表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/132

「あの、ムサシ様、その皮鎧は、ガキーン様が作られたのですか?」ハコベが俺に聞いてくる。

「あぁ、そうだ、軽くて使いやすいぞ。」俺が答える。


「何と、しかも、その素材は、わ、わ、わ、ワイバーンですか?」

「あぁ、俺が提供したからな。」


「む、ムサシ様は、ワイバーンの素材を持っていらっしゃるのですか?」

「ん? 皮は、ガキーンにやったから、翼の膜だけだな。」


「なんと!」ハコベが驚愕する。


「前回は、オークションで1500Gとか言っていたな。」俺は、思い出しながら言う。


「それを、売っていただけないでしょうか?」ハコベが恐る恐る聞いてくる。

「別に良いけど。」俺が答える。


「では、帝都に着きましたら、1500Gで買い取らせていただきます。」ハコベが平伏しながら言う。

「はいよ。」俺はそっけなく答える。


「しかし、ガキーン様の作られた、ワイバーンの皮鎧ですか、しかも籠手付き。」ハコベが考え込む。

「どうしました?」俺はハコベに聞く。


「ガキーン様の作られる、しかもワイバーンの皮鎧! 付与が無くても3000Gは・・・。」

「付与?」俺が聞く。


「はい、魔石を使って、色々な効果をつけるそうです。」ハコベが言う。


「あぁ、自動修復と、温度調節と、自動防御が付いていると言っていたな。」俺が答える。


「なんと、それは、10000G以上の価値が・・。」ハコベが固まる。


「そんなに凄いの?」俺が答える。


「国宝級、いえ、それ以上です。」ハコベは息を荒くしながら言う。

「へぇ。」俺はそっけなく言う。


「ほほほ、流石は『神の身代わり』様だと言う事ですね。」ハコベが何かを納得する。


「ムサシ様。」

「何だ。」


「因みにですが、どの様な物を提供したのですか?」

「あぁ、ワイバーンの皮とワイバーンの魔石、オークキングの魔石を数個、ミノタウルスの魔石十数個、オーガの魔石数個、オークの魔石数十個だな。」俺が答える。


「かはっ。」ハコベがその場に倒れる。

「おいおい、大丈夫か?」俺が言う。


「解りました、はい、解りました。」ハコベがその場で悶絶している。

「大丈夫かよ?」


「ふふふ、ガキーン様に何かを頼むには、10000Gが必要なのですね。」ハコベが笑いながら言う。

「違うと思うぞ。」俺が言う。

「何故そのように?」

「そういう感じじゃ、無かったんだよな。」俺が言う。

「はぁ?」ハコベは思案顔だ。


「何と言うか、男気?」俺が言う。

「男気? ですか?」


「あぁ、金とか、そう言う物じゃなくて、こころじゃないか?」俺が言う。

こころですか。」ハコベが何かを感じながら言う。


「あぁ。」

「何かが解ったような気がします。」ハコベが顔を上げて言う。


「そろそろ出発しませんか?」サノアさんが声を掛けてくる。

「は! そうでしたね。」ハコベが正気に戻った。


「では、出発しましょう!」ハコベの声で、馬車隊が動き出す。


 当然、俺とシズカは先頭の馬車の上だ。


「くふふ、ここからの街道には、美味しい食材はいないよ。」

「そうなのか?」

「うん。」


「なら、闘気を全開にして!」俺はそれを実行する。

「くふふ、帝都までは楽勝になったね。」ミロクが言う。


「あぁ、それなら楽勝だな。」俺が言う。

「くふふ、フラグ?」

「違うよ!」


「くふふ、そうだと良いねぇ。」

「ミロク、フラグを立てないでくれ。」俺はミロクに言う。

「くふふ。」


********


「流石に、魔物の襲撃は無いな。」俺は屋根の上で言う。

「くふふ、そうでもないんだよ。」

「え?」

「闘気を感じない、下等な魔物の襲撃が有るかもね?」

「ミロク。」

「何だい?」




「思いっきりフラグじゃねーか!」俺が叫ぶ。

「え? そうなのかい?」ミロクがあっけらかんと答える。


「灰色鼠が襲撃してきた!」御者が叫ぶ。

「灰色鼠が襲撃?」俺は疑問に思う。

 灰色鼠は、凄く温厚な動物で、ペットとして飼われることもある。

 体長は50cmぐらいで、群れで行動する。


「灰色鼠は、人を襲わないはずだ。」俺が叫ぶ。


「普通ならそうです。」

「では、やり過ごせば。」

「明確に、馬車を狙って来ています。」御者が叫ぶ。


「はぁ?」

「くふふ、発情期みたいだね。」

「発情期?」


「灰色鼠は、発情期になると、子供を産む準備のために肉を食べようとするんだよ。」

「へぇ?」

「好物は、馬肉なんだ。」


「そう言う事か。」俺は、馬車を飛び降りる。



「数は、100匹ぐらいか、よくそんな数で馬を襲おうと思ったな。」俺は地魔法で灰色鼠の進路を変えるために、土の壁を作る。


「進む先には、深い穴。」俺は地魔法で、直径5m、深さ30m位の穴を作った。


「ははは、面白いように落ちていくな。」

「で、穴に熱湯を入れる!」

「くふふ、酷いことを。」

「仕方が無いじゃないか、退治しないと馬車が襲われるし。」


「む、ムサシ様、その灰色鼠をお譲りいただけませんか?」ハコベが聞いてくる。

「はぁ? 全然問題ありませんが。」

「おぉ、それはありがたい、実は、灰色鼠の皮で作ったマフラーが、王都では人気でして。」

「へぇ。」


俺は、穴の中で静かになった灰色鼠それを魔法で持ち上げて、魔法で乾かし、ハコベの前に置いた。


「お前達。」ハコベが指示すると、

「はっ!」部下たちが、皮を剥ぎ始める。


「おぉ、見事なものだな。」

「ほほほ、いつもやっている事ですので。」


「へぇ、そうなのか?」

「発情期の灰色鼠の皮は、特に柔らかくて、引く手あまたなのですよ。」ハコベはニコニコ笑いながら言う。


「へぇ、そうなんですね。」俺は、俺が作った土の壁と穴を魔法で元に戻しながら言う。




「終わりました。」ハコベの部下が言う。

「ほほほ、ご苦労様です。」ハコベがニコニコしながら言う。


 其処には、灰色鼠の皮を剥がれた物が残っていた。

「ミロク。」

「くふふ、解っているよ。」そこに有ったものが塵になる。


「ほほほ、お待たせしました、では、進みましょう。」馬車が進み始める。


 そして、今日の野営の場所に着いた。


「さぁ、野営の準備です!」ハコベさんが部下に指示を出す。


 ハコベの部下たちは、各々別れ、テントを張り、竈の用意をした。


 俺は、それとは別に、複数の竈と調理台を地魔法で作り出し、料理の用意をし始める。


 俺は、俺の作った竈に、ミロクに持って貰っていた鍋をセットする。


 俺とシズカ用、姫様とサノア用(かなり大きめ)、ハコベ達用(すごく大きい)。


 俺は、それぞれの鍋に、昆布と俺特製の出汁袋を入れ、水魔法で水を張る。


 そこに、リョリとサノアさんがやって来た。


「今から、鍋の具材を提供します、が、お肉はもう用意しています。」

「え?」

「そんな。」リョリとサノアが落胆する。


「知りたければ、あとで教えます。」

「「はい。」」二人の声がハモル。


「竈に火を入れたら、鍋が煮た立つ前に、昆布を取り出してください。」

「何でですか?」サノアさんが俺に聞いてくる。


「あれ? 昆布は煮立たせると、苦みが出ますよね?」俺が質問する。

「そうなのですか?」サノアさんが言う。


「あれぇ?」俺は疑問に思う。


 ギルドの姉御たちは、普通にそれを実行していた。

(何で、料理な得意な人が、俺が知ってる技術を知らないんだろう?)俺は思う。


「とりあえず、俺が言った通りに行動してください。」

「はい。」

「解りましたわ。」


「鍋が煮たつ前に、白菜、大根、人参、椎茸を食べやすい大きさに切って、鍋に入れます。」

「「解りました。」」


「そして、事前に用意した、金鶏のもも肉とつみれを鍋に投入!」俺はそれを実行する。


「取り出した昆布は、細く切って佃煮にします。」俺は昆布を切りながら言う。


 細切りにした昆布を鍋に入れ、砂糖と酒、味醂と醤油を入れて、さらに出汁を入れ煮込む。


「数分煮込んで、汁けがなくなったら昆布の佃煮の完成だ。」俺は言う。


「成程。」

「解りました。」リョリとサノアが言う。



「何だろう、この二人の料理知識、低い!」俺は思う。


 とりあえず、今日の夜食は、金鶏の鍋だ。


 俺は、自家製のポン酢を取り出して、其処にいる皆に言う。

「これに食材を浸して食べると最高ですよ。」俺はそう言いながら、自家製のポン酢を提供する。


 カボスとスダチが手に入った俺は、速攻でポン酢を作った。

 色々なんちゃってだが、ポン酢は美味しかった。



「ほほほ、毎回食材を提供いただき、ありがとうございます。」ハコベが良い笑顔で言う。

「ははは、美味い物が食べたいだけですよ。」

「ムサシ様、ありがとうございます。」姫様もお礼を言ってくれる。

「いえいえ、姫様のお口に合えば良いのですが。」


「ふふふ、城でもなかなか食べられないものばかりです。」そう言いながら、パクパクと食べている。


「ほほほ、この肉団子は、コリコリとして美味いですな。」

「本当に。」


「ははは、金鶏のお肉をミンチにして、軟骨を入れています。」

「成程。」

「美味しい。」



「具が無くなったら、締めです。」俺は鍋に醤油を入れて味を調節し、ご飯を投入した。

「少し煮込んだら、卵を溶いてどばーっと入れる。」俺は溶き卵を回し入れた。


「卵が半熟になったら完成。」

俺がやったことを、サノアさんとリョリさんもそれぞれの鍋で行った。


「さぁ、お玉ですくって椀に入れてスプーンですくって食べてください。」俺はシズカの椀におじやを入れながら言う。

「ほれ。」俺は、椀をシズカに渡す。

「ありがとうございます。」シズカは椀を受け取ると、スプーンですくってふうふうと息をかけて口に入れる。

「美味しい。」

「ふふふ、そうだろう、そうだろう。」


「ほほほ、これは何とも。」

「温まりますね。」



 其処にいた、全員が鍋を堪能したようだ。


「くふふ、酷い飯テロだったよ。」ミロクが言う。


「実態が戻るまで、頑張れ。」俺はミロクに言う。

「くふふ、解っているよ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ