北の森で
其処に居たのは『アラクネ』レベル58。
蜘蛛の足をしており、上半身は女性の姿をしている。
身長は2.5m程。
「ほほほ、覚えのある気を辿って来てみれば、私が神気を喰った奴かい?」アラクネが言う。
「あぁ、その節はお世話になったね。」ミロクがバツが悪そうに言う。
その周りには、糸で作られた繭のようなものが幾つもあった。
「俺は、ムサシだ、宜しくな。」俺はアラクネに言う。
「おやおや、良い男じゃないか、あたしの餌にしてあげるよ。」アラクネが笑いながら言う。
「御免だね。」俺は天叢雲剣を抜きながら言う。
「ははは、強気な男は好きだよ、そして、その強気な男を屈服させるのはもっと好きだ!」アラクネが言う。
「そうかよ。」俺は、アラクネの足元に跳び、2本の足を両断して元の場所に戻る。
「ぐぎゃぁぁ、いつのまに?」アラクネが体勢を崩しながら言う。
「秘密だ。」俺はそう言いながら、反対側の足を同じように両断した。
「足元がお留守ですよ、お嬢様。」俺は挑発気味に言う。
「くくく、舐められたものだね、あたしがその程度で死ぬはずがないじゃないか。」そう言いながら、アラクネは俺が切った足を復活させる。
「はぁ、復活したのか、無駄な事を。」俺はそう言いながら、天叢雲剣を構える。
「くくく、来い!」アラクネが言う。
「ふっ!」俺はもう一度足元に跳んだ。
「ほほほ、甘い!」アラクネが足で攻撃してきた。
「おっと。」俺はその攻撃を避ける。
「くくく、我の攻撃を躱した事を褒めてやろう。」アラクネが言う。
「それはどう・も!」俺はすれ違いざまに、右側の足4本を切り飛ばした。
「ぐぅ!」体勢を崩しそうになったアラクネは、足を瞬時に復活させて何とか耐えた。
「良くもやってくれたね、これを喰らいな!」アラクネはそう言うと、身体を半回転させ尻から蜘蛛の糸を飛ばしてきた。
「なんだと!」俺は躱すが、連続で飛ばされる糸が身体に纏わり付いた。
「くっ。」俺は糸だらけになってもがく。
「ほほほ、形勢逆転だね、さっそく餌になって貰うよ。」そう言いながらアラクネが近づいて来る。
「何てな。」俺は魔法で蜘蛛の糸を燃やし、同時にアラクネに炎の魔法を飛ばす。
「くそ、謀ったな!」アラクネが炎を躱す。
そして、凍った地面に滑り、倒れた。
「まさか、同時に!」アラクネが驚愕する。
「終わりだ!」俺は瞬歩で近づき、アラクネの首を撥ねた。
「馬鹿な!」切られた首が言う。
「安らかに往生しろ。」俺はアラクネに言う。
「くくく、見事だ。」アラクネが事切れた。
アラクネの身体が、その場で崩れ落ちて灰になる。
「くふふ、沢山戻って来たよ。」ミロクが嬉しそうに言う。
「一応、魔石だけは取っておいた方が良いかな?」ミロクが言うので、俺は蜘蛛の身体の方からそれを回収した。
「周りにある、繭はどんな具合だ?」俺がミロクに聞く。
「残念だけど、半分は助けられないね。」ミロクが言う。
「助けられる者を指示してくれ。」俺が言う。
助けられない者も遺品を集めた。
そして、助けられた者は、ほぼ全裸だったので、ミロクに持ってもらった。
「はぁ、組合に納品するときに一悶着ありそうだな。」俺が言う。
「くふふ、組合長に丸投げすれば良いさ。」ミロクが言う。
「そうだな。」俺は納得した。
俺は、全力で走り、王都に辿り着いた。
「おぉ、やっぱり考え直したのか?」門番が言う。
「いや、解決してきた。」俺が言う。
「へ?」門番が呆ける。
俺は組合に向かった。
「組合長を呼んでくれ、」俺は、組合のカードを見せながら言う。
「はい、お待ちください。」受付嬢が2階に走っていく。
暫くすると、受付嬢が男を連れて来た。
「俺を呼ぶ奴は誰だ。」その男が言う。
「俺だ。」俺は組合カードを見せながら言う。
「おぉ、『神の身代わり』かぁ、300年ぶりに現れたと聞いていたが。」その男が俺を見ながら言う。
「北の森のアラクネを討伐してきた。」俺が言う。
「なぁ、此処の所の冒険者の失踪事件の奴か?」組合長が言う。
「知らない。」俺は冷たく言う。
「あぁ、すまなかった、俺はこの組合の組合長をしている、ムッシュ・ムラムラだ、宜しく頼む。」その男が、俺に礼をする。
「あぁ、俺はムサシだ、宜しくな。」俺は片手を上げながら言う。
「で、北の森のアラクネを討伐したとか?」ムッシュ・ムラムラが言う。
「あぁ。」俺は組合のカードをムッシュ・ムラムラに渡す。
「おい。」ムッシュ・ムラムラは隣にいた女性にカードを渡した。
「はい。」女性がカードを端末に差し込み操作をする。
「確かに、アラクネを討伐したようだな。」ムッシュ・ムラムラが言う。
「そして、まだ生きていた者の救出と、死んだ者の遺品の回収もやって来た。」俺が告げる。
「なんだと? どこにいるんだ?」ムッシュ・ムラムラが俺に詰め寄って言う。
「近い、救出した奴らはほぼ全裸だ、場所を提供してくれ。」俺は言う。
「おぉ、そうか、こっちに来てくれ。」ムッシュ・ムラムラが組合の奥に入って行く。
俺はそれに続いた。
其処は、組合の奥にある一室だった。
ムッシュ・ムラムラは、その部屋に入って俺に言う。
「ここで良いだろう、あぁ、その前に、医療班を呼んで、タオルをあるだけ持って来てくれ。」ムッシュ・ムラムラが着いてきていた女性に指示する。
「はい、解りました。」女性が部屋を出て行った。
暫くすると、何人かの男女と、先程の女性がタオルを腕一杯抱えて戻って来た。
「タオルを床に敷くから、その上に一人ずつ出してくれ。」ムッシュ・ムラムラが俺に言う。
「解った。」俺が答える。
「準備出来ました。」女性が言う。
「出された者の状態を確認してくれ。」ムッシュ・ムラムラが医療班の男女に言う。
「「「解りました。」」」医療班の男女が答える。
「出すぞ、全裸に近いから、タオルをかけてやってくれ。」俺はそう言いながら、一人目を出す。
「おぉ、Bランクのソウヤ・カーンか!」ムッシュ・ムラムラが言う。
「衰弱していますが、ほぼ健康です。」医療班の男が言う。
「どんどん出すぞ。」俺はそう言いながら、一人ずつタオルの上に寝かせていく。
全部で12人を救出出来た、が、3人は手足の指が溶けていた。
残りの9人は、全員最初の男と同じように衰弱していたが健康体だった。
「ムサシ、感謝する。」ムッシュ・ムラムラが俺に礼をする。
「遺品も提供する。」俺は言う。
「あぁ、それならカウンターに来てくれ。」ムッシュ・ムラムラが部屋から出て行ったので俺は着いて行った。
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「此処に頼む。」ムッシュ・ムラムラが俺に言う。
「あぁ、ギルドカードと一緒に出すから確認してくれ。」俺はそう言いながら、それをそこに並べていく。
「あぁ、クローディア、セリーナ、マシコ、ブロディ、お前達もか。」ムッシュ・ムラムラが目に涙を浮かべながら言う。
俺は、14人分のギルドカードと遺品をそこに出した。
ムッシュ・ムラムラはそれを見て、涙を流した。
傍にいた女性職員や、ギルドの人間も泣いている。
きっと、知り合いが死んだんだろう。
「ムサシ、よく連れて帰ってくれた、礼を言う。」ムッシュ・ムラムラが俺に言う。
「たまたまだ。」俺が答える。
「報奨金を振り込む、カードを出してくれ。」ムッシュ・ムラムラが言う。
俺はカードを渡した。
ムッシュ・ムラムラは傍にいた女性にカードを渡す。
(自分でやんないのかよ!)俺が思うが、勿論口には出さない。
「振り込みの明細をご説明します。」組合の職員の女性が俺に言う。
「あぁ、宜しく頼む。」俺が答える。
「コホン、まず、アラクネ討伐、100Gです。」職員の女性が言う。
「え? そんなに?」俺が聞き返す。
「はい、ムサシ様が今回討伐した個体は、本来であればAランクのパーティが、複数で討伐するレベルの魔物でした。」職員の女性が言う。
「そうなの?」俺が言う。
「はい、それを単独で討伐するなど、奇跡です。」職員の女性が言う。
「はぁ、そうですか。」俺が答える。
「次に、遭難者救出、一人10Gなので120Gです。」職員の女性が言う。
「おぉ。」
「最後に遺品の持ち帰りですが。」
「うん?」
「ギルドカードの持ち帰り、1枚1Gです。」職員の女性が言う。
「うん、規定通りだね。」俺が答える。
「そして、装備の持ち帰りについては。」
「ん?」
「本来は、ムサシ様の物です。」職員の女性が言う。
「へ?」俺は驚く。
「ですが、ムサシ様が組合に提供されましたので、相場で買い取らせていただきます。」職員の女性が言う。
「はぁ、それで構いませんけど。」俺が答える。
(使い慣れない武器なんか、貰ってもしょうがないからな。)
「全部で64Gになります。」職員の女性が言う。
「へ?」俺は呆けた。
「Bランクのパーティの持ち物でしたから、それなりに良い物が有りました。」職員の女性が言う。
「はぁ、そうなの?」俺は力なく答える。
「ご確認ください。」職員の女性がそう言いながら、カードを返してきた。
受け取って確認したが、きっちり284Gが振り込まれていた。
俺は、組合を出て、家に帰った。
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「ムサシ様、あれはどう言う御積りですか?」カロリーヌさんに詰め寄られた。
「あれとは?」俺が聞く。
「私の前に提供された物(オークキングのモツ煮込み)の事です。」カロリーヌさんが更に詰め寄る。
「ははは、美味しかった?」俺はにっこり笑いながら聞く。
「えぇ、それはもう、ではなくて、その後争奪戦が繰り広げられたのですよ!」カロリーヌさんが更に詰め寄ってくる。
(そんなに近づいたらキスしちゃうよ、しないけどさ。)
「あれ? 人数分あったと思ったけど。」俺は思い出しながら言う。
「私が、2切れ食べちゃいました。」顔を赤くしながら、カロリーヌさんが言う。
「それ、俺のせいじゃないですよね。」俺が冷静に言う。
「ぐぬぬ。」カロリーヌさんが顔を赤くして唸る。
「美人が台無しですよ。」俺の言葉に、カロリーヌさんが切れる。
「ムサシ様に、アレを提供して貰わないと、私がハブされます。」泣き顔でカロリーヌさんが言う。
「提供するのはやぶさかではないですが。」俺が言う。
「本当ですか?」カロリーヌさんが言う。
「俺にどのような見返りがあるのでしょうか?」俺が言うと、カロリーヌさんが固まった。
「夜伽を。」何かを決心しながらカロリーヌさんが言う。
「却下です。」俺は即座に断る。
「ぐぬぬ。」カロリーヌさんが再び唸る。
「冗談ですよ、食材は提供しますので、自分たちで調理をして下さい。」俺は、オークキングのモツをそこに出して言う。
「ムサシ様!」感極まったカロリーヌさんにファーストキッスを奪われた。
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「くふふ、色男。」ミロクが言う。
「今のどこに俺のモテ要素があったか聞きたいな。」俺が答える。
「くふふ、冗談はともかく、南に次の獲物がいる。」ミロクが言う。
「そうか。」俺は気を引き締めて言う。
「次は南だな。」
「くふふ。そうだね。」
第四話がダブり投稿になっていたのを修正いたしました。




