リーンが家に
「と言う事で、リーンさんが此処に住むことになった。」俺はシーナに言う。
「う~ん、リーンさんの波長を知らないんですよね。」シーナが言う。
「あぁ、そのうち来るから、その場で判断してくれ。」
「解ったぁ。」
「さて、晩飯だが。」俺はミロクの持ち物を見る。
「リーンさんが来るなら、これにするか。」俺はオークキングのお肉を取り出す。
「くふふ、魂を持っていかれるよ。」ミロクが言う。
「そこまでなのか?」
「くふふ、耐えろ。」
「ふむ。」俺はオークキングのお肉の端っこを切ってフライパンで焼く。
ジュワ~。良い音を出してお肉が焼きあがる。
「どれ?」俺はその肉に塩を振って口に入れる。
「ふわぁ。」そのお肉の味に心を持っていかれた。
「これは、駄目な奴だ。」俺が呟く。
「くふふ、オークキングだからねぇ。」ミロクがどや顔で言う。
「これはヤバいな。」
「くふふ、まだまだ、これ以上のお肉が待っているよ。」
「おぉ、期待しているぞ、ミロク。」
「くふふ、くふふ、任せろ。」
そして、リーンさんが来た。
「うん、気持ちいい波長。」シーナが言う。
「リーンさん、お帰り。」俺が言う。
「ただいま。」リーンさんが言う。
「お帰りなさい。」シズカが言う。
「くふふ、凄く安定した魔力だね。」
「あぁ、その様だ。」
「だ、旦那様。」リーンさんが固まっている。
「そちらに居るのは?」
「あぁ、事故物件だった原因だ。」
「え?」
「シーナ、自己紹介。」
「初めまして、私は家付き精霊のシルキー、シーナって名前はムサシから貰ったの。」
「シルキー?」
「どうしたんだ、リーン。」
「し、し、し、シルキーの居る家の値段は最低10000Gです。」
「へぇ。」
「それを1500Gで。」
「いや、シーナは波長の合わない奴は拒絶していたらしいぞ。」
「なぁ、成程、それなら納得します。」
「リーンは、組合に忠誠でも誓っているのか?」
「いえ、旦那様が凄いお方だと再認識いたしました。」
「ははは、それじゃぁ、リーンの歓迎パーティーをするか。」
「旦那様、嬉しいです。」
「前回保留にした、すき焼きをやろう。」
「初めて聞く料理です。」リーンがすり寄ってくる。
「いや、前回言いましたよね。」
「どんな料理か、教えてくださいませんでした。」
「あぁ、シーナ、ご飯とみそ汁、それと生卵を用意してくれないか。」
「解った。」シーナが台所に消える。
俺もその後を追い、台所に行く。
俺はまな板を用意すると、材料を切り始める。
「白菜は葉を何枚かちぎり取り、洗って5cm程度に切り。」
「椎茸は石附を取って、傘に十字に飾り切りする。」
「ニンジンは、皮ごと扇切りにする。」
「へぇ、初めて見る。」シーナが興味深そうに見る。
「町で密かに見つけた、白滝を別の鍋でゆでて、食べやすい長さに切る。」
「そして、えのきだけの根の部分を切って、適当なサイズに指で取り分ける。」
「焼き豆腐は、一口サイズに切り。」
「春菊は3等分する。」
「そして、金鶏の胸肉や端肉部分を粗みじんにしたら、塩と生姜のしぼり汁を入れて、片栗粉を加えて肉団子を作る。」俺はそれを実演する。
「くふふ、いつの間に金鶏のさばき方を覚えたんだい?」
「2回も見れば楽勝だ。」
「くふふ、流石はムサシだ。」
「で、フライパンに、ワイバーンの油の多い肉を入れて、火をつける。」俺はそれを実行する。
「ジュワァ~。」ワイバーンの油が解けていい音を出し始める。
「で、其処に薄切りのワイバーン肉を入れて炒める。」
「ジュワァ~。」さらに良い音と臭いが立ち込める。
「くふふ、良い匂い、食べられないのが何とも、これが飯テロ。」
「肉が焼けたら、酒、みりん、しょうゆを1カップづつ入れて、砂糖を大匙2。」
「ジュワァ~。。」さらに良い匂いが漂う。
「んで、さっき切った野菜や具材を入れていく。」俺は具材を並べる。
「肉と、白滝は離して。」
「具が煮えてきたら、春菊を入れて、蓋をする。」
「良い匂いがしてきました。」シズカが言う。
「くふふ、これを食べられないのかぃ。」ミロクががっかりしている。
「よし、出来たぞ。」俺が言う。
「旦那様、これはどう食べれば?」リーンが言う。
「あぁ、煮えた肉を生卵を溶いたものに漬けて食え。」
「はい、旦那様。」リーンはそう言いながら、ワイバーンの肉を箸で摘まみ、溶いた生卵に漬けて口に入れる。」
「はぅ!」リーンが固まった。
当然だろうな。
俺も肉を卵につけて口に入れる。
「美味いなぁ。」
「シズカも食え。」
「はい。」
「くうぅ~。」シズカも悶絶している。
「ついでに、金鶏のもも肉のから揚げも作るか。」俺はそう思い、いつもの手順で金鶏のから揚げを作る。
「旦那様、それは何ですか?」リーンが不思議そうな顔をして聞いてくる。
「ん? から揚げだ。」
「食べても良いですか?」
「あぁ、後少し待ってくれ。」
「?」
「余熱で火を通している処だ。」
「はぁ、余熱? 火を通す?」
「おや、リーンは知らないのか? あれだけ料理が上手いのに。」
「初めて聞きました。」
「え?」
「はい。」
「油で揚げたら、余熱で火を通すのは当たり前じゃ?」
「そうなのですか?」
「あれぇ?」
「くふふ、一般的じゃないみたいだね。」
「あぁ、そうだな。」
そう言っているうちに火が通った。
「リーン、食べても良いぞ。」
「はい、いただきます。」そう言ってリーンが金鶏のから揚げを口に入れる。
「はぅ!」おや、今日二回目のフリーズだな。
「旦那様、この作り方を組合に売りませんか?」
「はい?」
「このから揚げと言う料理は、今までありません、組合で作り方を売っても良いですか?」
「良いけど、何件かの宿には教えているぞ。」
「大丈夫です、組合の技術なので、使用するなら使用料を払えと警告します。」
「ありゃ、宿の主人に悪い事をした。」
「大丈夫です、組合を無視すれば宿の営業もできなくなりますから。」リーンが黒い顔で笑う。
「え~っと、穏便にね。」
「はい、旦那様。」
「うん、これは旨いな。」俺は金鶏のから揚げを食べて言う。
「ムサシ様、これ美味しいです。シズカがワイバーンのすき焼きを食べて喜んでいる。」
「おや、リーンも復活して、すき焼きを堪能している。」
(俺も負けずにすき焼きを食うぞ。)そう思いながら鍋に箸を入れるが、肉は無かった。
「追加だ。」俺は鍋にワイバーンの薄切り肉を投下する。
「ふふふ、煮えるまで我慢だな。」
「くふふ、見ているだけの私に対する挑戦かなぁ?」
「ミロクもさっさと神気を取り戻して、一緒に食えるようになろうぜ。」
「くふふ、口説いているのかなぁ?」
「はっ、はっ、はっ、まさか。」
「くふふ、酷いね、君は。」
「普通だ。」
「おっと、煮えたな。」俺は肉を取る。
「いただきます!」
「いただきます!」リーンとシズカが横から肉を掻っ攫っていく。」
(う~ん、もう少し肉を切っておくか。)そう思って、ミロクから肉を貰い100枚ぐらい薄く切った。
残りは、うん、まだ5Kg位あるな。
鍋を見たら、肉が消えていた。
「野菜や、豆腐も食えよ、肉の旨味が染みてて、美味いぞ。」
「盲点でした。」リーンが染み染みになった白菜を卵に漬けて口に入れる。
「ん~、美味しいですね。」
「本当です。」白滝を口に入れたシズカも言う。
「よ~し、肉の追加行くぞ!」
「「お~。」」リーンとシズカの声がハモる。
宴は、夜遅くまで続いた。




