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愚か者の末路

「何事だ?」門番が叫ぶ。


「あぁ、俺はムサシだ、国王の名代で来た。」俺は名乗る。

「国王様の名代? 証拠は?」


「はぁ、周りにいる兵を見れば解るだろうに。」そう言いながら組合のカードを見せる。

「かかか、神の身代わり様? 国王より通達のあった?」


「いかにも俺の事だ。」

「失礼いたしました。」門番が俺に礼をする。

「して、今回はどのような?」門番が聞いて来る。


「グヤトーン男爵が、王立の孤児院に送られるべき金品を中抜きしていた。」俺は門番に言う。

「なんと?」門番が驚く。


「証人がいる、大人しくここを通せ。」俺は門番に言う。

「解りました。」門番は合図をして門を開く。


「よし、突入しろ。」俺は王国兵に命令する。

「はい、解りました、おい行くぞ!」王国兵の上官が部下達に言い、門から雪崩れ込む。


「何事だ!」屋敷に突入すると恰幅の良い男が叫ぶ。

「お前がグヤトーンか?」俺はその男に聞く。


「いかにも儂がグヤトーンだ、貴様は誰だ?」

「俺は、国王の名代、ムサシだ。」


「その国王様の名代が、儂に何用だ?」

「お前を捕縛する。」俺は通告する。


「捕縛? 何の容疑だ?」グヤトーンが惚ける。

「孤児院へ送る金品の横領だ。」


「はぁ、どんな証拠が?」グヤトーンが惚ける。


 俺は王国兵に付けられていた首輪をグヤトーンの前に投げる。

「これが何か?」グヤトーンが言う。


「それを付けられていた男が証言したぞ。」俺が言う。

「私が付けたという証拠は?」グヤトーンが言う。


「はぁ、一人や二人じゃなかったぞ。」俺は溜め息をつきながら言う。

「なぁ、全員を調べたのか?」グヤトーンが言う。


「あぁ、お前の屋敷を取り囲むと同時にな、よくあれだけの王国兵に装着した物だと感心したよ。」

 俺は国王国兵に言って、怪しげな首輪を付けた兵を集めさせた。


「まさか片手で足りない兵がお前の配下だったとは思わなかったよ。」俺は全部の首輪を放り出す。


「すべての兵がお前の名を出したぞ、言い訳は有るか?」俺が聞く。


「くはははは、これほど早くばれるとは思わなかったぞ。」グヤトーンが言う。


「はぁ、ばれないと思う根拠は何だ?」俺が聞く。

「王国の財務はざるだ。」グヤトーンが言う。


「成程。」

「儂はそのすきを突いたのだ。」グヤトーンが言う。


「はぁ、悪事を大胆に言ってもなぁ、お前はアウトだ。」俺はグヤトーンに言う。


「がははは、儂にはピグメン子爵様が付いているからな。」グヤトーンが口にする。

「ほぉ、それがどうした?」俺は聞く。


「儂が捕まっても、直ぐに出してくれるのだ。」グヤトーンが高らかに言う。

「聞いたな、ピグメン子爵の屋敷も包囲しろ。」俺は近くにいた王国兵に言う。

「はっ!」王国兵が走って行く。


「がははは、さてどうする?」グヤトーンが俺に言う。


 俺は一瞬でグヤトーンの前に飛ぶ。

「なぁ?」グヤトーンの顔が引きつる。


「捕縛!」俺は手を抜いた一撃をグヤトーンの腹に叩き込む。

「ぐぼぉ!」グヤトーンがその場で悶絶する。


「捕縛しろ、あぁ、家族も全員な。」俺は王国兵に言う。

「はっ!」王国兵は敬礼し、捕縛を開始する。


「何故童を捕縛するのじゃ?」グヤトーンと同じような年齢の女性が、兵に両脇を掴まれながら叫んでいる。


「奥方、貴女のご主人が国王に謀反をしたのです。」俺は言う。

「童は知らぬ。」


「国王に謀反をすれば、一族郎党連帯責任ですよ。」俺は冷たく言う。

「そんな。」


 その奥方をはじめ、子供4人、妾、妾の子3人が連行された。


 そして俺は、王国兵に屋敷を徹底的に家探しさせた。


「ありました。」

「こちらにもあります。」王国兵が証拠の品を探し当てた。

「真っ黒だったな。」俺は言う。


「さて、次はピグメン子爵か。」俺はグヤトーンの屋敷を出てそこに向かった。


*********


「ムサシ様、ピグメン子爵は本日登城しているそうです。」先触れに出した王国兵が報告してくる。

「良し、王城に戻ろう、お前は先に王城に戻り、ピグメン子爵を足止めしておけ。」

「はっ、承りました!」その王国兵が馬で王城に向かう。


「我々も急ぐぞ。」俺達も王城に向かった。



「そこをどけ!」

「いえ、王城から帰すなと命令を受けています。」門の処で門番の王国兵と貴族の馬車の御者が押し問答をしている。


「いったい誰がその様な命令を出している?」御者が言う。


「俺だ。」俺はその馬車に近づいて組合のカードを見せて言う。


「ピグメン子爵だな、俺と一緒に国王様の所まで行ってもらおう。」俺は馬車の中にいる者に言う。


「何故私が国王の前に行かねばならないのだ?」馬車のドアが開き初老の男が降りてくる。

「国王様がお呼びだ。」俺は答える。


「はて、今まで国王様に面会していたのだが?」ピグメン子爵が言う。

「言い忘れた事が有るらしい。」


「そうですか、それでは戻りましょう。」ピグメン子爵は再び馬車に乗り込むと、城に戻るように御者に言う。


「国王に先触れしてくれ、俺が戻ったと。」近くの王国兵に言う。

「承りました。」その王国兵が走って行く。


「さて、俺達も向かおう、そいつはゆっくり連れてきてくれ。」俺はグヤトーン男爵を捕縛している王国兵たちに言う。

「解りました。」


*********


「おぉ、ムサシ様、其れとピグメン、よく来てくれた。」国王が玉座に座って言う。


 いつもと違い、ここは謁見の間だ。


「国王陛下、言い忘れていたこととは何でしょう?」ピグメン子爵が国王に問う。

「あぁ、その事か、ムサシ様。」アルゴンは俺に目配せする。


「連れてこい。」俺は後ろの王国兵に告げる。

「はっ!」王国兵は俺に敬礼をして、謁見の間のドアを開ける。


 ドアから数名の王国兵が、一人の男を連れてきた。


「ぐ、グヤトーン男爵!」ピグメン子爵が明らかに狼狽え始める。


「ムサシ様、それはグヤトーン男爵ですか?」アルゴンが俺に聞いて来る。

「あぁ、そうだ。」俺はそう言いながらグヤトーンに魔法をかけ気付かさせた。


「ぐぅ、ここは。」まだ意識がはっきり回復しない状態のグヤトーンが俺を見て目を見開く。

「なぁ、貴様は!」と叫んで自分の置かれた状態に気付く。


 後ろ手で縛られ、足も縄でぐるぐる巻きにされている。


「こいつの屋敷に、これがありました。」俺は王国兵に目配せしてそれをその場に出させる。

 孤児院宛ての手紙と、物資の一部だ。


「ほぉ、動かぬ証拠ですな。」アルゴンが俺に言う。

「あぁ、グヤトーン、そこにピグメン子爵がいるぞ、何か言う事は無いのか?」俺はグヤトーンに言う。


「あぁ、ピグメン子爵、助けてください。」グヤトーンがピグメン子爵に言う。

「わ、私は何も知らん。」ピグメン子爵はしらを切る。


「そんな、首輪のお礼に、何度も横取りした金を渡したではありませんか。」グヤトーンが叫ぶ。


「さぁ、何の事やら?」ピグマン子爵はさらに惚ける。


「そんな、ピグメン子爵!」グヤトーンが喚く。


「コンフェシオン!」俺は自白の黒魔法をピグメン子爵にこっそりと掛けた。

「くふふ、酷い魔法を。」

「良い使い方だろ。」

「くふふ。」


「グヤトーンに罪を被せ、私は美味い汁を吸う、完璧な作戦だとは思いませんか国王陛下。」ピグメン子爵がいきなり告白する。


「なっ?」アルゴンが呆ける。


「ここにいるグヤトーンは馬鹿なので、まんまと私の計略に嵌ってくれました。」ピグメン子爵が続ける。

「ピグメン子爵、貴方はそのように私を謀ったのですか?」グヤトーン男爵が呆れて言う。


「ははは、その通りだ、って私は何を言っているのだ?」ピグメン子爵が驚愕する。


「思いっきり自爆したな、ピグメン子爵。」俺は笑いながら言う。


「いや、これは、違う、嘘だ、何かの間違いだ。」ピグメン子爵がその場で狼狽える。


「捕縛しろ。」俺は周りの王国兵に言う。

「は!」王国兵が素早く動きピグメン子爵を捕縛する。


「アルゴン、ピグマン子爵家の家族を捕縛するように命令を出せ。」俺はアルゴンに言う。


「はい、ムサシ様の仰せのままに。」そう言うとアルゴンはお付きの者から紙とペンを受け取り、命令書を書くと、お付きの者に王印を押させる。


「第一親衛隊長!」アルゴンが叫ぶ。

「はは、ここに。」第一親衛隊長と呼ばれた男がアルゴンの前に出て膝をつく。


「聞いたな、ピグマン子爵一家を全員捕縛せよ。」そう言いながら今書いた紙をお付きの者に渡す。

 お付きの者は、それを第一親衛隊長に渡す。


「一個小隊を授ける。」アルゴンが言う。

「承りました!」第一親衛隊長は国王に敬礼をすると、謁見の間から出ていく。


「二人を牢に入れよ、沙汰は追って言い渡す。」アルゴンが王国兵に命令する。


「おら、キリキリ歩け!」王国兵がピグメン子爵を追い立てる。

「違う、私は、違うんだ。」ピグメン子爵はうわ言のように言う。


「こいつも連れて行くぞ。」王国兵がグヤトーン男爵を数名で持ち上げ謁見の間から連れ出す。


「これで、孤児院が潤えばいいな。」俺はぼそりと言う。

「はい、ありがとうございました、ムサシ様。」


「アルゴン、違うだろ。」俺は言う。

「はっ、そうでした、ご苦労だったなムサシ。」

「おぅ。」


「で、あいつらはどうするんだ?」


「貴族爵の剥奪、本人たちは犯罪奴隷にして鉱山送り、家族は全員一般奴隷落ちですかね。」アルゴンが言う。


「処刑はしないんだ?」俺は聞く。


「犯罪奴隷に貴族が堕とされれば、おそらく10日と持たずに死ぬでしょう。」アルゴンが言う。

「何故だ?」


「犯罪奴隷は、鉱山送りです、体力のない貴族ならその程度生きられれば良い方ですな。」アルゴンが言う。

「おぉ、それは怖いな。」


「一般奴隷になった家族の方が悲惨です。」アルゴンが言う。

「それは何故だ?」俺は聞く。


「今まで贅沢をしてきた者が、奴隷に堕ちるのですよ、その屈辱は計り知れません。」アルゴンが言う。

「あぉ。」

「隷属の首輪のせいで、自殺もできず、一生屈辱を感じながら生きるのです。」アルゴンが言う。


「あぁ、それは、嫌だな。」


「今回は本当に、いや、ムサシ、助かった。」アルゴンが言う。

「あぁ、んじゃまたな。」俺はそう言って王城を後にした。


*********


 数日後、俺は王都の孤児院を訪ねた。


 孤児たちは元気に遊んでいる。


「あら、ムサシ様。」コバルトが俺に気付いて声を掛けてくれた。

「コバルトさんもお元気そうで。」


「聞きましたよ、孤児院への中抜きをしていた貴族を懲らしめてくれたとか?」

「ははは、当たり前のことをしただけです。」


「今日はどのような?」コバルトが聞いて来る。

「お昼近いので、串焼きを持ってきました。」俺は答える。


「まぁ、それは孤児たちも喜びます。」

「ここには何人いるのですか?」


「今は36人です。」コバルトが答える。

「解りました。」


「皆さん、今日はこちらにいるムサシ様が串焼きを食べさせてくれるそうですよ。」コバルトが孤児たちに言う。

「「「わ~い。」」」孤児たちが騒ぐ。


「あぁ、俺はムサシだ、宜しくな。」

「「「は~い!」」」


「よ~し、全員手を洗ってこい。」俺は孤児たちに言う。

「「「は~い。」」」孤児たちは手洗い場に走って行く。


 俺はその場に地魔法でテーブルを作り、その上にミロクから貰った串焼きが乗った3皿を置く。


「一人3本な、余ったらじゃんけんだ!」俺は孤児たちに言う。

「コバルトさんたちもどうぞ。」俺はコバルト以下寮母先生たちに言う。


「あら、宜しいの?」コバルトが言う。

「勿論ですよ。」俺はそう言いながらミロクからよく冷えたラガーを貰ってそこに出す。


「こちらもどうぞ。」俺は地魔法でコップを作りながら言う。


「え~、勤務中なのに。」コバルトはそう言いながらコップを手に取る。

「隊長、今回は役得って事で。」

「ラッキーです。」コバルトの部下の寮母たちもコップを手にする。


「ははは、良いじゃないですか、たまには。」俺は彼女たちのコップにラガーを注いでいく。


「「「乾杯!」」」


 王都の孤児院で宴が始まった。

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