肉ダンジョン
王都の孤児院にやってきた。
「おや、ムサシ様じゃありませんか?」コバルトさんが目聡く俺を見つけて声を掛けてくる。
「あぁ、お久しぶりです、コバルトさん」
「今日はどうされました?」
「寄進に来ました」そう言いながら、ミロクから100G分のBが入った袋を貰って手渡す。
「いつも、いつもありがとうございます」コバルトさんが袋を受け取りながら言う。
「最近は、国王様の援助も滞りなく届いていますが、子供たちは食べ盛りなので助かります」コバルトさんが頭を下げる。
「いえ、いえ、貴族の義務ですから」俺はそう言って頭をかく。
「ふふふ、奥ゆかしい」コバルトさんが笑う。
「で、ですね、城塞都市の孤児院に暖炉を作りました」
「はぁ?」
「こちらにも作って良いでしょうか?」
「え~っと」コバルトさんが挙動不審になる。
「駄目でしょうか?」俺は聞く。
「実は、数年前に国王様に許可を貰い、我々で暖炉を作りました」
「あれ~?」
「まぁ、ご覧ください」コバルトさんが俺を暖炉の前に案内する。
「おぉ、これは」そこには立派な暖炉が存在した。
「これは、私の援助は不要ですね」
「恐れながら」
「でも、孤児たちが寒い思いをしなければ構いません」
「そう言っていただけると」
「でわ、私はこれで」俺は王都の孤児委員を後にした。
「ムサシ様、組合にキングミノタウルスを納品してください」城砦都市の家に帰ったらリーンが言って来る。
「キングミノタウルス?」
「くふふ、持っていないよ」
「どうしたのですか?」俺はリーンに聞く。
「とある貴族が、娘さんの婚姻に振舞うそうです」
「あぁ、解った。狩って来いって言う事だな」
「宜しくお願いいたします」リーンが最敬礼する。
「と言う訳で、いつもの肉ダンジョンにきたのだけれど」
「旦那、付いて行っても良いか?」
「嫌だと言われても付いて行くけどな」
「はぁ、元々頼むつもりだったから良いけど、報酬は前と同じだぞ」
「あぁ、大丈夫だ」
「ところで、よく俺が来ると解ったな?」
「いや、最近は仕事が減ったから、いつもこの辺りをうろうろしているんだ」
「ほぉ、何でだ?」
「一階層で金鶏やオークが出るから、冒険者たちはそれを持って帰っちゃうんだよ」
「あたしらの仕事にならないからさ」
「其れなら早速潜るか」俺はルチアとアデルを連れて肉ダンジョンに入った。
「おや、またダンジョンが変わっているな」
「くふふ、前回最後まで攻略したからじゃない?」
「んじゃ、今回はキングミノタウルスを狩ったら終わりにするか」
「くふふ」
「2階層でオークキングか」
「くふふ、ダンジョンのレベルが上がっているね」
「あぁ、そうだな」
「旦那、どんどん狩って良いんだぜ」
「あぁ、その方があたい達の実入りが増える」
「あぁ、解ったよ」そう言いながら俺はオークキングの首を斬る。
「いつも通り、内臓とお肉の良い所と魔石を渡せ」
「あいよ、旦那」
「最後の方なら、普通のお肉は持ち帰っても良いぞ」
「マジかぁ、旦那」
「あぁ、問題ない」
「今回はキングミノタウルスを狩ったら終わりだ」
「え? 最後まで行かないの?」
「今でも浅い階層でとんでもない奴が現れているんだろう」
「そうだけど」
「俺なら大丈夫だが、一般の奴にはきついだろう」
「そうかも」
「だから。今回は攻略しない」
「成程」
「で、5階層まで来たが、2時間も掛かったな」
「まさか、マスターバハローが出るとは思わなかった」ルチアが息を切らせながら言う。
「4階層でマスタークラスはやばい」アデルも言う。
「だが、そろそろキングミノタウルスが出ても良い頃だ」
「旦那、少し休まないか?」
「あぁ、お前らも100匹ずつ解体したからそれも良いか」俺はそう言うと闘気を最高レベルに開放し、地魔法で机といすを作った。
そして、ミロクから食べ物を貰ってそこに並べた。
「さぁ、今回はオークづくしだ」
そこには、オークカツ、オークの生姜焼き、オークステーキ、オークのハンバーグ、蒸しオークが並んでいる。
「そして、白パンと、オーク汁だ」俺はオーク汁を地魔法で作った大きめの丼ぶりによそって3人の前に置いた。
「これを振りかけると、少しピリッとして美味いぞ」そう言いながら鞄から七味を取り出す。
「くふふ、白パンにオークカツとキャベツの千切りを挟んでカツ用のソースをかけて」ミロクが白パンにオークカツとキャベツの千切りを挟んでソースをかけて口に入れる。
「くふふ、至福」
「あれ、パンが空を飛んでるけど、そこにミロク神がいるんだよね?」
「あぁ、残念だけどな」
「残念って言うな」
「気にしないであたい達も食べよう」
「そうだな」そう言ってルチアとアデルも食べ始める。
俺は白パンをちぎって、オーク汁に漬けてちびちび食べ始めた。
「おっ、旦那、その食べ方も良いな」
「あぁ、本当は黒パンでやるんだが、白パンでも美味いぞ」
「本当だ」ルチアが俺を真似して食べ始める。
「で、飽きてきたら、丸い白パンを半分に切ってレタスとオークのハンバーグを乗せて、マヨネーズをかけて」俺はそれを作って口に入れる。
「くはぁ、美味いなぁ」
「くふふ、真似をしないと」ミロクが俺と同じことをする。
「くふふ、至極!」
俺たちは、食事を堪能した。
「でも旦那」
「なんだ?」
「キングミノタウルスって、旦那が狩ったマスターキングミノタウルスしか報告が無いよ」
「え?」
「ほとんどが、旦那が狩ったマスターミノタウルスだったよ」
「まじ?」
「あぁ、そう記憶している」
「くふふ、私の力でキングミノタウルスを発生させてやろうか?」
「そんなことが出来るのか?」
「くふふ、ここまで力が戻ったら、造作もない事さ」
「おぉ、無駄に逞しい」
「五月蠅いな、やらなくても良いんだよ」
「いや、頼む、やってくれ」
「くふふ、それ!」
ダンジョンに何かを感じる。
「おぉ、感じる、次の階に其れがいる」
「くふふ、流石だね」
「あぁ、それじゃ行くか」俺は次の階層、6階層に向かった。
「くふふ、いるね」
「あぁ、感じる」
「旦那?」
「あぁ、大丈夫だ」俺は入ってすぐにその存在を感じ取った。
「キングミノタウルスだ」俺は駆けだす。
「ぐもぉぉぉ!」キングミノタウルスが咆哮する。
「威圧と、恐怖が乗せられているね」
俺は、簡単にレジストした。
「一匹じゃないのか?」
そこには5体のキングミノタウルスがいた。
「てい!」俺は先頭のキングミノタウルスの首を跳ねた。
「次!」その後すべてのキングミノタウルスの首を跳ねた。
「旦那、流石だ」
「4体は解体を頼む、1体はそのまま持ち帰る」
「あいよ」
「いつも通り」
「解っているよ、良いお肉と、舌と内臓、其れと皮だろ」
「あぁ、その通りだ」
「ほらよ、旦那」アデルとルチアがそれを渡してくる。
「よし今回は、ここまでだ」
「本当に踏破しないんだ?」
「お前たちも、仕事が無くなったら嫌だろう?」
「あぁ、そうだね」
「んじゃ、地上に戻るぞ」
「あいよ」
俺達は地上に戻り、其処のギルドに報告をした。
「納品は城砦都市のリーンにする、こいつらに報酬として150Gを振り込んでやってくれ」
「え? まじかよ、旦那」
「嬉しすぎる」アデルとルチアが感激する。
「いつも通りと言っただろう、今回お前たちは130体以上を解体しているからな」
「はい、承りました」ギルドのお姉さんが淡々と処理をした。
「後はリーンに納品だな」俺は城砦都市に帰ることにした。




