孤児たちにランナー鶏を
「くはぁ!」俺は上を向いて涙を流す。
「これは」リーンも涙を流しながら咀嚼していた。
「駄目な奴です」カリナもリーンと同じ状態だ。
「何でこんなものを」サノアも同じだ。
「くふふ、忠告したよね」そう言いながらミロクが肉を頬張る。
「ここまでとは思わなかった」俺は涙を流しながらもう一切れ口に入れる。
「これはやばいですね」料理長が涙を流しながら肉を食べている。
「こんなものを食べちゃったら、戻れなくなるってわかります」カロリーヌさんも涙を拭きながら食べている。
「肉ダンジョンをもう一度潜れば、又出てくるかな?」
「くふふ、さあね」
孔雀パーティーは夜遅くまで続いた。
「え? アルゴンには良いのかって? 別に良いだろう」
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「さて、エンシェントドラゴンは何処にいるんだろう?」
「ここ数十年の間、目撃情報はありませんでした」リーンが言う。
「くふふ、気長に表れるのを待つしかないね」
「あぁ、そうだな」
「で、その間何をしよう?」
「くふふ、暇ならお肉集めにでも行けば良いじゃないか」
「又肉ダンジョンに行けと?」
「くふふ、しばらく孤児院に寄付をしていないね」
「あぁ、そう言う事か」俺はカリナに口付けをして城塞都市の家に行く。
「お帰り、ムサシ」シーナが出迎えてくれた。
「あぁ、このまま町の外に出てくる」俺はそう言って家を出て東門に向かった。
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「あぁ、又君か、武運を」俺を見慣れた門番が門を通してくれる。
「くふふ、顔パス?」
「知らない」
「さて、レッサードラゴンのいた山まで往復すれば良いか?」
「くふふ、そうだね」
「ふん!」俺はランナー鶏が出るくらいに闘気を抑えた。
「さて、ジョギング程度の速さで行くか」俺は山に向かって走り出した。
「わはは、出るは出るは」俺はランナー鶏や金鶏を仕留め、首を切って血抜きする。
「こうしないと美味くないからな」俺はそれを続ける。
たまに血の匂いにつられて魔獣が現れるが、美味しく無い奴は気絶させて放置だ。
「結構たまったかな?」俺はミロクに持って貰った肉を勘定する。
「くふふ、ランナー鶏103羽、金鶏45羽、オークの良いお肉30個だよ」
「よし、このくらいで良いだろう」俺は城塞都市に戻ることにした。
その足で俺は孤児院に向かう。
「シスターマリー」俺はその人に声を掛ける。
「まぁ、ムサシ様、お久しぶりです」シスターマリーが俺に言う。
「久しぶりに寄進に来ました」俺はそう言ってミロクから10G分のBが入った革袋を貰い、シスターに差し出す。
「まぁ、いつもありがとうございます、貴方にミロク神の加護がありますように」シスターマリーが
祈りを捧げる。
(隣にいるんだけどな)
「其れで、今日はランナー鶏も寄進したいのですが、血抜きをしただけで処理をしていないんです」
「あら、あら、それは困りましたね」シスターマリーが言う。
「で、ちょっと庭先をお借りして、俺が捌いちゃいますね」
「え?」
「孤児たちで、興味がある奴は見ても良いですけど、いますかね?」俺がシスターに聞く。
「さぁ? 子供たちに聞いてみないと」
「そうですよね、お~い、お前ら」俺は孤児たちに声を掛ける。
「な~に?」
「どうしたの?」
「呼んだ?」
「今からランナー鶏を捌くから、見たい奴だけ集まれ」
「え?」
「鶏を捌くの?」
「あぁ」
「グロイ?」
「少しだけな、だけどお前たちが社会に出た時に役に立つぞ」
「うぅ、なら見る」
「あたしは止める」
「俺も見る」
「あたしは大丈夫」孤児たちが口々に言う。
「よし、裏庭に来い」俺はそう言って孤児院の裏庭に行く。
「さて、やるか」俺はそう言いながら裏庭の片隅に地魔法で調理台を作る。
「そして、湯を沸かす」俺は調理台の隣に竈を作り火を入れる。
その上に鍋を置き、水魔法で鍋に水を張る。
「何でお湯を沸かすの?」孤児の一人が聞いてくる。
「羽をむしるためだ」俺は答える。
「羽をむしる?」
「あぁ、結構来るものがあるが大丈夫か?」俺は孤児たちに聞く。
「だって、いただきますって、命を頂くってことだよね?」
「あぁ、そうだな」
「だったら、ちゃんと見ないと」
「うん」
「おぉ、お前ら凄いな」
「普通だよ」
結局ほとんどの孤児が見ることになった。
逞しいなお前ら。
「んじゃ、やるぞ」
「は~い」
「まず、70度のお湯を沸かす」
「70度?」
「あぁ、沸騰する直前だ」
「え~?」
「見て覚えろ」
「は~い」
「で、その温度になったら鶏を全身入れる」
「へぇ」
「羽の中までお湯が通るようにな」
「はい」
「で、1分たったら取り出して羽をむしっていく」俺はゴム手袋をして羽をむしっていく。
「皮がめくれやすい所もあるから慎重にな」
「は~い」
「こんな具合だ」俺は羽をむしった鳥を孤児たちに見せる。
「お肉だ!」
「美味しそう」
「よ~し、やってみたい奴」俺は孤児たちに聞く。
「はい、はい!」
「俺もやる!」
「あたしも」孤児たちの圧が凄い。
「よ~し、ここに出すから皆やってみろ」俺はそう言いながらランナー鶏を机に出していく。
そして、孤児たちは俺の真似をしてランナー鶏の羽をむしっていく。
「あぁ、本当に逞しいな、冒険者にも、肉屋にもなれるな」俺は思う。
「ムサシ様、ありがとうございます」シスターマリーが俺に頭を下げる。
「いえ、いえ、孤児たちの自主性が凄いのです」
「そうでしょうか?」
「はい、きっと彼らは立派な大人になるでしょう」
そして、ランナー鶏の唐揚げを作り孤児たちに振舞った。
他に、ランナー鶏を10羽寄付した。
「ムサシ兄ちゃん、ありがとう!」孤児たちが嬉しそうに言う。
「おぉ、頑張れよ」俺はそう言って王都の孤児院に向かった。
王都の孤児院でも、同じことをやった。
やはり孤児たちは、羽むきに挑戦し、それをやり遂げた。
「孤児たちは凄いな」俺は感心する。
「くふふ、それを見届けるムサシも流石だよ」
「俺は何もしていない」
「くふふ」




