カトリーヌ暴走
「さて、今日はどうしよう。」俺は朝ご飯を食べながら考える。
「ムサシ様、お客様です。」カロリーヌさんが俺に伝える。
「客?」俺は考える。
「誰だ?」
「カリナ様です。」カロリーヌさんが答える。
「おや?」
「ムサシ様~。」カリナ様がドアから入ってきて俺に抱き着く。
「どうしました、カリナ様。」俺はカリナ様の両肩を持って引き剥がしながら言う。
「マンモスのお肉を食べさせてください~。」カリナ様が泣きながら言う。
「あれ? 国王様に100kgも渡したのに?」俺が疑問に思う。
「お父様の馬鹿が、貴族連中に振舞ったら、一瞬で消えました。」カリナ様がウルウルしながら言う。
「アルゴン、やらかしたなぁ。」俺は頭を押さえながら首を振る。
「本当に!」カリナ様がぷんすかする。
「100000Gが一瞬かぁ。」
「はい?」俺の言葉にカリナ様が反応する。
「100000G?」カリナ様がわなわなする。
「この間、組合で1Kgを1000Gで売ったら、飛ぶように売れたぞ。
「あの馬鹿親!!」カリナ様が地団駄を踏む。
「ははは、んで、どうやって食べたいんですか?」俺はカリナ様に聞く。
「ステーキで!」カリナ様は即答した。
*********
「けぷっ、美味しかったです。」カリナ様は満足したみたいだ。
「じ~。」視線を感じると思ったら、屋敷にいる全員が睨んでいた。
「ムサシ様、私たちの分は無いんですか?」カロリーヌさんが代表で聞いて来る。
「この間、食べさせたじゃないですか。」
「あれはあれ、これはこれです。」カロリーヌさんがふんすとして言う。
「食べた分は、給料天引きで良いですか?」俺はにやにやしながら言う。
「なぁ、酷くないですか?」カロリーヌさんが言う。
「当然ですよ、1kgが1000Gもするものですよ。」俺は答える。
「それを只で食わせろ?」
「ぐぬぬ、解りました、天引きで結構です。」カロリーヌさんが言う。
「それじゃぁ、全員分で2kg出しますよ。」俺はそう言いながらカロリーヌさんの目の前にマンモスのお肉を置いた。
「わはぁ、料理長、さっそく焼いてください!」カロリーヌさんが料理長に言うが、
「き、給料何年分だと思っているのですか?」料理長が叫ぶ。
「はっ。」カロリーヌさんが止まる。
カロリーヌさんの年収は400G、つまり200gで年収の半分。
「でも食べますとも!」カロリーヌさんが宣言する。
「その意気や良し。」料理長が調理を始める。
「良いのかそれで?」俺が思う。
「美味い物こそ正義!」料理長が言う。
「成程。」俺は悪戯心を思う。
「マンモスのモツを食べたらどうなるのかなぁ?」俺はそう言いながら、禁断のマンモスのモツを少しだけ取り出す。
そこにいる全員に、一口だけ行き渡る量だ。
「何ですか、これは。」料理長が口に入れる。
「ふごぉ!」
「何なのですか?」カロリーヌさんも口に入れる。
「ごはぁ!」
食べた家人たちが撃沈していく。
「ふははは、おそらく今まで食した人はいない物だ!」俺は高らかに宣言する。
「ムサシ様、私にも。」カリナ様が口を開けて言う。
「ほれ。」俺はマンモスのモツをカリナ様の口に入れる。
「ついでに、ほれ。」俺はサノアさんの前にマンモスのモツを箸で摘まんで出す。
「ぐぬぬ、パクリ。」サノアさんがマンモスのモツを口に入れる。
「はうぅ!」
「くほぉ!」二人そろって撃沈した。
「ミロクも食うか?」俺はミロクに聞く。
「当然!」
「ほれ!」俺はミロクの口の前にマンモスのモツを箸で差し出す。
「パクリ!」
「ふにゃぁ~。」
「あっ、ミロクが溶けた。」
「ぬふふふ、至極。」ミロクが床でのたうっている。
「ははは、困ったもんだ。」俺は、悶絶している皆を残して組合に向かった。
*********
「頼もう!」俺は組合のドアを開けて言う。
「はい、いらっしゃいませ。」受付のお姉さんがにこやかに言う。
「買取を頼みたい。」俺は組合のカードを見せながら言う。
「げっ、神の身代わり様?」お姉さんが挙動不審になるが、奥の買取カウンターを指さした。
「あぁ、ありがとう。」俺はそう言いながら、そこに向かった。
「がはは、また来てくれたのか?」その男が俺の顔を見て言う。
「オークの良いところはまだ大丈夫か?」俺が聞く。
「あぁ、あと数カ月は持つな。」
「そうか、んじゃ、少し高級なものを納品しよう。」俺はそう言うと、コカトリス10羽と、ミノタウルス5頭を取り出した。
「コカトリス!」その男が興奮して声を上げる。
「あぁ。」俺は普通に答える。
「1羽 60Gなので600Gです。」
「あぁ、それでいいぞ。」
「ミノタウルスの方は、魔石が5匹分で25Gで、皮が250Gです。」
「あぁ。」
「肉は、計ってきます。」そう言うと、男は慣れた手つきでミノタウルスの皮を剥ぎ、魔石を取り出す。
そして、モツを捨てようとしたので止めた。
「?」その男が怪訝な顔をする。
「モツは返してくれ。」俺は冷静に言う。
「はぁ、解りました。」その男はモツを俺に渡してくる。
「むふ。」俺はほくそ笑む。
「そんな物をどうするのですか?」その男が聞いて来るが、
「秘密だ。」俺は華麗にスルーする。
「はぁ?」そう言いながら、その男が肉の重さを計る
「50Kgなので、250Gです。」
「あぁ、それでいいぞ。」俺は男にカードを渡す。
「どんな奴が買っていくんだ?」俺はその男に問う。
「上流のお貴族様です。」
「そうか、せいぜい利鞘を取って設けてくれ。」俺はそう言いながらカードを返してもらい組合を出た。
「さて、これからどうするか?」俺は王都を見渡たす。」
「見つけたぞ!」
「うん?」俺はその男を見る。
「貴様のせいで、地位を剥奪され、権力も剥奪された」
「え~っと、誰?」俺はその男に言う。
「なぁ、お前のせいで、俺は平民に堕とされた。」
「はぁ?」
「その反応は何だ?」その男が叫ぶ。
「いや、お前誰?」俺はその男に尋ねる。
「貴様ぁ!」その男が逆上した。
粗末な短刀を抜くと、俺に突進してきた。
俺はその男の突進を交わすと、男の首に手刀を落とす。
「ひぎゃぁ。」その男はその場で倒れこんだ。
「街中で騒動を起こしているのは貴様らか。」衛兵が走ってくる。
「いや、こいつが一方的に俺に向かってきた。」俺は組合のカードを見せながら言う。
「なぁ、神の身代わり様、ではこの男が元凶、げぇ。」衛兵が狼狽える。
「どうした?」俺は衛兵に聞く。
「失礼いたしました、この者は、その地位を剥奪された元トリスタン王子です。」
「トリスタン?」俺は考える。
「くふふ、シズカの仇だよ。」ミロクが耳元で言う。
「ほぉ。」俺の目の光が消える。
「なぁ、俺の権限で、こいつを犯罪奴隷に堕とせるか?」俺は衛兵に聞く。
「勿論です。」衛兵が即答する。
「元王族でも?」
「はい。」
「んじゃ、こいつを堕として。」俺は衛兵に冷たく言い放つ。
「承知いたしました。」衛兵は俺に最敬礼をすると、トリスタンを引き摺って行った。
俺はその足で王城に向かった。
*********
「おぉ、ムサシ様、この度はどのようなご用件で?」アルゴンが平伏を堪えながら言う。
「トリスタンが、俺に剣を向けた。」俺は冷たく言う。
「なぁ、そそそ、それは申し訳ございませんでしたぁ。」アルゴンが土下座する。
「俺の権限で、犯罪奴隷堕にした。」
「はい、的確なご指示かと。」アルゴンは頭を床に漬けたまま言う。
「俺に文句はないのか?」
「まさか、ムサシ様のご判断は適切です。」国王が言う。
「王族の権利を剥奪して、平民に堕としたのに、ムサシ様にさらに仇名すとは、私の教育が行き足りませんでした。」アルゴンが平伏したまま言う。
「俺に文句があるなら聞くぞ。」俺はアルゴンに言う。
「文句など、すべてはトリスタンの無知、そして私の教育不足の結果です。」アルゴンが平伏したまま言う。
「解った、とりあえず報告はしたぞ。」俺はそう言いながら王城を後にした。
*********
「ぐぐぐ、トリウムめ、ムサシ様に狼藉を働くとは許しがたい。」アルゴンが下唇を噛む。
「誰ぞある?」アルゴンが言葉を発する。
「お傍に。」国王の暗部が答える。
「トリウムを処刑せよ。」アルゴンが言う。
「御意。」そう言って暗部の気が消える。
「トリウムよ、最期まで私の意向を理解しなかったのだな。」そう言いながら国王は自室に戻った。




