村に帰ろう
本日2話目の投稿です。
「ねぇ、この料理を売っても良いかい?」ニホさんが俺に迫る。
「金鶏は無理だろうけど、ランナー鶏とかで作るのは良いよ、好きに使ってくれ。」
「ムサシ様ぁ、恩にきるよ、お礼にテトを好きにしていいからね。」
「へ?」テトが身構える。
「要らないから!」
「え~?」逆にテトが残念そうな声を上げる。
「何なんだよ、お前ら。」
「くふふ、人気者だね。」
「でも、内臓が食べられたなんて知らなかったよ、昨日捨てた奴はもう駄目かね。」
「止めておいた方が良いですよ。」
「はぁ、何で昨日教えてくれなかったんだい。」
「いや、聞かれなかったんで。」
「あぁ、凄く損した気分だよ。」
「お母さん、元はムサシさんがくれた物だから、タダじゃない。」テトが言う。
「こんなに美味しく食べられたものを、捨ててしまった事が残念なんだよ。」
「終わったことはしょうがないよ。」
「はぁ、其れもそうだね。」
「残ったお肉は好きに使ってください、あぁ。」
「え?」
「足も、甘辛く煮込むと美味しいですよ、あぁ、トサカも珍味ですからね。」
「え? え?」ニホが固まる。
「むしった羽以外は美味しく食べれますからね。」
「え?」
「骨も、煮込めば良い出汁がとれますよ。」
「はぁ?」
「ねぇ、マジでテトを嫁にして、この宿を継いでくれないかい?」俺の両肩を持ってニホさんが俺をゆする。
「痛い、痛い、継ぎません!」俺が拒絶する。
「はぁ、駄目かい。」
「先程も言いましたが、まだやる事があるので。」
「残念だよ。」ニホが落胆する。
「今日は、もう休みます。」そう言って俺は部屋に向かった。
「浄化!」
「あ~、温泉があるのに、一度も入らなかったなぁ。」
「くふふ、私の浄化はそれ以上の効果があるよ。」
「確かに、身体が奇麗になるだけじゃなく、疲れも取れるな。」
「くふふ。」
「あ~、明日はあの村に帰るのか。」
「くふふ、テトが名残惜しいのかい?」
「テトは、子供だぞ、俺は変態じゃない!」
「くふふ、テトは満更でもないみたいだよ。」
「ははは、無い無い。」
「くふふ、朴念仁だね。」
「知らない、もう寝る。」
「くふふ、お休み。」
「添い寝は良いからな。」
「くふふ、解ったよ。」
「絶対に要らないからな。」
「くふふ、振り?」
「違うから。」
「くふふ、解ったよ。」
「ぐー。」
「ぐー。」
「ぐー。」
「くふふ、完全に寝たかな?」
「ぐー。」
「いつもは、いきなり行くから反応されるから、今回はこっそりと。」
「ぐー。」
「そーと、布団に潜りこんで・・」
「ぐー。」
「下半身に手を潜りこませて。」
「てい!」俺は、ミロクの鳩尾に拳骨を叩き込む。
「うぎゅう!」
「油断も隙もあったもんじゃないな。」俺はそう言いながら、眠りについた。
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「朝ごはん、食べれますよ。」
テトの声で、目が覚める。
俺は、身支度を整え、いつでも出立できるようにして食堂に向かった。
「お好きな席にどうぞ。」テトはいつもと変わらない態度で俺に言う。
俺は、すぐ傍の責に座った。
そこには、ベーコンエックとポテトサラダ、レタスとトマトの簡易サラダが乗った皿があった。
テーブルの中央には、バケットが入った籠がある。
「はい、スープです。」テトがトマトスープを俺の前に置く。
「ありがとう、美味そうだ。」
「お代わりもありますよ。」そう言いながらテトは厨房に入る。
「あれ? 嫌われたのかな?」俺は思う。
「くふふ、本当に朴念仁だね、君は。」
「え? なんで?」
「くふふ、くふふ、本当にもう。」
「?」 俺は、不思議に思いながら、朝食を食べた。
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「お世話になった。」俺はカウンターでニホに挨拶をして、村に帰ることにした。
残念な事に、テトは見送りに来てくれなかった。
俺は、北の門に向かった。
「くふふ、隊商がいると良いね。」
「あぁ。」
「北の門に着くと、俺の前に男が現れる。」
「ムサシ様、護衛をお願いしても良いですか?」
「おや、ハコベさん、勿論良いです、お願いします。」
「おぉ、心強い、宜しくお願いします。」
「直ぐに出発ですか?」
「はい。」
「では、行きましょう!」俺は、隊商の荷馬車の上に座って言う。
「では、出発です!」ハコベの声で隊商が門を出ていく。
「また来ることもある、今はさよならだ。」そう言いながら村を振り返る。
「ムサシさ~ん。」
テトの声だ。
「絶対、絶対、また来てくださいね~。」
「来てくれなかったら、恨みますからね~。」
ははは、来なかったら恨まれちゃうな。
「来てくれたら、夜伽をちゃんとしますからね~。」
来たく無くなる発言だ。
この旅は特に襲撃は無かった。
ハコベは、5Gが入った革袋を渡してきた。
勿論俺は、中身を確認せず懐に入れた。
村に着いた俺は、いつもの宿にチェックインした。
「また来てくださったんですね。」宿の娘が嬉しそうに言う。
「あぁ、宿帳にサインか?」
「いえ、ムサシ様ですよね、サインはいりません。」
「そうか。」
「あの。」
「ん?」
「あたし、この宿の娘の、レモンと言います。」
「あぁ、前もお世話になっていたのに、名前も知らなかったな。」
「はい。」
「レモンか、宜しくな。」
「はい。」
「いつも通り、風呂無し、朝飯付きな。」
「ふふ、承りました。」
「さて、納品に行ってこようか。」俺は組合に向かった。
今回で毎日更新は終わりです。
あらすじの通り、週一更新が基本となります。
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