ウナギ
「朝ごはん食べられますよ」テトがドアをノックしてくる。
「あぁ、今行く」俺はそう言って部屋を出る。
「お好きな席に座ってください」テトが俺を見て言う。
「あぁ、俺はすぐ傍の机に腰を下ろす」
机には、パンと、目玉焼きとベーコンを焼いたものが置かれている。
「はい、スープです」テトが深めの皿を持ってくる。
「美味いなぁ」
「本当?」テトがテーブルに手を置いて言う。
「あぁ、美味いぞ」
「にしし、それ、あたしが作ったんだ」
「あぁ、本当に美味い」
「にしし、ありがとう」
「いや、本当の感想だ、他意は無いぞ」
「うん、普通にうれしいよ」
「そうか」俺は朝食を食べ進めた。
「はい、これ、お弁当3人分」テトが俺の机にそれを置く。
「おぉ、ありがとうな」俺はそれをミロクに渡す。
「くふふ、預かるよ」弁当は一瞬で消える。
「え?何処に消えたの?」
「あぁ、気にするな、俺の魔法だ」
「にしし。ムサシ様は本当に凄いね」
「ご主人様なら当然だ」なぜか紅が胸を張って言う。
「そう言えばその人は、ムサシ様のお嫁さんですか?」テトが紅を見て言う。
「そうだ」俺ではなく紅が答えた。
「あれ?確か王都で第3王女様と結婚されたと聞いたけど」テトが頭を傾ける。
「ご主人様は、私以外に3人の嫁がいて、その一人が第3王女だ」紅が言う。
「え?ええええぇ?4人もお嫁さんがいるの?」テトが叫ぶ。
「強者が複数の嫁を娶るのは当然だろう」
「そう言う物なの?」
「強者の子種は、みな欲しがるものだ、だからまだまだ増えるぞ」
「ふえぇ~」テトがフリーズした。
「馬鹿やってないで、さっさと行くぞ」俺はそう言いながら席を立つ。
「お供します、ご主人様」紅が俺に続く。
テトは置き去りにした。
「くふふ、多分この村にあるから、道具屋に行け」
「あぁ」俺はミロクに言われるまま、道具屋に向かった。
「ここか?」俺は道具屋らしきところに入った。
「邪魔するぜ」
「はい、いらっしゃいませ」
「ここで何を買うんだ?」
「くふふ」
『ウナギ筌はあるか?』久しぶりにミロクが俺の口を使って店の者に言う。
「はい、ございますよ」
『おぉ、幾つあるんだ?』再びミロクが俺の口を使って言う。
「はい、10個あります」
『全部買う、すり身もあるか?』ミロクが俺の口を使って聞く。
「はい、ございます」
『3Kgくれ』ミロクが、もう良いか、『』がミロクだ。
「全部で3Gです」
「あぁ、このカードが使えるなら決裁してくれ」俺は組合のカードを見せながら言う。
「はい、大丈夫です、カードをお預かりいたします」店員がカードを持って決済しに行く。
「はい、決裁終わりました、こちらがウナギ筌とすり身3Kgでございます」店員が俺にカードを返しながら品物を差し出す。
「ミロク」
「うん」其処にあったものが消える。
「おぉ、マジックバックをお持ちなのですか?」店員が聞いてくる。
「あぁ」俺はそっけなく答えた。
「ありがとうございました」
店員に見送られながら、俺は西の門に向かった。
「これはどうやって使うんだ?」
「くふふ、着いたら教える」ミロクが嬉しそうだ。
「おぉ、あのナマズを倒してくれた君か、どうぞ通ってくれ」門番はあの時の男だった。
「あぁ、ありがとうな」俺は門を潜った。
「で、5Kmほど行った所か?」
「くふふ、ついでにナマズも捕っていこう」ミロクが言う。
「そう言えば、ナマズの在庫が減っていたな」
「くふふ、そうだね」
「んじゃ、最初にナマズを捕るか」
「くふふ」
「あの時の沼だな」
「くふふ、そうだね」
「どうやって捕ろうか?」
「くふふ、あたしが神気で捕まえるから、ムサシはそれを捕獲して」
「え?そんなことができるの?」
「勿論」
「そう言う事なら解った」俺は準備をする。
「くふふ、捕まえた」
「おぉ、岸に寄せてくれ」
「くふふ、任せて」
俺はそれを捕獲する。
周りで見ているナマズを捕っているものも何も言わないので、俺は100匹ほどのナマズを捕った。
「くふふ、次はウナギだね」ミロクが言う。
「あぁ」俺はそう言いながら走る。
紅も普通に付いてきた。
「ふふふ、造作もない事」紅が偉そうに言う。
「ふ~ん」
「で、ここはさっきの沼から川を上流に3Kmほど来たところか?」
「くふふ、そうだよ」
「こんな所でウナギが捕れるのか?」
「くふふ、さっき買ったウナギ筌に紐を結んで、中にすり身を入れて石を重りにして川の中に入れてごらん」
「あぁ」俺はそれを実行する。
「私も手伝います」紅が俺と同じ作業をする。
「10個全部川に入れたぞ」
「くふふ、最初に入れたウナギ筌を引き上げてごらん」
「あぁ」俺はウナギ筌を手繰り寄せる。
「随分重いな」
「くふふ」
「おぉ、中にたくさんのウナギがいる」
「くふふ、中からウナギを取り出してもう一度すり身を入れて川に入れろ」
「あぁ、解った」
「ご主人様。こちらにも大量のウナギが」紅がウナギ筌を引き上げて言う。
「入れ食いだから、ジャンジャン繰り返せ~」ミロクが言う。
「あぁ、解った」
俺たちはウナギを捕りまくった。
「わははは、200匹は捕れたかな?」
「そうだね」
「村に帰ればウナギの裁き方が解るかな?」
「くふふ、そうだね」
俺たちは村に帰った。
「おぉ、帰って来たのかい?」門番が俺に言う。
「あぁ、大量だったぞ」
「其れは羨ましい」
「ははは、少し村の組合に卸すから期待してくれ」
「あぁ、期待している」
と、言う事で俺は組合に来た。
「おや、君は前にナマズを納品してくれた人かい?」組合の窓口担当が言って来る。
「あぁ、そうだ」
「今日もナマズかい?」
「いや、ウナギの裁き方を聞きに来た」
「何だって?」
「おや?」
「ウナギを捕って来たのか?」
「あぁ、駄目だったか?」
「いや、幾つ捕って来た?」
「え~っと、結構一杯?」
「納品してくれ」組合の男が俺の両肩を持って言う。
「何で?」俺はその男に聞く。
「最近納品が無いんだ」
「あぁ、だから入れ食いだったのか?」
「一匹500B、いや700B払う」
「捌き方を教えてくれたら、一匹500Bで、30匹納品する」
「マジか?」
「あぁ」
「解った、ウナギを裁ける奴を呼んでくる」その職員は表に駆けて行った。
「置いてけぼりかよ」
「くふふ、待ってあげなよ」
「まぁ、仕方ないか」俺はその場で待機した。




