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孤児院で

「私も着いて行っては駄目か?」くれないが聞いてくる。

「着いてくるのは良いが、時速200km越えで走れるのか?」俺は聞く。


「時速200km越え?」くれないが聞き返す。

「あぁ、俺はその速度で走る」


「何と人外な」

「失礼だな」

「いや、普通の人間は時速200kmでは走れないと思うぞ」

「まぁ、そうだな」


「主は自覚しているのだな」

「あぁ、ミロクに散々に言われているからな」


「ははは、流石はミロク神だ」

「くふふ、我を敬え~」ミロクが踏ん反り返る。


「ミロク神が踏ん反り返っているのが見える」くれないが言う。

「俺と夫婦になったからな、見えるんだ」

「何と、あのお姿が」

「あぁ、どう思う?」


「残念だ」

「だよなぁ」


「だが、今日は城塞都市と王都の孤児院に差し入れをするから、着いてきたかったら来ればいいぞ」

「良いのか?」

「あぁ、好きにしろ」

「では、着いていく」


 俺はくれないと城塞都市の孤児院に行った。


**********


「ここか?」くれないが言いながら孤児院に入る。


「あ! ムサシ兄ちゃんだ!」孤児の一人が俺を見つけて叫ぶ。

「わ~い、又美味しい物を食べさせてくれるの?」

「わ~い、唐揚げが言い!」

「え~、生姜焼きだよ」孤児たちが群がってくる。


「人気者だな」くれないが言う。


「ムサシ兄ちゃん、別の女の人を連れている」

「わぁ~、浮気者だぁ」

「女の敵だぁ」孤児たちが騒ぐ。


「ははは、私はここにいるムサシ様の4人目の嫁だ」くれないが言う。


「えぇ? お嫁さんて何人も持てるものなの?」


「まぁ、ムサシ様は本当に豪傑なのですね」


「意味が解りません」


「英雄色を好むと言う事なのですねぇ」

「知りません」


「ムサシ兄ちゃん、何を食べさせてくれるの?」孤児が聞いてくる。


「あぁ、今回はランナー鶏だ、どうやって食いたい?」


「唐揚げ」

「え~、別の料理が良い!」


「食べたことが無い奴!」一人の孤児が言う。


「おぉ、それにするか」俺はそう言いながら料理台を地魔法で作る。

 そしてランナー鶏のもも肉をミロクから貰って一口大に切って串に刺していく。


「ご飯とみそ汁は?」俺が孤児に聞くと、あたしが、僕がと声が聞こえる。


「逞しいな」俺は地魔法で竈を作り、薪をミロクから貰って火をおこす。


「ムサシ様、今作った調理台と竈も消さないで残してください」孤児の一人にお願いされる。


「あぁ、解った」俺はその望みをかなえる。


「そして、全てのお肉を串に刺したら、焼き始めて、焼きあがったら俺特製のたれに絡めてもう一度焼く。


「良い匂い」

「おなかすいた」孤児たちが騒ぐが、孤児たちの手で俺が前に作った机に皿と茶碗、お椀が並べられる。


 ふふふ、ここの孤児たちは、自分で生きていける能力を身に着けているな。

 俺はそう思った。


 やがて、俺が焼いた串焼きが完成していく。


 焼きたてが美味いから、順番に孤児たちが食事を始めた。


 全員分の串焼きを焼き終える頃は、一刻が過ぎていた。


「では、俺は帰る」そう言いながら孤児院を後にした。

「私は何もしていないな」くれないが言う。


「ははは、単なるお披露目だな」


「はぁ?」


 俺は城塞都市の自宅に戻り、そこから王都の家に飛んだ。


 俺は王都の孤児院に行く。


「主は転移魔法も使えるのか?」くれないが驚愕する。


「これはミロクの御業だ。」俺が答える。


(おれでも出来るけどな)


 口には出さない。


「ミロク神は素晴らしいな」くれないが言う。

「あぁ、そうだな」俺はそれに答える。


 王都の孤児院はいつも通りだった。


 

 孤児たちが出迎えてくれる。


「ムサシ様だ!」

「わ~い、ムサシ様だ!」

「ムサシ兄ちゃん、今日は何を食べさせてくれるの?」孤児たちが群がってくる。


「主様は此処でも人気者だな」

「ははは、餌付けの効果だな」


「おや、ムサシ殿、良くいらっしゃいました」コバルトさんが出迎えてくれる。


「あぁ、また寄進に参りました、どうぞお納めください」俺は100G分の銀貨が入った革袋をミロクから貰って手渡す。


「いつも、いつもありがとうございます」コバルトさんはその革袋を後ろにいた部下に渡しながら言う。


「あら、そちらの方は?」コバルトが俺の後ろにいるくれないを見て言う。

「ああ、俺の4人目の嫁だ」


「まぁ、ムサシ様はお盛んなのですね」コバルトがニヤニヤしながら言う。

「まぁ、こう見えてレッドドラゴンなんだがな」


「はぁ? レッドドラゴン?」コバルトが興味を示す。


「私は、此処にいるムサシ様に添い遂げた、レッドドラゴンのくれないと言う。」


「ははは、信じられません」コバルトが笑う。

「そうだよなぁ」俺はそう言いながら、先程と同じ串焼きを準備し始める。


「お前たち、ご飯は誰が用意するんだ?」俺は孤児たちに聞く。

「今日は私の番!」一人の孤児が手を挙げて米を研ぎ始める。


「味噌汁は?」

「今日は、おれだ!」やはり一人の孤児が味噌汁を作り始める。


「食器の用意は?」俺が聞くがすでに孤児たちが用意を始めている。

「ははは、すごいな」


「ムサシ様のおかげです」コバルトが言う。

「え? 俺?」


「はい、ムサシ様が無償で孤児院のあれやこれやを直して下さったのを見て、孤児たちも思うところがあったのでしょう」


「俺は別に何もしていないぞ」

「そう言う所です」コバルトがニコニコしながら言う。


 俺は先程と同じように鳥の串焼きを焼いていく。


「よし、焼きあがった奴から順番に食べろ!」俺は孤児たちに言う。


「は~い。」孤児たちは俺が焼いた串焼きを各々持っていき食べ始める。


「主、私はまた何もしていない」

「お前は其処に居るだけでいいんだ」


「そうなのか?」

「あぁ。」


「お姉ちゃん、遊んで!」孤児の一人がくれないの手を持って言う。

「いや、私は」


「遊んでやれよ」俺はくれないに言う。


「どうすれば?」

「一緒にいてやれば良い」


「そうなのか?」


「あぁ。」


 くれないは孤児たちと遊び始めた。


 俺は、後かたずけをしながらそれを見ている。


「平和だな」


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