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孤児たちにランナー鶏を

「くはぁ!」俺は上を向いて涙を流す。

「これは」リーンも涙を流しながら咀嚼していた。


「駄目な奴です」カリナもリーンと同じ状態だ。

「何でこんなものを」サノアも同じだ。


「くふふ、忠告したよね」そう言いながらミロクが肉を頬張る。


「ここまでとは思わなかった」俺は涙を流しながらもう一切れ口に入れる。


「これはやばいですね」料理長が涙を流しながら肉を食べている。

「こんなものを食べちゃったら、戻れなくなるってわかります」カロリーヌさんも涙を拭きながら食べている。


「肉ダンジョンをもう一度潜れば、又出てくるかな?」

「くふふ、さあね」


 孔雀パーティーは夜遅くまで続いた。


「え? アルゴンには良いのかって? 別に良いだろう」


**********


「さて、エンシェントドラゴンは何処にいるんだろう?」

「ここ数十年の間、目撃情報はありませんでした」リーンが言う。


「くふふ、気長に表れるのを待つしかないね」

「あぁ、そうだな」


「で、その間何をしよう?」

「くふふ、暇ならお肉集めにでも行けば良いじゃないか」


「又肉ダンジョンに行けと?」

「くふふ、しばらく孤児院に寄付をしていないね」


「あぁ、そう言う事か」俺はカリナに口付けをして城塞都市の家に行く。


「お帰り、ムサシ」シーナが出迎えてくれた。

「あぁ、このまま町の外に出てくる」俺はそう言って家を出て東門に向かった。


**********


「あぁ、又君か、武運を」俺を見慣れた門番が門を通してくれる。


「くふふ、顔パス?」

「知らない」



「さて、レッサードラゴンのいた山まで往復すれば良いか?」

「くふふ、そうだね」


「ふん!」俺はランナー鶏が出るくらいに闘気を抑えた。


「さて、ジョギング程度の速さで行くか」俺は山に向かって走り出した。


「わはは、出るは出るは」俺はランナー鶏や金鶏を仕留め、首を切って血抜きする。


「こうしないと美味くないからな」俺はそれを続ける。


 たまに血の匂いにつられて魔獣が現れるが、美味しく無い奴は気絶させて放置だ。


「結構たまったかな?」俺はミロクに持って貰った肉を勘定する。


「くふふ、ランナー鶏103羽、金鶏45羽、オークの良いお肉30個だよ」


「よし、このくらいで良いだろう」俺は城塞都市に戻ることにした。


 その足で俺は孤児院に向かう。


「シスターマリー」俺はその人に声を掛ける。

「まぁ、ムサシ様、お久しぶりです」シスターマリーが俺に言う。


「久しぶりに寄進に来ました」俺はそう言ってミロクから10G分のBが入った革袋を貰い、シスターに差し出す。


「まぁ、いつもありがとうございます、貴方にミロク神の加護がありますように」シスターマリーが

祈りを捧げる。


(隣にいるんだけどな)


「其れで、今日はランナー鶏も寄進したいのですが、血抜きをしただけで処理をしていないんです」


「あら、あら、それは困りましたね」シスターマリーが言う。


「で、ちょっと庭先をお借りして、俺が捌いちゃいますね」

「え?」


「孤児たちで、興味がある奴は見ても良いですけど、いますかね?」俺がシスターに聞く。


「さぁ? 子供たちに聞いてみないと」


「そうですよね、お~い、お前ら」俺は孤児たちに声を掛ける。


「な~に?」

「どうしたの?」

「呼んだ?」


「今からランナー鶏を捌くから、見たい奴だけ集まれ」

「え?」

「鶏を捌くの?」

「あぁ」


「グロイ?」

「少しだけな、だけどお前たちが社会に出た時に役に立つぞ」


「うぅ、なら見る」

「あたしは止める」


「俺も見る」

「あたしは大丈夫」孤児たちが口々に言う。


「よし、裏庭に来い」俺はそう言って孤児院の裏庭に行く。


「さて、やるか」俺はそう言いながら裏庭の片隅に地魔法で調理台を作る。


「そして、湯を沸かす」俺は調理台の隣に竈を作り火を入れる。

 その上に鍋を置き、水魔法で鍋に水を張る。


「何でお湯を沸かすの?」孤児の一人が聞いてくる。

「羽をむしるためだ」俺は答える。


「羽をむしる?」

「あぁ、結構来るものがあるが大丈夫か?」俺は孤児たちに聞く。


「だって、いただきますって、命を頂くってことだよね?」

「あぁ、そうだな」


「だったら、ちゃんと見ないと」

「うん」


「おぉ、お前ら凄いな」


「普通だよ」


 結局ほとんどの孤児が見ることになった。

 逞しいなお前ら。


「んじゃ、やるぞ」

「は~い」


「まず、70度のお湯を沸かす」

「70度?」


「あぁ、沸騰する直前だ」

「え~?」


「見て覚えろ」


「は~い」


「で、その温度になったら鶏を全身入れる」

「へぇ」


「羽の中までお湯が通るようにな」


「はい」


「で、1分たったら取り出して羽をむしっていく」俺はゴム手袋をして羽をむしっていく。


「皮がめくれやすい所もあるから慎重にな」

「は~い」


「こんな具合だ」俺は羽をむしった鳥を孤児たちに見せる。


「お肉だ!」

「美味しそう」


「よ~し、やってみたい奴」俺は孤児たちに聞く。


「はい、はい!」

「俺もやる!」

「あたしも」孤児たちの圧が凄い。

 

「よ~し、ここに出すから皆やってみろ」俺はそう言いながらランナー鶏を机に出していく。


 そして、孤児たちは俺の真似をしてランナー鶏の羽をむしっていく。


「あぁ、本当に逞しいな、冒険者にも、肉屋にもなれるな」俺は思う。


「ムサシ様、ありがとうございます」シスターマリーが俺に頭を下げる。


「いえ、いえ、孤児たちの自主性が凄いのです」


「そうでしょうか?」


「はい、きっと彼らは立派な大人になるでしょう」


 そして、ランナー鶏の唐揚げを作り孤児たちに振舞った。


 他に、ランナー鶏を10羽寄付した。


「ムサシ兄ちゃん、ありがとう!」孤児たちが嬉しそうに言う。

「おぉ、頑張れよ」俺はそう言って王都の孤児院に向かった。


 王都の孤児院でも、同じことをやった。


 やはり孤児たちは、羽むきに挑戦し、それをやり遂げた。


「孤児たちは凄いな」俺は感心する。


「くふふ、それを見届けるムサシも流石だよ」

「俺は何もしていない」


「くふふ」

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