次の獲物
投稿する話を間違えていました、さくら様ありがとうございます。
「んじゃ、この後の攻略だよ。」ぶー垂れながらミロクが言う。
「あぁ。」俺は、気にしないで返事をする。
「此処から東に5日行った所にそれがいる。」
「解った、今日は東の門から出れば良いんだな。」
「そう。」
「暫く帰れないから、食べ物を多めに持っていく、いや、途中で調達しようか?」ミロクがニコニコしなが言う。
「それなら、調味料を買わせてくれ。」
「別にいいけど。」
俺は、近所の店で、醤油、塩、味噌、胡椒、酒を購入した。
そして、コッソリ昼飯も買ったのは秘密だ。
この城塞都市は、王国の中で1、2を競う都市だ。
西には、昨日行った広大な森が広がり、昨日狩ったオーガキングは中ボスの位置づけだ。
森の先は隣国と繋がっていて、この城塞都市は隣国との紛争のためにできたらしい。
らしいと言うのは、今は友好国になっていて、ここしばらく紛争は起こっていない。
今日向かう東には、西と同じような森の向こうに、険しい山が聳え立っている。
北には、大草原が広がり、その先は一年中雪が降り積もる山が散在している。
南はこの国の他の都市や町に繋がる街道があり、この都市特産の魔物の素材を持った商人の馬車が行き来している。
「さて、東に向かうか。」俺は東門に向かった。
「あ~、この門から出るのは止めた方が良いぞ。」昨日と同じ様に、門番の衛兵が俺に言ってくる。
「あぁ、俺もそう思う。」
「あぁ、武運を。」
「ありがとう。」そう言いながら、俺は門を潜る。
「行かなければ良い門を、何で開けてるんだろう?」
「そこにある森で、冒険者が素材集めをするからだよ。」
「ふ~ん。」
「他人事だな?」
「他人事だもん。」
「はぁ、このまま進めば良いんだな?」
「うん。」
「解った。」
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「ちょっと待て、半日で3桁はマジできつい!」
「え~、軟弱だなぁ。」ミロクが可哀そうな目で俺を見て言う。
「オークが123匹はまだ良い。」
「うん?」
「ミノタウルス20はマジで勘弁してくれ。」
「え~、討伐はあたしがやってるし、素材や肉もあたしが持ってるじゃん。」
「解体が、たまらん。」俺は声を荒わげる。
「組合に、解体を任せても良いけど、その分手数料を取られるよ。」
「あぁ、解った、サクサク解体しよう!」
「単純だな。」
「さぁ、どんどん行こう。」
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「ぜはー、ぜはー、やりきったぜ。」
「ご苦労様。」
あの後、オーク234、ミノタウルス12を解体した。
「今日は、此処迄だよな。」俺は疲れ果てて言う。
「うん、ここで野宿だね。」ミロクはすまし顔で言う。
「俺、このまま寝るわ。」
「ご飯は?」
「食欲無い。」
「そう。」
「浄化!」ミロクが魔法を唱えてくれるが、疲れが勝った。
俺は瞼を閉じた。
「おやすみ。」ミロクが言う。
「うん、おやすみ。」俺が答える。
俺は、太い木の根元に横たわり、意識を手放そうとした。
「くふふふ、添い寝の時間だよ~。」ミロクがちょっかいを出してきた。
「要らない。」俺は無感情で答える。
「くふふふ、触っても良いよ。」ミロクがさらに絡んでくる。
「いらん!」俺はそれを拒否する。
「くふふ、無理すると体に毒だよ。」ミロクは更に俺に絡んでくる。
「てい!」俺は、無表情でミロクの腹に一発を入れた。
「うぎゅう!」
「ふぅ、静かになった、ゆっくり寝れるな。」そう言いながら、俺は意識を無くした。
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「なんだこれ?」翌朝起きた俺が言う。
「そりゃぁ、美味しそうなご飯が置いてあったら、食べに来るでしょう。」
俺の周りには、魔物が数十体転がっていた。
「こんなところで、結界も張らずに寝ればこうなるよね。」
「はぁ。」俺はため息をつきながら、解体を始めた。
朝からオーク33、オーガ18、ウォーウルフ5を解体した。
「朝飯の前にこれか。」俺は、沢の水で手を洗いながら言う。
「これが本当の朝飯前だね。」解体で要らなくなった獲物の残骸を消しながらミロクが言う。
「ちっ、美味い事言ってんじゃねーよ。」
「くふふ。」
朝一で魔物の解体を終えた俺は、朝飯の用意をする事にした。
「解体が無かったら、良い朝だ。」俺は、オークの肉を焼きながら言う。
「塩胡椒しただけだから、どうかと思ったけど、意外にいけるな。」オークの肉を一口食べて俺が言う。
「美味しく食べられる部位だけを選んで残しているからね。」
「う~ん、これは煮込んでも、厚く切ってカツでも行けそうだな。」
「じゅるり、身体が戻ったら、あたしに食べさせてよ。」ミロクがよだれを垂らしながら言う。
「あぁ、お安い御用だ。」
「絶対だよ。」
「? あぁ。」
「よし、腹ごしらえも済んだから、サクサク行こうか!」
「ねぇ、そう言えば、あたしの扱い酷くない?」ミロクが不満そうに言う。
「そうか?」
「ぶぅ。」ミロクが唇を尖らせて、頬を膨らませるが、俺は無視して森を進んだ。
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「あそこにいる奴がそうか?」洞窟の中を覗いて俺が言う。
「うん、そうだね。」
「ドラゴンに見えるんだけど?」
「レッサードラゴンだからね。」
其処には、体長10m程のレッサードラゴンがいた。
「レッサーでも、ドラゴンだよね?」
「大丈夫だよ、今のあたしなら油断しなければ瞬殺だよ。」ミロクが胸を張りながら言う。
「本当だよな?」
「任せて。」ミロクが片目を瞑る。
「んじゃ、気付かれないように近づくよ。」そう言うと、足音を立てないようにユックリと歩き出す。
「おう!」
(よし、気付かれてないな。)俺はそう思いながら洞窟の前に進んだ。
「ふははは、其処のお前、気付かれていないと思っているのか?」声が響く。
「げ!」
「貴様の気配は駄々洩れだぞ。」
「あ~、それは俺の気配?」俺は疑問に思う。
「ん? 紛れも無く貴様の、はぁ?」
「?」
「誰だ、お前?」
「ははは、それは俺じゃないっすよ。」
「久しぶりだね。」口元を歪めてミロクが言う。
「なぁ!」驚愕したレッサードラゴンは数歩後ずさる。
「その反応も嬉しいよ。」ミロクは、歯を見せてにやりとする。
「何でお前がここに?」震えた声でレッサードラゴンが言う。
「神気を返してもらいに?」惚けた顔でミロクが言う。
「ふははは、既に我と同化しているわ、奪えるものなら奪ってみるが良い!」開き直ったレッサードラゴンがふんぞり返る。
「んじゃ、そうするよ。」目元を暗くしたが、いまだに笑ったままミロクが手を横に払う。
「なぁ!」という声と同時に、レッサードラゴンの首が飛ぶ。
「嘘ぉ。」俺は尻もちをついて呟く。
「うん、確かに返してもらったよ。」ミロクが良い笑顔で言う。
「ははは。」俺は笑う事しかできなかった。
「さて、お楽しみの時間だ。」ミロクが俺を見てにっこりと微笑む。
「え?」
「解体ターイム!」
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