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姉御に蟹を

  王城に帰った俺は、姉御を訪ねた。


「姉御、蟹を持って来たぞ」

「おぉ、流石だなぁ、ムサシ」


「茹でた奴も持って来た」

「おぉ、じゃぁ、早速食べようか」そう言いながら姉御は俺を食堂に連れていく。


「大皿を用意してください、後、酢と醬油と小皿を、それと殻を入れるボウルも」姉御は席に座ってメイドに指示をする。


「お持ちしました」メイドたちが姉御が言ったものを持って来た。


「ムサシ、茹でた奴を皿に乗せてくれ」あ姉御が俺に言う。

「あぁ」俺はミロクからそれを貰い皿の上に置いた。


「酢を多めに、醤油を数滴」姉御が小皿に其れを作る。


「どれ?」姉御は足を一本取ると器用に殻を剥きはじめた。


「パクリ、美味い!」姉御が蟹をむさぼる。


「茹でた奴は全部ここに出すぞ」俺は茹でガニをミロクから貰って大皿に置く。


「生の奴は、料理長に渡しておくぞ」俺はそう言うと厨房の料理長を訪ねた。


「おや、ムサシ様」料理長がにこやかに出迎えてくれる。

「今回はどのような?」


「姉御に頼まれて蟹を持って来た」

「蟹ですか?」


「茹でた奴は、今姉御が幸せそうに食っているが、刺身や鍋なんかにすれば美味しく食べられるんじゃないか」


「成程」

「んじゃ、渡すからマジックバック持ちを」

「いえいえ、私が持てます」料理長が言う。


「そうか」俺は持って来た蟹の半分を取り出す。


「はい、確かに」

「では、俺は帰るな」


「はい、お疲れさまでした」


 王城の自宅に帰った俺は、料理長に蟹を渡して、茹で方と食べ方を教えた。


 晩御飯は蟹鍋だった。


「くふふ、蟹の良いダシがでていて美味しいね」ミロクは嬉しそうに食べている。


 他の皆は初めて食べる物なので、不安そうにしていたが俺が食べると箸を出し、その味に気づくと漠々と食べ始めた。


甲羅にはコメの酒を注いで、蟹みそ酒を堪能した。


 〆は蟹雑炊だ。


 全員がおなか一杯になったようだ。


 因みに蟹はまだたくさんある。


***********


「ムサシ様、表に魔族の方が来ています」カロリーヌが俺に言って来る。

「奥様、そのようなことは私たちメイドがやりますので」

「あら、つい昔の癖で」カロリーヌが


「魔族?」


「はい、何でも最近世話になったとか」

「あぁ、そうか」俺は立ち上がってその者の元に向かう。


「ハイベルト殿か」


「あぁ、先日は世話になった」

「なに、大したことはしていない」

「謙虚だな」

「普通だ」


「今日は、前回の礼をしに来た」

「礼?」


「あぁ、我が同胞を拘束してくれた礼だ」

「何だそんな事か、気にしなくても良いのに」

「其れでは、私の気が収まらない」


「そうか、ここではなんだ、家に入ってくれ」

「あぁ、お邪魔させてもらおう」


 俺は応接間に案内した。


「適当に座ってくれ」俺はソファに座りながら言う。

「あぁ、すまないな」そう言ってハイベルトは俺の対面に座った。


「いらっしゃいませ」カリナが部屋に入って言う。


「おや、カリナ姫ではないですか」ハイベルトが驚いたように言う。


「知り合いか?」俺はカリナに聞く。


「はい、お城で何度かお目にかかったことがあります」


「何故カリナ姫がここに?」ハイベルトが怪訝な顔をしながら言う。

「こちらのムサシ様に添い遂げたからですわ」カリナがコロコロと笑いながら言う。


「そうでしたか、それはおめでとうございます」


「どうぞ」メイドたちが紅茶を用意して、みんなの前に配膳する。


「あぁ、ありがとう」俺はそれを口にしながら、ハイベルトにも勧める。

「あぁ、いただこう」ハイベルトが紅茶に口を付ける。


「で、用件は其れだけか?」俺はハイベルトに尋ねる。


「いや」ハイベルトは空間におもむろに手を突っ込んだ。


「くふふ、空間魔法だね」

「俺も使えるぞ」

「くふふ、人間のくせに、もぉ」


「これを貰ってくれ」ハイベルトはそれをテーブルに置いた。


「これは、酒か?」俺はそれを見ながら言う。

「あぁ、我ら魔属領で作っているものだ」


「へぇ?」

「こちらには流通していないだろう」ハイベルトが勝ち誇ったように言う。


「見たことはないな」俺はそれをまじまじと見ながら言う。

「前回に飲もうと誘われたからな」


「律儀だな、じゃぁ早速いただこうか?」俺はメイドに目配せして、グラスを用意させる。


「私は失礼させていただきますね」カリナはそう言って立ち上がった。

「おや? どうされました?」ハイベルトが不思議そうに聞く。


「懐妊していますので、アルコールは控えておりますの」

「なんと、それは目出度い」ハイベルトが言う。


「それでは」ぺこりとお辞儀してカリナが部屋を出て行く。


「お待たせしました」料理長が料理を持ってくる。


「おぉ、これは豪華な」ハイベルトが料理を見て驚く。


「今回はオークキングを使用いたしました」料理長が料理を説明する。


「なんと、オークキング?」

「あぁ、俺が肉ダンジョンで捕って来たものだ。


「おぉ、流石は神の身代わりだ」

「さぁ、食ってくれ」俺はハイベルトが持って来た酒をハイベルトに勧める。

「あぁ、いただこう」ハイベルトはグラスを持って差し出してくる。


 俺も自分のグラスに酒を注いだ。

「おぉ、良い香りだ」俺はそれを飲む前に匂いを確かめた。


「ははは、これは30年ものだ」ちびちびと酒を飲みながらハイベルトが言う。

「どれ?」俺はグラスに口を付けた。


 芳醇な香りが口の中に広がる。

「強い酒だな」

「アルコール度数が47あるからな」

「ははは、加減して飲まないと直ぐに酔いそうだ」」


「おぉ、これは旨い、なんという料理なんだ?」ハイベルトが料理を口にして言う。

「あぁ、それはオークカツだ」


「この薄切りの肉はタレが染みてて旨いな」

「其れはオークキングの生姜焼きだ」


「ううむ、どれも酒が進む味だ」

「あぁ、そうだな」


「こっちはなんだ?」

 別の皿を見て、ハイベルトが言う。


「其れは、ミノタウルスのステーキです」料理長が答える。

「ミノタウルスだと」ハイベルトが固まる。


「あぁ、それも俺が肉ダンジョンで捕って来た」

「うむぅ、私でも無理な獲物だ」


「そうか? 別に一瞬だったぞ」俺はあっけらかんに答える。

「何人パーティーで狩ったんだ?」


「え? 俺一人だけど」

「何だと?」ハイベルトが驚愕する。


「そう言えば空間魔法を使えるんだよな」俺はハイベルトに聞く。

「あぁ」


「んじゃ、土産を渡そう」俺はそう言ってミロクからコカトリスとミノタウルスを貰ってそこに置いた。


「なぁ、今どこから、それにコカトリスだと?」

「美味いぞ」


「はぁ、考えたら負けな気がする、ありがたくいただこう」ハイベルトはその2体を収納する。


 宴は夕方まで続いた。


***********


「では、今回はこれで失礼する」そう言ってハイベルトは帰って行った。


「あら? お帰りになられたの?」カリナが言って来る。


「あぁ、泊まって行けと言ったんだが、何か用事があるらしい」

「そうですか」


 その日は何事もなく終わった。


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