買取
本日3話目の投稿です。
先に前の2話をお読みください。
「俺のギルドは消滅してるから、買取してくれるところがないよ。」
「大丈夫、組合に行って。」
「え?」
「組合に行って、あたしの石を見せて、『神の身代わりになった。』と言えば大丈夫。」
「神の身代わり?」
「うん。」
「聞いたことないんだけど。」
「大丈夫だから、組合に行け!」
「あぁ。」
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俺は、言われるまま、ギルドを纏める組合の前まで歩いた。
そこは、レンガ造りの荘厳な建物だった。
俺が、入口を潜ると、綺麗なお姉さんが声をかけて来た。
「こんにちは、初めての方ですね?」
「はい。」
「今回は、どのような御用でしょうか?」
「あの。」
「ギルドの立上げ申請なら、1番窓口へ。」
「ギルドの規模拡大申請なら2番の窓口へ。」
「その他、ギルドの解体、他ギルドへの吸収合併、その他は3番の窓口にお進みください。」
俺は、さっき言われた通り、石を見せて言う。
「神の身代わりになった。」
「はい?」お姉さんが固まる。
「神の身代わりになった。」俺はもう一度言う。
「はい、こちらへ。」お姉さんが笑顔を張り付けたまま、俺を案内した先は組合長の部屋だった。
「組合長。」そう言いながら、お姉さんがドアを3回ノックする。
「入れ!」
「失礼します。」そう言いながら、お姉さんがドアを開けてそこに入る。
俺もそれに続いた。
「どうした?」其処にいた、恰幅のいい男が言う。
「こちらの方が。」
「あぁ?」
「神の身代わりになったと。」
「あ?」
「あぁ、初めまして、俺が神の身代わりになった男だ。」
「がはははは、神の身代わりになっただと?」
「あぁ、不本意ながらな。」
「がははは、その根拠は?」
「これだ。」俺は石を見せる。
「なぁ?」その石を見た途端に、其処にいた男が固まる。
「組合長?」
「言い伝えは、本当だったのか。」
「?」
「代々、俺たち組合長に伝えられた言葉がある。」
「ほぉ。」
「曰く、虹色に輝く石を持ったものが現れ、神の身代わりになったと告げた場合、その身分を保証して、全ての権利を許可した証明書を与えると。」
「おぉ、それは助かる。」
「このお方に、許可証の発行を!」
「はい、組合長。」
「恩にきる。」
「何を言う、俺の代でその存在が現れた事を誇りに思うよ。」
「神の身代わりは、300年前には普通に存在したらしい。」
「だいたい30年位で、世代交代をしていたと言う事だ。」
「それぞれが、素晴らしい働きをしたと伝承にある。」
「それが、300年前に、急に廃れた。」
(あぁ、ミロクが食われたからか。)
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「こちらが、身分を証明する物です。」お姉さんがカードを渡してくる。
「ありがとう。」
「いえ、どういたしまして。」
「早速、買取をお願いしたいんだけど。」
「はい、こちらへどうぞ。」お姉さんが、奥のカウンターに案内してくれる。
「こちらへお出しください。」
「え?」
「どうしました?」
「すみません、全部出せないかも。」
「は?」
「何を言ってるんですか?」
「いや、数回に分ければ出せなくもないです。」
「え~っと?」
「兄ちゃん、裏に回れ。」其処にいたおっちゃんが言う。
「あの?」
「姉ちゃん、後は引き継ぐぞ。」おっちゃんが言う。
「では、お願いいたします。」お姉さんが奇麗にお辞儀をして受付に戻る。
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「で、何を出してくるんだ?」
「はい、これです。」俺はミロクが持っていたものを取り出す。
「なぁ?」
「え~っと、オーク肉1280kg、オークの魔石128、オーガの魔石72個、オーガの爪1440、オーガキングの爪20とオーガキングの魔石1.」
「おいおい、勘弁してくれ、とんでもない納品だ。」
「そうなの?」
「オーク肉は1kgが600Bだから、768Gだ。」
※1000B=1G=10000円です。
「あぁ。」
「オークの魔石は、1個500Bだから64Gだ。」
「おぉぅ。」
「オーガの魔石1個1Gで、爪は10個で1Gだ。」
「つまり、魔石が72Gで、爪が144Gだと。」
「更にとんでもないのが、オーガキングだ。」
「はぁ?」
「オーガキングの魔石は30Gだ。」
「はぁ?」
「そして、その爪は一つが2Gだ。」
「えっと、40Gって事?」
「とんでもないものを納品してくれるぜ。」おっちゃんが言う。
「おれは、買取担当のオーマケだ、今後ともよろしく頼むぞ。」そう言って右手を出してくる。
「あぁ、宜しく。」そう言いながら俺が出した右手を、オーマケは握りしめてブンブンと振る。
「がははは、久々に楽しくなってきたぜ。」
「お、お手柔らかに。」
「今後とも、納品してくれることを望むぜ。」
「あぁ、都合が合えば。」
「だははは、頼むぜぃ。」
俺は組合を後にした。
「なんか、凄いものを納品した気がする。」
「凄いものを納品したんだよ。」
「まじかぁ。」
「あたしに任せろ。」ミロクがニカっと微笑んだ。
「今日は、もう休もうか。」
「あぁ。」俺は同意する。
「昨日と同じ宿で、泊まろう。」
「いや、風呂に入りたい。」
「えぇ?」
「流石に、臭いが気になる。」
「あぁ、解ったよ。」
「?」
「浄化!」
「え?」
「これで、あんたの身体は奇麗になったよ。」
「は?」
「呆けてないで、魔法だよ。」
「確かに、臭いが消えている。」
「お風呂に入った以上の効果があるよ。」
「そうらしいな。」
「んじゃ、ご飯を食べて寝ようか。」
「邪な気を感じる。」
「ぐふふ、気のせいだよ。」ミロクがにっこりと微笑んだ。
宿に着いた俺は、風呂無し、食事なしの部屋を頼んだ。
「食事しないの?」
「いや、近くの屋台で食ってくる。」
「あぁ、そう。」ミロクが詰まんなそうに言うが無視だ。
俺は、その足で宿の前の屋台を冷やかした。
「良い匂いだな。」
「おぉ、此処はランナー鶏の焼き鳥の店だ、美味いぞ。」
「あぁ、良い匂いだ、2本くれ。」
「あいよ。」
「お待ちどうさま。」目の前の皿に2本の串が置かれる。
「どれ?」俺はその串を持って、口に入れる。
「あぁ、美味いな。」
「へへへ、そうだろう。」
「おやじラガーないか?」
「20Bだ。」
「あぁ。」俺は20Bを屋台に置く。
「毎度。」
俺はそれを煽る。
「く~、美味い!」
俺は、それを堪能した。
数件の屋台を冷やかし、満腹になった俺は、宿に帰ってベットに潜った。
相変わらず、実体のない存在がウザかったので、今日もその存在の腹に一発入れた。
「安眠は正義だ。」俺は眠りに落ちた。
オーク肉の計算が違っていたので訂正しました。




