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鉄槌を

人が死ぬシーンが有ります。

お嫌いな方はお戻りください。

  辺境伯の城には、10分程度で着いた。


 俺は、馬車から出る。

「お待ちしておりました。」その場に並んでいた、執事とメイドが声をそろえる。


「おぉ、御苦労さん。」俺が答えると、何人かのメイドが噴出し、傍のメイドに注意されていた。

 やっぱり、メイドに答えるのは駄目なのか? 

 俺はそう思いながら、執事の後に続く。


「こちらで御座います。」そう言いながら執事が目の前のドアを3回ノックする。

「入れ。」ドアの奥から声がする。


 執事がドアを開け、俺はその中に入る。


 其処には、書類の山に囲まれた魔族がいた。


「ははは、すまない『神の身代わり』様にお会いするのに、この体たらくだ。」その男が言う。

「あぁ、構わないよ、いきなり訪ねて失礼する。」俺が言う。


「それで、この度はどういうご訪問かな?」その魔族が言う。


 俺は、ミロクからダルメシアを受け取り、其処に放り出した。


「え?」辺境伯が固まる。

「その魔族が、俺の連れを殺した。」俺は冷たく言いながら殺気を放つ。


「誰だ、この男は?」辺境伯が言う。


「どういたしました?」俺の殺気を感じ取った魔族が部屋に入ってきて言う。

「この男を知っていますか?」辺境伯が言う。


「いえ、知りません。」その男が言う。

「そうですか、『神の身代わり』様、お聞きの通りです。」辺境伯が言う。


「そうか、この男は、俺を殺したら貴族にしてくれると、『辺境伯様』が言ったと聞いたから会いに来たんだがな。」俺はあっけらかんとして言う。


「ほぉ、私の名前を騙りましたか。」辺境伯が言う。


「成程、その男を拘束、拷問の上、処刑しなさい。」辺境伯が言う。

「御意。」その男が、ダルメシアを引きずって行った。



「いやぁ、すまなかったね。」辺境伯が破顔する。

「僕はここで辺境伯を仰せつかった、ミケラルドだ、宜しくな。」その魔族が俺に手を差し出してくる。

「あぁ、俺はムサシだ宜しくな。」俺はその手を握りながら言う。


「今回は、俺の勘違いだったようだ。」俺は、立ち上がって言う。

「何、勘違いは誰にでもあるさ。」ミケラルドが言う。


「では、失礼する。」俺は、立ち上がって出口に向かう。

「また来てくれ。」ミケラルドがにこやかに言って来る。


「あぁ、改めさせてもらおう。」俺はそう言って部屋を出る。


「ミロク。」

「何だい?」

「あいつは黒だ、残って見ていてくれ。」

「見るだけで良いのかい?」


「黒なら死を。」俺が言う。

「くふふ、シズカの敵討ちだね、任せて。」ミロクは嬉しそうにその場から消えた。


**********


「ダルメシアはどうした?」辺境伯が側近に聞く。

「お言いつけ通り、処刑いたしました。」側近が答える。


「300年振りに現れた、『神の身代わり』に祖父の恨みを晴らそうと思ったのだがな。」辺境伯が言う。

「先代の神の身代わりに、祖父の悪行が暴かれて、当家は伯爵から男爵に爵位を落とされた。」辺境伯が言う。

「今代の神の身代わりに、恨みはないが、祖父の先代への恨みをはらそうとしてダルメシアに、神の身代わりに鉄槌を下せと言ったが。」辺境伯がやれやれと言った顔をする。


「ダルメシアが、いかにも自信たっぷりで言うから信用したら、この有様だ。」辺境伯が言う。

「所詮その程度の男だったと言う事でしょう。」側近が言う。


「まぁ、仕方がない、違う方法で神の身代わりに鉄槌を下そうか。」辺境伯が言う。


「何と言う低俗。」ミロクが憤慨する。

「うん? 何か聞こえたか?」辺境伯が言う。

「いえ、別に何も。」側近が答える。


「お前達のその下らない復讐心のために、シズカは死んだのか?」ミロクが憤慨して言う。

 勿論、其処に居た者には聞こえない。


 ミロクは、辺境伯の鼻と口を神気で押さえた。


「うぐぅ、$%&‘U」辺境伯が苦しむ。

「辺境伯様どういたしました?」側近が問うが、辺境伯は苦しむだけだ。


 辺境伯は首を掻きむしりながら、床を転げまわる。


「辺境伯様!」側近が叫ぶが、辺境伯は白目を剥いて口から泡を吹いている。

「辺境伯様、お気を確かに!」側近が辺境伯の身体を揺すって言う。


「ぐばごわふぃ・・・。」辺境伯は意味不明の言葉を呟きながら死んだ。


「死んで当然だ。」ミロクはそう言い残して、辺境伯邸を後にした。


**********


俺は、辺境伯邸を出ると魔族の町に繰り出した。

 其処には、人間族の町と変らず、屋台が並んでいた。


「いい匂いだな、此処は何が食えるんだい?」俺はその屋台に入って言う。

「おぉ、兄ちゃん、此処はオーク丼の店だ。」屋台にいた男が言う。

「オーク丼?」

「おぉ、俺の創作料理だ。」屋台の男が言う。


「あぁ、鍛冶の町の宿で食ったな。」

「な?」

「因みに、俺もギルド時代に良く作って食った。」

「まじかぁ。」屋台の男が驚愕する。


「で、どうやって食うんだ?」俺は、屋台の男に聞く。

「いや、普通に、白飯の上にぶっかけて食うんだ。」屋台の男が言う。

「それだけか?」俺が聞く。

「あぁ、それだけだ。」屋台の男が言う。


「それだけじゃなぁ。」俺は溜め息をつきながら言う。

「なんだよ、他に何かあるのか?」屋台の男が言って来る。


「これ以上は、有料だ。」俺は冷たく言う。

「一杯御馳走するから、教えてくれないか?」屋台の男が言う。

「仕方ないなぁ、教えてやるよ。」俺はそう言いながら、七味と溶き卵をかける事を伝える。


「何だと、それだけで?」屋台の男はそれを実行した。

「マジかぁ!」屋台の男が叫ぶ。


 俺は、奢りになった丼に、七味と溶き卵をかけて堪能する。

「ははは、美味いなぁ。」俺は、オーク丼を堪能した。


**********


「ムサシ。」怖い顔をしたミロクが俺のそばに来て言う。

「おぉ、どうだった?」俺はミロクに聞く。

「真っ黒だったよ!」ミロクが怒りを堪えながら言う。

「あぁ、そうか。」俺は淡々と答える。


「魔族自体に、敵対する行動は無いな。」俺が言う。

「うん、辺境伯が糞だっただけ。」ミロクが言う。


「そうか。」俺は何かを考えながら言う。


「よし帰ろう。」俺はそう言いながら、走り出した。


「くふふ、どうするんだい?」ミロクが聞いてくる。

「どうもしない、やった事を国王に報告するだけだ。」


「くふふ、もしやった事がバレたら、魔族と戦争だよ。」ミロクが楽しそうに言う。


「その時は、俺が出るだけだ。」俺はステータスを見ながら言う。


名前  :ムサシ。

 ジョブ :神の身代わり レベル102

 生命力 :508 一般成人男性の平均は15

 力   :606 一般成人男性の平均は10

 魔力  :707 魔力適正者の平均は30

魔法適正:有り

 使用魔法:4大属性魔法 (火、水、地、風)、天、闇、時、?、?

スキル :剥ぐ者、統べる者 威圧

 耐性  :炎無効 水及び氷無効 土魔法、大地魔法無効、風魔法、暴風魔法無効、毒無効、麻痺無効、精神障害無効、幻術無効、石化無効、汚染無効、即死無効、呪い無効、時魔法無効、睡眠耐性、飢餓耐性、排泄耐性、水分補給耐性

「くふふ、使用魔法が育っているね。」ミロクが言う。

「あぁ、そうだな。」俺が答える。


「とりあえず、王国に帰るぞ。」俺はそう言って走り出す。

「くふふ、せっかちだね。」ミロクはそう言いながら俺に付いてくる。



 1時間もしないうちに、王国の国境に着いた。

「お帰りなさいムサシ様。」国境の門番が俺の顔を見て言う。

「あぁ、ただいま。」俺は答える。


「国王様が、王城にご訪問くださいとの伝言を預かっております。」門番の男が言う。 

その後ろには、豪華な馬車が待機していた。


「あぁ、解ったよ。」俺は大人しく馬車に乗った。


 王城には、ものの数分で着いた。


 馬車の前には、執事とメイドが並んでいた。

「おぁ、出迎えご苦労さん。」俺はわざと言う。


「ぷふぅ。」数名のメイドが噴出した。

 やっぱり、メイドたちに答えるのはアウトなのか?


「ムサシ様、国王様がお待ちです。」執事が何かを耐えながら言う。

「あぁ、案内してくれ。」俺はその執事に言う。

「はい、仰せのままに。」その執事は俺を王城の奥に案内する。



「こちらで御座います。」執事が俺に言う。

「あぁ、案内ご苦労さん。」俺は、執事の肩に手を置いて言う。

「ぶふぅ。」執事がその場で噴き出す。


「ははは、楽しいなぁ。」俺はそう言いながら、目の前のドアを3回ノックする。

 執事は、その場で青い顔をしている。

 俺がノックをした事がまずかったのか?


「入れ。」ドアの向こうから声がする。

 俺は、ドアを開けて中に入った。


「おぉぉぉ、神の身代わり様!」偉そうに返事をしていた国王が俺の前にかけてきて平伏する。


「あぁ、国王、辺境伯に会ってきた。」俺は国王にそう言う。

「おぉ、それで、どうなりました?」国王が聞いてくる。


「あぁ、辺境伯は謎の死を遂げた。」俺が言う。

「なんと。」国王がその場で固まる。


「ははは、不思議な事も有るもんだな。」俺が言う。

「わはは、その様ですね。」国王は俺の言葉に乗っかった。


「それで、この後どうなさるのですか?」国王が聞いてくる。

「とりあえず、俺にくれた家を見に行くよ。」俺が答える。


「おぉ、そうですか、誰ぞある?」国王が言う。

「はい、お傍に。」国王の影が返事をする。

「ムサシ様を、元ファンドーレ男爵の館にご案内しなさい。」国王が言う。

「はっ、仰せのままに。」その男が首を垂れる。


**********


 数分後、俺は元ファンドーレ男爵の館の前に立っていた。

「こちらで御座います。」国王の影が俺をその館に案内する。


「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。」執事以下、複数のメイドが俺を出迎えた。

「ムサシ様、国王様よりムサシ様に仕えるように申しつかわりました、執事のドトールと申します、以後お見知りおきを。」ドトールが俺に礼をする。

「メイド長を申しつかわりました、カロリーヌで御座います。」そのメイドがスカートのすそを摘まみながら礼をする。


「あれ? カロリーヌさんですか?」俺が言う。

「はい、国王様より、ムサシ様のお世話をするように申しつかわりました。」

「あぁ、それはどうも、宜しくお願いします。」俺は、カロリーヌさんに言う。

「ぷふぅ。」カロリーヌさんが吹きだす。


「どうしました?」俺はカロリーヌさんに聞く。

「ですから、私達メイドに一々答えないでください。」カロリーヌさんが怒りながら言う。

「おや、そうなの?」俺は普通に答える。


「コホン、失礼いたしました、私たちメイドは、そこに有る物だと思ってくださいまし。」

「え~、そう言う訳には。」俺が反論する。


「私たちメイドは、ご主人様にお仕えする黒子です。」カロリーヌさんが言う。

「黒子?」


「歌舞伎の世界では、黒子は其処に居ない存在です。」カロリーヌさんが言う。

「歌舞伎が何だか解らないけど、メイドさんは其処に居ないと思えばいいんだね?」俺が言う。

「はい、その通りです!」カロリーヌさんが言う。


「そうか、美味しいお菓子や、珍しい果物を手に入れても、居ないことにすればいいんだね?」俺が聞く。

「ぐぬぬ、・・その通りです。」カロリーヌさんが言う。


「そうか、残念だな。」俺が言う。

「何がですか?」カロリーヌさんが言う。


「予約3か月待ちの店のパンケーキが人数分届いたのですが、居ないことにするのですよね?」俺が言う。


「ちょっと待ってください、そのパンケーキとは?」カロリーヌさんが言う。


「大黒屋のパンケーキです、今注文しても食べられるのは3か月後ですね。」俺が言う。

「いやぁ、残念だなぁ、仕方がないから、下働きの者達に振舞うか。」俺はそう言いながらパンケーキを仕舞おうとする。

「お待ちください。」カロリーヌさんが俺の手を持って言う。

「何か?」俺がカロリーヌさんに聞く。


「ムサシ様、こういうためしはご勘弁ください。」カロリーヌが言う。

「何が?」俺が聞く。


「飯テロは卑怯です。」カロリーヌが言う。

「知らない。」俺は冷たく言う。

「そんな。」カロリーヌが言う。


「参ったと言えば、考え無くもないですよ。」俺が言う。

「参りました。」カロリーヌが言う。

「おや、存外早かった。」俺が言う。


 俺は、メイドや執事にパンケーキを振舞った。


「パンケーキなんかどこで手に入れたんだい?」

「あぁ、カリナさんに貰った。」

「くふふ、禁じ手だね。」

「?」

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