納品
「まだあるのか?」
「くふふ、驚け!」ミロクが俺の口を使って言う。
「なんと?」
「くふふ、くふふ。」ミロクが嬉しそうだ。
俺は、レッサードラゴンの角2本を取り出す。
「これは、レッサードラゴンの角か?」
「あぁ。」
「ななな、此処数十年納品がなかったものだ。」
「あっそう。」
「これは、2本で200Gだ。」
「はぁ?」
「な、なんだ?」
「数十年納品がなかった物が1本100G?」
「あぁ。」
「これは、持って帰る。」
「いや、待ってくれ。」、
「あぁ?」
「この角は、武器はもちろん、薬の材料にもなる、オークションにかければ数百Gになる物だろう。」
「くぅ、その通りだ。」
「だから?」
「一本100Gで。」
「はぁ、」俺はため息をつく。
「駄目か?」オーマケが言う。
「あぁ、1本数百Gの物を1本100Gと言う組合だ。」
「うぅ。」
「今後納品しない。」
「いや、悪かった。」
オーマケが土下座する。
「お前馬鹿だな。」俺はレッサードラゴンの角をミロクに渡す。
レッサードラゴンの角がそこから消える。
「最初から適正価格を言っていたら良かったのにな。」
「待ってください。」奥の部屋からエルフの女性が現れる。
「はぁ?」
「その素材は、オークションにかけて、適正な価格で売り、その対価を貴方に支払います。」
「あんたは?」
「失礼いたしました、私はこの組合を預かる、副組合長のリーンと申します。」その存在が奇麗にお辞儀をする。
「はぁ、宜しく。」
「貴方の納品に対する、組合の回答です。」
「ほぉ?」
「レッサードラゴンの角2本はオークションの価格です。」
「あぁ、適正だな。」
「さらに、オーマケを処分します。」
オーマケの行った買取が全組合とギルドに報告されるらしい。
「オーマケ、貴方は全組合とギルドから追放されました。」副組合長リーンの通告が発表される。
「なぁ!」
「自業自得だな。」俺は笑う。
オーマケはすごすごと、自分の荷物を持って組合から出て言った。
「私が、新たな買取を査定いたします。」
「あぁ、宜しく。」
「次はこれだ。」
俺は、鱗の付いたレッサードラゴンの皮を取り出す。
「ななな、レッサードラゴンの皮、しかも鱗付?」
「ははは、珍しいだろう。」
「こんなものは見たことがない。」
「ふ~ん。」
「何頭分あるんですか?」
「いや、1頭分だけだ。」
「これもオークションにかけます。」
「ふ~ん。」
「え~っと、爪と牙は?」
「ほい。」俺はそこに取り出す。
「なぁ、冷凍!」そこにあった物が凍る。
「凍らせないと劣化しますから。」
「へぇ~。」
「これは其々200Gで引き取ります。」
「おっけー。」
「これで終わりですか?」
「いや、骨がある。」
「おぉ。」
「腕と足の骨、8本だ。」
「まさか。」
「出すぞ。」俺はミロクが持っていたレッサードラゴンの骨を取り出す。
「なぁ、これは。」
「?」
「初めて見ましたが、上質だという事は解ります、これもオークションですね。」
「後は、レッサードラゴンの魔石だけだ。」
「それは2000G、いえ、これもオークションですね。」
「其れで良いよ。」ミロクが言う。
はっきり言って、相場が解らない。
でもミロクがその辺は管理してくれているんだろう、多分。
「今回の買い取りは、1903Gです。」
「おぉ、凄いな。」
「他人事みたいに言わないでください、貴方の物です。」
「あぁ。」
「金額が多すぎるので、組合のカードに振り込ませてもらいました。」そう言いながらリーンがカードを俺に渡してくる。
「どこの町でも、このカードでの決済が可能です。」
「へぇ?」
「決済が可能な屋台もあるから、支払いは確認して下さい。」
「ありがとう。」そう言いながら、組合を後にする。
「あたしが持っていてやるよ。」ミロクが言う。
「あぁ、頼む。」
「くふふ、任せて。」
組合を出た俺は、屋台に向かって歩く。
「今日は1日休んで、明日は隣の村に行くよ。」
「あぁ。」
「その村の直ぐ近くに一頭、ちょっと離れたところに二頭いるから。」
「三か所だな。」
「うん。」
「解った。」
「とりあえず、美味しいものでも食べれば?」
「そうする。」俺はそう言いながら、町の屋台を冷やかして歩いた。
「此処は何の店だい?」
「おぉ、串揚げの店だ。」
「へぇ、お任せで何本か頼むよ。」
「支払いは?」
「あぁ、このカードが使えるならそれで。」
「おぉ、大丈夫だ。」
「ラガーも頼むよ。」
「お任せ串揚げ5本と、ラガーで80Bだ。」
「お待たせ。」俺の前に、串揚げとラガーが置かれる。
「おぉ、美味そうだ。」俺は串揚げをソースに付けて頬張る。
「これは大蒜豚か、美味いなぁ。」
「そして、ラガーが進む。」ごくごくとラガーを煽る。
「ははは、良い飲みっぷりだ。」
「美味いは正義だろう?」
「ははは、その通りだ。」
「ぷっはー、美味かった。」
「おぅ、ありがとうよ。」
「また来るぞ。」
「待ってるぜ。」
「此処は何を食わせてくれるんだ?」
「あぁ、焼き麺だ。」
「焼き麺?」
「あぁ、小麦で作った麺を肉や野菜と一緒に油で炒め、ソースで味付けしたものだ。」
「それを一皿と、ラガーをくれ。」
「あぁ、70Bだが、支払いは?」
「このカードが使えるならそれで。」
「おぉ、大丈夫だ。」
「お待ち。」
俺の前に、焼きそばとラガーが提供される。
「どれ?」俺は麺を口にする。
「くぅ~、ソース味の麺が溜まらん!」
「そして、ラガーに合う!」ラガーを飲んで俺が言う。
「美味かったぞ。」
「あぁ、また来てくれ。」
「さて、此処は何の店だ?」
「お好み焼きだ。」
「お好み焼き?」
「あぁ、小麦粉を水で溶いて、キャベツ多めにエビやイカや豚肉を入れて焼いたものだ、ラガーが進むぞ。」
「おぉ、1人前くれ、ラガーもな、支払いはこのカードで。」
「あいよ、兄ちゃんは初めてか?」
「あぁ、初めてだ。」
「んじゃ、ミックス1枚とラガーで70Bだ、毎度。」
そして、俺の前に置かれるお好み焼きと、ラガー。
「おぉぉ、ソースの香りが溜まらん。」俺はお好み焼きを箸で切り取り、口に入れる。
「くうう、美味いなぁ。」
「そして、ラガーで流し込む。」俺はラガーを煽る。
「で、又一切れ口に入れる。」
「で、ラガー!」
「止まらん!」
「美味かった!」数か所の屋台を冷やかした俺が言う。
「良かったね。」
「明日は、この町を出るんだろう?」
「そのつもり。」
「まぁ、何の思い入れも無いから良いけど。」
「くふふ、いつもの宿に泊まるのかい?」
「その方が面倒がなくていいだろう。」
「くふふ、良いんじゃない?」
俺は、いつもの宿に、朝食と弁当付きの部屋を頼んだ。
「浄化!」
部屋に入った俺を、ミロクが浄化する。
「今日は、このまま寝るわ。」
「くふふ、お休み。」
俺は布団に入り、目を閉じる。
「?」
いつも仕掛けてくる、ミロクの添い寝攻撃が来ない?
(来ないなら来ないで、このまま寝かせてもらおう。)そう思って意識を手放そうとした時。
「くふふ、時間差添い寝~。」ミロクが布団に潜ってきた。
「てい!」いつもの様にミロクの腹にワンパン入れる。
「うぐぅ。」という声を上げ、ミロクが静かになる。
「ふぅ、お休み。」そう言って、俺は意識を手放した。