たこ焼き
100回です。
「え~っと、どっちに行けばたこ焼きを食べられる?」
「くふふ、西の方かな?」
「よし、こっちだな。」俺はその方向に向かって走り出す。
「くふふ、少し力を抑えた方が良いかもね」
「何で?」
「走ってるムサシが魔物認定されている。」
「え?」
「高速で走り去る得体のしれない者?」
「ぐはぁ、まじかぁ。」俺はその場で崩れ落ちる。
「まぁ、まぁ、とりあえずたこ焼きを食べるんだろう?」
「うん。」俺は何とか立ち上がった。
**********
「身分を証明できるものがあるかい?」門番が聞いてくる。
「あぁ。」俺は組合のカードを見せる。
「神の身代わり?」
「あぁ、俺だ。」
「貴方があの、いや、どうぞお通りください。」
「あぁ、ありがとう。」俺はカードを受け取り門を潜る。
「そうだ、たこ焼きの美味い店は何処だ?」
「え?」
「うん?」
「その辺全部だよ。」
「マジかぁ?」
俺はふらふらしながらそに向かった。
「いらっしゃいやせ~、たこ焼きはうちが一番だよ!」
「いやいや、うちこそが一番だ!」
「おいおい、老舗のうちを差し置いてよく言うな。」
「何だこれ?」
「くふふ、元祖、老舗問題?」
「はぁ?」
「くふふ、どこが最初に作ったか、解らないと起きる問題かな。」
「はぁ?」
「くふふ、他人事みたいに。」
「他人事だもん。」
「くふふ。」
「良いから、たこ焼きを1人前俺に提供しろ。」俺はそいつらに言う。
「は~い。」
「お任せを!」
「喜んで!」
「はぁ。」俺はため息をつきながら、そこに有ったテーブルに座った。
「お待たせしました。」
「お待ちどう様でした。」
「お持ちしました。」
3個のたこ焼きが俺の前に置かれる。
「はぁ。」俺はため息をつきながら、それぞれのたこ焼きを楊枝で刺してミロクの口元に差し出す。
「パクリ。」
「あふい(熱い)。」ミロクが悶える。
「ほら、次だ。」俺は次のたこ焼きをミロクの口元に差し出す。
「鬼かい、君は。」ミロクが涙目で言うが無視した。
「パクリ。」
「あふい(熱い)。」
「そうだろうな。」
「もぐもぐ、酷くないかい?」
「いや、全然、次だ。」俺は最後のたこ焼きを楊枝で刺してミロクの口元に差し出す。
「パクリ。」
「やっぱりあふい(熱い)。」
「で、どれが美味かった?」
「酷いな!」
「いや、普通だろう。」
「しいて言うなら、2番目だよ。」
「へぇ?」俺はそう言いながらミロクが言ったたこ焼きを口にする。
「おぉ、周りはカリカリで、中はトロトロか。」俺はそう言いながら、他のたこ焼きも口にする。
「おぉ、たこがでかいな。」最初のたこ焼きを食べて言う。
「へへへ、うちの自信作だ。」
「こっちは、あぁ、他の二つに比べると残念だな。」
「何おう?」
「あぁ。」
「何が残念なんだ?」その店の人間が俺に詰め寄る。
「ほら。」俺は最初に食ったたこ焼きをその男の口元に差し出す。
「あぁ?」
「食ってみろ。」
「パクリ。」その男がたこ焼きを口にする。
「はぅ!」
「解っただろう。」
「あぁ、完敗だ。」
「生地が水っぽい、たこが小さい、味がしない。」
「ぐぅ。」
「がんばれ。」
「ううう、解りました。」
「んで、このたこ焼きは美味い。」俺は最初に食べたたこ焼きを絶賛する。
「ありがとうございます。」
「いくらだ?」
「一皿30Bで。」
「ほい。」俺は30Bを渡す。
「毎度あり。」
「ところで、たこ焼きを焼く鉄板は何処で売っている?」
「あぁ、それならあの店にあるよ。」その男が一つの店を指差して言う。
「おぉ、ありがとうな。」俺はその男に言い、その店に向かった。
「邪魔するぜぃ。」
「いらっしゃいませ。」
「たこ焼き用の鉄板はあるか?」
「はい、あちらに。」店の一角を指す。
「おぉ、小さいのから業務用の迄あるんだな。」
「勿論でございます。」
「よし、この30個焼ける奴を2枚貰おうか。」
「ありがとうございます、1枚500Bです。」
「組合のカードで決済できるか?」
「はい、大丈夫でございます。」
「んじゃ、決裁して。」俺はカードをその男に渡す。
「はい、終わりました。」男がカードを返してくる。
俺は鉄板をミロクに持って貰い、表でたこ焼きを何皿か買ってそれもミロクに渡した。
「くふふ、どうするつもりだい?」
「人魚に会いに行く。」
「くふふ、自分で作るつもりだね。」
「まあな。」
*********
「並びが増えてないか?」
「くふふ、そうだね。」
人魚の町の入り口に並ぶ列の最後尾に並ぶ。
「身分を証明できるものはあるか?」門番が聞いてくる。
「あぁ。」俺は組合のカードを見せる。
「あぁ、神の身代わりか、通って良いぞ。」
「並びが多くないか?」俺は門番に聞く。
「あぁ、人魚がエビフライとか言う物を作って売っているんだ。」
「へぇ。」
「タルタルを付けて食うと美味いんだ。」
「塩焼きも酒に合う。」
「そうか、ありがとう。」俺は門を潜った。
「くふふ。やっぱり君のせいだ。」
「そうだな。」
俺は人魚のところに向かった。
「何だこりゃ?」人魚の店の横に新たに食堂が出来ていて、人が並んでいる。
「えっと、この並びはなんだ?」俺は列の一番後ろの男に聞く。
「エビフライや、サバの味噌煮が食える店だ。」
「そうか。」
「あぁ、凄く美味いぞ。」その男は涎をふきながら言う。
「あ! ムサシ様!」人魚の一人が俺を見つけて叫ぶ。
「あぁ。」俺はその人魚に向かって歩く。
「今日はどうしたんだい?」人魚が俺に聞いてくる。
「あぁ、頼みがあって来たんだが、ずいぶんと盛況だな。」
「あぁ、前に教えて貰った、なめろうや鯵のたたきはあっちの店で提供し、エビフライやサバの塩焼き、味噌煮はこっちの店で提供したらどっちも大当たりで、儲かっているよ。」
「良かったな。」
「うん!」
「で、頼みって何だい?」
「あぁ、これを作りたいって思ってな。」俺はたこ焼きをミロクから貰う。
「何だい? それ?」
「たこ焼きって言う物だ。」俺は楊枝を刺して人魚の前に出す。
「?」人魚が俺とたこ焼きを見比べる。
「食べてみ。」俺が言う。
「どれ?」人魚はそれを口に入れる。
「あふい(熱い)、でも美味い!」
「中に入っている、たこを売ってほしいんだ。」
「たこ?」
「あぁ、8本脚の軟体生物だ。」
「あ~、あれかぁ、あんなの食えるんだ?」人魚が言う。
「今食ったよな。」
「え?」
「中に入っていただろう?」
「あの歯ごたえのいい奴がタコ?」
「そうだ。」
「マジかぁ。」
「どうしたんだ? ってムサシ様?」
「何? ムサシ様が来ているのか?」人魚たちが集まってくる。
「ムサシ様が来ているなら、教えろよ!」人魚が騒ぐ。
「いや、ムサシ様がタコを欲しいって言われてな。」最初に会った人魚が言う。
「タコ?」
「あぁ、そうだ。」俺は持っていたたこ焼きをその人魚の前に出す。
「これを作りたいんだ。」俺は言う。
「この丸いのを?」
「あぁ、食ってみ。」
「どれ?」
「あたいにも。」
「ちょうだい。」人魚たちがそれを口々に食べる。
「ふわぁ。」
「何これ?」
「かり、じゅわ?」人魚たちが其々感想を言う。
「中に入っていた、くにくにしていたのがタコだ。」俺が言う。
「マジか?」
「あれがこれ?」
「あぁ。」
「でも、タコって吸い付いてくるんだよねぇ。」
「あぁ、あれは嫌だ。」
「吸盤の跡が残るもんね。」人魚たちが口々に言う。
「なら、目と目の間を串で刺せば一瞬で死ぬぞ。」俺は姉御に教えて貰ったことを言う。
「え? そうなの?」
「初めて聞いたよ。」人魚たちが言う。
「一匹50Bで引き取るから採ってきてくれないか?」俺は人魚たちに言う。
「解ったよ、どの位要る?」
「採ってきた奴は全部引き取る。」
「お~し、ちゃっちゃと行って来よう。」
「「「お~!」」」人魚たちが海に潜っていく。
「お前は行かないのか?」俺は残った人魚に聞く。
「あたいは店番、と言うか、近所の孤児院の子供たちを雇って料理を作らせているから只居るだけだけど。」
「そうか。」
「其れも教えてくれるの?」
「教えるのは別に良いけど、他のところで名物になっているからな。」
「あれ~そうなんだ。」
「別に売っても良いんじゃね?」
「そうかな?」
「人魚特製たこ焼きとか、むしろブランドだよな。」
「そうだね。」人魚が笑う。
「ははは、俺はこの町をどうしたいんだろう?」
「くふふ、知らないよ。」
「」の最後に。を付けるのはおかしいとご指摘を受けました。
調べたら本当にそうなのですが、あえて直さないことにしました。
今後も「」に。を付けます。
生暖かい眼で見てやってください。




