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旅の途中で

明けましておめでとうございます。

今年最初の投稿です。

次の野営まで。俺は闘気を全開にした。


狙って来る魔物はいなかった。


**********


「くふふ、君の本気の闘気は凄いね。」ミロクが褒めてくれる。


「何の事やら。」俺が答える。

「くふふ、どうして闘気を抑えなかったんだい?」


「姫様が、辛そうだったから。」

「ほぉ、惚れたのかい?」


「違うよ。」

「んじゃ、何でだい?」


「風呂に入りたそうにしていたからな。」

「それだけ?」


「あぁ。」

「ムサシが、風呂を作ってあげれば良いじゃないか。」ミロクが事も無げに言う。


「え?」

「魔法で、風呂を作ってやれば良いじゃないか。」

「あぁ、そうか。」


**********


 次の野宿をする場所に着いた。


 ハコベさんたちは、慣れたようにテントを張っている。


 俺は、姫様の馬車に向かった。


「サノアさん。」俺は、馬車の前で声を掛ける。

「ムサシ様、どうされました?」サノアが馬車から降りてくる。


「宜しければ、私が風呂を作ると、姫様にご報告して頂けませんか?」

「はい?」サノアさんが固まる。


「え~っと。」俺は、返事を待った。



「ひ、姫様に聞いてきます。」サノアさんが、馬車に入っていく。


「あれぇ、引かれた?」

「くふふ、こんな荒野で、風呂を作りましょうかって言う奴だよ。」


「やらかしたぁ!」

「くふふ、好感度がアップするかもね。」

「そうだと良いなぁ。」



「む、ムサシ様、姫様から是非にとのお答えが有りました。」

「承りました。」俺は礼をする。

「んじゃ、やるか。」俺は地魔法で風呂を作り出す。

「そして、その周りをタイル張りに。」俺は地魔法を駆使してそれを作り出す。

「そして、その周りに壁を。」風呂の周りに土の壁を作っていく。


「風呂のそばに湯壺を作り。」俺はそれを作る。


「完成だ。」

 其処には、簡易ながら、壁に囲まれた風呂が存在した。


「入るときに、声を掛けてくれれば、お湯を魔法で用意いたします。」

「解りました。」サノアさんが俺に礼をする。




「さて、今日も俺が食材を提供しましょう。」ハコベさんに俺が言う。

「おぉ、ムサシ様、本当にありがたい事です。」ハコベさんが、俺の前で深く礼をする。


「今日は、金鶏とナマズを提供します。」

「はぁ? ムサシ様、超がつく高級食材です、はっ! 昨日理性が飛んで食べたのは、それ以上の高級食材でした。」ハコベが、その場で土下座する。


「あああぁ、そう言えば。」

「俺たちは、なんてものを。」

「ムサシ様の分まで。」昨日の自分たちの行動を思い出して、御者とハコベの部下たちも土下座する。


「あぁ、良いよ、俺は今後、いくらでも食えるから。」俺が言う。


「あぁ、ムサシ様が、羨ましい。」ハコベが泣きながら言う。

「ムサシ様なら、高級食材が狩り放題なんですね。」姫様が馬車から出てきて言う。


「ははは、そうですね。」俺は頭を掻きながら答える。


「さて、食事の用意をしましょう。」俺が言うと、サノアさんと、リョリさんが俺の所にきた。


 ナマズの肉はかば焼きにした。


 ナマズの身を蒸した後、醤油と酒と味醂を1対1対1で混ぜたものを身に塗って、炭火焼する。


 皮を下にして焼くのがポイントだ。

 皮目がパリッと焼き上がり、身はふっくらと焼きあがる。 

 究極の焼き方だ。


 サノアさんも、リョリさんも俺の技を取得したようだ。


 金鶏はいつものように、から揚げにする。


 俺が捌く様子を、サノアさんも、リョリさんもじっと見ていた。

(二人が、覚えてくれれば良いな。)俺が思う。


 金鶏のもも肉をボウルに入れて、醤油と味醂、酒と生姜の絞り汁、大蒜の搾り汁を入れて手でよく揉みこむ。


 その後は、片栗粉を良くまぶして、180度の油できつね色になるまで揚げて、その後余熱で火を通す。


 俺は、もも肉のから揚げを作っていく。 


「もも肉以外はどうするのですか?」リョリさんが聞いてくる。

「違う料理に使います。」俺が言うと。

「それも、教えて戴けるのですか?」リョリさんが言う。

「勿論です。」俺が答える。

「おぉ。」

「嬉しい。」


「むね肉は照り焼きに、手羽先や手羽元は煮込みに、モツはいつも通り。」


「おぉぉぉ、この様な料理法が。」

「今まで捨てていた所がこのような食材になるとは。」リョリさんと、サノアさんが驚愕している。


「照り焼きは、さっきのかば焼きのたれに砂糖を足して、肉は皮をフォークでぶすぶすと刺して穴を開ける。」俺はそれを実行する。


「そして、フライパンを火にかけて、温かくなったら皮目から焼いていくっと。」


「油をひかなくていいのですか?」リョリさんが聞いてくる。

「肉から出ますから。」

「ほぉ。」


「焼いている間に、別の鍋を用意して、水を張り手羽先と手羽元を入れる。」俺はてきぱきと実行する。


「んで、砂糖、生姜の薄切りを入れて、火にかける。」

「おぉ。」リョリさんが驚愕する。


「んで、フライパンの方が良い具合になったので、肉を裏返す。」俺が肉を裏返すと。


「おぉ~、良い色ですなぁ。」リョリさんがうっとりとして言う。


「んで、へらで押さえつけ、出て来た油をふき取りながら焼いていく。」

「何故ですか?」

「皮がパリッとするんです。」

「成程。」


「んで、ある程度焼けてきたら、さっきのタレを入れて、ぐつぐつするまで待つ。」

「ほぉ。」


「ぐつぐつ言ってきて、とろみが出てきたら、スプーンで汁をすくって肉にかけてやります。」俺はそれを実行する。




「そして、タレが無くなってきて、肉の上に残るようになったら完成です。」俺はフライパンを火からおろして、肉をまな板の上にのせて、一口大に切って皿に乗せる。


「「おぉ~。」」リョリさんとサノアさんが感動している。

(料理人なのに、こんなのも知らないのか?)俺が思うが、余熱で火を通すことも知らなかったので、何とか納得した。



「んで、鍋の方が良い具合になったので、肉を取り出して鍋の煮汁を捨てます。」

「おや? スープとかに使わないのですか?」リョリさんが聞いてくるが、

「色々な雑味が有るので、捨てます。」俺が言うと、

「おぉ、そう言う事か。」と納得した。


「んで、肉を鍋に戻して、もう一度水を張る前に、醤油、酒、味醂、砂糖を適量鍋に入れ、生姜の薄切り、葱の白いところを入れたら、水を肉がひたひたになるまで入れて、火にかける。」

「おぉ。」


「今回は、別に煮ていたモツも一緒に入れて煮込みます。」

「おぉ、其れで良いのですか?」

「煮込みは、そんなもんです。」

「成程。」


「さぁ、素材は提供します、リョリさんもサノアさんも、俺がやったことを実践してください。」そう言いながら、俺は、ナマズの肉と、金鶏を数羽取り出す。


「承知!」

「解りましたわ」二人がその食材を料理し始めたので、俺はシズカの所に帰って来た。


「お帰りなさい、ムサシ様。」

「あぁ、ただいま、シズカは料理に興味がないのか?」俺はシズカに聞く。


「昔、お母さんが、『シズカは料理をしなくて良い。』って言いました。」

「おぅ、そうか。」俺は、温かい目でシズカを見た。


「どういう意味なんでしょう?」

「いや、シズカは気にしなくて良いぞ。」

「そうなのですか?」

「あぁ、気にしなくて良い。」大事な事なので、2回言った。




「できました。」

「完成です。」サノアとリョリが料理の完成を告げる。


「ハコベさん、パンの提供を。」

「はい、承りました。」ハコベが、部下に指示する。


 俺は、煮込み鍋の所に行って、味を確認する。


 手羽先も、手羽元も、モツも甘辛く煮込まれて、生姜が臭みを消している。


「ははは、これは白飯が何杯でも行ける奴だ。」俺が呟く。

「白飯とは?」リョリさんが聞いてくる。


「米を炊いたものです。」俺が言う。


「なんと、では、明日は米を炊きましょう。」リョリさんが言う。

「米があるんですか?」

「えぇ、持って来ていますが。」


「あぁ、失敗した、今日の料理も、昨日の料理も、飯に合うんですよ」俺が言う。

「おぉ、それは、それは、では、明日は、米を炊きましょう。」リョリさんが言う。


「それ、明日も俺に料理を作れと言ってないですか?」

「ははは、まさかぁ。」そう言いながら、リョリは俺から目を逸らした。


(ふっ、残念だったな、明日は次の村に着くはずだ。)俺は黒い心で思う。



「さぁ、いただきましょう!」ハコベの温度で食事が始まる。


「あぁ、これはこれでいけるな。」俺は、ナマズのかば焼きをパンに挟んで食う。

「ん、美味しい。」シズカも俺の真似をした。


「ムサシ様、そんな食べ方があるのなら、教えてくださいまし。」姫様が頬を膨らませながら言う。


「多分、行儀が悪い食べ方ですよ。」俺が言うと、姫様は目をそらしてパンにかぶりついた。


(その食べ方が、気に入ったのね。)俺は、生暖かい目で姫様を見守った。


 しかし、俺達は、ナマズのカバ焼きサンド、金鶏のから揚げサンド、金鶏の照り焼きサンド、金鶏の煮込みはさみサンドを充分に堪能した。


(姫様、その食べ方を知ったら、戻れないんじゃないの?)俺はそう思ったが、無視した。




「ムサシ様、お風呂をお願いいたします。」食事が終わった後で、姫様からお願いされた。


 俺は、風呂場に行き、風呂桶に42度のお湯を張り、湯桶にも同じ温度のお湯を用意した。


 身体を洗う石鹸や、頭を洗う石鹸は、手持ちが有るらしい。


 姫様は風呂を堪能したらしい。


 らしいというのは、サノアさんが、俺にこっそり湯船と湯桶のお湯をお願いされたからだ。

 姫様一人で、お湯を使い切ったようだ。


 俺は、サノアさんのために、湯船と湯桶のお湯を入れ替えた。


 誰だ、姫様汁の出たお湯、1リットル5Gとか言う奴。


 需要有るのか?


 有るなら・・いやいや、俺は其処迄変態じゃない。


 きっちり、廃棄したよ。

 勿論、廃棄したよ。

 確実に、廃棄したよ!


 大事な事なので、3回宣言しました。


 その後、ハコベさんたちも、風呂を使いたいと言うので、別料金で用意した。


 最後に、シズカと一緒に風呂を堪能して、風呂を土に戻した。


 ハコベさんが、何かを考えていたが、今回は無視することにした。


「ミロク。」

「うわぁ、何だいムサシ?」


「いや、静かだなと思って。」

「くふふ、忘れられているのかと思ったよ。」

「そんな訳ないだろう。」


「くふふ、嬉しいよ。」

「今回も、魔石は凍結か?」


「うん。」

「いったい何に使うんだ?」

「そうだね、もう教えても良いかな。」

「え?」


「ムサシの装備に使う。」

「俺の装備?」


「あぁ、武器は、あたしが貸した天叢雲剣が有るから良いけど。」

「?」


「防具が、紙だ。」


「え?」

「前回買った防具も、紙だよ。」

「そうなの?」


「だから、王都に行ったら、防具屋にいく、これ決定!」ミロクが言う。


「解った。」

「くふふ、理解が早くって助かるよ。」


「褒めるなよ。」

「褒めていないよ、一般論だ。」

「酷いな。」


「くふふ、ムサシのためさ。」ミロクが手を差し出す。

「解った。」俺はその手に拳骨を合わす。


 俺たちの手が合わさる。


「何で、手が合わさるんだ?」相変わらず実体がないミロクに俺が言う。

「くふふ、愛の力?」ミロクが言うが、俺はミロクを張り倒した。


「馬鹿言ってるんじゃねーよ。」俺はミロクに言う。

「何で私を張り倒せるんだい?」ミロクが涙目で言う。


「知らん!」

「酷い!」


 ミロクとのこの距離感も今は好きだと思う。

お読みいただき、ありがとうございます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

                      超月 聖 拝

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