ブルードラゴン
翌日、風呂を堪能した俺たちは出発する。
「まさか、風呂までいただけるとは。」ヨコモチが感動しているが俺は平常運転だ。
「ハコベも堪能していたぞ。」俺はヨコモチに言う。
「そうなのですか?」
「あぁ。」俺は答える。
「何と。」ヨコモチが何かを考えているが俺はガン無視した。
「今日中に次の町まで行くぞ。」俺は全員に宣言する。
「解っております。」ヨコモチがそう言って、御者に声を掛ける。
当然、俺は闘気を全開にする。
この状態で襲って来るのはランクS以上の化け物だ。
と、思っていた。
「ヘルハウンドだ!」御者が叫ぶ。
「はぁ?」
「くふふ、レベルSの魔物だね。」
「食えるの?」
「頑張れば。」
「只の虐殺じゃん!」
「くふふ。」
「食えない奴を狩るのは心に来るな。」俺はそう言いながら天叢雲剣を抜いて、馬車の屋根から降りた。
「ムサシ様、ここは俺達に!」冒険者の男が言う。
「お前らじゃ無理だろう。」俺はそう言って走る。
「お前らに恨みはないが、推し通る!」俺はヘルハウンドの群れに突っ込んだ。
ものの3分もかからずに、ヘルハウンドは死に絶えた。
「くふふ、ヘルハウンドは皮と魔石だよ。」ミロクが言う。
「申し訳ないが、皮をはいで魔石を集めてくれないか?」俺はヨコモチと冒険者に言う。
「ほほほ、承りました、これ、お前たち!」ヨコモチが部下に言う。
「ははは、ムサシの兄貴、任せてくれ!」冒険者たちも解体を始める。
「はぁ、いつ兄貴になったし?」俺はそう思いながらヘルハウンドを解体する。
「ムサシ様、終わりました。」ヨコモチが言ってきたので、俺はそこにあった皮と魔石をミロクに持って貰った。
「さぁ、先を急ぐぞ。」俺は先頭の馬車の屋根に乗って言う。
「はい、仰せのままに。」ヨコモチが跪く。
「先を進むぞ!」俺は言う。
隊商は次の村に向かって進んだ。
其の後は、襲撃もなく次の村に着いた。
「身分を証明するものは?」門番が聞いてくる、
「こちらを。」ヨコモチは商業ギルドのカードを門番に見せる。
「ふむ、ヨコモチ以下9名、通って良し。門番が言う。
「俺たちは6人パーティーだ。」冒険者のリーダーがギルドカードを門番に見せる。
「あぁ、通って良し。」門番が言う。
「ほれ。」俺は組合のカードを見せる。
「なぁ、かかか、神の身代わり様!」門番が腰を抜かす。
「あぁ、俺がそうだ」
「おおお、お通りください」門番が言う。
「あぁ」俺は門番を無視して、門を潜った。
「ムサシ様、報酬をお支払いいたしますので、店まで御同行ください」ヨコモチが言って来る。
「はぁ、面倒くさい」俺は心底いやそうな顔をする。
「ハコベ様の教えなので」ヨコモチはいつも通りだ。
「こちらが、今回の報酬でございます。」ヨコモチが革袋を机に置く。
「あぁ。」俺はそれを無造作にとり、ミロクに渡す。
「中を確認しないのですか?」ヨコモチが聞いてくる。
「あぁ、信用している」俺は答える。
「何と?」
「中身が気に食わなければ、次は依頼を断るからな」俺は冷たく言う。
「ははは、ハコベ様の仰る通りのお方でした」ヨコモチが腰を深く折る。
「?」
「今後も、誠心誠意お仕えいたします」ヨコモチが礼をする。
「あぁ、宜しくな」俺はそう言って、次の村に向かう事にした。
「え~っと、この先には寂れた村と、ドラゴンの住む山しかないぞ」門番の男が言って来る。
「あぁ、そのドラゴンに用があるんだ」
「何だと? いや、全ては自己責任だな、ご武運を」
「ありがとう!」俺はそう言って、ドラゴンが住む山に走った。
「ドラゴンの住む山の近くに村があるんだ?」
「くふふ、ドラゴンを信仰する者たちの村だね」
「信仰?」
「そう、信仰」
「ふ~ん」
「あれ? 無関心?」
「どうでも良いかな」
「あらら」
「誰が何を信仰しても俺には関係ない」
「くふふ、ドライだね」
「普通だ」
暫く走ったらその村に着いた。
「おや、こんな辺鄙な村に何の用だい?」村人が聞いてくる。
「いや、只の通りすがりだ」
「あんれ、この先にはドラゴン様がおられるので、行かないことを進めるだべ」
「あぁ、そのドラゴン様に用があって来たんだ」
「おや? ドラゴン様に仇なすべか?」
「いや、そうじゃない、昔貸したものを返してもらいに来たんだ。」
「ほえ~、ドラゴン様に何をお貸ししたんだべ?」
「ミロク神の神気だ」
「ミロク神の神気だべか?」
「あぁ、そうだ」
「あぁ、返してもらえたら良いべな」
「あぁ、そうだな」俺は村人に答え、ドラゴンのいる山に向かって走る。
「くふふ、凄い圧力だ。」ミロクが嬉しそうに言う。
「ミロク、楽しんでるな?」
「そうかな?」
「そう見えるんだが」
「くふふ、そうかもね」
「まぁ、いいや」俺は速度を上げた。
目の前にブルードラゴンの住む山が見えてくる。
「おぉ、俺でも解るぞ」山からとてつもない圧を感じる。
「まぁ、行くしかないんだけどな」俺は山を登り始めた。
闘気は全開だ。
「やっぱり生き物はいないんだな」
「レッドドラゴンの時と同じだね」
「レッドドラゴンの言う通り、話が通じると良いな」
「くふふ、そうだね」
そんな会話をしながら山を登った。
**********
「うお!」俺はそれに気付き目の前に結界を張った。
「ブレスだ」
「くふふ、問答無用だね」
「人間、我のテリトリーに足を踏み入れたことを後悔しながら死ね!」そう言いながらブルードラゴンは更にブレスを吐いた。
「ブレスを防いでいるのが解らないのかな?」俺は更に結界でブレスを防ぎながら言う。
「レッドドラゴンの言っていたのと違うな」
「くふふ、もっと理性的かと思ったのにね」
「おい、そこのドラゴン! 俺の声が聞こえるか?」俺は目の前のブルードラゴンに声を掛ける。
「何だ? 人間風情が俺に声を掛けるな!」
「聞こえてはいるんだな」
「レッドドラゴンの紹介できたんだが」俺は声を張り上げる。
「レッドドラゴン?」ブルードラゴンが止まる。
「あぁ、そうだ」俺が答える。
「証拠は?」ブルードラゴンが言って来る。
「え?」俺は戸惑う。
「くふふ、名前を付けてやったと言ってみれば?」
「そんなものが証拠になるかよ」
「くふふ、ドラゴンたちの情報共有は凄いって聞いた事があるよ」
「本当か?」
「何をごちゃごちゃ言っている、証拠を示せ!」ブルードラゴンが叫ぶ。
俺はため息を着いた。




