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目を付けられた

「旦那様、オークションの結果が出ました」リーンが言う。


「ほぉ、興味深い」俺は答える。


「黒龍の肉は可食部が1000kgほどありました」

「おぉ、凄いな」


「1kg単位でオークションをした所、組合の手数料を抜いて157000Gになりました」


「はぁ?」(日本円で15億7000万円)


「魔石は国王様が10000Gで落札なさいました」


「あぁ」俺は感覚がマヒしてきた。


「鱗付きの皮と骨は、国王様とガキーン様が半分ずつ其々12000Gで落札されました」


「国王もだけど、ガキーン凄いな」

「本当ですね」


「爪と牙も国王様とガキーン様が半分ずつ落札されて、其々9000Gでした」


「そして、リッチの魔石は国王様が5000Gで落札されました」

「あぁ、もう金銭感覚がマヒしてきた」


「そして、リッチが持っていた錫杖なのですが」

「ん?」


「隣国の総本山ミロク神聖教会の初代枢機卿様の物であることが解りました」

「舌を噛みそうな名前だな」


「450年程前に行方不明になったようです」

「何で今頃になって表れたんだ?」


「そこまでは」

「で?」


「はい、ですから隣国の総本山ミロク神聖教会へお返しするのが宜しいかと」リーンが困ったように言う。


「んじゃ、返してやれば?」

「良いのですか?」


「持ち主が解ったんだから、返すのは当然だろう」

「旦那様はお優しい」


「くふふ、貰っておけば良いじゃないか」ミロクがとんでもない事を言う。

「別に要らないから」


「くふふ、何で?」

「錫杖なんか使わないし」


「そうだね」


**********


「ムサシ様」衛兵が俺の家に着て跪いて言う。


「何だ?」


「国王様がお呼びです」

「アルゴンが?」


「はい」

「何があったんだ?」


「私の口からは」

「そうか」俺は装備を付けて出かける用意をする。


「ムサシ様、我も同行しましょう」紅が言う。

「何でだ?」


「いやな予感がします」

「そうか、なら来い」

「はい」


**********


「アルゴン、どうしたんだ?」俺は国王アルゴンに言う。


「あぁ、ムサシ、龍を神と信仰する隣国のドラゴニア王国より通達があった」

「ほぉ、なんとだ?」


「崇めたてる黒龍を滅した、ムサシ様を引き渡せ、もし断れば宣戦布告をして攻め込むと言ってきた」アルゴンが溜息をつきながら言う。


「へぇ、で、俺を引き渡すのか?」

「まさか」


「んじゃ、戦争をするのか?」

「それもなぁ」国王アルゴンが煮え切らなそうに言う。


「かかか、ムサシ、ぶっ潰しちまえ」姉御が物騒なことを言う。


「くふふ、私も同意するよ」ミロクが楽しそうに言う。

「ミロク」


「何だい?」

「曲がりなりにも神様なんだろう、それで良いのか?」


「間違っちゃいけないよ、神だから良いことばかりをするとは限らないんだ」

「え?」


「私は、何人もこの手に懸けてきた」

「おぅ」


「聖女が生まれる村の村長も手に懸けたよ」

「あぁ、そうだったな」


「くふふ」


「よし、俺に任せろ」俺はアルゴンに言う。

「え?」


「俺がナシを付けてきてやるよ」

「ムサシ、大丈夫なのか?」アルゴンが心配そうに言う。


「ははは、任せておけ」俺はそう言いながら王城を出てミロクに問う。


「ミロク」


「何だい?」

「ドラゴニア帝国の近くまで繋げるか?」


「あぁ、昔言った事があるから出来るよ」


「んじゃ、繋げて」


「くふふ、緊張感の欠片もないね」


「只の人間が俺にかなうのか?」


「くふふ、絶対に無理だね」


「そう言う事だ」


「くふふ、繋げたよ」目の前にゲートが開く。


「ははは、蹂躙かな?」俺はそこを潜った。


「ムサシ様、お供します」紅も俺に続いた。


**********


「あそこが国境か?」俺は人が並んだ場所を見て言う。


 門らしきところに人が並んでいる。


 その門からは左右に高さ10m位の壁が続いていた。


 俺は大人しく列に並ぶことにした。



「兄ちゃんはドラゴニア帝国に何をしに行くんだ?」列に並んでいた冒険者らしき男が聞いてくる。


「あぁ、野暮用だ」俺は答える。


「そうか、ここだけの話だが、あの国の信仰対象の龍が討伐されて、上の方は殺気立っているらしいからな」


「へぇ、そうなのか」

「あぁ、触らぬ神に祟りなしって言うからな、兄ちゃんも気を付けな」


「あぁ、忠告感謝する」

「良いって事よ」その男が列に向かう。


「ムサシ様、私も信仰対象の一人です」紅が言って来る。

「ははは、面白い事になっているな」


「え?」


「信仰対象を狩った男が信仰対象を嫁にしている」


「くふふ」


「さ~て、どんな対応をしてくるんだろうな」俺は列に並びながら考える。


「くふふ、どうなるかね?」

「さぁ?」


「くふふ」


 小一時間ほどで、俺たちの番になった。


「身分を証明するものは?」門番が聞いてくる。


「あぁ」俺は組合のカードを見せた。


「なぁ? 神の身代わり?」


「何だと、黒龍様を狩った男か?」

「よく、おめおめとこの国に来たな」門番たちが殺気立って俺の周りを囲む。


「無礼者!」紅が叫ぶ。


「なぁ?」

「何だ貴様!」門番が紅に槍を向ける。


「ふん!」紅は向けられた槍を掴み叩き折る。


「愚か者ども、我はレッドドラゴン、ここにいるムサシ様に名をいただき、『くれない』と言う」


「えぇ、レッドドラゴン様?」門番が狼狽える。


「とりあえず、この国の皇帝に会えるように上の人間に伝えてくれ」俺はその門番に言う。


「わ、解りました」その門番が駆けだしていく。


「はぁ、時間がかかりそうだな」俺はそう思いながら、残った門番に聞く。


「此処から一番近い宿は何処だ?」


「あぁ、あそこに見える田戸屋が一番近い」門版が答える。


「解った、俺たちはあの宿屋に泊まる、逃げも隠れもしないと皇帝に伝えてくれ」

「解りました」その門番が敬礼をする。


「はぁ、とりあえず宿をとるか」俺はその宿に向かった。


**********


「邪魔するぜぃ」俺は宿の門を潜る。


「はい、いらっしゃいませ。何名様ですか?」カウンターの奥から男が言って来る。


「二人だ」


「はい、ではツイン部屋、風呂付、一泊2食付き1G300Bです」その男が言う。

「おぉ、意外に安いな」俺は1G300B分のBが入った革袋をカウンターに置く。


「お部屋は2階の201号室です、晩御飯は18時から20時まで後ろの食堂で食べられます」

「おぉ」


「朝食は朝7時から9時まで同じく後ろの食堂で食べられます」

「そうか、解った」俺は鍵を受け取り、部屋に向かった。



「さて、どう出てくるか」俺はその部屋に入って考えた。


「ムサシ様、夜伽はどうしますか?」紅が聞いてくる。


「いや、いや、駄目だろう」

「え? そうなのですか?」


「事の最中に踏み込まれたらどうするんだ?」


「我のブレスで一掃かと」


「あ~、そうだったな」


「はい」紅が嬉しそうに言う。


「却下だ」


「え~」


「嫁に夜伽中に助けてもらうとか、どんな罰ゲームだよ」

「そうなのですか?」


「あぁ、お前は俺が守る」


「ムサシ様」

「なんだ?」


「今押し倒しても良いですか?」


「駄目に決まっているだろう」


「そんなぁ」


 俺は紅を無視して晩御飯を食べに向かった。


「お好きな席にどうぞ」宿屋の娘が言ってきたので手近な席に座った。


 机には白パンが入った籠が用意され、すぐにシチューらしきものが配膳された。


 俺は白パンをちぎり、シチューに浸して口に入れる。

「美味いなあ」俺は一時の幸せを味わった。

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