色々生えた
うわぁ、やっと50話だぁ。
お付き合いいただきありがとうございます。
「ムサシ様、堪能させていただきました。」国王が、俺の前で礼をする。
「ムサシ様、あのような料理は初めてです。」カリナ姫も同じように礼をする。
「ははは、流石は我が義弟のムサシだ、感服したぞ。」レニウム王子が俺の肩を叩きながら言う。
「婿殿、いっそ私を娶ってくださいませんか?」セレン王妃が不穏な事を言って来るので、全力で無視した。
「後で、ワイバーンのモツ料理が食べられそうなら、お持ちしますね。」俺が言う。
「本当ですか?」反応したのは、オークキングのモツの煮込みを食べたカリナ様だけだった。
「カリナ、モツとはそれ程美味いのか?」国王がカリナ様に尋ねる。
「至福でした。」カリナ様がその場でうっとりする。
「本当にそうでした。」カリナ様付きのメイドのサノアさんもその味を思い出してうっとりとした。
「何と?」国王が俺を見る。
「はぁ。」俺は溜め息をつきながら、国王の前にオークキングのモツ煮を取り出す。
「私に下さい!」カリナ様が暴走する。
「どぅどぅ!」俺は、カリナ様の鼻先にオークキングのモツ煮を取り出して誘導する。
「これがか?」国王が言う。
「はい、ご堪能下さい。」俺はカリナ様を避けながら言う。
勿論、レニウム王子とセレン王妃の前にもそれを置いた。
当然、カリナ様にもモツ煮を与えた。
「オークキングのモツ煮?」国王が固まっている。
レニウム王子とセレン王妃もフリーズしている。
「美味しいです!」カリナ様がモツ煮を口にして言う。
「うむ。」国王がその言葉でモツをフォークで刺して口に入れる。
「ほぉ!」国王が再び呆ける。
「成程。」そう言いながら国王がモツを咀嚼する。
噛むたびに出てくる脂、噛んでも噛んでもなくならない歯ごたえ。
「至福だ。」国王が言う。
「本当に。」セレン王妃が言う。
「ははは、感服したぞ。」レニウム王子が俺の肩を叩く。
「お好みで、これを少しかけると味が変わります。」俺は七味を取り出す。
「おぉ、どれ。」国王が七味を振りかける。
「あまりかけると、辛くなりますよ。」俺は忠告する。
「むぅ、ピリッとした味がたまらん!」国王が止まらない。
「え~っと、サノアさんもどうぞ。」俺は涎をたらしながら見ているサノアさんにオークキングのモツ煮を提供する。
「くっ、これで勝ったと思わないでくださいね。」そう言いながらサノアさんがモツ煮を口にした。
いったい何に勝ったんだろう。
「ところで、国王様。」
「私の事はアルゴンと。」
「あぁ、アルゴン、ワイバーンの素材はどうする?」俺が聞く。
「おぉ、そうでした。」国王が言う。
「一々オークションにかけなくても、譲るぞ。」俺が言う。
「何と?」
「あぁ、俺とアルゴンの仲だろう。」俺がニカって笑いながら言う。
「おぉ、ムサシ様、私を友と言って下さるのですね。」アルゴンが恍惚の表情をする。
俺は、ワイバーンの素材を取り出す。
「おぉ、傷一つない状態。」国王がわなわなする。
「前回のオークションと同じ金額で買います。」アルゴンが言う。
「あぁ、其れで良いぞ。」俺は答える。
「ムサシ様、ありがとうございます。」アルゴンが俺に礼をする。
「アルゴン、その礼は不要だ、レニウム王子に俺と同じワイバーンの皮鎧を作ってやったらどうだ?」俺が言う。
「ははは、ガキーン様が納得して頂けたなら。」アルゴンが言う。
「俺から、ガキーンに頼んでおいてやろうか?」俺が言う。
「何と、ムサシ様、本当ですか?」アルゴンが、俺の前で跪いて言う。
「あぁ、俺の鎧を作って貰った時に、そんな事を言っていたぞ。」俺が言う。
「ははは、本当にムサシ様は底が知れないお方だ。」アルゴンが平伏する。
「いや、普通だろう。」俺が言う。
「くふふ、君が段々人外になっていくよ。」ミロクが言う。
「どこが?」
「くふふ、くふふ。」
**********
「さて、ワイバーンのモツはどんなもんだろうな?」俺はワイバーンのモツをミロクから貰って言う。
「くふふ、美味しいと良いね。」ミロクが言う。
「あぁ、そうだな。」俺はそう言いながら、ワイバーンのモツを掃除する。
「うん? 3回掃除したが臭いな。」
「クフフ、そうなの?」
「あぁ、これは酷い。」
「どんな具合?」
「アンモニア臭が取れない。」
「くふふ、それは駄目だね。」
「あぁ、これは廃棄しよう。」俺は、ミロクにワイバーンのモツを廃棄してもらった。
「残念だ。」俺は落胆する。
「くふふ、どんまい!」ミロクが慰めてくれる。
「残念だ。」
「くふふ、他の事で頑張れ。」ミロクが言う。
「あぁ、そうするか。」俺はミロクに持っていてもらった、オークのモツを掃除し始めた。
「おっ、オークキング程じゃないが、それなりに食えるぞ。」
「くふふ、良かったね。」
「ピロン!」
「ん? 何の音だ?」俺が疑問に思う。
「スキルでも増えたんじゃない?」ミロクが答える。
「スキル?」
「見てみれば良いじゃないか。」
「え?」俺は久しぶりに自分のステータスを見る。
名前 :ムサシ。
ジョブ :神の身代わり レベル120
生命力 :621 一般成人男性の平均は15
力 :780 一般成人男性の平均は10
魔力 :899 魔力適正者の平均は30
魔法適正:有り
使用魔法:4大属性魔法 (火、水、地、風)、光、闇、時、空間、?
スキル :剥ぐ者、統べる者 威圧 料理人
耐性 :炎無効 水及び氷無効 土魔法、大地魔法無効、風魔法、暴風魔法無効、毒無効、麻痺無効、精神障害無効、幻術無効、石化無効、汚染無効、即死無効、呪い無効、時魔法無効、睡眠耐性、飢餓耐性、排泄耐性、水分補給耐性
「おっ、料理人スキルが生えた。」
「良かったねぇ。」
「空間魔法が増えてる。」
「え? マジ?」ミロクが狼狽える。
「どうした?」俺が怪訝に思って聞く。
「空間魔法は、人族には付かないはず。」ミロクが震えながら言う。
「へぇ、でも付いたんならしょうがない。」俺は受け流す。
「で、空間魔法か。」俺はそれを試す。
「ちょっと待てぇ。」ミロクが叫ぶが、遅かった。
**********
「ははは、偏屈屋の前だ。」俺が言う。
「何で、普通に使いこなすかな?」ミロクがぷりぷりして言う。
「いや、出来るかなって思って使ったら普通にできた。」俺が言う。
「はぁぁ、いや、解った、ムサシは人外、ムサシは人外。」ミロクが酷いことを言う。
「どうした?」俺がミロクに聞く。
「人族に、空間魔法は普通は使えないの!」ミロクが言う。
「ふ~ん。」
「何で、普通に使えるのかな?」ミロクが俺の両肩を持って揺さぶりながら言う。
「良いじゃん、俺は人外って事で。」俺は普通に答える。
「くふふ、そう納得しよう。」ミロクがプルプル震えながら言う。
「頼もう!」俺は偏屈屋の店に入って言う。
「五月蠅いぞ、って、ムサシか?」ガキーンが俺を見て言う。
「おぉ、久しぶりだな。」俺は手を上げて挨拶する。
「今回はどうしたんだ?」ガキーンが俺に聞いてくる。
「あぁ、個人的な事だが、第3王女と結婚することに成った。」
「おぉ、それは目出たい事じゃねーか。」ガキーンが俺の背中をバンバン叩きながら言う。
「でだな、義兄のレニウム王子に俺と同じワイバーンの皮鎧を作ってくれないか?」
「がはは、王様から依頼が来たら受けてやるよ。」ガキーンが言う。
「本当か?」俺が聞く。
「がはは、ムサシ、俺はお前をマブだと思っているぞ。」ガキーンが言う。
俺はガキーンの肩を掴む。
「ありがとう。」俺が言う。
「がはは、よせやい。」ガキーンが照れる。
「んじゃ、これは俺からの報酬な、国王からの報酬は十分に分捕って良いぞ。」俺はそう言いながらウイスキーを10本渡す。
「がはは、そうするぜ。」ガキーンが良い顔をする。
「んじゃ、伝えることを伝えたから帰るわ。」俺はそう言いながら空間魔法を唱える。
「ん? ムサシ?」ガキーンが固まるが、ムサシはその場から消えた。
*********
「おっと、普通に王都の家の前に着いた。」俺は家を見ながら言う。
「くふふ、普通はあり得ないんだけどね。」ミロクが不貞腐れながら言う。
「別に良いじゃん。」俺は真顔で言う。
「そうなんだけどね。」ミロクが不貞腐れる。
「ただいま。」俺は普通に家に入る。
「お帰りなさいませムサシ様。」カロリーヌさん以下メイド達が、あたふたと俺を出迎える。
「おや、あわただしいな?」俺は疑問に思う。
「どうしたんですか?」俺は、カロリーヌさんに聞く。
「ほほほ、何でもありません。」カロリーんさんがそう言いながら、後ろ手に何かを隠す。
「ほぉ。」俺はカロリーヌさんに近づいた。
「あの、近いです。」顔を真っ赤にしながらカロリーヌさんが言う。
「何があったんですか?」俺は優しく聞いた。




