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夢見の町へ

「夢見の町までは3日か?」

「くふふ、何もなければそうだね。」


「何でフラグを立てる言い方をするかな?」

「くふふ、挑戦?」


「要らんわそんな挑戦!」

「くふふ、冗談は置いておいて。」

「冗談に聞こえない。」


「お肉も充分にあるから、闘気全開で良いかもね。」

「そうか、じゃぁそうする。」俺は闘気を全開にした。


*********


「流石はムサシ様です、何にも襲われずに旅が終わったのは初めてです。」ハコベがにこやかに言って来る。


 そう、2日半で夢見の町に到着した。


「護衛はこの町までで良かったですか?」俺はハコベに聞く。

「はい、そうです。」ハコベが言って来る。


「では、帰りの護衛は別の者を手配してください。」俺はハコベに言う。

「おや?」


「少しやる事が出来ました。」

「ほほほ、そうですか、では次の機会がありましたら、その時は宜しくお願い申し上げます。」ハコベは頭を下げて入門に並んだ。


「で、どっちに行けば良いんだ?」

「くふふ、西に半日行った森の中。」


「西だな。」俺は全速力で走り始める。


「誰だ、あれ?」

「なんかすごい速度で走っていくな。」門番たちがざわつく。


「ほほほ、流石はムサシ様です。」ハコベがにこやかに言う。

「あんた、なんか知っているのか?」門番がハコベに聞く。


「ほほほ、神の身代わり様ですよ。」

「あぁ、話には聞いている、何でもマンモスを狩って売り出したとか。」門番が言う。

「あぁ、皮と脳味噌は買わせていただきましたが、肉も売っていたのですか?」ハコベが膝をつく。


「あぁ、10日程で完売したと聞いたが。」門番の男が言う。

「不覚でした、肉までは気が回りませんでした。」ハコベがのたうつ。


「なんでも国王様に献上した、マンモス肉100Kgは国王様が貴族たちに振舞ったそうだ。」

「なぁ、馬鹿なのですか!」と叫んだハコベがハッとする。


「こ、これは不敬罪ですね。」ハコベが震える。

「いや、俺は何も聞いていないぞ、俺もそう思うからな。」門番が言う。

「ほほほ、お気遣い痛み入ります。」そう言いながらハコベは金貨の入った革袋をこっそりと門番に渡した。


「通って良いぞ。」門番は何事もなかったようにハコベの隊商を通した。


「ほほほ、ありがとうございます。」ハコベは門番に礼をしながら門を潜った。


*********


「半日と言ったが、三刻程でそれらしき森に着いたんだが。」俺はその森を前にして言う。

「くふふ、ムサシの能力を見誤ったよ。」


「ここにいるのか?」

「くふふ、いるね。」


「話は通じるやつか?」

「くふふ、どうだろうね?」


「はぁ、そうか。」俺は溜め息を吐きながら森に踏み込んだ。


*********


「その場で止まれ。」声が聞こえた。


「それは、俺に言っているのか?」俺は答える。

「お前以外に誰がいる?」その声が言う。


俺はミロクを見るが、やれやれって顔で両手を上げる。


「何をしに来た?」その声が言う。


「俺が仕えるミロク神の神気を取り戻しに来た。」


「ほぉ、それはつまり、私に仇名すと言う事だな?」その声が言う。

「何でそうなる? 神気を返してくれれば俺は何もしないぞ。」


「神気を返すには、一度その相手に同化して、そのあと融合を解くと言う事だ。」

「ほぉ。」


「私が融合した隙に、私を乗っ取るつもりだろう?」その声が言う。

「興味ない。」俺が言う。


「なっ、興味がないだと?」


「俺はミロクの神気を取り戻せればそれで良い。」


「なぁ、本当に興味がないのか?」


「あぁ。」


「面白い。」その存在が姿を現す。


「ん?」俺は目を見張る。

 そこには、老人の姿をした精霊がいた。

「何だ、お前?」俺は言う。


「なんじゃお前。儂を知らずに儂に話しかけたのか?」

「話し方まで変わってるじゃねーか!」


「これが本来の儂の姿じゃ、して、本当に神気以外はいらぬのか?」


「あぁ、俺はミロクの神気を集めること以外に興味はない。」


「では返すとしよう、おぬしに融合すればいいのか?」

「いや、横にいる女性に融合してくれ。」


「横?」老精霊が目を細める。


「おぉ、確かに何かがいる。」

「くふふ、何かとは酷いな。」ミロクが老精霊に触れながら言う。


「なっ、声が聞こえる!」老精霊は慌てた。


「くふふ、融合しなくても取り戻せたね。」ミロクが嬉しそうに言う。


「そうか、んじゃ帰るか。」

「くふふ、そうだね。」


「いや、いや、待つのじゃ。」老精霊が声をかけてきた。


「何だよ?」俺は振り返って言う。


「本当にこれで終わりか?」

「最初からそう言っているだろう。」


「なんと。」


「じゃぁな!」俺はそう言って走り始めた。


 後には、拍子抜けした老精霊が残された。


*********


「なんかポカーンとしてたな。」走りながらミロクに声をかける。

「くふふ、何年生きている精霊か知らないけど、こんな対応をされたのは初めてだったんじゃない?」


「しらないよ、俺は本当の事しか言っていない。」

「くふふ、くふふ、もう!」ミロクがくねくねする。


「走っている横でくねくねすんな!」

「くふふ。」


 行きと同じ三刻で夢見の町に着いた。


 入門を待っていると、30分で順番になった。


「身分を証明する物を。」門番が言って来る。

 俺は、組合のカードを見せた。


「あぁ、先ほどどこかに走って行った方ですか、どうぞお通り下さい。」カードを見た門番が言う。

「ありがとう。」俺は門を潜った。


「さて、前回は男の子が声をかけてきたが・・。」

「あら、お兄さん、宿を探しているのぉ?」周りをきょろきょろしていたら声を掛けられた。


「ん? 人間じゃないな。」俺はその姿を見て言う。


 歳の頃なら20代前半、肩にかかる紫の髪、胸が強調された服を着て腰から尻尾が生えている。

 顔を見ればいかにもな顔をしている。

 うるんだ瞳、良い匂いがする息、少し厚い唇、普通の男ならむしゃぶりつくんだろう。


だが俺は耐えれた。


「あら、サキュバスは初めてぇ?」極上の笑顔でその女(?)が答える。

「あぁそうか、この町はサキュバスが治めているんだったな。」俺は以前聞いたハコベの言葉を思い出した。


「あら、知っているなら良かったぁ、私の宿に泊まらないぃ?」


「一泊2食でいくらだ?」俺は聞く。


「そうねぇ、催淫込みで900Gでどお?」

「催淫?」


「そう、催淫。 好きな夢を見せてあげるよぉ。」


「ふむ、面白そうだ、決めたよ。」

「あらありがとう、其れじゃご案内するわねぇ。」そう言いながらその女(?)が歩き出す。

 俺は後に続いた。


「そう言えば、名乗っていなかったわねぇ、私はサキュバスの『アーネ』、宜しくねぇ。」

「あぁ、俺は『ムサシ』だ。」


「ふふふ、良い男は好きよぉ。」そう言いながら宿に案内された。


*********


「着いたわぁ、ここよぉ。」その宿の前でアーネが言う。


 俺はその建物を見た。

 派手な電飾、ピンク色にライトアップされた壁、入り口に垂れ下がるカーテン。


「ラブホテルじゃねーか!」俺は姉御に聞いた建物を思い出して言う。

「ラブホテルぅ?」アーネが何それって顔をする。


「あぁ、何でもない、ここがそうなのか?」俺は気を取り直して言う。

「そうよぉ、さぁこっちよぉ。」アーネが俺の手を引いて中に入る。


 アーネはドアを入ると、そのままカウンターの後ろに回って、俺に宿帳を出して来る。


「あんまり意味はないと思うけどぉ、一応決まりだからぁ、記入して。」ウインクしながらアーネが言う。


「気が合うな、俺も意味がないと思ってる。」そう言いながら宿帳を書く。


 名前:ムサシ

 職業:神の身代わり

 住所:城塞都市の戸建て


「ふふふ、ありがとう、これが部屋の鍵よぉ。」アーネがカウンターに鍵を置く。


「部屋は2階よぉ、食事は食堂で6時から8時まで、催淫は催淫室で7時から22時までよぉ。」

「あぁ、解った。」俺は鍵を受け取る。


「お部屋での催淫は、別料金よぉ。」


「それは催淫室で、催淫を受けてから決める。」

「あらぁ、待ってるわぁ。」



「くふふ、普通に対応したね。」部屋に入ったらミロクが言ってきた。

「普通だろ。」


「くふふ、サキュバスはダンジョンで出会ったら討伐対象だよ。」

「ふーん。」

「ふーんって。」

「この町では人権(?)が有るんだろう。」

「それはそうだけど。」

「ならそれで良いだろう。」


「くふふ、君らしいね。」


*********


「晩御飯食べれますよぉ。」

 部屋でうとうとしていたら呼び出された。


「適当な席に座ってください。」サキュバスの女の子に言われたので近くの開いている席に座った。


「はい、沢山食べてくださいね。」サキュバスの女の子が俺の前に料理を配膳する。


 白パン、ポタージュスープっぽい物、腸の肉詰めを焼いたもの、ジャガイモと人参の煮たものにマヨネーズ。


「ふむ、普通に美味いな。」俺はそれを食べる。


「催淫はどうしますか? 今なら8時から受けられますよ。」食事を持ってきた女の子が言う。

「あぁ、じゃぁ、お願いしようかな。」


「はい、ではこの番号札を持って時間が来たら催淫室に来てください。」その女の子がテーブルに番号札を置いたので俺はそれを受け取った。


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