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秋刀魚

「姉御に会いに来た」俺は王城の門の前で言う。


「あぁ、ムサシ様ならどうぞお通りください」門番が言う。

「ははは、本当に俺は特別なんだな」そう言いながら姉御に会いに行く。




「姉御」

「おぉ、ムサシか、今日はどうしたんだ?」


「秋刀魚を手に入れた」

「何だと?」姉御が俺の胸ぐらを掴む。


「姉御、落ち着け」俺は姉御を抑える。


「ムサシ、解っているのか、秋刀魚だぞ!」

「あぁ、姉御に聞いていたからな、買い占めてきた」


「どんだけあるんだ?」

「100匹かな」俺は答える。


「大根は?」

「あるぞ」


「ムサシ、お前」

「何だよ」


「本当に使える奴だな」


「おぉ」俺は少し引いた。


 料理長に秋刀魚を30匹渡した。


 その横で姉御が目を輝かせている。


「え~と?」俺は姉御を見を見る。


「姉御?」


「料理長、炭火で焼いて」姉御が言う。

「姉御、下処理は?」俺は姉御に言う。


「秋刀魚は鱗は無いから、身にバッテンの切れ目を入れて、塩を振って炭火で焼いて」

「エリス、気を確かに」レニウムがおろおろしている。


「ははは、こんな姉御を始めて見た」


「私がやる」料理長を抑えて姉御が秋刀魚を捌き始める。


「奥様」料理長が慌てる。

「あたいがやることを見て覚えろ」姉御が言うが、やっていることは秋刀魚を洗って包丁で身にバッテンを付けているだけだ。


「ムサシ、料理長に大根を渡せ」姉御が言う。

 俺は一瞬で理解して、料理長に大根とおろし金を渡した。


「これは?」狼狽える料理長。


 俺は見本を見せる。


「大根をおろし金で卸すんだ」

「何と」


 俺は皮を剥いた大根を卸す。


「おぉ。」料理長が驚く。


 姉御が何を作るか解らない、だけどきっとこれが必要だろう。

 俺はそう思って、大根おろしを用意する。


「かかか、流石はムサシだな」姉御が嬉しそうだ。

「この魚は腸の苦い所が美味いんだ」姉御が言う。

「え? 腸?」

「あぁ、大人の味だぞ」

「へぇ」


 姉御が炭火で秋刀魚を焼いていく。


「成程」俺はそれを覚えた。


「姉御、ここに醤油を置くぞ」俺はミロクから醤油を貰ってそこに置く。


「姉御、俺は帰るな」俺は姉御に言う。


「おぉ、今日はありがとうな」姉御が答える。


 俺は王都の家に帰った。


「お帰りなさいませ」カリナが出迎えてくれる。

「あぁ、ただいま」俺はカリナに口づけしながら言う。


「料理長に用がある」俺は調理場に向かう。


「料理長」

「はい、ムサシ様」


「今日は人魚たちから珍しい魚を買って来た」

「ほぉ」


「秋刀魚と言うらしい」

「聞いたことが無い魚です」


「姉御が嬉しそうに調理していたからきっと旨いんだろうな」

「そうなのですか?」


「とりあえず姉御がやっていたことを真似するから、覚えてくれ。

「はい、解りました」


 俺はミロクから秋刀魚を貰い、姉御のやっていたことを真似する。


「確か、水で洗って、包丁で両側にバッテンの切れ目を入れていたな」

「そして、塩を振りかけて網で焼く」俺は竈の炭を火起こしして焼き始める。


「じゅわ~」脂が落ちて煙が出る。

「おぉ、凄い煙だな」俺は魔法で煙を消す。


「あぁ、忘れていた、料理長、大根をおろしてくれ」そう言いながらミロクから大根とおろし金を貰って料理長に渡す。


「皮をむいておろしてくれ」俺は料理長に言う。

「はい、承りました、これ、そこのお前」料理長は別の料理人に振る。


「はい、解りました」その料理人が大根をおろし始める。


俺は秋刀魚を焼くことに集中する。


「良い焼き色になったから、裏返すか」俺は秋刀魚を裏返す。


 両面を焼いて俺は秋刀魚を皿に乗せる。


「ぜはー、ぜはー、大根をおろしました」料理人が言う。


「おぉ。」


 俺は焼けた秋刀魚に醤油をかけ大根おろしと一緒に口に入れる。

「おぉぉ」口の中に秋刀魚の脂が広がる。


「くふふ、私にも食べさせろ」そう言いながらミロクが秋刀魚を大根おろしと一緒に口に入れる。

「ふわぁ」


「美味いな」

「そうだね」


「これは白飯だな」

「それだ!」


「ごくり」料理長がつばを飲み込む。


「あのぉ、私たちには?」


「あぁ、全員分の用意をしてくれ」俺は秋刀魚を30匹ミロクから貰ってそこに出す。


「はて? 多いような?」


「城塞都市からも連れてくる、用意をしておいてくれ」

「はい、解りました」


 俺は城塞都市の家につながるドアを潜る。


「お帰り、ムサシ」シーナが出迎えてくれる。

「シーナはこの家を離れられるのか?」


「うん、今はムサシに憑いているから大丈夫だよ」

「そうか、今からリーンを迎えに言って来るから、一緒に王都の家に行くぞ」

「解ったぁ」


 俺は組合に向かった。


「リーン」

「まぁ、旦那様」何時ものようにリーンがカウンター越しに俺に抱き着いて口づけをしてくる。


「ちっ、もげろ」

「潰れろ」


 いつものように其処に居た男たちから恨みを買うが知った事じゃない。


「今日は、王都の家に行くからな。」

「はい、旦那様」リーンが俺に抱き着いてくる。


 俺はリーンを連れて、シーナと一緒に王都の家に潜る。


「あら、お帰りなさいムサシ様」カリナが出迎えてくれる。


「あぁ、もう知っているよな、リーンとシーナ、そして紅だ」

「はい、嫁同士仲良くしましょうね」カリナがニコニコしながら言う。


「私は嫁じゃない」シーナが言う。

「ムサシ様に着き従っているなら嫁も同然じゃないですか」カリナがニコニコしながら言う。


「私ではムサシ様の子を成せない」シーナが言う。


「解らないですよ、ムサシ様ですから」カリナが言う。

「ふむ」シーナが何かを考える。


「難しい事は良いから、今日は秋刀魚を食べるんだ!」俺が言う。


「秋刀魚?」

「何それ?」


「人魚から買って来た、さっき試食したら美味かったぞ」



「くふふ、そうだね」


「焼きあがりましたぞ」料理長が秋刀魚を持ってくる。

「ご飯とみそ汁です」料理人がそれを用意する。


「さぁ、食べようか」俺は宣言する。


「秋刀魚の塩焼きに、醤油をかけて大根おろしと一緒に食べる」俺はそれを実践する。


「はぁ、美味いなぁ」

「くふふ、これは至極」


「まさか海の魚がこれほど美味しいとは」リーンが感動している。


「本当にムサシ様は私の常識を超えていくのですね」カリナがうっとりとしている。

「本当に」サノアもカリナと同じ状態だ。


「ムサシ様、至高です」リーンが言う。

「シーナに献上」


「ありがとう、ムサシ」シーナも秋刀魚を食べる。


「ふわぁ。」


「美味しいか?」


「最高!」

「そうか、良かったな」

「うん」


 俺たちは秋刀魚を堪能した。


「ところで主様」紅が言う。


「何だ?」


「ブラックドラゴンが復活しています」

「ほぉ」


「くふふ、最終が見えてきたね」

「あぁ、そうだな」


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