表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/132

ジャイアント

「何を隠しているんですか?」俺はカロリーヌさんに詰め寄る。

「近い、近いです。」カロリーヌさんが言う。


「2階も人の唇を奪っておいて、それを言いますか?」俺が言う。

「むぅ。」カロリーヌさんが下を向いて、上目遣いで俺を睨む。


「オークのもつ煮を、皆で競い合っていたんです。」カロリーヌさんが頬を膨らまして言う。


「なんだ、それなら料理長の一強でしょう?」俺が言う。


「そうでもないんです、料理長はモツの掃除が苦手みたいで。」カロリーヌさんが悪い顔で言う。

「ふ~ん。」


「興味なさそうですね?」カロリーヌさんが言う。

「俺も参加しますよ。」そう言いながら、この間作ったオークのもつ煮を取り出す。


「オークキングは狡いです。」カロリーヌさんが抗議するが、


「正真正銘の、オークのモツ煮ですよ。」俺が言う。


「これは。」カロリーヌさんが俺のもつ煮を食べて固まる。


「どうしたのだ、カロリーヌ。」

「何があったの?」

「我らの戦いの最中だぞ。」

「主のもつ煮がどうしたと言うのだ?」


 メイド達が、わらわらと集まって来た。


「なんだよ、このバトルジャンキー共!」俺が思う。




「皆、これを食べてみてください。」カロリーヌが、俺の作ったオークのもつ煮をそこに差し出す。



「どれ?」

「貰おう。」

「ふむ。」

「いただきます。」メイド達が俺のもつ煮を食べる。


「「「「ふをぉ!」」」」メイド達が奇声を上げた。


「オークキングは狡いです。」メイドの一人が言う。

「いえ、本当にオークだと言う事です。」カロリーヌさんが言う。


「信用できないなら、オークキングのモツ煮も出してやるよ。」俺はそれをそこに取り出す。


「どれ?」オークキングのモツ煮をメイドの一人が口にする。

「あぁぁ、これぞオークキングのモツ煮です。」メイドが悶絶する。


「では、本当に、ただのオークのモツ煮?」メイドが驚愕する。


「掃除の仕方と、味付けだな。」俺はそう言って部屋に戻ろうとしたが、戻れなかった。


「何だよ?」俺は俺の手を持ったメイドに言う。

「是非ご指南ください。」そのメイドがニカって笑いながら言う。


「勝負しているんだろう?」俺が言う。

「美味しいものを食べることこそ至福。」そのメイドが言う。


「はぁ、それで良いの?」俺がそのメイドに聞く。


「ははは、今回やっていたのはただの戯言、ご主人様の技術が私たち以上なら、それを盗んでこその本望。」


「何言ってるんだお前。」俺は冷たい目で、目の前のメイドを見る。


「私はアイラという、お見知りおきを。」アイラを名乗ったメイドが首を垂れる。


 俺は面倒くさそうと思って、カロリーヌさんを見る。


 カロリーヌさんは、やれやれって顔で両手を上げる。


「うわぁ、丸投げかよ。」俺は溜め息をつく。


「カロリーヌさんに、全部教えましたけど。」俺は言う。


「カロリーヌはそれをうろ覚えなんだよ。」アイラが言う。

「はぁ?」


「ほほほ。」カロリーヌが笑いながらそっぽを向く。


「うわぁ、駄メイド。」俺はつぶやく。

「酷いです。」カロリーヌさんが迫ってくるが、アイラさんが阻止してくれた。


「はぁ~。」俺は深いため息をつく。


「解りました、俺の技を伝授します。」俺が宣言する。


「本当ですか?」アイラさん以下、料理長迄目を輝かせる。


「はぁ~。」俺は2回目のため息をついた。


**********


 俺はオークのモツをミロクから貰い、説明を始める。


モツ全体を30cm位に切って、縦に半分にして、流水で洗う。」俺はそれを実行する。


「更に、小麦粉を腸の内側に振りかけて、丁寧にヒダの間を洗っていく。」

 5分ほど揉み洗いをして、水で流して臭いをかぐ。


「うん、臭みは消えているな。」そう言うと、残りの腸も同じように小麦粉を振りかけて洗っていく。


「最後に食べやすい大きさに切って、一度下茹でする。」俺は台所に行き、ミロクに持ってもらっていた大鍋に水を張って、オークのモツを入れる。

 そして、ネギの青いところ、生姜を大量に入れ、砂糖もこれでもかと入れて煮始める。


**********


一刻程煮たらモツ以外を捨てて、酒、砂糖、味醂、醤油、生姜を適量入れて、水をひたひたにになるまで入れて煮る。

 

「最後に、味噌と葱の白い所を入れて煮れば完成だ。」俺はそれを実演した。


「ほををを、小麦粉を使って掃除をする、初めて知りました。」料理長が五月蠅い。


「成程ねぇ、最初に醤油で煮て、最後で味噌で風味をつける。」アイラさんが呟く。


「最後に入れた葱が、味の棘を消してくれて円やかになるんです。」俺が説明する。


「成程なぁ、主様は物知りなんだな。」アイラさんが言う。

「ははは、俺の知識じゃないです、元のギルドにいた姉御から教わったんです。」俺は恐縮しながら言う。

「何を言う主様、人に教わった知識を、更に人に教えられるならそれは主様の知識だ。」アイラさんが鼻息を荒わげながら言う。


「そう言うもんですかね?」俺は問う。

「少なくとも私はそう思う。」アイラさんが言う。

「成程、納得しておきます。」俺はそう言ってアイラさんに答える。



「と、言うことで、実践してください。」俺が宣言する。


「やってやるぜ!」アイラさんが叫ぶ。

「一切理解した!」

「解ったぜ!」

「疑問は解けた!」

「ふははは、理解した!」

「目から鱗です。」


 料理長以下、メイド達が一斉にオークのモツを処理し始めた。


「俺はもういらないよね。」そう言いながらその場を去ろうとしたら、アイラさんに腕を掴まれた。


「何で?」俺が聞く。


「審査員が必要でしょう?」アイラさんが良い笑顔で言う。

「知らんがな。」俺が叫ぶが、逃げられなかった。


*********


勝負の結果は、料理長の勝ちだった、伊達に料理長を名乗っていなかった。



「がははは、絡繰り(料理法)さえ解れば私の物だ!」料理長が吠える。



「はぁ、良かったですね。」俺はそう言いながら部屋に戻った。


*********


「くふふ、ムサシ、王国の傍にもう一匹いたよ。」ミロクが嬉しそうに言う。


「おぉ、そうか、良かったな。」俺は答える。


「くふふ、東の門から2日行った処に、『ファイアージャイアント』がいるみたい。」

「ファイアージャイアント?」俺が聞き返す。

「あぁ、炎の魔人だよ。」ミロクが答える。

「へぇ。」


「感動が薄いね。」ミロクが口を尖らせる。


「炎無効の俺が、水魔法や氷魔法で対処すれば一瞬だよな。」

「それはそうだけど。」ミロクがぶうたれる。


「一応、最強の巨人ジャイアントなんだよ。」

「へぇ。」


「感動薄いな!」ミロクが吠える。

「瞬殺の予感しかない。」俺は冷たく答える。


「それもそうか、でも物語的になんか欲しいよね。」ミロクが意味不明な事を呟く。


「?」俺はミロクを見て疑問に思う。


「何を言っているんだ?」俺はミロクに聞く。


「あははは、気にしなくていいよ。」ミロクが何かをごまかす。


「そうか。」俺はそれを受け流した。


「んで、東の門から出れば良いんだな?」俺はそう言いながら、東の門に向かった。




「この門から出るのは良いが、1日程行った処にある森には入るなよ。」門番が言う。

「振りか?」俺が聞く。


「マジでヤバいんだ、そこに言った冒険者は全員炭になったんだ!」門番が叫ぶ。


「そうか、気を付けるよ。」俺はそう言いながら森に走った。


 二時間ほどでその森に着いた。


「くふふ、いるね。」

「おぅ、俺にも解る、凄いプレッシャーだ。」

「くふふ。」


「森の奥に行けばいいんだな。」

「くふふ、そうだね。」


 俺は、そこに向かった。


*********


「そこの下郎、そこで止まれ。」ファイアージャイアントが俺に言う。

「はぁ、俺に言っているのか?」俺はファイアージャイアントに問う。


「我に疑問を問うか? 下郎の分際で!」ファイアージャイアントが言う。


「お前、俺のスキルやレベルが解るか?」俺が問う。

「知らん。」ファイアージャイアントが言う。


「はぁぁ。」俺は溜め息をつく。


「なぁ。」俺はファイアージャイアントに聞く。

「なんだ?」


「レベル差が解らないのは不幸だな。」俺が言う。

「何を言っているんだ?」ファイアージャイアントが言う、


「俺のレベルは、お前の20倍だ。」俺が言う。


「な!」ファイアージャイアントが狼狽えて言う。

「人間風情が有りえん!」


「んじゃ、試すか?」俺はそう言うと一歩前に出た。


「下がれ、下郎!」ファイアージャイアントが業火の魔法を俺に放つ。


「盾!」俺は防御の下級魔法を唱える。


 ファイアージャイアントが唱えた業火は俺の魔法で無効になった。


「馬鹿なぁ!」ファイアージャイアントが叫ぶ。


「はぁ、んじゃこっちから行くぞ。」俺が宣言する。


「何だと」ファイアージャイアントが狼狽える。


「ウオーターボール!」俺は水魔法の下級魔法を唱える。


 ウオーターボールは、下級とは思えない速さでファイアージャイアントに飛んでいく。


「ズバン!」大きな音とともに、その魔法がファイアージャイアントに当たる。


「ぐぎゃぁぁぁぁぁ!」ファイアージャイアントが叫びを上げる。

 ファイアージャイアントの体の半分の炎が消えていた。

「はぁ、罪悪感。」

「くふふ、気にしなくていいよ。」


「そうか。」俺はミロクの言葉に安心した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ