表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/132

北の森で

其処に居たのは『アラクネ』レベル58。

蜘蛛の足をしており、上半身は女性の姿をしている。

身長は2.5m程。


「ほほほ、覚えのある気を辿って来てみれば、私が神気を喰った奴かい?」アラクネが言う。

「あぁ、その節はお世話になったね。」ミロクがバツが悪そうに言う。


 その周りには、糸で作られた繭のようなものが幾つもあった。


「俺は、ムサシだ、宜しくな。」俺はアラクネに言う。

「おやおや、良い男じゃないか、あたしの餌にしてあげるよ。」アラクネが笑いながら言う。


「御免だね。」俺は天叢雲剣を抜きながら言う。

「ははは、強気な男は好きだよ、そして、その強気な男を屈服させるのはもっと好きだ!」アラクネが言う。


「そうかよ。」俺は、アラクネの足元に跳び、2本の足を両断して元の場所に戻る。


「ぐぎゃぁぁ、いつのまに?」アラクネが体勢を崩しながら言う。

「秘密だ。」俺はそう言いながら、反対側の足を同じように両断した。


「足元がお留守ですよ、お嬢様。」俺は挑発気味に言う。


「くくく、舐められたものだね、あたしがその程度で死ぬはずがないじゃないか。」そう言いながら、アラクネは俺が切った足を復活させる。


「はぁ、復活したのか、無駄な事を。」俺はそう言いながら、天叢雲剣を構える。

「くくく、来い!」アラクネが言う。


「ふっ!」俺はもう一度足元に跳んだ。

「ほほほ、甘い!」アラクネが足で攻撃してきた。


「おっと。」俺はその攻撃を避ける。

「くくく、我の攻撃を躱した事を褒めてやろう。」アラクネが言う。


「それはどう・も!」俺はすれ違いざまに、右側の足4本を切り飛ばした。

「ぐぅ!」体勢を崩しそうになったアラクネは、足を瞬時に復活させて何とか耐えた。


「良くもやってくれたね、これを喰らいな!」アラクネはそう言うと、身体を半回転させ尻から蜘蛛の糸を飛ばしてきた。


「なんだと!」俺は躱すが、連続で飛ばされる糸が身体に纏わり付いた。

「くっ。」俺は糸だらけになってもがく。


「ほほほ、形勢逆転だね、さっそく餌になって貰うよ。」そう言いながらアラクネが近づいて来る。


「何てな。」俺は魔法で蜘蛛の糸を燃やし、同時にアラクネに炎の魔法を飛ばす。

「くそ、謀ったな!」アラクネが炎を躱す。

 そして、凍った地面に滑り、倒れた。


「まさか、同時に!」アラクネが驚愕する。


「終わりだ!」俺は瞬歩で近づき、アラクネの首を撥ねた。


「馬鹿な!」切られた首が言う。

「安らかに往生しろ。」俺はアラクネに言う。


「くくく、見事だ。」アラクネが事切れた。

 アラクネの身体が、その場で崩れ落ちて灰になる。


「くふふ、沢山戻って来たよ。」ミロクが嬉しそうに言う。


「一応、魔石だけは取っておいた方が良いかな?」ミロクが言うので、俺は蜘蛛の身体の方からそれを回収した。


「周りにある、繭はどんな具合だ?」俺がミロクに聞く。


「残念だけど、半分は助けられないね。」ミロクが言う。

「助けられる者を指示してくれ。」俺が言う。


 助けられない者も遺品を集めた。

 そして、助けられた者は、ほぼ全裸だったので、ミロクに持ってもらった。


「はぁ、組合に納品するときに一悶着ありそうだな。」俺が言う。

「くふふ、組合長に丸投げすれば良いさ。」ミロクが言う。

「そうだな。」俺は納得した。



 俺は、全力で走り、王都に辿り着いた。

「おぉ、やっぱり考え直したのか?」門番が言う。

「いや、解決してきた。」俺が言う。


「へ?」門番が呆ける。


 俺は組合に向かった。

  

「組合長を呼んでくれ、」俺は、組合のカードを見せながら言う。

「はい、お待ちください。」受付嬢が2階に走っていく。


 暫くすると、受付嬢が男を連れて来た。


「俺を呼ぶ奴は誰だ。」その男が言う。

「俺だ。」俺は組合カードを見せながら言う。


「おぉ、『神の身代わり』かぁ、300年ぶりに現れたと聞いていたが。」その男が俺を見ながら言う。


「北の森のアラクネを討伐してきた。」俺が言う。

「なぁ、此処の所の冒険者の失踪事件の奴か?」組合長が言う。


「知らない。」俺は冷たく言う。

「あぁ、すまなかった、俺はこの組合の組合長をしている、ムッシュ・ムラムラだ、宜しく頼む。」その男が、俺に礼をする。


「あぁ、俺はムサシだ、宜しくな。」俺は片手を上げながら言う。


「で、北の森のアラクネを討伐したとか?」ムッシュ・ムラムラが言う。

「あぁ。」俺は組合のカードをムッシュ・ムラムラに渡す。


「おい。」ムッシュ・ムラムラは隣にいた女性にカードを渡した。

「はい。」女性がカードを端末に差し込み操作をする。


「確かに、アラクネを討伐したようだな。」ムッシュ・ムラムラが言う。


「そして、まだ生きていた者の救出と、死んだ者の遺品の回収もやって来た。」俺が告げる。

「なんだと? どこにいるんだ?」ムッシュ・ムラムラが俺に詰め寄って言う。


「近い、救出した奴らはほぼ全裸だ、場所を提供してくれ。」俺は言う。

「おぉ、そうか、こっちに来てくれ。」ムッシュ・ムラムラが組合の奥に入って行く。

 俺はそれに続いた。


 其処は、組合の奥にある一室だった。

 ムッシュ・ムラムラは、その部屋に入って俺に言う。

「ここで良いだろう、あぁ、その前に、医療班を呼んで、タオルをあるだけ持って来てくれ。」ムッシュ・ムラムラが着いてきていた女性に指示する。


「はい、解りました。」女性が部屋を出て行った。


 

 暫くすると、何人かの男女と、先程の女性がタオルを腕一杯抱えて戻って来た。


「タオルを床に敷くから、その上に一人ずつ出してくれ。」ムッシュ・ムラムラが俺に言う。

「解った。」俺が答える。


「準備出来ました。」女性が言う。

「出された者の状態を確認してくれ。」ムッシュ・ムラムラが医療班の男女に言う。


「「「解りました。」」」医療班の男女が答える。


「出すぞ、全裸に近いから、タオルをかけてやってくれ。」俺はそう言いながら、一人目を出す。


「おぉ、Bランクのソウヤ・カーンか!」ムッシュ・ムラムラが言う。

「衰弱していますが、ほぼ健康です。」医療班の男が言う。


「どんどん出すぞ。」俺はそう言いながら、一人ずつタオルの上に寝かせていく。


 全部で12人を救出出来た、が、3人は手足の指が溶けていた。

 残りの9人は、全員最初の男と同じように衰弱していたが健康体だった。


「ムサシ、感謝する。」ムッシュ・ムラムラが俺に礼をする。


「遺品も提供する。」俺は言う。

「あぁ、それならカウンターに来てくれ。」ムッシュ・ムラムラが部屋から出て行ったので俺は着いて行った。


**********


「此処に頼む。」ムッシュ・ムラムラが俺に言う。


「あぁ、ギルドカードと一緒に出すから確認してくれ。」俺はそう言いながら、それをそこに並べていく。


「あぁ、クローディア、セリーナ、マシコ、ブロディ、お前達もか。」ムッシュ・ムラムラが目に涙を浮かべながら言う。


 俺は、14人分のギルドカードと遺品をそこに出した。


 ムッシュ・ムラムラはそれを見て、涙を流した。

 傍にいた女性職員や、ギルドの人間も泣いている。

 きっと、知り合いが死んだんだろう。


「ムサシ、よく連れて帰ってくれた、礼を言う。」ムッシュ・ムラムラが俺に言う。

「たまたまだ。」俺が答える。


「報奨金を振り込む、カードを出してくれ。」ムッシュ・ムラムラが言う。

 俺はカードを渡した。


 ムッシュ・ムラムラは傍にいた女性にカードを渡す。

(自分でやんないのかよ!)俺が思うが、勿論口には出さない。


「振り込みの明細をご説明します。」組合の職員の女性が俺に言う。

「あぁ、宜しく頼む。」俺が答える。


「コホン、まず、アラクネ討伐、100Gです。」職員の女性が言う。

「え? そんなに?」俺が聞き返す。


「はい、ムサシ様が今回討伐した個体は、本来であればAランクのパーティが、複数で討伐するレベルの魔物でした。」職員の女性が言う。


「そうなの?」俺が言う。

「はい、それを単独で討伐するなど、奇跡です。」職員の女性が言う。


「はぁ、そうですか。」俺が答える。


「次に、遭難者救出、一人10Gなので120Gです。」職員の女性が言う。

「おぉ。」


「最後に遺品の持ち帰りですが。」

「うん?」


「ギルドカードの持ち帰り、1枚1Gです。」職員の女性が言う。

「うん、規定通りだね。」俺が答える。


「そして、装備の持ち帰りについては。」

「ん?」


「本来は、ムサシ様の物です。」職員の女性が言う。

「へ?」俺は驚く。


「ですが、ムサシ様が組合に提供されましたので、相場で買い取らせていただきます。」職員の女性が言う。

「はぁ、それで構いませんけど。」俺が答える。

(使い慣れない武器なんか、貰ってもしょうがないからな。)


「全部で64Gになります。」職員の女性が言う。

「へ?」俺は呆けた。


「Bランクのパーティの持ち物でしたから、それなりに良い物が有りました。」職員の女性が言う。

「はぁ、そうなの?」俺は力なく答える。


「ご確認ください。」職員の女性がそう言いながら、カードを返してきた。


 受け取って確認したが、きっちり284Gが振り込まれていた。


 俺は、組合を出て、家に帰った。


**********


「ムサシ様、あれはどう言う御積りですか?」カロリーヌさんに詰め寄られた。

「あれとは?」俺が聞く。


「私の前に提供された物(オークキングのモツ煮込み)の事です。」カロリーヌさんが更に詰め寄る。

「ははは、美味しかった?」俺はにっこり笑いながら聞く。

「えぇ、それはもう、ではなくて、その後争奪戦が繰り広げられたのですよ!」カロリーヌさんが更に詰め寄ってくる。


(そんなに近づいたらキスしちゃうよ、しないけどさ。)

「あれ? 人数分あったと思ったけど。」俺は思い出しながら言う。


「私が、2切れ食べちゃいました。」顔を赤くしながら、カロリーヌさんが言う。

「それ、俺のせいじゃないですよね。」俺が冷静に言う。


「ぐぬぬ。」カロリーヌさんが顔を赤くして唸る。

「美人が台無しですよ。」俺の言葉に、カロリーヌさんが切れる。


「ムサシ様に、アレを提供して貰わないと、私がハブされます。」泣き顔でカロリーヌさんが言う。


「提供するのはやぶさかではないですが。」俺が言う。

「本当ですか?」カロリーヌさんが言う。


「俺にどのような見返りがあるのでしょうか?」俺が言うと、カロリーヌさんが固まった。


「夜伽を。」何かを決心しながらカロリーヌさんが言う。

「却下です。」俺は即座に断る。


「ぐぬぬ。」カロリーヌさんが再び唸る。

「冗談ですよ、食材は提供しますので、自分たちで調理をして下さい。」俺は、オークキングのモツをそこに出して言う。


「ムサシ様!」感極まったカロリーヌさんにファーストキッスを奪われた。


**********


「くふふ、色男。」ミロクが言う。

「今のどこに俺のモテ要素があったか聞きたいな。」俺が答える。


「くふふ、冗談はともかく、南に次の獲物がいる。」ミロクが言う。

「そうか。」俺は気を引き締めて言う。

「次は南だな。」

「くふふ。そうだね。」


第四話がダブり投稿になっていたのを修正いたしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ