ダンジョン
「次の獲物の所在が分かったよ。」ミロクが嬉しそうに言う。
「ほぉ、どこだ?」
「くふふ、王都の東にあるダンジョンの最下層に隠れてる。」
「ダンジョンの最下層?」俺は疑問に思う。
「くふふ、うん。」
「それって、ダンジョンマスターか、ダンジョンのボスになっていないか?」俺は真顔でミロクに聞く。
「くふふ、成ってるかもね。」ミロクが目を逸らす。
「ミロク。」
「何かな?」
「それは、俺にダンジョンを攻略しろと言っているのか?」
「くふふ、うん、そうだよ。」
「まじかぁ。」俺は絶望する。
「どうした、ムサシ?」ミロクが聞いて来る。
「ダンジョンの攻略は、Sクラスの組合案件だ、今の俺じゃ、あれ?」俺は気が付く。
「今の俺は、単独でSSクラスの力があるのか?」俺は気付く。
「くふふ、そうだね。」ミロクが答える。
「なら何とかなるか。」俺はダンジョン攻略をこの場で決めた。
*********
「ここが、王都傍のダンジョンか?」俺は独り言を言う。
「がははは、そこのお前、ダンジョンは初めてか?」見知らぬ冒険者が俺に声をかけてくる。
「あぁ、初めてだ。」俺は答える。
「がははは、なら俺たちが一緒に潜ってやるぞ。」その男が言う。
「必要ない。」俺は答える。
「まさか、単独でダンジョンに入るのか?」その男が聞いて来るが、無視した。
「答える義務がない。」俺はそう言いながらダンジョンの入り口に有る、組合の受付に向かった。
「ポーターは必要ですか?」組合の受付嬢が聞いて来る。
「この迷宮は何階層で、何がドロップするんだ?」俺は組合の人間に聞く。
「このダンジョンは何階層なのかは確認されていません、踏破階層は17階層です、肉ダンジョンなので、オーク以下、様々なお肉が狩れます。」受付嬢が言う。
「よし、解体が出来るやつ二人を雇う。」俺は受付に言う。
「解りました。」受付嬢が言うと、見知らぬ二人が俺の前に来る。
「私はルチアだ、ミノタウルスまでなら解体できる。」
「俺は、アデルだ、踏破されている階層までなら問題ない。」
「報酬は、解体してもらった物の数1つに対して1Gで良いか?」俺は二人に聞く。
「はぁ? 持ち帰った肉の値段の1割じゃないのかい?」ルチアが言う。
「ははは、持つのは俺がやるから大丈夫だ、肉の解体の値段じゃ駄目か?」俺は聞く。
「いや、解体一匹が1Gは破格だぞ、払えるのか?」アデルが聞いて来る。
「あぁ、何なら10G程前払いしておくか?」俺が言う。
「なぁ、何階層迄行くつもりだい?」ルチアが聞いて来る。
「行ける所までだ。」俺は笑って答える。
「なぁ、まさかとは思うけど、俺ら3人だけで行くんじゃないよな?」アデルが聞いて来る。
「ははは、当然じゃないか。」俺は笑って答える。
「マジかぁ。」アデルが肩を落とす。
「ははは、貧乏くじを引いたかねぇ。」ルデアも肩を落とす。
「解体は任せたぞ。」俺は二人に言い、ダンジョンに潜った。
「浅い階層の獲物は無視だ。」俺はそう言いながら階層を重ねていく。
*********
「旦那、ここまで早く10階層に到達したのは初めてだ。」アデルが言う。
「しかも、ここまで何も狩っていないね。」ルチアも言う。
「安心しろ、ここからは存分に解体してもらう。」俺はにこやかに言う。
「くふふ、この階層は、オークとオークロードが出るね。」ミロクが言う。
「何だよ、オークロードかよ。」俺はミロクに答える。
「旦那、今オークロードって言ったか?」アデルが聞いて来る。
「あぁ、ただの雑魚だ。」俺は答える。
「やばい仕事を受けちまった。」アデルが震えながら言う。
「ここで仕事を放棄しても、あたいらの評価は下がるんだよね。」ルデアが言って来る。
「安心しろ、お前らの評価はダダ上がる。」俺はそう言いながら出現したオークロードに走る。
オークロード5匹は破格だろう。
一瞬だった。
オークロードは、一瞬で首を切られた。
「は?」
「オークロードを瞬殺?」ルチアとアデルが固まっているが無視だ。
「ほら解体を頼む。」俺は固まっている二人に言う。
「あぁ、解ったよ。」二人は言うだけあって、ものの5分で解体を済ませた。
「お肉と、内臓と魔石を俺に渡せ。」俺が言う。
「え? あたいらが持つんじゃ?」アデルが疑問に思う。
「最初に言っただろう、持つのは俺だ。」(ミロクだけどな。)
「なんか納得いかねーが、ほらよ。」二人が俺に物を渡してくる。
「さぁ、次だ。」俺はダンジョンを進んでいく。
*********
「待ってくれ旦那。」息せきながらアデルが言う。
「なんだ?」
「オークロードだけ42体ってなんだよ、しかもオークは見向きもしないし。」
「ぜはー、ぜはー、しかも1時間で15階層迄到達とか、ありえないでしょ。」ルチアが言う。
「そうか? 俺はもっと酷いデスマーチを体験したからなぁ。」俺はミロクのしごきを思い出しながら言う。
「んじゃ、少しここで休憩するか。」俺は土魔法で机といすを作りながら言う。
「え? こんなところで?」アデルが驚愕する。
「大丈夫だろう、俺が闘気を出すから。」
「闘気って。」ルチアが引く。
「さぁ、食って英気を養え。」俺は机の上に金鶏の唐揚げや、オークのモツ煮、ナマズのかば焼き、白パンを取り出す。
「飲み物は、申し訳ないが冷たいお茶だ。」俺はミロクからピッチャーを貰って机に置く。
コップも土魔法で作ったやつだ。
「ダンジョンの中で、こんなに美味いものが食えるとは思わなかった。」アデルが感激する。
「はずれだと思ったら、大当たりだった。」ルチアが涙を流しながら食材を食べる。
「いつもはどんな具合なんだ?」俺が聞く。
「いつもギリギリさぁ、冒険者がボコボコにしたオークからなんて、良い肉なんかは取れないし。」アデルが言う。
「オークロードを見たら逃げ出すしねぇ。」ルチアも言う。
「オークロードを単独で瞬殺できる冒険者は初めてさ。」アデルが言う。
「あぁ、俺は冒険者だけど、冒険者じゃない。」俺はそう言って組合のカードを見せる。
「神の身代わり?」
「あの伝説の?」アデルとルチアが二人してぽかんとした。
「どうした?」俺は二人に聞く。
「おとぎ話だと思っていたよ。」アデルが言う。
「あたし達、伝説の勇者とダンジョンを潜っていたんだね。」ルチアも感激している。
「そんなことは良いから、今は食って英気を養え!」俺は冷たく言う。
「解ったよ。」二人は食材を食べ始める。
「くふふ、ナマズのかば焼きを白パンに挟んで食べさせろ。」ミロクがリクエストを言って来る。
俺は仕方なく、その要求に応えてやる。
「ねぇ、ムサシ様、さっきから食材が消えているのは何故?」ルチアが聞いて来る。
「あぁ、俺は神の身代わりだからな。」俺は手を伸ばす。
「?」ルチアが怪訝な顔をする。
「俺の手を持ってみろ。」俺は言う。
「???」ルチアは怪訝な顔をしたまま俺の手を取る。
そこには、ナマズのかば焼きを挟んだ白パンを貪る駄女神が。
「え、え、え、ミロク神様?」ルチアが尻餅をつく。
「子供たちよ、健やかに。」ミロクが口の周りにパンの屑を漬けながら言う。
「残念だよ!」俺は叫ぶ。
「俺は、残念ながら、神の身代わりだからな。」俺はあきらめて言う。
「心中察しする。」アデルに気を使われた。
*********
「さて、英気は養ったか?」俺は二人に聞く。
「あぁ、任せろ。」アデルが頼もしく言う。
「ダンジョンで、こんなに美味い物を食ったのは初めてさ。」ルチアも元気いっぱいだ。
「よ~し、討伐を再開するぞ。」俺はそう言って闘気を消す。
「取り合えず下の階層を目指す、お肉は美味しい奴だけを狙う。」俺は宣言して下層に向かった。
*********
「旦那、やばい、ミノタウルスの集団だ!」アデルが言う。
「ははは、美味しいお肉の集団だ。」俺は笑いながらミノタウルスを狩っていく。
付近には、ミノタウルスが28頭ほど転がっていた。
「へへへ、ありえないぜ。」
「ふふふ、これは夢、これは夢。」アデルとルチアは死んだ目をしてミノタウルスを解体していた。
「解体した肉と内臓と魔石は俺に渡せ。」俺は機械的に言う。
「あぁ、旦那、これ以降は未踏破地だ。」
「あぁ、だから?」
「まだ行くのかい?」
「あぁ。」
「まじかぁ。」
「ここで契約解除しても良いぞ、評価はSにしておいてやる。」俺が言う。
「行くよ、ロマンだよ。」アデルが嬉しそうに言う。
「あたしも行く。」ルチアも言って来る。」
「そうか。」俺はダンジョン踏破を進めることにした。
「18階層はマスターミノタウルスが出るね。」ミロクが言って来る。
「マスターミノタウルス?」俺が聞き返す言葉を聞いた二人が慌てだす。
「ムサシ様、マスターは駄目だ。」ルチアが言って来る。
「あぁ、人間の上限を超えてくる。」二人が慌てる。
「あぁ、それは美味しそうだ。」俺はにっこりとほほ笑んだ。
「まじか、旦那。」アデルがため息をつく。
*********
「ぐもぉぉぉぉ!」
「おっ、さっそく出たか。」俺は楽しそうに言う。
「マスタークラスを見て、楽しそうにしている人間を始めてみたよ。」アデルが呆れる。
「てい!」俺は一瞬でマスターミノタウルスの首を切る。
「まじかぁ、マスタークラスを瞬殺。」ルチアが言う。
「解体はミノタウルスと同じだ。」俺が言うと、二人は黙々と解体した。
「さぁ、サクサク行くぞ。」俺は宣言する。
「ははは。」疲れた笑いをするのはルチアだ。
*********
24階層までは、マスターミノタウルスをはじめ、マスターオークロード、マスターコカトリスが出た。
「トロルはいないのか?」俺は独り言を言う。
「トロルなんか解体できないぞ。」アデルが叫ぶ。
「あぁ、それは俺がやるけど、いない物はしょうがない。」俺はそう言いながら25階層に降りた。
「くふふ、いるね。」ミロクが言う。
「おぅ、ここが最下層か?」俺が言う。
「え? 最下層?」アデルが言う。
「あたし達、踏破に立ち会えるの?」ルチアも嬉しそうだ。
「どうだろうな?」俺は言う。
「え? どう言う?」アデルが聞いて来る。
「ミロク、何がいるんだ?」
「くふふ、ナーガだよ。」ミロクが答える。
「ナーガって食えるの?」俺は二人に聞く。
「一部では、愛好家がいるらしいと聞いたことがある。」ルチアが言う。
「人語を話す蛇を食う変態がいるのかい?」アデルが言う。
「まぁ、話し合いで終われば良いんだがな。」俺はボス部屋の扉を開けた。




