王都で
「くふふ、王都の北の森に私の神気を喰ったやつが巣くっている。」ミロクが言う。
「おぅ、んじゃ、今日はそいつを狩ろう。」俺は答える。
幸い、今日は何の予定もない。
「ムサシ様、朝御飯の用意が出来ました。」扉の向こうで、カロリーヌさんの声がする。
「今行きます。」俺はすぐに行動ができる装備をして、食堂に向かった。
「「「お早うございます、ムサシ様。」」」其処に居た、執事とカロリーヌを筆頭としたメイドが言う。
「おぅ、皆、お早う、良い朝だな。」俺はわざとらしく答える。
「ぷぷ。」数名のメイドが噴出しそうになる。
「コホン。」執事が、咳をする。
メイドたちが、真顔になる。
「ちっ。」俺は舌打ちしながら席に着く。
メイドたちによって、朝御飯が配膳される。
「おぉ、白パンに、スクランブルエッグ、ベーコンをカリカリに焼いた物に、コーンスープか。」俺は感極まって言う。
「御馳走だな。」
「ほほほ、ムサシ様、王宮と同じ朝食です。」執事が言う。
「へぇ。」
「ほほほ、ムサシ様は王族と同じ朝食をお食べになる存在と言う事です。」執事が言う。
「あっそう。」俺は、普通に答える。
「ほほほ、流石はムサシ様と言う事ですね。」執事が嬉しそうに言う。
「?」俺は首をかしげる。
「くふふ、王族と同じ食事をしているんだよ。」ミロクが言う。
「だから?」俺がミロクに聞く。
「くふふ、普通は食べられない食事だよ。」
「あれ? 宿で出ていたような気がするが。」俺は思う。
「ふ~ん、まぁ良いや。」俺は食事を続けた。
「そう言えば、カリナ様はから揚げや、すき焼きとか知らなかったよな。」
「くふふ、そうだね。」
「庶民の料理なのかな?」
「今まで聞いた事もない料理だよ。」
「ふ~ん、なんで姉御たちは知っていたんだろう?」
「ムサシ様、今の料理名は旅の途中で、カリナ姫様に振舞わられたと言う料理ですか?」料理長が聞いてくる。
「そうだけど?」俺は答える。
「カリナ姫様が、王城でも食べた事が無い料理だとおっしゃっていたと聞きました。」
「そんな事を言っていたね。」俺は思い出しながら言う。
「それを食べさせていただけませんか?」料理長が言って来る。
「別に良いけど。」俺は、ミロクから作り置いてある『から揚げ』と『すき焼き』を貰ってそこに置いた。
「おぉ、何処から?」料理長が驚愕する。
「茶色い方が『から揚げ』で、鍋の方がすき焼きだ。」俺は説明する。
「おぉ、食べても?」料理長が聞いてくる。
「どうぞ。」
「では失礼して。」料理長がフォークでから揚げを突き刺して口に入れる。
「ジュワァ!」肉汁が口の中に広がり、大蒜と生姜の香りが鼻腔をくすぐる。
「こ、これ程とは。」料理長が愕然とする。
「おっと、『すき焼き』は、卵を溶いたものにつけて食べてくれ。」俺は卵をミロクから貰ってそこに置いた。
「解りました。」料理長が、深めの皿に卵を割り入れ、フォークでかき回した。
そして、『すき焼き』の肉をフォークで取り、卵につけてから口に入れた、
「こ、これも美味い。」料理長が震えながら言う。
「こほん、料理長殿、飯テロですか?」執事が言う。
(そんな言葉、良く知っていたな?)俺は思う。
「いや、そんなつもりは。」料理長が狼狽える。
「皆で食べれば良いじゃないか。」俺は、そう言いながら人数分をミロクから貰ってそこに置く。
「いや、私達は、執事やメイド、主人と同じテーブルに着くわけには。」執事が言う。
「食べないと、神罰を与えてもらうよ。」俺はにっこりと笑いながら言う。
執事や、メイドにも、ミロク神の姿を見せてある。
其処に居るであろう、ミロクの姿を思い出したのか、震えながら席について食べ始める。
「おや、カロリーヌさんは箸が使えるのか?」そう思いながらカロリーヌさんを見ると、『すき焼き』のお肉を口に入れて、幸せそうにしていた。
「さて、俺は出かけてくる。」俺はそう言いながら立ち上がった。
「どちらに?」執事が『から揚げ』を食べながら聞いてきたので、
「なぁに、野暮用だ。」と言いながら、出て行こうとして、カロリーヌさんの所で止まった。
「何か?」カロリーヌさんが聞いてくるので、俺は悪戯心でカロリーヌさんの前に、『オークキングのモツ」を置く。
「これは?」カロリーヌさんが聞いてくる。
「オークキングのモツ煮込みだ、美味いぞ。」そう言ってウインクしながら部屋を出た。
部屋の中から、料理長をはじめとする、全員の喧騒が聞こえたが、俺は知らない。
**********
「さて、まず組合からだな。」俺は王都の組合に向かう。
王都の組合は、ひときわ大きなレンガ造りの建物で、何人ものギルドメンバーが出入りをしていた。
俺がドアを潜ると、受付嬢が説明をしようと近寄ってくる。
俺は面倒くさかったので、組合のカードを見せながら言う。
「買取をお願いしたい。」
「はい、何を買い取りましょう?」受付嬢が言う。
「オークの良い所だ。」俺が答える。
「はい、それでしたら、左側の買取カウンターにお進みください。」受付嬢がにっこりとほほ笑みながら言う。
「あぁ、ありがとう。」俺は礼を言って、其処に向かった。
「ミロク。」
「何だい?」
「オークはどの位ある?」
「7000Kgだね。」
「おぉう、何匹分だ?」
「700匹?」
「ははは。」
「おぅ、兄ちゃん、買取か?」カウンターにいた職員が聞いてくる。
「あぁ、オークの良い所だ。」俺が答える。
「おぉ、有難い、どの位あるんだ?」職員が聞いてくる。
「どの位欲しい?」俺は逆に聞き返す。
「ははは、そうだなぁ、2000Kg位って、冗談だよ。」職員が笑いながら言う。
「あるぞ、2000Kg。」俺が答える。
「ははは、そうだなぁ、って、あるのか?」職員が目を見開きながら言う。
「5000Kg迄なら出すぞ。」俺が言う。
「おぉ、それだけ出してくれるのなら、こっちに来てくれ。」職員が、俺を奥に案内する。
其処は大き目の倉庫だった。
「この倉庫は、時間停止の魔道具が置いてあるから、生物も劣化しないんだ。」職員が説明してくる。
「そこに出せば良いのか?」俺は職員に聞く。
「あぁ、出してくれ。」職員が言う。
俺は、ミロクからそれを貰い、そこに置いた。
「マジかぁ?」職員が驚愕する。
「うん?」俺は怪訝な顔をする。
「冗談だと思っていたよ、まさか本当に出すとは。」職員が頭を掻きながら言う。
「オークの良い所が、安く流通すると良いな。」俺はそう言いながら、組合のカードを職員に渡す。
「あぁ、決済だなって、『神の身代わり』?」職員が再び驚愕する。
「あぁ、俺の事だ。」
「納得した、オークを500匹狩るのも解るな。」そう言いながら、その職員は買取カウンターの端末で決済をしてカードを俺に返してきた。
俺はカードを確認する。
きっちり3000Gが入金されていた。
「納品感謝する!」そう言いながら職員がお辞儀をした。
「又来る。」俺はそう言って組合を出ると、王都の北門に向かった。
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「この門から出るのは構わないが、北の森には入るなよ。」門番の一人が言って来る。
「ん? なんでだ?」俺は尋ねる。
「何組かの冒険者が北の森に入ったが、帰ってこないんだ。」門番が言う。
「森で宿泊しているんじゃないのか?」俺が聞く。
「北の森は、1日あれば回れる程度の広さで、出てくる魔物も精々15レベルなんだ。」門番が言う。
「ほぉ。」
「それなのに、Bランクの冒険者が帰ってこないんだ。」門番が言う。
「成程。」俺が答える。
「絶対に行くなよ。」門番が言う。
「振りか?」俺が答える。
「違う!」門番が言う。
「俺は、それを解決しに行くんだ。」俺はそう言いながら北の森に向かう。
「馬鹿野郎!」門番が言う。
「冒険者は自己責任だ。」別の門番が、その門番の肩を持って言う。
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「さて、走るか。北の森迄はどの位だ?」俺はミロクに聞く。
「そうだねぇ、馬車で1日だけど、君が本気で走れば1時間、獲物を狩りながらだと3時間って処だね。」ミロクが言う。
「おっし、んじゃ、金鶏以上の獲物狩りで行こうか。」俺はそう言いながら闘気を調整して走り出す。
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「ぜは~、ぜは~、やり切ったぜ。」俺は森の入り口で仰向けに倒れながら言う。
狩れた獲物は、金鶏35羽、コカトリス12羽、ミノタウルス15匹、オーク32匹だ。
「くふふ、まぁまぁだね。」ミロクが言う。
「こんなもんだろう。」俺が答える。
「くふふ、さて、森に入ろうか。」ミロクが言う。
「あぁ。」俺が答える。
「さて、獲物は何だろうな?」俺はそう言いながら森に入る。
「くふふ、食べられないかもね。」ミロクが言う。
「えっ? 萎えるわ。」俺が言う。
「興味が有ったら、食べてみれば?」ミロクがニヤニヤしながら言う。
「食えるものなの?」俺がミロクに聞く。
「頑張れば。」ミロクが答える。
「何だそりゃ。」俺が叫ぶ。
「くふふ、お出ましだよ。」ミロクが言う。
俺は身構えた。
1月に注文した車が、昨日納車されました。
3か月待ちとか受けるんですけど。




