新居
「頼もう。」俺はそう言って組合に入った。
「げ、いらっしゃいませ。」受付のお姉さんの態度は相変わらずだ。
「リーンさんに取り次いでくれ。」俺は受付のお姉さんに言う。
「はい、そちらの席でお待ちください。」そう言ってお姉さんが奥の部屋に走っていく。
「あの、ムサシ様?」シズカが心配そうに言う。
「あぁ、俺に任せて。」俺はそう答える。
「はい。」
「これは、これは、ムサシ様、今回はどのような納品を?」リーンが奥の部屋から出てきて言う。
「あぁ、悪いな、納品もするけど、この娘を登録してほしい。」
「はぁ?」
「この娘は『神の身代わり』の付き人だ、名前はシズカ。」
「へ?」リーンが固まる。
「リーンで無理なら、組合長を呼んでくれ。」
「いえ、大丈夫です、神の身代わりの付き人様ですね。」リーンは慌てながら登録をした。」
「流石はリーンだ。」
「こちらが、シズカ様のカードになります。」リーンがカードを渡してくる。
「あぁ、ありがとう。」俺はそれを受け取り、シズカに渡す。
「あの?」
「カードに入金もできるし、それで買い物もできる、勿論身分証明にもなる。」
「はい、大事にします。」
「んで、納品だけど。」俺はリーンに言う。
「はい。」
「とりあえずゴブリンの魔石を寄付する。」
「はい、ありがとうございます。」
「オーク肉は間に合っていますか?」
「えぇ、今は安値ですね。」
「んじゃ、それは無しで、リザードマンの皮と魔石18。」
「皮は一匹分が1G、魔石も1Gです。」
「それでいいや。」
「後、ワイバーンの素材。」
「え?」リーンが反応する。
「ワイバーンですか?」
「あぁ?」
「見せてください、いえ、こちらへ。」リーンが大物の受付所に俺を案内する。
「出して良いか?」
「はい。」
俺は、其処にワイバーンの皮、ワイバーンの翼の膜、肉と魔石を置く。」
「ほぉぉぉ、これは。」リーンが奇声を上げた。
「ワイバーンの皮はオークションです。」
「翼もオークションです。」
「あぁぁ、肉は100kgもあります、全部納品されるのですか?」
「え?」
「私と、10kg位食べませんか?」
「あぁ、良いぞ。」
「では、ワイバーンのお肉90kg1800Gです。」
「はぁ?」
「ワイバーンですよ、一生に一度食べられればラッキーです。」
「そうなの?」
「くふふ、そうだよ。」ミロクの声が聞こえる。
「魔石もオークションです。」リーンがアゲアゲだ。
「では、決済しますね。」リーンが俺のカードを端末に入れて捜査する。
1800Gが振り込まれた。
「では、こちらへ。」リーンさんが奥の部屋に案内してくれる。
「あぁ。」俺はついていく。
「ワイバーンですよ、どうやって食べますか?」リーンさんが普段見せない顔で聞いてくる。
「あ~、厚く切ってステーキ? 薄く切ってしゃぶしゃぶ? 薄く切ってすき焼き? そぎ切ってたれに漬けて焼肉?」俺が答える。
「聞いた事がない食べ方です!」リーンさんが俺に迫る。
「え? 普通だろう?」
「いえ、全部聞いた事がありません。」リーンさんが俺の両肩を持って言う。
「教えてください!」リーンさんの圧が強い。
「解りました、教えるので離して下さい。」
「あぁ、失礼しました。」リーンさんが離れてくれた。
「んじゃ、ステーキから。」俺は包丁を用意する。
荷物持ち時代から、愛用している物だ。
ワイバーンの肉を1cmぐらいに切る。
それに塩胡椒。
「フライパンに、ワイバーンの油肉を落として。」ワイバーンの油肉を入れたフライパンを火にかける。
「強火で両面を焼いて、その後中火で蒸し焼きにする。」俺はフライパンに蓋をして言う。
「ほぉ。」リーンさんが感心する。
「?」
「ムサシ様は、料理にも精通しているのですね?」
「いや、独学だ。」
「素晴らしい、独学でこの技術!」リーンが感激している。
「できたぞ。」俺はワイバーンのステーキをそこに置く。
「ムサシ様、一緒に食べましょう。」リーンが言う。
「あぁ。」俺は、テーブルに、ワイバーンのステーキ、ご飯、味噌汁を並べる。
ご飯と味噌汁? 片手間で作ったよ。
「いただきます。」リーンが楽しそうに言う。
俺は、無造作にステーキを食べる。
「うん、美味いな。」
「はぅう!」リーンが恍惚の表情を浮かべている。
「遠慮しないで、シズカも食え。」
「良いのですか?」
「おぉ、食え食え。」
「・・・いただきます。」ワイバーンのステーキを口に入れたシズカが固まった。
俺は、気にしないで、ワイバーンのステーキとご飯を堪能する。
シズカも美味しそうに食べていた。
「ムサシさん!」リーンが俺の両肩を持って言う。
「何でしょう?」因みにステーキは完食しているようだ。
「しゃぶしゃぶとは?」リーンさんの目が怖い。
「はいはい、作ればいいんですね。」
「じゅるり。」
もはや言葉ですらない。
「ワイバーンの肉を薄切りにして。」
(うん、すき焼きの分も作っておくか。)俺はそう思いながら、2kgぐらいを薄切りにした。
半分はミロクに持ってもらい、しゃぶしゃぶの用意をする。
鍋に昆布を入れて沸騰させて、昆布を取り出す。
取り皿に、ポン酢とゴマダレを用意する。
「さぁ、この様に肉を鍋でしゃぶしゃぶして、この付けダレで食べてください。」
俺は、実演する。
「ほほほ、新しい食べ方ですね。」リーンさんが俺を模倣する。
**********
「ほほほ。堪能しました。」リーンさんが言う。
「お粗末様でした。」俺が言う。
「あと二つ残っていますね。」リーンさんが言う。
「それは、次のお楽しみです!」俺が言う。
「え~。」
「楽しい事は、長く楽しみましょう。」
「ぶぅ。」リーンさんが不貞腐れるが納得してくれた。
「あぁ、リーンさん。」
「はい、何でしょう?」
「家具付きの家をレンタル出来ないかな?」
「はい、大丈夫ですよ。」
「月額50Gぐらいで。」
「はい、良い物件がありますよ。」リーンさんが言う。
「案内してもらっても良いですか?」
「はい、では今からご案内いたします。」リーンさんが、嬉しそうに言う。
「くふふ、レモンの宿に泊まらなくていいのかい?」
「あぁ、人数が増えたからな、借りた方が安い。」
**********
「ここ?」
「はい。」リーンさんが笑顔で言う。
「貴族の豪邸だな。」俺がぽつりと言う。
「月50Gで家具付きですと、これが標準ですね。」リーンさんがにっこりとほほ笑む。
これって、城だよな。
うん、却下だ。
あ~、訂正する、部屋は4~5部屋で、風呂付、家具備え付けの物件があるかな?」
「勿論です、ご案内しますね。」リーンさんが先導する。
案内されたのは、見た目600坪ぐらいの土地に立っている物件だった。
「ここは、とある豪商の別荘だったのですが、その方が手放した物件です。」
「ふむ、良いんじゃないか?」俺は、その家を見て言う。
「ムサシ様のご希望通り、お風呂と家具は備え付けられています。」
「良いな、此処。」
「ほほほ。」
「此処は、月いくらだ?」
「ここは、月当たり10Gです。」
「おぉ、即決する、1年分前払いするぞ。」
「はい、承りました。」
「んじゃ、中を見せてもらおうか?」
「え? ご覧になるのですか?」
「あぁ、見せてくれ。」
「こちらが、鍵になります、け、契約書を作るので、ご自由にご覧下さい。」リーンはそう言うと逃げるように去っていった。
「どうしたのかな?」
「くふふ、どうしたんだろうね。」
「ムサシ様、とりあえず入りましょう。」シズカが言う。
俺たちは、鍵を開けてその家に入った。
家の中は、すごくきれいに掃除されていた。
「おぉ、凄く快適な空間だ。」
「えぇ、台所も凄く使いやすそうです。」シズカも言う。
「お~、全部の部屋に、キングサイズのベットが備え付けか。」俺はベットにダイブする。
「くふふ、いるね。」ミロクが言う。
「うん? なにが?」俺が聞く。
「くふふ、先住民?」ミロクが言う。
「はぁ?」俺が疑問に思うと声が聞こえた。
「ねぇ、あなた。」
「おぉう。」俺は身構える。
「私はシルキー、この家に住む精霊。」その声が言う。
「おぉ、俺はムサシだ、宜しくな。」俺は答える。
「ふ~ん、怖くないの?」シルキーが言う。
「何が?」俺が答える。
「私が。」シルキーが問う。
「なんで?」俺が言う。
「え? 家付きの精霊だよ。」シルキーが言う。
「成程。」俺が答える。
「普通は怖がるよね?」シルキーが言う。
「そうなの?」俺が素で答える。
「あはははは。」シルキーが笑う。
「?」
「ねぇ、ムサシ。」
「あぁ、何だ?」
「この家を守ってあげる。」シルキーが言う。
「おぉ、是非に頼むよ。」俺が答える。
「その代わり。」
「うん?」
「私も仲間に入れて。」
「あぁ、そんな事か、勿論オッケーだ。」俺は二つ返事をする。
「仲間?」俺は一瞬考える。
「まぁいいや。」俺は考えを放棄する。
絶対に面白くしますので、ブクマを尾根餓死します。




