オークキング
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次の日の朝早く、宿を出て南門に向かった。
「ムサシさん!」ハコベさんが声をかけて来た。
「あぁ、おはようございます。」俺は挨拶をする。
「今回も護衛をお願いできませんか?」
「良いですよ、今回は別れの村の先に行きますので。」
「なんと、では3個先の湯の町までお願いします。」
「はい、出発はすぐですか?」
「えぇ、準備が良ければ。」
「大丈夫です、行きましょう。」俺は、馬車の屋根に乗った。
「くふふ、値段を決めなかったね。」
「別に良いよ。」
「くふふ、ハコベが気に入るわけだ。」
「良いから、監視、宜しく。」
「くふふ、解ったよ。」俺の目に見えるミロクは、凄く楽しそうだ。
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村を出発して半日、「魔物だ!」そう叫びながら、御者が馬車を止める。
俺は、ミロクと一緒に馬車を下りた。
「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、オークの軍団だ。」御者が御者台で震える。
「どうしたのですか?」ハコベが馬車の窓から顔を出して言う。
「ハコベさん、ついてない、もう駄目だ。」
「何があったのです?」
「オークの軍団が攻めてきています。」
「オークの軍団だと。」
「ははは、間違いありません、オークキングが見えます、俺達は終わりです。」御者がその場で泣き崩れる。
「ミロク?」
「くふふ、蹂躙だね。」
「ハコベさん、俺に任せてください。」
「え、ムサシ様?」
「蹂躙します、が、今回は魔石とお肉を取らせて下さい。」
「じ、蹂躙?」
「はい。」
「では、蹂躙後は、私達も魔石とお肉の採取を手伝います。」
「あぁ、宜しくお願い致します。」俺は礼をする。
「ぐぎゃぁ、人間の馬車だ!」
「男は、殺して食う!」
「女は、犯してから食う!」
「なんだろう、俺にも言葉が聞こえる。」
「くふふ、神の身代わりのレベルが上がったから、聞こえるんじゃない?」
「聞きたくないなぁ。」
「くふふ。」
「面倒くさいから、一気に行くよ!」そう言いながらミロクが神気を解放する。
300体ほどのオークが一瞬で沈黙した。
「おぉ、流石ですな。」ハコベが感嘆している。
「くふふ、キングはレジストしたよ。」
「はぁ、俺が止めを刺さなきゃダメって事だよな。」
「くふふ、そうだね。」
「ハコベさん、キングが残っているので狩ってきます、その間にオークの素材の回収をお願いします。」
「解りました、おい、お前達!」ハコベさんが数人の部下に指示を出す。
おぉ、ハコベさん自身も素材集めに向かったよ。
「ははは、律儀な人だなぁ。」
「くふふ、来るよ。」
「おぅ!」俺は、天叢雲剣を抜きそれを見る。
「ぐもぉぉぉぉぉぉ!」オークキングは、威圧のこもった叫び声をあげる。
「くふふ、スタン(麻痺)の効果があるね。」
「まったく効かないんだが。」
「くふふ、神の身代わりは伊達じゃないって事だよ。」
「さて、あの肉団子、どうやって狩る?」
「くふふ、あたしが止めるよ。」
「なんだ、いつも通りか?」
「くふふ、くふふ。」
「?」
「捕まえた。」
「え?」
「あたしの神気で拘束したよ。」
「あっそう。」
「反応が薄いよ。」
「ミロクに慣れた?」
「くふふ、止め(とどめ)!」
「あぁ。」
俺は、天叢雲剣を、恨めしそうに俺を見るオークキングの心臓に刺した。
「ぶぎゃ!」断末魔を残して、オークキングがこと切れる。
「くふふ、普通のオークと大体同じだよ。」
「解った。」俺はオークキングを解体した。
「普通のオークより美味しいから、納品は保留にしようか?」
「解った、ところで聞きたいことがあるんだが。」
「くふふ、何かな?」
「オークと、オーガの魔石を売らずに温存しているのは何でだ?」
「くふふ、使い道があるからだよ。」
「どんな?」
「秘密!」
「そうか。」
「あれ~、聞かないの?」
「教える気は無いんだろう。」
「くふふ。」
ミロクにオークキングを持たせて、ハコベさんの所に行く。
「おぉ、ムサシ様、オークの解体は終わっています。」
「あれ、早いですね。」
「ははは、オークなど一体2分もあれば。」
「ミロク。」
「はいよ。」そこにあったオークの素材が一瞬で消える。
「え?」ハコベさんが驚愕する。
「残った物は消します。」俺が言うと、ミロクがすべて塵にしてくれた。
「か、神の身代わり様は、これほどの力を持っていらっしゃるのですね。」ハコベさんが変な敬語を使いだした。
「ハコベさん、今まで通りでお願いできませんか?」
「いや、でも。」
「此処で、護衛の任務を放棄しても良いですけど。」
「ごほん、ご苦労でした、先を急ぎます。」
「はい。」
今回は、テト達のいる村は素通りするらしい。
「このまま、祈りの村に向かいます。」
「祈りの村?」
「はい、聖女様がお生まれになる村です。」
「聖女様?」
「はい、今の聖女様が崩御されると、何故かこの村から次の聖女様が降臨されます。」
「降臨って、神様ですか?」
「それ程のお方です。」
その後、襲撃はゴブリン18、オーク43、そして珍しくリザードマン18の襲撃があり、今回は全ての素材を手に入れた。
リザードマンは、魔石と皮だ。
肉は不味いらしい。
今回も、リーンに丸投げしよう。
日がくれたので、今日は野宿だ。
だが、俺の提案で、全員が眠っている。
ミロクが、夜警を引き受けてくれたからだ。
「くふふ、何かあったら、起こしてあげるよ。」
「本当だな?」
「くふふ、心配性だなぁ。」
「俺にちょっかい出したら、ワンパンで沈めるぞ。」
「くふふ、今日だけは自重するよ。」
「本当だな?」
「くふふ、誓って。」
「じゃぁ、頼んだ。」俺は毛布にくるまり、意識を手放す。
「くふふ、コッソリと添い寝タイムだよ。」
「くふふ、気が付いてないね。」
「そーっと毛布をめくって、くふふ。」
「そーっと、ズボンに手を滑り込ませる。」
「てい!」俺はミロクの鳩尾に鉄拳を食らわせる。
「ふぎゅう。」ミロクが沈黙した。
「よし、明日の朝までの安眠を確保した。」俺は本気で寝ようとしたが、夜警がいなくなったことに気付き徹夜した。
「くそう、ミロクめ。」ブツブツ言いながら火の番をした。
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