オークションの結果
「前々回のオークションの結果が決まりました。」
「おぉ、意外と早かったな。」
「ほぼ全てを国王様が落札したので。」
「へぇー。」
「他人事ですね?」リーンが言う。
「他人事だもん。」俺が答える。
「では、バジリスクの皮ですが、
「おぉ。」
「落札価格は1720Gです。」
「へぇ?」
「それ以上の素材が、フェンリルです。」
「おぉ。」
「フェンリルの皮、3000Gです。」
「ははは。」もう笑いしか出ない。
「くふふ、まぁまぁだね。」
「そうなのか?」
「普通、フェンリルを狩れる人間なんかいないからね。」
「あぁ、そう言う事か。」
「それと、ワイバーンも決まりました。」
「おぉ、早かったな。」
「丁度、国王様の使いが来ていまして。」
「そうか。」
「ワイバーンの皮は、防具に最適なんです、2000Gでした。」
「おぅ、」
「ワイバーンの翼の膜は野外用のテントを作るのに最適なのです、これは1500Gでした。」
「へぇ。」俺は感覚がマヒしてきている。
「ワイバーンの魔石は2000Gでした。」
何だろう、凄くしょぼく感じるのは。
「くふふ、感覚がマヒしているね。」
「あぁ。そうだな。」俺はそう言いながら、カードをリーンに渡す。
「旦那様が一層輝いて見えます。」リーンはそう言いながら端末を操作する。
10220Gが振り込まれた。
「ははは、凄いな。」
「神の身代わりは伊達じゃないって事さ。」ミロクがふんぞり返りながら言う。
「リーン。」俺はカウンター越しにリーンに声を掛ける。
「ひゃい!」
思いっきりかんだな。
「今日は、凄いお肉を晩御飯にするぞ。」
「凄いお肉?」
「あぁ、期待しておけ。」俺はそう言って組合を後にした。
「くふふ、あれを出すのかい?」
「あぁ。」
「くふふ、くふふ、リーンが壊れないと良いねぇ。」
「そんなにか あぁ、そんなにだったな。」そう言いながら、市場で食材を買いあさった。
「白菜、椎茸、えのき、豆腐、すき焼きに良いな。」
「人参、ジャガイモ、玉ねぎ、にんにく、いつかカレーを作ってみよう。」
「おぉ、クレソン、パセリ、それにクミンやオレガノ、セージ。」
「トマト、キュウリ、キャベツ、大根もある。」
「くふふ、幸せそうだね。」
「あぁ、食材を大量に買えるのはとても幸せだ。」
「くふふ、全部私が持っているんだけどね。」
「ミロクが元に戻ったら、一杯食わせてやるな!」
「くふふ、ジゴロだね、ムサシ。」
「ん?」
「くふふ、くふふ、良いから、今日はリーンを撃沈させるんだろう?」
「あぁ、そうだった、良し、帰って準備をするか。」
「あぁ、リンゴや 生姜も買わないとな。」俺は買い物を続ける。
「くふふ、ずいぶん買うんだね。」
「あぁ、だけど、十分買えた。」
「くふふ。」
「さて、オークキングだな。」
「くふふ、今のリーンには辛いかもね。」
「おぉ、そうだな。」
「だが、食う。」
「くふふ、リーンが可哀想だね。」
俺は、オークキングのロース肉を厚く切る。
「これは、衣をつけてオークキングカツにする。」
「くふふ。」
「更に、オークキングのバラ肉を薄切りにして、リンゴと、生姜を摩り下ろしたものに味醂と醤油を入れて漬ける。」
「くふふ凄く美味しそうだ。」
「何言ってるんだ、美味しそうじゃない、美味しいんだ。」
「おぅ。」ミロクが少し引いた。
「続けるぞ。」
「くふふ。」
「ふふふ、オークキングのバラの塊肉を丸めて糸で縛って、フライパンで表面を焼いたら、ひたひたにつかる水に入れて、其処にネギの青いところ、生姜二かけら、大蒜を潰した物5欠片分、酒を400cc、砂糖を大さじ5、醤油200ccを入れて、ひたすら煮込む。」
「くふふ、何を作っているんだい?」
「オークキングの焼き豚だ。」
「くふふ、聞いた事もない料理だよ。」
「え? そうなの?」
「この前やった、すき焼きも知らないし、焼肉もたれに付け込んだのは初めてだよ。」
「え~、俺が生まれた地方では、結構メジャーな料理ですよ。」
「そうなのかい?」
「はい。」
「で、オークキングカツって、どんなのだい?」
「あぁ、今から作るよ。」
「私、オークカツって初めてです。」シズカが言う。
「シズカさん、精霊の私も聞いた事ありません。」シーナも同意する。
「あれぇ?」
「んじゃ、作るから。」
「見ていても良いですか?」
「あぁ、別に良いぞ。」
「厚く切った、オークキングのロース肉に塩胡椒を振りかけよく揉みこむ。」
「くふふ。」
「で、包丁で筋を切る。」
「何でですか?」シズカが聞く。
「肉が縮むのを防ぐためだ。」
「へぇ。」
「で、筋を切ったら小麦粉をまぶして、溶き卵を潜らせてパン粉を付ける。」
「何がどうなっているのか、解りません。」シズカが目を回す。
「最後まで見ていれば、理解できるさ。」
「はい。」
「全部の肉を処理したら、リーンが帰って来るまで休憩だ。」
「はい。」そう言いながら、シズカが俺にすり寄ってくる。
「ん? なんだ、シズカ。」
「ご奉仕をしようと思って。」
「あぁ、要らない、お前はまだ幼い、そう言う事を考えるな。」
「・・・はい。」シズカがしょんぼりする。
「安心しろ、歳を重ねて、身体がボンキュッボンになったら、存分に相手をしてもらう。」
「はい!」ぱぁぁっと顔を明るくしてシズカが言う。
「くふふ、色男。」
「はぁ。」俺は密かにため息をつく。
(この世界の女達のぐいぐい感がうざい。)俺はそう思った。
「ただいま!」リーンさんが帰って来た。
「お帰りー。」シーナが床を掃きながら言う。
「シーナちゃん、お姉さんは頑張ったよ。」そう言いながらリーンはシーナに抱き着こうとしてそのまま床にうっぷした。
シーナは華麗に躱していた。
「なんで?」リーンが言うが。
「うざい!」シーナはそう言って床を掃く。
「ムサシ~、シーナが酷い!」リーンさんが俺に抱き着いてくる。
「邪魔です。」俺はそれを躱す。
「ムサシまでその扱い!」リーンが泣きそうになる。
「リーンさん、二人とも作業中です。」シズカがナイスフォロオをする。
「はぁ、邪魔しちゃ駄目だね。」リーンさんが落ち着いた。
「ムサシは何をしているの?」リーンさんが聞いてくる。
「ははは、リーンを壊す料理を作っている。」俺は悪い顔をして言う。
「ひっ!」リーンが強張る。
「ははは、凄く美味いだろうなぁ、でも、食べたら戻れないだろうなぁ。」
「ムサシ?」リーンが俺の顔をのぞく。
「ははは、俺の料理を堪能しろ!」俺はそう言ってオークキングカツを揚げる。
「えっ?」リーンが驚愕する。
「シーナ、ご飯とみそ汁だ!」
「はい。」シーナがリーンの前にそれを置く。
「シズカ、キャベツの千切りは出来ているか?」
「はい!」
「よし!」俺はオークキングのカツを揚げる。
泡が細かくなってから2分、俺はオークキングカツをタッパーにあげる。
「余熱で2分火を通す。」
「くふふ、まだ謎の行動だよ。」
「前もやっただろう、余熱で火を通すんだ。」
「あぁ、そう言えばそんな事を言っていたね。」
「よし、良いだろう。」俺は、オークキングのカツを切り分けて、リーンさんの前の皿に置く。」
「塩でも、ソースでも、辛子とソースでも好きなように!」
「つぅ。」リーンさんは瞬固まるが、塩の瓶を手に取った。
「最初は塩で。」リーンさんがそう言うと、オークキングのカツに塩を振りかける。
「くっ、通ですね。」俺が言う。
「何でも最初は、シンプルに!」リーンさんはそう言って、塩を振りかけたオークキングのカツを口に入れる。
「カシュッ!」オークキングのカツが口の中で暴れる。
(口に広がる肉汁。)
(噛むたびに口に広がる脂の美味さ。)
(衣のサクサク感。)
「はぁぁ、至福です。」リーンがその場で撃沈する。
「おいおい、リーン、其処で死ぬなよ。」俺が言う。
「はひぃ?」リーンが返事をする。
(又噛んだな)」俺は思う。
「次は、オークキングの生姜焼きだ。」そう言いながら、俺は用意していた肉を炒め始める。
「じゅわ~。」途端に広がる良い匂い。
「ムサシ様、これは?」シズカがにじり寄ってくる。
「あぁ、さっき仕込んだ生姜焼きだ。」
「ふはぁ。」
「はひぃ!」シズカとリーンがその匂いで撃沈した。
「おいおい、臭いでこれなら、食ったらどうなるんだ?」
「くふふ、ムサシにベタ惚れするね。」
「何でだよ。」
「くふふ、朴念仁。」
「知らない。」
リーンとシズカは、オークキングのカツと生姜焼きを完食して、俺の前で土下座した。
「何だよ。」俺が聞く。
「ご主人様に貞操を捧げる。」
「ムサシ様にこの身を任せる。」シズカとリーンがその場で土下座する。
「要らない。」
「え~、さっきはいい歳になったら襲ってくれるって言ったじゃない。」シズカが叫ぶ。
「俺が好きな体形になったらな。」
「ひっど~い、絶対になってやるから。」
「私は何で駄目なんでしょう?」リーンが言う。
「はぁ。」俺はため息を掃いて言う。
「今夜、俺の部屋に来てください。」
「はい。」リーンはその場で顔を赤くした。
「来ました。」リーンさんは薄い下着姿で現れる。
「リーンさん。」
「はい、旦那様。」
「俺は未成年です。」
「え?」
「まだ成人前です。」
「あれ~?」
「成人まで後1年あります。」
「ふふふ、私の人生で1年など誤差の範囲です。」リーンさんが舌なめずりをしながら言う。
「くふふ、デッドエンド。」ミロクが楽しそうだ。
「はぁ。」俺はため息を吐いた。




