お披露目
「ただいま」俺は王都の自宅に帰った。
「お帰りなさい・ませ?」カリナが出迎えてくれた。
「え~っと、その方は?」カリナが俺の後ろにいる者を見て聞いてくる。
「4人目だ」俺はそっけなく答える。
「4人目ですか」カリナが答える。
「人に見えるけど、ドラゴンだからな」
「はぁ、そうなんですか」
「ドラゴンだぞ」
「ムサシ様なら、その程度は想定内ですね」カリナがコロコロと笑う。
カリナが怖い。
ドラゴンを普通に受け入れる、カリナの心が凄い。
「ムサシ様に添い遂げる、レッドドラゴンの紅だ、宜しく」
「まぁ、ご丁寧に、私はムサシ様の正妻、カリナフォンアンドロメダですわ」
「カリナ殿か、宜しく頼む」
「はい、喜んで」
「何、私は子を宿したら山に帰って其処で産むから気にするな」
「何を言っているのです、ムサシ様の妻ならこの家で一緒に暮らすのです」
「カリナ殿?」
「同じムサシ様を愛する妻同士なのですから」カリナが紅の手を取って笑う。
「ははは、カリナは凄いな」俺はカリナに言う。
「ムサシ様の妻の務めです」
「そうか」
「はい」
そうして、紅が一緒に住み始めた。
**********
「ひぃぃ! ドラゴン!」
次の日城塞都市の家に紅を連れて行ったらシーナガ怯えた。
「大丈夫だ、こいつも俺の嫁だ」俺はシーナに言う。
「そうなの?」
「私はお前に害をなさない」紅が言う。
「ふ~ん、なら良いや」
俺はリーンのいる組合に向かう。
「随分と寂れているが、活気のある街だな」紅が言う。
「あぁ、隣国との境にある城塞都市だからな、住民はほぼ兵隊関係だ」
「成程」
「此処にいる兵たちは強いぞ」
「そうなのか?」
「あぁ、全員で掛かればお前も討たれるだろう」
「そんなに強いのか?」
「あぁ、俺の三分の二位の力はあるだろう」
「興味深い、是非攻めてみたい」
「止めておけ、最終的には俺が駆り出される」
「其れでは、私は瞬殺ではないか」
「だから、止めておけ」
「解った」
俺たちは組合に入った。
「邪魔するぜぃ」
「いらっしゃ、げぇ!」何時ものように其処に居た案内嬢が俺を見て驚く。
「なぁ。」俺はその女に声を掛ける。
「ひゃい!」その女がびくつく。
「何で、毎回俺を見てげぇって言うんだ?」
「すすす、すみません、私は人のオーラが見えるので、貴方のオーラは化け物並なのです」
「オーラが化け物?」
「はい、すみません」その女が縮こまる。
「そう言う事なら、納得した」
「すみません」
俺は気にせず、リーンのところに行った。
「リーン」俺はリーンに声を掛ける。
「まぁ、旦那様!」リーンはカウンター越しに俺の頭を抱き、キスをしてくる。
「ふふ、エルフの嫁は熱烈なのだな」紅が言う。
「あら、その方は?」リーンが俺に聞いてくる。
「4人目だ」
「はぁ? え? また増えたのですか?」リーンが叫ぶ。
「成り行きでな」
「はぁ、旦那様ですものねぇ」リーンが遠い眼をする。
「何だろう、ひどい扱いをされている気がする」
「気のせいですよぉ」リーンが言う。
「と、言う事でここにいる紅を嫁にした」
「はい、登録しておきます」
「リーンは平常運転っと」
「最早慣れました」
「そうなの?」
「はい」
「はぁ、あぁ、アルゴンにも報告しておいた方が良いかな?」
「そうですね、多分」リーンが他人事のように言う。
「そうかぁ」
**********
俺は王城の前にいる。
「アルゴンに面会をしたいんだが」俺は門番に言う。
「む、ムサシ様なら何の問題もなく、どうぞお通りください」その門番が言う。
其の隙に、別の門番が走っていった。
「国王にアポなしで良いのか?」紅が言う。
「あぁ、国王は俺の盟友なんだ」
「ほぉ、ますますお前を気に入ったぞ」紅が抱き着いてくる。
「ははは」俺は謁見室に向かった。
「邪魔するぜぃ」俺は謁見室に入る。
「おぉ、ムサシ久しいな、此度はどうしたのだ?」アルゴンが聞いてくる。
「此処にいる者を嫁にしたから、お披露目に来た」
「ほぉ、又別嬪な娘だな、カリナは納得しているのか?」
「勿論だ」
「そうか、なら何も言うまい」
「かかか、ムサシ、あたいより良い女を侍らせてるじゃないか」
「エリス、その言葉遣いは」セリウムが姉御をたしなめる。
「あぁ、姉御、こいつはこう見えてレッドドラゴンなんだ」
「は?」アルゴンが固まる。
アルゴン以下、其処に居た宰相、貴族、騎士たちも固まる。
「かかか、ムサシも冗談が美味くなったな」姉御だけは通常運転だ。
「紅」
「何だ、我が主」
「少しだけ闘気を出してみて」
「闘気? こうか?」
とたんに溢れるプレッシャー。
「ひぐぅ」
「くはぁ」
「ぐはぁ」アルゴン以下宰相や貴族、騎士たちがその場に倒れる。
「くわぁ、何だこのプレッシャー?」姉御は何とか耐えたようだ。
セリウムは姉御の後ろで気絶している。
「もう良いぞ」俺は紅に言う。
「解った」その場から闘気が消えた。
「姉御、今のがレッドドラゴンの闘気だ」
「マジかぁ」
「私は主より名を貰った紅と言う、以後お見知りおきを」
「あぁ、ムサシ、本当にドラゴンなんだな?」
「あぁ、そう言ってるだろう」
「因みに、主の闘気は私の比ではないぞ」紅が言う。
「マジかぁ?」姉御が疑って言う。
「やってみようか?」俺は悪戯心を出して言う。
「おぉ、やってみ!」姉御が言う。
「マジで良いのか?」俺は姉御に聞く。
「あぁ、全力でやってみ!」姉御が言う。
周りでは、アルゴン以下、宰相や貴族、騎士たちが回復し始めている。
「はんじゃ、てい!」俺は闘気を半分だけ解放した。
「ひぐぅ」
「くはぁ」
「ぐはぁ」アルゴン以下宰相や貴族、騎士たちがその場で卒倒する。
「くはぁ!」姉御も卒倒した。
「ふふふ、やはり主様は凄いですね」紅が顔を染めながら言う。
「いや、半分の力も出していないんだが」
「くふふ、ムサシは人外」ミロクが嬉しそうに言う。
その後、回復した姉御に怒られた。
理不尽だ。




