「おぉ、悪いな、砂抜きするから海水を入れたタッパーに入れてくれ。」俺はタッパーを出す。

「あれ? 教えてくれたから、砂抜きは済んでいるよ。」その人魚が言う。

「おぉ、そうなのか?」俺はそのアサリを受け取ってこすり合わせて洗う。


「その掃除も済んでるよ。」人魚が言う。

「マジか、凄いな。」

「にしし、あたしらもやる時はやるんだよ。」人魚がガッツポーズをとって言う。


「あぁ、それじゃあ、これは味噌汁にするか。」俺はアサリの味噌汁を作り始める。


「水を張った鍋に昆布を一切れ入れる。」俺は其れを実行する。

「ちょっと待って、メモする。」人魚がそう言いながらノートを広げてメモをする。


「アサリから良い出汁が出るから、昆布の出汁だけで作る。」俺はそう言いながら鍋を竈にのせて火にかける。


「へぇ。」人魚がメモを取る。

「ここに洗ったアサリを入れる。」

「成程。」

 暫くすると、鍋が泡立ち始め、アサリが口を開き始める。


「煮立つ前に、昆布は取り出すんだ。」俺は鍋から昆布を取り出す。


「何でだい?」人魚が聞いて来る。

「煮出すと、昆布からえぐみが出るんだ。」俺は言う。

「へぇ?」


「アサリの口が開いたら、火を止めて味噌を解き入れる。」俺は味噌をゆっくりと溶かしながら言う。

「ははは、食べたことはないけど、美味しそうだね。」人魚が言う。


「んじゃ、食べてみろ。」俺は鍋からアサリの味噌汁をお椀にお玉ですくって人魚に渡す。

「へ?」人魚が呆ける。

「もし、お客に提供するなら、その味を知らないと駄目だろう?」俺は言う。


「そう言うものかい?」人魚が問いかける。

「常識だ。」俺は答える。


「んじゃ。」その人魚が味噌汁を口にする。

「ふわぁ、出汁が効いて美味い!」人魚が驚愕する。


「そうだろう、そうだろう。」俺は満悦する。


「鯖と鰯持ってきたよ。」人魚たちが帰ってきた。


「よ~し、んじゃ、鯖の塩焼きと、鯖の味噌煮を伝授するぞ。」俺は腕まくりをしながら言う。


「「「あいよ。」」」人魚たちが答える。


「まず、鯖は2枚におろして、頭と内臓を取り塩を振って30分置いておく。」

「ふむふむ。」


「その間に味噌煮の用意だ。」

「とりあえず2匹分を作るから、分量は覚えてくれ。」

「あいよ。」

「さっきと同じように、頭と内臓を取ったら2枚におろして、腹骨も取る。」

「何で?」

「食べにくいからだ。」

「ふ~ん。」


「皮目に切り込みを入れて、熱湯を振りかけて掃除をする。」

「何で?」

「臭み取りのためだ。」

「へぇ。」


「で、鍋に生姜を数枚入れて、皮を上にして鯖を並べる。」

「ふむふむ。」


「そこに酒100cc、水300cc、砂糖大匙4を入れて火にかける。」

「ふ~ん。」


「ぐつぐつ言って来たら、灰汁を取って一度火を止めて、味噌大匙5を煮汁によく溶かす。」

「ふ~ん。」


「そして、もう一度火にかけて落し蓋をする。」

「うん。」


「弱火で15分煮込む、焦がさないようにな。」


「さて、塩焼きの鯖が良い具合になったから、酒に4~5分漬けて、網で焼いていく。」

「じゅわ~。」鯖の脂が竈に堕ちて煙を上げる。

「この煙が良い風味になるんだ。」俺はニンマリする。


「そうなの?」

「さて、良い色に焼けたら完成だ。」俺はお盆を取り出し、ご飯、アサリの味噌汁、鯖の塩焼き、塩焼きの横に大根おろしを乗せ、おしんこの小皿を置く。


「鯖の塩焼き定食、80B!」俺が宣言する。

「「「お~。」」」


「因みに、塩焼きは半身だ。」

「なんで?」

「一匹だと多いと思うぞ。」

「ふ~ん。」


「おっ、味噌煮の方も良い具合になっているな。」俺は味噌煮の火を止める。

「本当は1時間休ませると味が染みるんだが、今回は魔法で1時間進ませて。」俺はクイックの魔法をかける。


「そして皿に盛り付けて~。」俺は半身分の鯖の味噌煮を四角い皿にのせ、煮汁をたっぷりかけた。


「さっきの塩焼きをこれと入れ替えて、鯖の味噌煮定食90B!」

「「「お~。」」」


「さ~て、味見だ味見。」俺は鯖の塩焼きを箸でほぐしてミロクの口の前に持っていく。

「ぱくり。」

「ふわぁ。」

「ご飯も一口。」俺はご飯を箸で摘まんでミロクの口の前に持っていく。

「ぱくり。」

「うん美味しい。」

「良かったな。」そう言ってみそ汁のお椀をミロクの口に差し出す。

「ふうふう、ず~。」

「貝の出汁が出てて美味しい。」

「良かったな。」


「さて、味噌煮は?」俺は味噌煮の身も箸でほぐしてミロクの口の前に差し出す。

「ぱくり。」

「味が染みてて美味しいよ。」

「ほれ御飯だ。」俺は箸でご飯をミロクの口元に差し出す。

「あ~、幸せだよ。」


「と言う訳だ、味を確かめてくれ。」俺がそういうと、人魚たちが食べ始める。

「うほ、塩焼き美味い。」

「味噌煮もご飯に合う。」


「味噌は煮立てたら駄目だからな。」

「何で?」

「風味が飛んじゃうんだよ。」


「ねぇ、ねぇ、これも売って良い?」

「さっき値段まで設定しただろう、前と同じ条件で良いぞ。」

「わぁい!」


「あぁ、海老の塩焼きも海老フライもそれぞれ3本で定食にして、どっちも80Bな。」俺が言う。

「タルタルの分海老フライは90Bでも良くない?」一人の人魚が言う。

「あぁ、それは任せるよ。」俺はその人魚に言う。

「解ったぁ。」


「ねぇ、鰯は?」別の人魚が俺に聞く。

「あぁ、鰯は道具を作ってからだから、また今度な。」俺は答える。

「え~。」

「ははは、またな。」俺はそう言って、その足で王城に向かった。


「そして、王城の料理長以下料理人の前で同じ事を行い、アルゴンたちに海老の塩焼き、海老フライ、塩鯖定食と鯖の味噌煮定食を振舞った。


 カリナ様が異様にがっついていたのは見なかった事にしよう。


*********


「ガキーン居るか?」俺はガキーンの店に入って言った。


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