王都
王都迄はあと1日だ。
俺たちは、キャラバンを王都に向けて出発させる。
途中で増えたキャラバンも俺が守護する事に成った。
もはや、ハコベの商隊だけじゃない。
そう思えば、王女様の馬車も一緒なのだ、何も問題ないよな。
俺は思う。
何かあったら、俺が全力で排除すれば良いんだ。
薄ら笑いをしながら俺が思う。
(後1日か、何も起こらなければ良いなぁ。)俺が思う。
王都迄1日、まさか盗賊がでるはずは無いと思っていた。
「ぎゃははは、荷物を置いていけば、命までは取らないぞ。」十数人の男達が俺たちの馬車の良く手を阻んだ。
「うわぁ、馬鹿がいた。」俺は頭を抱えた。
俺は馬車から飛び降りた。
「これだけのキャラバンを襲うとか、お前ら馬鹿なの?」俺は馬鹿にするように言い放った。
「なにおぅ、見た所護衛は数人しかいないじゃないか、襲うにはお手頃だろう。」盗賊の一人が言い放つ。
「ムサシ、盗賊かい?」姉御が走ってきて言う。
「あぁ、たった10数人ぐらいで襲って来た馬鹿だ。」俺は姉御に言う。
「おっ、女もいるのか、ラッキーだったぜ。」盗賊の一人が姉御を見て言う。
「お! あいつ、賞金首だ、他にもいるね。」姉御が盗賊を見て言う。
「へぇ、んじゃ殺さないで連れて行った方が良いかな?」俺は姉御に聞く。
「ムサシ、超余裕かましてるけど、大丈夫なのかい?」姉御が聞いてくる。
「う~ん、楽勝?」俺が答える。
「貴様、この状況が解っているのか?」イラついたのか、盗賊が剣を抜きながら向かって来る。
俺は、一瞬でその男の横に行き、首に手刀を打ち込む。
「ひぐぅ!」その男は気を失った。
「な!」盗賊たちが驚愕する。
俺は、盗賊たちに向かい走った。
そして、全員を気絶させるのに1分掛からなかった。
「ムサシ、あんたってこんなに強かったのかい?」姉御が驚愕しながら言って来る。
「いや、強くなったんだ。」俺は指で頬を書きながら答える。
「さて、全員連れて行こうか。」俺はそう言って、後ろにいるハコベさんに合図をする。
「ほほほ、ムサシ様、凄かったですな。」ハコベとその部下が近寄って来た。
「全員の肩の関節を外しますので、その後後ろ手で縛り、全員の首を縄で繋いでください。」
「ほほほ、笑顔で恐ろしい事を言いますなぁ。」ハコベさんが顔を引きつらせながら言う。
「悪人にかける情けはありません。」俺は答えながら、肩の関節を外していく。
「ぐぎゃぁ!!」関節を外される痛みで盗賊が叫ぶ。
しかし、ハコベの部下や、姉御は淡々と盗賊の手を後ろ手で縛っていく。
盗賊たちは16人いたので、5人、5人、6人に分けて馬車の後ろに繋いだ。
当然、自分の足で歩かせる。
全員の首が縄で繋がっているから、一人でも倒れれば、全員の首が閉まる仕掛けだ。
「へへへ、ムサシ、お前えげつないな。」姉御があきれて言う。
「普通だよ姉御。」俺は答える。
「さぁ、先を急ぎましょう。」俺は馬車の屋根に乗り言う。
「ほほほ、では皆さん、出発しましょう。」ハコベの声で馬車が動き始める。
その先は、何事もなく王都の門に着くことができた。
「ムサシ様、ありがとうございました、おかげで無事に王都までたどり着くことが出来ました。」姫様が馬車を降りて、俺に言って来る。
「いえ、姫様を無事に送り届ける事が出来て、良かったです。」俺は片膝をついて礼をする。
「ムサシ様、お立ち下さい、私に礼は不要です。」姫様が言う。
「はい、解りました、その、姫様にお願いが有るのですが。」俺は立ち上がりながら言う。
「何でしょう?」
「姫様は、王族専用の門に行かれるのですよね。」
「はい。」
「衛兵に、捕まえた盗賊の事を伝えて、引き取りに来て貰うよう頼んでいただけませんか?」
「そんな事でしたら、問題ありません。」姫様がにっこりとほほ笑んで言う。
「よろしくお願いいたします。」俺は姫様に頭を下げる。
「ムサシ様、お礼は改めてさせていただきます、では、今はこれにて。」姫様は優雅にお辞儀をすると馬車に乗り込んで王族専用の門に進んでいった。
暫くすると、数人の衛兵が盗賊を引き取りに来た。
「ムサシ殿はどちらに?」衛兵が聞いてくる。
「あぁ、俺です。」俺が手を上げる。
「カリナ王女殿下より、報酬の振込先を聞いて来るように仰せつかわりました。」衛兵の一人が言う。
(姫様の名前はカリナ様と言うのか、そう言えば名前を聞いていなかったな。)俺は思いながら、
「あぁ、それなら。」俺は、組合のカードを見せる。
「なっ、神の身代わり様!」衛兵が挙動る。
「え?」
「何と。」他の衛兵からも声が上がる。
「え? 俺、なんかした?」俺は衛兵に尋ねる。
「失礼いたしました!」衛兵たちがその場で最敬礼をする。
「え?」俺は挙動不審になる。
「国王様より、神の身代わり様には、最善を持って礼を尽くすようにと申し伝えられております。」
「そうなの?」俺は面食らいながら言う。
「神の身代わりのムサシ様と、そのご一行は、王族専用の門にお進みください。」衛兵が先導しながら言う。
「ムサシ、お前、凄い事になってるな。」姉御が肘で突いてくる。
「ははは、俺にも何の事だか。」
「くふふ、それだけ神の身代わりの威光が凄いって事だよ。」ミロクが言って来る。
俺たちは、衛兵の後に続き、王族専用の門から王都に入ることができた。
「ムサシ、ありがとうな、おかげですんなり門を潜れたぜ。」姉御が言って来る。
「あぁ、姉御、俺は元のギルドがあった町に家を買ったから、何かあったら連絡をくれよ。」
「おぅ、解ったぜ。」
「姉御、これ選別な。」俺は金鶏を2羽ミロクから貰い、姉御に差し出す。
「ムサシ、これ金鶏じゃないか!」姉御がわなわなしながら言う。
「昨日散々食っていただろう。」俺が言う。
「なぁ、美味いと思っていたが、金鶏だったのかよ。」姉御が頭を抱える。
「自分で食うのも良し、ギルドに売るのも良し、好きにしてくれ。」俺は姉御に金鶏を渡す。
「あ、あぁ、ムサシ、ありがとうな。」姉御は何かを考えながら金鶏を受け取った。
「じゃぁな、ムサシ、達者でな!」姉御はそう言うと、護衛していたキャラバンと町に消えて行った。
「ムサシ様、盗賊の引き取りを完了しました、後ほど組合の方に報奨金を振り込ませていただきます。」衛兵が言って来た。
「それと、国王様より、ムサシ様の宿の提供がございます。」
「へぇ?」
「一番街にある、『帝都ホテル』をご利用ください。」
「ほほほ、帝都で1番の高級ホテルです、最低の部屋でも1泊10Gはくだらないとか。」ハコベさんが言って来る。
「マジで?」
「ほほほ、国王様にもお名前が知れ渡っているのですね。」ハコベが笑う。
「それと、国王様が謁見をしたいとおっしゃっております。」衛兵が言う。
「ん?」俺は違和感を覚える。
「謁見しろじゃなくて、謁見したいですか?」俺は衛兵に聞く。
「はい、国王様は、ムサシ様に謁見したいと。」
「それ、逆じゃないんですか?」俺は衛兵に言う。
「いえ、国王様より、ムサシ様には絶対に逆らうな、口答えするな、敵対するなと申し使っております。」衛兵が畏まって言う。
「ほほほ、私達はとんでもないお方に護衛について頂いたのですねぇ。」ハコベさんが感慨深げに言う。
「ハコベさん、頼みますから、以後も普通に接してください。」
「ほほほ、解っていますとも。」
「では、ムサシ様、私共の店までご同行ください。」ハコベが言う。
「あぁ。」俺は、馬車の後ろに座る。
(街中で、馬車の屋根に乗っていたら、変に思われるからな。)俺は思う。
暫く走ると、ハコベの王都本店に着いた。
「ほほほ、どうぞこちらに。」ハコベの案内で、店の応接室らしき処に案内された。
「ムサシ様、この度の護衛、ありがとうございました。」ハコベがその場で頭を下げる。
「いやいや、組合の仕事です。」俺は手を振る。
「あぁ、そう言えば、ワイバーンの膜を納品する事に成っていましたね。」俺はそう言いながらミロクからワイバーンの膜を受け取る。
「おぉ、傷一つない、これ、誰か。」ハコベさんが声を掛けると店員がそれを受け取って店の奥に運んでいく。
「ほほほ、組合を通さない御納品、ありがとうございます。」ハコベが頭を下げる。
「約束ですから。」俺は普通に答える。
「ほほほ、豪胆ですね。」ハコベが言う。
「?」俺は疑問に思うが、気にしないことにした。
「今回の報酬なのですが。」ハコベが切り出す。
「まず、ワイバーンの膜1500Gは当然として。」
「帝都までの護衛が30日で、150Gです。」
「はぁ?」
「そのほか、高級食材の提供、私も楽しませて頂きました、金鶏やナマズの肉など、100Gの価値が有ります。
「おぉぅ。」
「普通に提供された、オークキングのモツや、オークキングの食材も同じ価値が有ります。」ハコベが言って来る。
「そうなの?」俺は狼狽える。
「くふふ、それだけの価値があるんだよ。」ミロクが答える。
「すべてを考慮して、3000Gをお支払いします。」ハコベが言う。
「え? 3000G?」俺はハコベに問う。
「え? 足りませんか? 」ハコベが言う。
「3000Gかぁ、」俺は、その価値が解らない。
「解りました、ムサシ様、3100Gお支払い致します。」ハコベが値段を上げて来た。
「あぁ、それで良いです。」俺は訳もわからず答える。
「くふふ、妥当だね。」ミロクが言う。
「ムサシ様、本当にありがとうございます。」ハコベが頭を下げる。
ハコベは、俺の組合カードに4600Gを振り込んだ。
価格崩壊が起きそうだよ。
「ムサシ様、今後も宜しくお願い申し上げます。」ハコベが深々と頭を下げる。
「ははは、こちらこそ。」俺は答えた。
********
SIDE姉御。
「ムサシから貰ったけど、これは1羽10Gする高級食材だよなぁ。」姉御は金鶏を見て考え込む。
「昨日の料理は旨かったけど、これは納品だよなぁ。」姉御は決断する。
ギルドに入り、カウンターに行くと、受付嬢に死んだ仲間のギルドカードを出す。
「エリス様、これは?」
「あぁ、あたいが一緒に護衛任務を受けた冒険者のカードだ。」
「はい、え? 不敬罪ですか?」受付嬢がそのカードを端末に刺して言う。
「あぁ、よりにもよって、第三王女様の前で抜刀しやがった。」
「馬鹿なのですか?」受付嬢が言うが、その通りだ。
「あたいの知り合いが、その場で断罪したよ。」
「ほぇ~、凄いですね。」受付嬢が言う。
「そのお方は?」
「あぁ、国王様に呼ばれたみたいだ。」あたいが言う。
「へぇ、凄いですね。」
「で、今回は、護衛任務の報酬と、納品ですか?」
「あぁ、金鶏を2羽な、」あたいは言う。
「金鶏ですか?」
「あぁ。」
「1羽10Gです。」受付嬢が言うが、あたいは感じ取った。
ムサシは、どれだけ高級食材を狩っているんだろう。
「あたいは、ムサシの嫁になった方が良いかな。」あたいは思う。
ムサシなら、小さいころから色々仕込んで来たから、有りだよね。
あたいは思う。
「エリス様、今回の報奨金と納品で28Gです。」
「あぁ。」
「装備の買取も頼めるかい。」あたいはあいつらの装備をカウンターに並べる。
「はい、あぁ、全部で1Gです。」受付嬢が鑑定もしないで言う。
「其れで良いよ。」あたいが言う。
「あたいは、ムサシの嫁になろう。」その場で即決した。
「元のギルドが有った町で、家を買ったって言っていたから、そこに行って待っていればいいかな。」あたいは思う。
「何かこまい女が一緒にいたけど、あたいの魅力で落として見せるぜ。」
「押しかけ女房も良いもんだろう。」あたいはそう決心した。
実は、ムサシは姉御の本名を知りません。
そして、姉御が押しかけ女房を狙っていることも知りません。
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「組合」は、各ギルドの権利を守り、各ギルドから素材を買い上げています。
買い上げた素材は、商業組合や、鍛冶組合に納品し、各種薬や、剣や防具を受け取り、ギルドに販売します。
また、ギルド向けのクエストや、依頼の発注、受付、支払いなどを行っています。
組合は、各ギルドにランクを付けており、そのランクによって受けられるクエストや依頼が決まります。
「ギルド」は、元々は、組合のクエストや依頼を受けるために冒険者が集まった組織です。
ギルド内には、パーティーが複数あることが多く、それぞれのパーティーが独立して行動します。
ギルドは、定期的に組合からクエストや依頼を受け、ギルド内でパーティーに斡旋します。
クエストや依頼を達成した場合は、ギルドが達成報奨金を支払いますが、組合の達成報奨金の8割であることが殆どです。
中抜きした達成金は、事務員の給料、ギルドの維持費に回され、その他、組合に売り上げに対する、上納金を払う事にも使われます。
ムサシは、個人ギルドとして活動しています。




