人魚に天麩羅を教える
俺は約束通り、人魚に天麩羅を教えに来た。
「だが、この並びか」俺は門の前に並ぶ行列を見てため息を着いた。
「くふふ、自分が元凶のくせに」
「五月蠅いな」
「くふふ」
「しかし長いな」
「貴方は初めてですか?」前に並んでいた商人が聞いてくる。
「いや、何回も来ている」
「ほほほ、そうですか、人魚たちはうに丼なるものを売り初めまして」
「はぁ?」
「午前中には売り切れる一品です」
「ははは、そうですか」俺は受け流す
「しかも一杯500Bもするのですが。」
「はぉ。」
「其れほどの価値があるのです。」。
「くふふ、全部君のせいだ」
「五月蠅いな」
「其れは凄いですね。」
「えぇ、うに丼のためなら全てを投げ打っても。」
「あぁ、食べられればいいですね。」俺は機械的に話す。
**********
二時間後に俺の順番になった。
「身分を証明する、あぁ、君かどうぞ中に」
俺の顔を知っていた門番が俺を町に入れてくれる。
「あぁ、ありがとうな」俺は門を潜った。
「そうだ、人魚たちの店に行く前に材料を仕入れるか」俺は八百屋に行くことにした。
「此処で売っているものでなきゃ駄目だからな」
「邪魔するぜぃ」俺はそう声を掛けて八百屋に入る。
「おぉ、色々あるんだな」俺は品ぞろえを見て言う。
「わははは、任せろ」店の親父が元気だ。
「ふむ、一通りそろっているな」俺はそういながら材料を選んでいく。
椎茸、レンコン、南瓜、ナス、サツマイモ、大葉、舞茸、大根
「こんなもんか、親父さんいくらだ?」俺は店の親父さんに聞く。
「あぁ、随分大量に買うんだな、全部で300Bだ」親父さんが言う。
「このカード使える?」俺は組合のカードを見せながら言う。
「あぁ、大丈夫だ」
「なら、決裁して」
「任せろ」
俺は選んだ食材をミロクに持って貰い、八百屋を出て人魚たちの店に向かった。
「あぁ、お兄さん、待っていたよ」人魚が俺を見て言って来る。
「相変わらず並びが凄いな」
「え? そうなのかい? あたいらには関係ないから気にしなかったよ」
「はぁ、そうなのか」
「店の方は、別の奴に任せているからねぇ」
「こっちの店はいつも通りさ」
「そうか」俺は苦笑いをしながら言う。
「で、今日は何だい?」人魚が聞いてくる。
「あぁ、前に約束しただろう、天麩羅を教えに来た」
「マジかい? 今料理担当を呼んでくるよ」そう言って人魚が消える。
「で、今日は何が買える?」そこに残った人魚に聞く。
「今日は、鯵を始めに、鰯、鯖、そして最近獲れ始めた秋刀魚があります」
「まじかぁ、全部買う」
「え~っと、全部で5G分有りますけど」
「買う!」俺はカードを人魚に渡す。
「はい、決裁しました」人魚がカードを返してくる。
「ミロク」
「任せろ」其処にあった魚が消えた。
「あぁ、貝の方も見に行かなきゃな」俺は隣の店に向かった。
「あぁ、ムサシ様だ」
「また来てくれたんだね」人魚たちに歓迎される。
「今日は何が買えるんだ?」
「アサリと蜆はいつも通りあるよ、サザエと鮑も結構、後はエビがこんだけ」人魚が自慢げに言う。
「良し、クルマエビ以外は全部買い取る」
「え? 4Gはあるよ」
「構わないぞ」俺はカードを人魚に渡して決済してもらう。
「ミロク」
「くふふ、解ったよ」其処にあったクルマエビ以外が消える。
「さて」俺は前に俺が作った料理場に行く。
そして、竈に火を入れてまな板の用意をする。
「連れて来たよ」さっきの人魚が、何人かの人魚を連れて現れる。
「あぁ、今日は天麩羅を教えに来た」
「待ってました」
「興味があったんだ」
「まず、汁から作る」
「汁?」
「あぁ、天麩羅を食べるときに漬けるものだ、塩だけでもうまいけどな」
「へぇ?」
「出汁の取り方はとりあえず俺特製のだし袋で作るけど、鰹節や昆布でのだしの取り方を研究してくれ」
「あいよ」
「おや?」
「旦那の出汁は覚えた」
「あぁ、前に材料を聞いたからね」
「おぉ、凄いな」
「んじゃ、やるぞ」
「あいよ」
「俺特製のだし袋を水1Ⅼに入れて煮だして、味醂と醤油を200ccずつ入れてアルコールを飛ばす」
「ふむふむ」
「冷ませば、これが天汁だ」
「成程」
「そしてタネだ」
「たね?」
「あぁ、天麩羅を揚げるのに使う物だ」
「おぉ」
「小麦粉を200gをざるでこしながらボールに割り入れた卵一個に入れて混ぜる」
{なるほど}
「そして、ここに氷水を200cc入れて小麦粉が残る状態まで混ぜる」
「完全に混ぜなくて良いの?」人魚が聞いてくる。
「あぁ、粉が残っていた方がからっと揚がるんだ」
「成程」
「さて、油の温度はエビフライと同じだ」
「残しておいたクルマエビをエビフライと同じように裁け」
「あいよ」人魚たちがクルマエビを裁き背ワタまで取る。
「腹の方に切れ目も入れたよ」
「よし、んじゃ天麩羅を揚げていくぞ」
「あいよ」
「そのまえに、天麩羅にしたら美味い物をここに出すぞ」
「おぉ。」
椎茸、レンコン、南瓜、ナス、サツマイモ、大葉。舞茸。
「へえ?」
「椎茸はへたを採って」
「おぉ」
「レンコンは皮を剥いて5㎜位に輪切りにする。
「へぇ」
「南瓜もレンコンと同じ厚さに切って」
「おぉ」
「ナスとサツマイモも同じ厚さに切りそろえる」
「成程」
「舞茸は食べやすい大きさに手でむしる」
「はぁ」
「大根は皮を剥いておろす」俺はおろし金で大根をおろす。
「ぜはー、ぜはー、ぜはー、これで準備完了だ」俺は胸を張って言う。
「まずエビからだ」俺はクルマエビを手に取る。
そしてキッチンペーパーで水分をふき取って、小麦粉を付け、タネを潜らせて油に入れる。
「じゅわわわぁ。」美味しそうな音が響く。
「4本ぐらいまでなら同時に揚げられるぞ」
「なんで?」
「油の温度が下がらないからな」
「へぇ」
「2~3分で揚がるからまず食べてみろ」俺は人魚たちに言う。
「ほら、揚がったぞ」俺はエビの天麩羅をバットに取り出す。
「どれ?」
「これに漬けて食べるのか?」
「塩でもいいって言っていたよな」人魚たちが其々食べ始める。
「カシュ」エビ天がはじける。
「旨ぁ!」
「これが天麩羅?」
「それ、次が揚がるぞ」俺は椎茸、南瓜、レンコン、ナス、サツマイモ、舞茸、大葉を次々に揚げていく・
「お、お、お、どれもうまい」人魚たちには盛況だ。
「で、だ」俺はどんぶりに飯を盛る。
「?」
「これに天つゆを振りかけ、天麩羅を天つゆに漬けて乗せて、天丼セット」
「おぉ、旨そうだ」人魚が言う。
「これに、どれかの味噌汁を付けて200B」
「おぉ」
「ご飯とみそ汁に、天麩羅を皿に盛って、天つゆに大根おろしを入れて天麩羅御膳、同じく200B」
「あはは、又名物が増えるね」
「ムサシ様様だな」
「売っても良いぞ、前回の契約でお前たちが売った俺や姉御が教えて物の対価は、自動的に振り込まれるみたいだからな」
「あぁ、ありがとうよ」
「ムサシ様マジでパねえ」
「足を付けてもらうから、嫁にしてくれ」
「不穏なことを言ってるんじゃない」
「え~。マジなのに」
「これ以上嫁は要らん」俺は人魚の村を後にした。




