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旅立ち

 旅立ちの日が来た。

 俺とシズカは、指定された時間に南門に出向いた。


「ムサシ様、こちらです。」ハコベが満面の笑みで俺に言う。

「あぁ、今回もよろしく頼む。」俺はハコベと握手しながら言う。


「おや、そちらの方は?」ハコベはシズカを見て言う。

「あぁ、俺の弟子だ、行程の邪魔はさせない。」


「おや、そう言う事なら歓迎いたします。」ハコベがシズカに言う。

 シズカは、無言で礼をした。


「いつでも行けるぞ。」俺が言う。

「はい、開門したら出発します。」ハコベはそう言いながら馬車に乗った。


「ほぉ、今回は馬車5台か、大所帯だな。」

「くふふ、魔物の襲撃よりも、盗賊の方が心配だね。」


「まぁ、俺も少しは強くなったから、大丈夫だろう。」

「くふふ、少しねぇ。」


「出発します。」ハコベの声で、俺とシズカは先頭の馬車の屋根に乗り込んだ。

「ハコベ様、護衛はあの者一人だけで大丈夫なのですか?」御者が問う。

「あのお方がいれば、護衛30人よりも安全だ。」

「そうなのですか?」

「あぁ、前回は、オークキングが率いるオークの集団を一瞬で殲滅なされたのだ。」

「オークキング、本当ですか?」

「勿論だ、この目で見たからな。」

「成程、安心しました。」


 馬車は門を潜った。


「ムサシ様、少し心配です。」

「シズカ、ミロクがいれば何も心配しなくても良い。」

「はい。」

「くふふ、任せて。」




「そして、何も襲撃がなく、村に着いた。」

「襲撃がなかったな。」俺が呟く。

「ムサシ様の御威光です。」ハコベが俺に礼をする。


(おいおい、宗教化してないか?)俺が思う。


「では、明日は今日と同じように、南門を6時に出発です。」ハコベはそう言って自分たちの宿に向かった。


「さて。」俺はテトの宿に向おうとした。

「あ~、ムサシさんだ!」テトの叫ぶ声が聞こえる。


「ははは、見つかった。」俺はそう言いながら、テトに手を振る。

「今回も、うちに泊まってくれるんで・す・よ・ね?」テトが俺の横のシズカを見て語尾を詰まらせる。

「あぁ、今回は、弁当無しで二人だ。」俺が言う。

「あの、夜伽は?」テトが顔を真っ赤にして言う。

「要らない。」

「なんだぁ、そうかぁ。」テトが残念そうな顔をして言う。

 そして、シズカをちらっと見て言う。

「あたしとそんなに歳が違わないのに・・。」


「言っておくが、こいつは俺の弟子だ、そう言う対象じゃないぞ。」

「にしし、そうなんだ。」なんだかテトは嬉しそうだ。




「お母さん、お客さん連れて来たよ。」テトが、カウンター越しに大声を出す。


「あらあら、いらっしゃいませ。」カウンターの奥からニホが出てくる。

「2名様、一泊2食で1600B!」テトが元気よく言う。


「おや、ムサシ様、いらっしゃいませ。」

「おぉ、又世話になるな。」俺は、カウンターに料金を置きながら言う。


「おや、お連れ様がいらっしゃる? テトの夜伽はいりませんか?」

「ツレがいなくてもいらないから。」俺は力強く言う。


「そうかい、残念だねえ。」

(ニホさん、あんたは娘を如何しようとしてるんだい? 場合によってはシズカ同様保護するよ!)俺は心の中で思う。


「テト、部屋の鍵だよ。」ニホはカウンターに鍵を置く。

「にしし、解ったぁ、ムサシ様こっちだよ。」テトが2階の部屋に案内する。


「お風呂はいつでも使って、晩御飯は呼びに来るからね。 じゃぁ、ごゆっくり!」テトは説明をしたら一階に戻って行った。


「夜伽は無いだろうな?」

「くふふ、とりあえずシズカがいるから大丈夫じゃないかな?」ミロクが言う。


「シズカはまだ、未成年だろう。」俺がそう言うと。

「くふふ、12歳だから、ぎりぎりセーフだよ。」ミロクが悪魔の囁きをする。

「ミロク、マジで言ってるのか?」俺が目の光を無くして言う。


「え? やだなぁ、ムサシ、冗談に決まっているじゃないか。」ミロクがあたふたして言う。


「そうか、なら良いや。」


「んじゃ、シズカ、風呂に入ってこい。」

「え?」


「風呂だよ。」


「入った事が無いから解らない。」

「は?」


「いつもはどうしてるんだ?」

「お湯にタオルを浸けて、身体を拭いてる。」


「仕方ない、教えてやる。」俺はそう言うと、風呂の道具を一式持って風呂にシズカを連れて行った。


「服を全部脱げ。」俺はそう言いながら、服を脱ぎ始める。

「え?」シズカは、其処で固まった。

「風呂に入るときは、服を全部脱ぐんだ。」俺はそう言いながら、全裸になる。

 そして、何事もなかったように風呂に入る。


 シズカは少し躊躇ったが、服を脱いで全裸になってムサシに続く。


「湯船に浸かる前に、身体を洗うんだ、やってやるからここに座れ。」俺は、洗い場の前にある椅子にシズカを座らせる。

 シズカは、恥ずかしがりながら、その椅子に座った。


 俺は、備え付けの石鹸を手に取り、自分の手を石鹸の泡だらけにした。

「今から、お前を洗う、くすぐったいかも知れないけど、耐えろ。」俺はそう言うと、シズカの身体を洗い始める。

「え? きゃっ! はぅ!」シズカが変な声を上げる。

 勿論、胸や脇腹、あそこも丁寧に洗った。」

 シズカは、恍惚の顔で撃沈していた。


「くふふ、ムサシはテクニシャンだね!」

「ギルドの姉さんたちに仕込まれたからな。」俺は昔を思い出しながら言う。

「くふふ、身体が戻ったら、あたしにもお願いして良いかい?」

「あぁ、勿論だ。」


「頭は、きっとこれだな。」石鹸の横に有った容器を取り、中身を掌に出す。

 クンクンと臭いをかいで、間違いなく頭用の石鹸だと確認して、両手で泡立ててシズカの頭を洗ってやる。


「お湯をかけるから、耳を手で塞いで、目を瞑っていろ。」

「はい。」


 俺は、湯壺(湯船ではなく、お湯をためてある壺)からお湯を桶で汲み、シズカの髪を洗ってやる。

 数回濯いだら、まだ放心状態のシズカを湯船に入れる。


 湯船にシズカを入れた俺は、自分の身体も洗う。


「あぁ、やっぱり風呂は良いなぁ。」俺は手拭いを頭にのせて湯船に浸かる。



数十分後、俺はシズカを正気付かせて、風呂を上がり、部屋に戻った。


「ムサシ様、あれが大人の階段なのですか?」シズカが顔を赤らめて言う。

「ただ、風呂に入っただけだ。」


「あたし、ムサシ様に添い遂げます。」シズカが両手を握って言う。

「くふふ、リーンと言う嫁がいるのに、浮気者。」ミロクが耳元で囁く。

「知らねーよ、リーンは勝手に俺の嫁を宣言しただけだ。」


「あたし、頑張ります。」

「何を頑張るのか知らないが、頭を乾かすからここに座れ。」俺は椅子を指さして言う。

「はい。」シズカは大人しく椅子に座る。

 俺は、乾燥魔法でシズカの髪を乾かしてやった。



「晩御飯、食べられますよ。」ドアの向こうでテトの声がする。

「はいよ。」俺は答えて、食堂に向かった。


「おぉ、これは。」俺はそれを見て驚愕する。


「から揚げだ。」


「にしし、教えてもらったやつだよ。」テトが給仕しながら言う。

「そうか。」俺はテーブルに腰を下ろして、それを口に入れた。


「うん、教えた通りだな。」俺が言う。

「にしし、うん。」


「そうか、ニホさんも頑張っているんだな。」俺はテトの頭を撫でながら言う。

「にしし。」テトは笑顔を見せる。


 俺は夕食を堪能すると、部屋に戻った。


「ふわぁ、今日は疲れなかったけど、明日もあるから寝ようか。」俺はそう言うと、ベットにダイブする。


「おやすみぃ。」俺はそのまま寝る体制になる。


 暫くすると、ベットに誰かが潜り込んで来た。

 ミロクかと思って、腹に一発入れようとしたが、シズカだった。


「なんだ? シズカ。」

「ムサシ様、寒いので抱っこしてください。」シズカが顔を赤らめながら言う。 


「あぁ、別に良いぞ。」俺は答える。


 俺は、シズカを抱きしめて寝る。





「あの?」シズカが言う。

「何だ?」


「私を抱いてくれないのですか?」

「もう少し大人になったならな。」


「・・・はい。」シズカは俺の胸の中で寝息を立てる。

「くふふ、色男。」

「黙れ!」


「くふふ、あたしの添い寝タイムが無くなったよ。」

「元から無いだろう。」


「くふふ、意地悪。」

「知らない。」俺はふて寝を決め込んだ。


**********


 翌朝、朝ご飯を食べて、集合場所に向かった。


「お早うございます、ムサシ様、今日もよろしくお願いします。」ハコベが満面の笑みで俺の手を取る。

「あぁ、宜しくな。」俺は、そっけなく言う。


「では、出発しますよ。」ハコベが全員に言うと、馬車が南の門を出て次の町に向かう。


 俺は、いつも通り、シズカと一緒に先頭の馬車の屋根の上にいる。


「今回は、何かありますかね?」

「さあ。」シズカの問いに俺は答える。


 半日ほど進んだ時に、それは起こった。


「コボルドの襲撃だ!」先頭の馬車の御者が叫ぶ。


 俺は、反射的に馬車から飛び降りた。


「数が多いぞ、100体はいる!」御者が叫ぶ。


「人間は敵だ!」

「俺達を狩りに来る。」

「人間を殺せ!」

「殺せ!」

「殺せ!」

「殺せ!」


 コボルドたちの声が聞こえる。


「何だよ、あれ?」俺が呟く。

「くふふ、興奮しているね。」


「だけど、普通コボルドは、友好的だよな。」

「くふふ、誰かに唆されているのかもね。」


「だけど、あの状態じゃ、話し合いには応じそうもないよな。」

「そうだね。」


「残念だけど、殲滅して。」俺はミロクに頼む。

「くふふ、了解!」


 次の瞬間、コボルドたちはその場に倒れ伏す。

 そして、魔石を抜かれ、塵になった。


「おおおお、流石ですムサシ様。」何も知らないハコベが俺の前で礼をする。



「ミロクの力なのにな。」

「くふふ、君の力で良いじゃないか。」


「ミロク。」

「何だい?」


「これからも宜しく。」

「くふふ、承ったよ。」


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