旅の途中で
明けましておめでとうございます。
今年最初の投稿です。
次の野営まで。俺は闘気を全開にした。
狙って来る魔物はいなかった。
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「くふふ、君の本気の闘気は凄いね。」ミロクが褒めてくれる。
「何の事やら。」俺が答える。
「くふふ、どうして闘気を抑えなかったんだい?」
「姫様が、辛そうだったから。」
「ほぉ、惚れたのかい?」
「違うよ。」
「んじゃ、何でだい?」
「風呂に入りたそうにしていたからな。」
「それだけ?」
「あぁ。」
「ムサシが、風呂を作ってあげれば良いじゃないか。」ミロクが事も無げに言う。
「え?」
「魔法で、風呂を作ってやれば良いじゃないか。」
「あぁ、そうか。」
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次の野宿をする場所に着いた。
ハコベさんたちは、慣れたようにテントを張っている。
俺は、姫様の馬車に向かった。
「サノアさん。」俺は、馬車の前で声を掛ける。
「ムサシ様、どうされました?」サノアが馬車から降りてくる。
「宜しければ、私が風呂を作ると、姫様にご報告して頂けませんか?」
「はい?」サノアさんが固まる。
「え~っと。」俺は、返事を待った。
「ひ、姫様に聞いてきます。」サノアさんが、馬車に入っていく。
「あれぇ、引かれた?」
「くふふ、こんな荒野で、風呂を作りましょうかって言う奴だよ。」
「やらかしたぁ!」
「くふふ、好感度がアップするかもね。」
「そうだと良いなぁ。」
「む、ムサシ様、姫様から是非にとのお答えが有りました。」
「承りました。」俺は礼をする。
「んじゃ、やるか。」俺は地魔法で風呂を作り出す。
「そして、その周りをタイル張りに。」俺は地魔法を駆使してそれを作り出す。
「そして、その周りに壁を。」風呂の周りに土の壁を作っていく。
「風呂のそばに湯壺を作り。」俺はそれを作る。
「完成だ。」
其処には、簡易ながら、壁に囲まれた風呂が存在した。
「入るときに、声を掛けてくれれば、お湯を魔法で用意いたします。」
「解りました。」サノアさんが俺に礼をする。
「さて、今日も俺が食材を提供しましょう。」ハコベさんに俺が言う。
「おぉ、ムサシ様、本当にありがたい事です。」ハコベさんが、俺の前で深く礼をする。
「今日は、金鶏とナマズを提供します。」
「はぁ? ムサシ様、超がつく高級食材です、はっ! 昨日理性が飛んで食べたのは、それ以上の高級食材でした。」ハコベが、その場で土下座する。
「あああぁ、そう言えば。」
「俺たちは、なんてものを。」
「ムサシ様の分まで。」昨日の自分たちの行動を思い出して、御者とハコベの部下たちも土下座する。
「あぁ、良いよ、俺は今後、いくらでも食えるから。」俺が言う。
「あぁ、ムサシ様が、羨ましい。」ハコベが泣きながら言う。
「ムサシ様なら、高級食材が狩り放題なんですね。」姫様が馬車から出てきて言う。
「ははは、そうですね。」俺は頭を掻きながら答える。
「さて、食事の用意をしましょう。」俺が言うと、サノアさんと、リョリさんが俺の所にきた。
ナマズの肉はかば焼きにした。
ナマズの身を蒸した後、醤油と酒と味醂を1対1対1で混ぜたものを身に塗って、炭火焼する。
皮を下にして焼くのがポイントだ。
皮目がパリッと焼き上がり、身はふっくらと焼きあがる。
究極の焼き方だ。
サノアさんも、リョリさんも俺の技を取得したようだ。
金鶏はいつものように、から揚げにする。
俺が捌く様子を、サノアさんも、リョリさんもじっと見ていた。
(二人が、覚えてくれれば良いな。)俺が思う。
金鶏のもも肉をボウルに入れて、醤油と味醂、酒と生姜の絞り汁、大蒜の搾り汁を入れて手でよく揉みこむ。
その後は、片栗粉を良くまぶして、180度の油できつね色になるまで揚げて、その後余熱で火を通す。
俺は、もも肉のから揚げを作っていく。
「もも肉以外はどうするのですか?」リョリさんが聞いてくる。
「違う料理に使います。」俺が言うと。
「それも、教えて戴けるのですか?」リョリさんが言う。
「勿論です。」俺が答える。
「おぉ。」
「嬉しい。」
「むね肉は照り焼きに、手羽先や手羽元は煮込みに、モツはいつも通り。」
「おぉぉぉ、この様な料理法が。」
「今まで捨てていた所がこのような食材になるとは。」リョリさんと、サノアさんが驚愕している。
「照り焼きは、さっきのかば焼きのたれに砂糖を足して、肉は皮をフォークでぶすぶすと刺して穴を開ける。」俺はそれを実行する。
「そして、フライパンを火にかけて、温かくなったら皮目から焼いていくっと。」
「油をひかなくていいのですか?」リョリさんが聞いてくる。
「肉から出ますから。」
「ほぉ。」
「焼いている間に、別の鍋を用意して、水を張り手羽先と手羽元を入れる。」俺はてきぱきと実行する。
「んで、砂糖、生姜の薄切りを入れて、火にかける。」
「おぉ。」リョリさんが驚愕する。
「んで、フライパンの方が良い具合になったので、肉を裏返す。」俺が肉を裏返すと。
「おぉ~、良い色ですなぁ。」リョリさんがうっとりとして言う。
「んで、へらで押さえつけ、出て来た油をふき取りながら焼いていく。」
「何故ですか?」
「皮がパリッとするんです。」
「成程。」
「んで、ある程度焼けてきたら、さっきのタレを入れて、ぐつぐつするまで待つ。」
「ほぉ。」
「ぐつぐつ言ってきて、とろみが出てきたら、スプーンで汁をすくって肉にかけてやります。」俺はそれを実行する。
「そして、タレが無くなってきて、肉の上に残るようになったら完成です。」俺はフライパンを火からおろして、肉をまな板の上にのせて、一口大に切って皿に乗せる。
「「おぉ~。」」リョリさんとサノアさんが感動している。
(料理人なのに、こんなのも知らないのか?)俺が思うが、余熱で火を通すことも知らなかったので、何とか納得した。
「んで、鍋の方が良い具合になったので、肉を取り出して鍋の煮汁を捨てます。」
「おや? スープとかに使わないのですか?」リョリさんが聞いてくるが、
「色々な雑味が有るので、捨てます。」俺が言うと、
「おぉ、そう言う事か。」と納得した。
「んで、肉を鍋に戻して、もう一度水を張る前に、醤油、酒、味醂、砂糖を適量鍋に入れ、生姜の薄切り、葱の白いところを入れたら、水を肉がひたひたになるまで入れて、火にかける。」
「おぉ。」
「今回は、別に煮ていたモツも一緒に入れて煮込みます。」
「おぉ、其れで良いのですか?」
「煮込みは、そんなもんです。」
「成程。」
「さぁ、素材は提供します、リョリさんもサノアさんも、俺がやったことを実践してください。」そう言いながら、俺は、ナマズの肉と、金鶏を数羽取り出す。
「承知!」
「解りましたわ」二人がその食材を料理し始めたので、俺はシズカの所に帰って来た。
「お帰りなさい、ムサシ様。」
「あぁ、ただいま、シズカは料理に興味がないのか?」俺はシズカに聞く。
「昔、お母さんが、『私は料理をしなくて良い。』って言いました。」
「おぅ、そうか。」俺は、温かい目でシズカを見た。
「どういう意味なんでしょう?」
「いや、シズカは気にしなくて良いぞ。」
「そうなのですか?」
「あぁ、気にしなくて良い。」大事な事なので、2回言った。
「できました。」
「完成です。」サノアとリョリが料理の完成を告げる。
「ハコベさん、パンの提供を。」
「はい、承りました。」ハコベが、部下に指示する。
俺は、煮込み鍋の所に行って、味を確認する。
手羽先も、手羽元も、モツも甘辛く煮込まれて、生姜が臭みを消している。
「ははは、これは白飯が何杯でも行ける奴だ。」俺が呟く。
「白飯とは?」リョリさんが聞いてくる。
「米を炊いたものです。」俺が言う。
「なんと、では、明日は米を炊きましょう。」リョリさんが言う。
「米があるんですか?」
「えぇ、持って来ていますが。」
「あぁ、失敗した、今日の料理も、昨日の料理も、飯に合うんですよ」俺が言う。
「おぉ、それは、それは、では、明日は、米を炊きましょう。」リョリさんが言う。
「それ、明日も俺に料理を作れと言ってないですか?」
「ははは、まさかぁ。」そう言いながら、リョリは俺から目を逸らした。
(ふっ、残念だったな、明日は次の村に着くはずだ。)俺は黒い心で思う。
「さぁ、いただきましょう!」ハコベの温度で食事が始まる。
「あぁ、これはこれでいけるな。」俺は、ナマズのかば焼きをパンに挟んで食う。
「ん、美味しい。」シズカも俺の真似をした。
「ムサシ様、そんな食べ方があるのなら、教えてくださいまし。」姫様が頬を膨らませながら言う。
「多分、行儀が悪い食べ方ですよ。」俺が言うと、姫様は目をそらしてパンにかぶりついた。
(その食べ方が、気に入ったのね。)俺は、生暖かい目で姫様を見守った。
しかし、俺達は、ナマズのカバ焼きサンド、金鶏のから揚げサンド、金鶏の照り焼きサンド、金鶏の煮込みはさみサンドを充分に堪能した。
(姫様、その食べ方を知ったら、戻れないんじゃないの?)俺はそう思ったが、無視した。
「ムサシ様、お風呂をお願いいたします。」食事が終わった後で、姫様からお願いされた。
俺は、風呂場に行き、風呂桶に42度のお湯を張り、湯桶にも同じ温度のお湯を用意した。
身体を洗う石鹸や、頭を洗う石鹸は、手持ちが有るらしい。
姫様は風呂を堪能したらしい。
らしいというのは、サノアさんが、俺にこっそり湯船と湯桶のお湯をお願いされたからだ。
姫様一人で、お湯を使い切ったようだ。
俺は、サノアさんのために、湯船と湯桶のお湯を入れ替えた。
誰だ、姫様汁の出たお湯、1リットル5Gとか言う奴。
需要有るのか?
有るなら・・いやいや、俺は其処迄変態じゃない。
きっちり、廃棄したよ。
勿論、廃棄したよ。
確実に、廃棄したよ!
大事な事なので、3回宣言しました。
その後、ハコベさんたちも、風呂を使いたいと言うので、別料金で用意した。
最後に、シズカと一緒に風呂を堪能して、風呂を土に戻した。
ハコベさんが、何かを考えていたが、今回は無視することにした。
「ミロク。」
「うわぁ、何だいムサシ?」
「いや、静かだなと思って。」
「くふふ、忘れられているのかと思ったよ。」
「そんな訳ないだろう。」
「くふふ、嬉しいよ。」
「今回も、魔石は凍結か?」
「うん。」
「いったい何に使うんだ?」
「そうだね、もう教えても良いかな。」
「え?」
「ムサシの装備に使う。」
「俺の装備?」
「あぁ、武器は、あたしが貸した天叢雲剣が有るから良いけど。」
「?」
「防具が、紙だ。」
「え?」
「前回買った防具も、紙だよ。」
「そうなの?」
「だから、王都に行ったら、防具屋にいく、これ決定!」ミロクが言う。
「解った。」
「くふふ、理解が早くって助かるよ。」
「褒めるなよ。」
「褒めていないよ、一般論だ。」
「酷いな。」
「くふふ、ムサシのためさ。」ミロクが手を差し出す。
「解った。」俺はその手に拳骨を合わす。
俺たちの手が合わさる。
「何で、手が合わさるんだ?」相変わらず実体がないミロクに俺が言う。
「くふふ、愛の力?」ミロクが言うが、俺はミロクを張り倒した。
「馬鹿言ってるんじゃねーよ。」俺はミロクに言う。
「何で私を張り倒せるんだい?」ミロクが涙目で言う。
「知らん!」
「酷い!」
ミロクとのこの距離感も今は好きだと思う。
お読みいただき、ありがとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
超月 聖 拝




