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ハコベの依頼

「ムサシ様、護衛をお願いしてもよろしいですか?」ハコベさんが組合にやってきて言う。

「勿論です。」俺は二つ返事で答える。


「夢見の町まで護衛をお願いします。」ハコベが言う。

「喜んで!」俺はにこやかに返す。

「おぉ、それはそれは。」ハコベさんは嬉しそうに答える。

「出発はいつですか?」俺が聞く。


「明日の朝6時に北の門の前で。」ハコベが言う。

「解った。」俺は答え、準備のために町に繰り出した。


「くふふ、必要なものがあるのかい?」ミロクが聞いて来る。

「あぁ、香辛料が少なくなってきた。」俺は答える。

「ふーん、んじゃ、香辛料の店に行くんだね?」ミロクが聞いて来る。

「あぁ。」俺は答える。


 香辛料は普通に手に入ったので家に帰って寝た。


*********


 翌朝、定時に北の門に行くと、ハコベさんが待っていた。


「ほほほ、今回もよろしくお絵が言いたします。」ハコベさんが俺に頭を下げてくる。

「早速出発しましょう。」俺はそう言いながら馬車の屋根に行く。


「おや、お連れの方は?」ハコベが周りを見回しながら言う。


「・・・、王都で死んだ。」俺はボソッと答える。

「そ、それは、し、失礼いたしました、お悔やみを申し上げます。」ハコベはばつが悪そうに言う。

「終わったことだ。」俺はぶっきらぼうに答えた。


 出発して2日後、あの場所に着いた。


「ほほほ、灰色鼠では儲けさせて頂きました。」ハコベがホクホク顔で言う。

「良かったですね。」


「ほほほ、もう一回出ないかと少し期待しています。」


「思いっきりフラグじゃねーか!」俺が叫ぶ。


「灰色鼠が襲撃してきた!」御者が叫ぶ。

「マジで?」俺は疑問に思う。

 

「ほほほ、偶然があるものですね。」


「はぁ。」俺は溜め息をついて馬車を飛び降りる。



「数は、200匹ぐらいか。」俺は前と同じように、地魔法で灰色鼠の進路を変えるために、土の壁を作る。


「進む先には、深い穴。」俺は地魔法で、直径5m、深さ30m位の穴を作った。


「ははは、面白いように落ちていくな。」

「で、穴に熱湯を入れる!」

「くふふ、酷いことを。」

「む、ムサシ様、その灰色鼠をお譲りいただけますよね?」ハコベが聞いてくる。


「はぁ? 良いですよ。」

「おぉ、それはありがたい、また儲けられます。」ハコベはホクホク顔で言う。




俺は、穴の中で静かになった灰色鼠それを魔法で持ち上げて、魔法で乾かし、ハコベの前に置いた。


「お前達。」ハコベが指示すると、

「はっ!」部下たちが、皮を剥ぎ始める。


「何度見ても見事なものだな。」俺は感心しながら言う。


「終わりました。」ハコベの部下が言う。

「ほほほ、ご苦労様です。」ハコベがニコニコしながら言う。


 其処には、灰色鼠の皮を剥がれた物が残っていた。

「ミロク。」

「くふふ、解っているよ。」そこに有ったものが塵になる。


「ほほほ、お待たせしました、では、進みましょう。」馬車が進み始める。


程なくして鍛冶の町に着いた。



「がははは、身分を証明せい!」ドワーフの男が言って来る。


「こちらを。」ハコベは商業組合のカードを見せる。

「商人・ハコベ及び従業員6人か、通ってよし。」

「ありがとうございます。」そう言いながら、ハコベ達が門を通過する。


「次は、俺の番か。」そう言いながら、俺は組合のカードを見せる。


「げぇ、『神の身代わり』様ですか? どうぞお通り下さい。」ドワーフが言う。

「あぁ、ミロク。」俺はミロクに合図する。


「くふふ、これだろう。」ミロクはそれを俺に渡す。


「あぁ、お勤めご苦労様。」俺はそう言って、ウイスキーの瓶をドワーフに渡した。

「がははは、流石は『神の身代わり』様だ!」酒を受け取ったドワーフは、その場で蓋を開けてラッパ飲みした。


「ははは、前と同じだな。」俺は笑いながら門を潜った。


「宿は前と同じでよろしいですか?」ハコベが俺に聞いて来る。

「構いませんよ。」俺は答える。


「ほほほ、では宿に行く前に仕事を一つ片づけます。」ハコベはそう言いながら馬車をそこに向かわせる。


「なんだ、ガキーンの店か?」俺はその店を見て言う。


「ほほほ、国王様から頼まれまして。」ハコベがニコニコしながら言う。


「あぁ、そうか。」俺は察して言う。




「ごめん下さいませ。」ハコベが店先で奥に声をかける。


 しかし返事はない。


「ははは、前と同じだな。」俺は苦笑いをする。


 仕方なく俺も声を上げる。

「頼もう!」


「その声はムサシか?」ガキーンが奥から出てきた。

「おう、俺だ。」俺は答える。


「がはは、この間ぶりだなって、他にもいるのか?」ガキーンはハコベを見て言う。


「ほほほ、ガキーン様、お久しゅう。」ハコベはお辞儀をしながら言う。


「何の用だ?」ガキーンはハコベに言う。


「ほほほ、国王様から頼まれまして。」ハコベは書状をガキーンに渡しながら言う。


「例の奴か?」ガキーンは俺を見ながら言う。

「あぁ、そうじゃないか。」俺は答える。


「はぁ、受けてやるよ。」ガキーンは溜め息をつきながら言う。

「本当で御座いますか?」ハコベが目を見開いて言う。


「あぁ、ムサシに頼まれたからな。」ガキーンは俺を見ながら言う。

「ありがとうございます。」ハコベが俺たちに深々と礼をする。


「で?」ガキーンがハコベに言う。


「はい、お預かりしております、これ、お前たち。」ハコベが部下に言うと、部下たちは馬車からそれを持ってきた。


「ワイバーンの皮で御座います。」ハコベが言う。

「おい、書状にはムサシと同じ鎧をと書いてあるが、これだけじゃ足りないぞ。」ガキーンが言う。


「はい、前金として5000Gを用意しております。」ハコベが金貨の入った革袋を取り出す。


「いやいや、ムサシは魔石も用意したぞ。」ガキーンが言う。

「魔石ですか?」ハコベが固まる。


「あぁ、ワイバーンやらオークキングやら、色々渡したぞ。」俺は言う。


「魔石が無いと、付与は出来ねーぞ。」ガキーンが言う。


「俺が渡した魔石は?」俺はガキーンに聞く。

「売っぱらって、素材を買った。」

「そうか。」


「どういたしましょう。」ハコベがおろおろする。


「ガキーン。」俺が聞く。

「何だ?」


「魔石は、ダンジョン産でもいいのか?」

「別に問題ない。」ガキーンが言う。


「ハコベさん、俺がダンジョン産の魔石を提供しますから、それを国王アルゴンに請求すれば良いのでは?」


「おぉ、ムサシ様、お申し出を感謝します。」ハコベが俺に土下座しそうになるので止めた。


「で、ガキーン。」

「何だ?」

「箱とかないか?」


「ん? これで良いか?」ガキーンが30cm四方の木箱を俺の前に置く。

「ミロク。」

「くふふ、また出番がないかと思ったよ。」そう言いながらその箱にダンジョン産の魔石を入れていく。


「なんと!」ハコベが驚愕する。

「おいおい、幾つ有るんだ?」ガキーンも固まる。


「おっとナーガの魔石は駄目だ。」俺はそれを取る。


「なんだよ、それが有ればムサシの鎧より良い物が出来るんだがな。」ガキーンが言う。

「尚更駄目だ。」俺はそれをミロクに渡す。


「くふふ、何で?」ミロクが聞いて来る。

「なんか悔しい。」


「くふふ、くふふ、もう。」ミロクが俺の頭を抱いて来る。

「何だよ?」

「くふふ、可愛い。」


「だぁ! で、どうだ?」俺はミロクを振りほどきながらガキーンに聞く。

「マスタークラスの魔石を12個だな。」ガキーンが言う。


「おぉ、お幾らほどに成りますか?」ハコベが聞いて来る。

「マスタークラスだぞ、1個2000Gは下らない。」ガキーンが言う。


「なんと、24000Gですか?」ハコベが再び驚愕する。


「ムサシ、お前ダンジョンを踏破したな。」ガキーンが言う。

「あぁ、この間な。」俺は答える。


「パーティーでか?」ガキーンが言う。

「一応?」俺は答える。


「なんだ、その疑問形?」ガキーンが言う。

「俺以外は、ポーターが二人だった。」俺が答える。


「それはソロと変わらねぇ」ガキーンが叫ぶ。

「そうなの?」俺は素で答える。


「マジかぁ、ムサシ、お前人外だな。」ガキーンが言う。


「ミロクによく言われる。」俺は答える。


「ははは、で、どうするハコベさん?」ガキーンがハコベに聞く。

「国王様に任されたので、当然お受けします。」ハコベが言う。


「任された。」ガキーンが請け負った。


「ハコベさん。」俺はハコベに聞く。

「何でしょう?」ハコベが俺に言う。


「今の話だと、俺の鎧は10000Gでは買えないような?」俺が言う。


「はい、見誤りました、ムサシ様の鎧は100000G以上の価値があります。」ハコベが言う。

「マジかぁ、脱いで置いておけないじゃん。」俺が言う。


「あぁ? ムサシ以外には装着できないぞ。」ガキーンが言う。

「マジで?」俺が聞く。


「最初に装着した者の魔力を登録するから、他の奴は装着不可能だ。」ガキーンが言う。

「そうなのか?」


「あぁ、子供に相続するなら、多分魔力が同じだから相続できると思うぞ。」ガキーンが言う。

「へぇ。」


「ほほほ、王族にも子孫に相続する鎧が出来ると言う事ですね。」ハコベが言う。

「あぁ、そうだな。」ガキーンが言う。


「ハハハ、良かったなハコベさん、国王アルゴンの依頼を完遂できそうで。」俺が言う。


「先ほどから気になっていたのですが、国王様をファーストネームで呼び捨てとは如何なものかと?」ハコベが俺に言う。


「いや、国王アルゴンがそう呼ばないと拗ねるんだ。」俺は答える。


「何と!」ハコベが驚愕する。(何度目だ?)


「今後、貴族の前でもそう呼ぶと思う。」俺が言う。


「ほほほ、ムサシ様と懇意にさせていただいて幸福です。」ハコベが首を垂れる。


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