かば焼き
「連れてきました」組合の職員が息を継ぎながらその人物を連れてきた。
「ぜはー、ぜはー、ぜはー、儂がウナギ職人のギナウじゃ」
「おぉ、俺はムサシだ、宜しくな」
「本当にウナギを捕って来たのか?」ギナウが俺に聞いてくる。
「あぁ、多分」
「この樽に出せ」ギナウが樽を出してくる。
「随分上からだな」
「いや、失礼したこの樽に出してください」
「はぁ、まぁいいや」俺はミロクからウナギを2匹貰い樽に入れる。
「おぉ、本当にウナギだ」その男が叫ぶ。
「最初からそう言っているだろう」
「いや、最近ウナギの納品が減っているんじゃ」
「はぁ?」
「何故かナマズの方が人気でなぁ」
「そう言う物なのか?」
「ウナギの方が精が付くんじゃがのぉ」
「そうなの?」
「あぁ、そうじゃよ」
「で、捌き方を教えてくれ」
「あぁ、任せろ」
「あぁ、では早速教えてくれ」
「良いぞ、こっちに来い」
「あぁ」
「まず、氷水に入れて大人しくする」
「ほぉ」
「そうしないと暴れるからな」
「成程」
「大人しくなったら、長めの板に乗せて〆る」
「おぉ」
「ウナギの頭を包丁で切るのか」
「そして、目うちだ」ギナウが〆た鰻の目の下に釘のようなものを刺した。
「ほぉ。」
「で、首の横から骨に沿って切り開いていく」
「おぉ」
「で、開いたら、骨を同じように削いで、肝を取る」
「ほぉ」「
「この時に苦玉を潰さないようにな」
「成程」
「他の内臓は肝吸いにすると良いぞ」
「あぁ」
「骨は素揚げすれば骨せんべいになる」
「ほぉ」
「今回はやらなかったが、井戸水で1日位泥を吐かせれば風味が上がるぞ」
「ほぉ」
「で、身を適当に切ったら、串を打って」
「はぁ、回しながら串を入れるんだ?」
「あぁ、重要だぞ」
「成程」
「で、かば焼きにするなら炭火で焼く」
「おぉ」
「表面がきつね色になるまで焼くと良いぞ」
「解った」
「で、かば焼き以外にするなら、表面のヌルを取る」
「おぉ」
「開いた後に、熱湯を掛ければこんな風に包丁でヌルが取れる」
「おぉ、凄いな」
「かば焼き以外にするなら佃煮がお勧めだ」
「解った」
「マジで解ったのか?」
「あぁ、今見たからな」
「凄いな」
「普通だ」
「と言う事で、姉御にウナギを持って来た」俺は門番に言った。
「姉御にそう伝えてくれ」
「解りました」門番が走っていく。
「かかか、鰻を持って来たのか」姉御は言う。
「あぁ、姉御の言う鰻を捕れたと思う」俺はミロクから鰻を貰い樽に入れた。
「かかか、立派な鰻だな」
「捌き方も聞いてきたが、井戸水で1日ほど泥を吐かせた方が良いらしい」
「そう言えばそうだな」
「で、魔法で水を出して、ウナギを入れて、クイックの魔法を発動」俺は大きめの樽に鰻を入れてそれを実行した。
「24時間分進めたぞ」
「ふむ、樽の底に泥らしきものがあるから成功かな?」
「料理長にも見てもらおう」樽ごとミロクに持って貰い、俺は調理場に向かう。
「料理長はいるか?」俺はそう言いながら調理場に入った。
「おや、ムサシ様どうされました?」
「あぁ、鰻を仕入れてきたから、かば焼きを作ろうと思ってな」
「鰻ですか?」
「あぁ、捌いた事はあるか?」
「いえ、見たこともありません」
「そうか、これがそうだ」俺はミロクから樽を貰い料理長に見せた。
「おぉ、始めて見ました」
「んじゃ、今から俺が捌くから、見て覚えてくれ」
「解りました」
「樽に氷を入れて鰻を大人しくさせる」俺は氷魔法で樽に氷を浮かべる。
「何故そんなことをするので?」料理長が聞いてくる。
「鰻が暴れるのを防ぐためだそうだ」
「成程」
「で、大人しくなったら鰻を大きめの板に乗せて」俺はミロクから板を貰って調理場に置いた。
「鰻の頭を切って、鰻を絞める」俺は見た通り実行する。
「で、目の下に釘を刺してから包丁で叩いて捌きやすくする」
「ほぉ」
「で、切り離さないように骨に沿って鰻を開いていく」
「おぉ、上手いものですな」
「開いたら骨をそいで、埋蔵を処理する」
「おぉ」
「この黒い奴は丹苦玉と言って、潰すと鰻がまずくなるそうだから潰さないようにな」
「はい、解りました」
「で、開き終わったら、鰻の頭を落として、20cm位に切って串を打つ」俺はミロクから串を貰い鰻に刺していく。
「この時串を回しながら刺すと良いらしい」
「は~、成程」料理長が感心している。
「で、串を打ったら炭火で焼くそうだ」俺はミロクから炭焼きセットを貰い火魔法で炭に火をつけた。
「炭火がおきたら鰻を焼いていく」俺は鰻を乗せていく。
「両面がきつね色になったら良いそうだ」
「お~」料理長が熱心にメモを取った。
「で、この状態が白焼きと言って、山葵醤油で食べるのが良いらしい」
「おぉ」
「早速味見するか」俺はミロクから醤油と山葵を貰い小皿に入れる。
「どれ?」俺は白焼きを箸で切り醤油をつけて口に入れた。
「美味い、のか?」初めて食べたから良く解らない。
「かかか、これだよ」姉御も白焼きを口に入れて嬉しそうにしている。
「さぁ、アルゴンたちの分も捌いていこう」俺は料理長にそう言って鰻を裁いていく。
「姉御肝吸いって何だ?」
「肝に塩を振ってさっと茹でて冷ましたものを澄まし汁に入れた奴だ」
「へ~」
「三つ葉を入れると完璧だな」
「成程」
「かば焼きは、前に作ったナマズの奴を流用すれば良いか」俺はミロクからたれの入った壺を貰うと、白焼きをたれに漬けて焼いていく。
「くぅ~、たれが炭に落ちて良い匂いがする」姉御が涎をたらしそうに言う。
「で、どんぶりに白米を入れ、たれを振りかけて鰻のかば焼きを乗せるんだ」姉御がそう説明する。
「料理長、澄まし汁を作ってくれ」
「畏まりました」
その後アルゴンたちとかば焼きを堪能した。
勿論、カリナ達にも振舞った。
「ナマズと違って、随分脂があるのですね」鰻のかば焼きを食べたカリナの感想だ。
「だが、これはこれで美味いよな」
「はい」カリナがにっこりと微笑んだ。
「くそ~可愛いじゃないか」




