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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【第五人格】サバイバー最上位チームがエウデュリケ荘園に転移する話

作者: unhappily


 2022年上海(シャンハイ)。総プレイ人口10億人を突破した超大人気ゲーム『第五人格』の世界大会決勝戦が開幕しようとしていた。


「俺たちもいよいよここまで来たな!」

私たちのチーム・LAのリーダーでYoutuberでもあるsugarが真剣な表情で言う。チームの各々もそれぞれ気を引き締めて円陣を組んだ。


 ちなみにコロナはとっくに終息しているので円陣を組んでも大丈夫だ。


「絶対勝つぞ!!!!!!!」


 思い返せば、ランク戦でたまたまマッチした時にsugarに腕を買われてLAにスカウトしてもらったのが始まりだった。その時はsugarはヘラクレス、俺はユニコーンだったのだが、LAに入ってメキメキと実力を伸ばした俺はサバイバーランキング1位を達成した。

 病弱な俺に理解を示した練習メニューを組んでくれたLAにはすごく感謝しているし、応援してくれるファンにも、勝利して恩返しがしたい。


(ーーこの試合、絶対に4逃げする。)


 決勝戦が始まった。BO5のBANピックでは、ハンターを3人BANする事ができる。

事前に相談していた通り、相手の選手が得意な夢の魔女、ハスター、ウィル三兄弟をBANした。3キャラでSバッジを取っている化け物ハンターだ。4キャラ目はリッパーか女王を使う可能性が高い。

 相手のハンターは傭兵、野人、技師、調香師をBANしてきた。

 VCでリーダーが指示を飛ばす。

「想定通りだ。Luka、お前は作戦通り占い師を頼む。イライ全一ぜんいちの力を見せてくれ!」

 俺は軽く返す。

「おけー。」

 占い師は弱体化してしまったが、梟でダメージを防げるまだまだ強力なキャラだ。俺の一番得意なキャラでもある。相手のBANを見る限り、おそらく女王だろう。昔からいる強力なハンターだ。


 占い師を選ぼうと手元の端末のキャラ選択画面を見た時、不思議な事が起こった。何故か占い師があるべき場所に、自分の顔写真と本名である佐藤修二の文字が載っている。

 決勝戦でこんな意味不明なバグが起こるはずがない。

 緊張のしすぎが原因の目の錯覚かと思い、占い師があるべき場所を選択し決定を押した瞬間、目の前が真っ暗になった。




 目が覚めると、目の前には何万回も見たあの解読機があった。

(は?)

意味が分からない。

 試しに解読機に触ってみると、無意識のうちに手が勝手に解読を始めていた。カチャカチャキュッキュッと、慣れ親しんだ解読音が響く。少し落ち着いてきたので周りを見渡すと気づく。

 特徴的な、今にも壊れそうなベージュの薄い壁があることに。


(ここ、教会の南壁じゃねえか!)

 その瞬間、聞き覚えのある、女王が鏡を出すシュインという音が聞こえた。咄嗟とっさに暗号器から手を離し、あえて後ろの板には行かずに中央へ向かう。暗号器は触り始めのため、まだ揺れていない。また、板裏で隠密する初動が主流なので、サバイバーが板裏にいるのを読んで鏡を出すのをさらに読んだ形だ。


 振り返ると、血祭り(マリー )の鏡像が南壁の板場に出されていた。よし。読みが外れたのを悟ったのか、相手はすぐさま入れ替わる。その瞬間に、心臓が跳ね上がった。

 自分でも分かるくらい心臓がドクドクと跳ねる。マリーのプレッシャーがえげつない。

「心音って便利だと思っていたけど、こんなにプレッシャーを感じるものなのか。」

 しかし、怯んだ俺に一切いっさい譲る気持ちはないといった様子のマリーがどんどん迫ってくる。

 気合いを入れて次の板まで向かう。ギリギリ先倒しが間に合いそうだ。板倒しをしようと板に手を掛けた瞬間、最悪な事に気づいてしまった。板を倒す速度が遅い。スローモーションのように感じる。

(俺、虚弱かよ)

 マリーが、板を倒し始めたのを見てから、攻撃を振ってくる。板からすぐさま手を離したいが、何故か離せない。倒し切るまで離せないようになる謎の力が働く。

 通常の板倒し速度だったら間に合うはずだが、虚弱のため、板貫通攻撃となってしまう。

 血祭りの鋭い鏡刃が、容赦なく俺の体に振われる。マリーが嘲笑しているように感じる。

 攻撃が当たった。激痛が走る。しかし、痛みに悶えるわけには行かない。殴られたら少しの間加速できる。それを知っているので、俺は死ぬ気でハンターから遠ざかる。

 

 幸いマリーは一度鏡を使ってから即入れ替わっているので、次の鏡のCTがたまるまでの約30秒の間は、ゲーム通りなら鏡を使えないはずだ。その知識を信じて、壁壊し側でひたすらに板の先倒しを重ねて安全にチェイスを伸ばす。

 自分の心音には慣れてきた。負傷からの痛みも我慢できる。必死に走る。体感で25秒くらい経った時、割られていなかった板で膝蓋腱反射を使い、一気にハンターとの距離を離した。


 狙い通り、マリーが2枚目の鏡を出してきた。その瞬間、俺は中央の建物の小屋側の窓枠を乗り越え、窓割れ理論を発動させてさらに距離を離す。鏡を無効化できる高等テクニックだ。そのまま墓場まで向かおうともう一枚の窓枠を乗り越えた時、黄色い光をまとったマリーが短距離転移して俺を攻撃してきた。

(鬼没か!)

 気づいた時には時にはすでに遅く、レッドカーペットの外側のロケットチェアに座らされてしまった。


 ロケットチェアに座りながら元の世界に戻る方法について考える。恐らくマリーから逃げ切らないと話にならない。まずは逃げきろうと心に決めた。

 そうと決めたら試合に集中する。北ゲートのL字の方面から、オフェンスが救助に来ている。小屋と北壁の解読機はそれぞれ探鉱者と祭司があげたようだ。北壁とL字にはロングワープが繋がっている。座っている間は味方の位置が見えるのはゲームと同じだ。

 恐らく、ロングを使用して祭司がオフェンスの引き継ぎ、探鉱者は新規で中央の暗号器を回すだろう。ならば、巻き込みを防ぐ為に俺は死ぬなら墓場で死のうと心に決めた。


 そうこう考えているうちに、オフェンスがチェアのバーをあげて助けてくれた。ケバブからの無傷救助だ。ケバブはちょっぴり痛かったがオフェンス無傷はかなり大きい。

 ハンターがケバブをしているうちに、墓場へと走り込む。振り返ると、ハンターが攻撃硬直解けとなっているところ丁度にオフェンスが旋回せんかいタックルをぶち込んだ。だいぶスタンは長そうだ。この間で墓場の板まで来れた。オフェンスは自分の救助に満足したのか、エモートをしてとっても楽しそうだ。

 マリーは鏡を出す間にタックルをされると鏡が消えてしまう。それを分かっているのか、マリーはオフェンスを警戒してなかなか鏡を出さない。オフェンスは程よい位置でマリーを牽制してくれているため、先倒しだけで稼げてしまう。このオフェンス、相当上手いな、もしかして、Sugar?と思えるほどだ。


 危機一髪以上にチェイスが伸びている。祭司がオフェンスの暗号器を上げ、残り2台だ。たまらず、ハンターが俺ではなく、中央に鏡を出して、探鉱者に奇襲の一発を入れ、そのまま入れ替わった。ターゲットチェンジだ。オフェンスがいては追えないと判断したのだろう。


 すぐさまオフェンスが治療してくれた。実はこの治療行為、非常に気持ちがいい。この世のものとは思えない速度で傷が治っていく。どういう原理なのか知らないが声が出てしまうほど気持ちがいい。

 オフェンスがスタンプを貼ってくる。どこからスタンプを出しているか気になったが、回復が終わった俺はすぐに墓場の暗号器に取り掛かった。探鉱者は中央から離れてくれているので、祭司が中央を引き継ぎ、オフェと俺が新規を1台回せば合計5台分解読できるはずだ。

 隣でキュッキュと音を鳴らしながら解読しているオフェンスを俺は見つめて考える。完璧なケバブ救助、エモート、天才的な粘着技術、治療スタンプ。これSugarじゃね?と。

 第五人格は人脈ゲーだ。個々人の技術も大切だが、それ以上にチームでVCを繋いで、連携力を高めることの方が大切だ。

 LAに入るまで野良でランクマに行っていたが、VCをするようになってとんとん拍子にランクは上がった。その中で何度かSugarと組んだ事がある。俺たちはシュガルカコンビとして人気だった。思い返せば墓場でのチェイスも阿吽あうんの呼吸で出来ていた。間違いない、こいつはSugarだ。だとしたら、恐らくSugarと俺だけではなく、LAチームのサバイバー全員がこのゲームに転移してきている。

 

 なら、絶対に4逃げしないといけない!


 墓場の解読が6割ほど進んだとき、「手を貸して、早く!」と探鉱者の声が聞こえてきたような気がした。オフェンスが俺の右肩を見ている。

(え?俺の右肩になんかついてる?)

 そう思って右肩を見ると、ふくろうがいた。かなりびっくりしたが、梟に指示を出す。探鉱を助けてこいと。

 梟はそのまま戻ってこなかった。ということは恐らく梟ガードが間に合ったのだろう。梟に対しては申し訳ないが、今は味方が優先だ。


 なんやかんやしているうちに、暗号器が寸止めになった。

 暗号器の寸止めをオフェンスに任せて、俺はレッドカーペットのゲート前待機のために移動する。移動中墓場にハッチがないことも確認しておく。祭司がL字を引き継いだ時に、「地下室がこっち」とは言っていなかったため、消去法でハッチは南壁だろう、と予想も立てておく。

 探鉱者がダウンした瞬間、オフェンスが通電させた。

(うおっ)

 いきなり加速したためびっくりしたが、中治りのスキルが発動したのだろう。治療ほどではないが、とても気持ちが良かった。


 ゲートは18秒で開ける事ができる。ゲートを開け始めて数秒で探鉱者がダウン。そのまま吊られてしまう。そして、マリーが特質を変更したのか,目の前に黒いモヤモヤが急に目の前に現れた。恐らくゲートはあと3秒程で開くが、ギリギリ間に合わないと判断し、一旦ゲートから離れると、赤く眼を光らせたマリーが瞬間移動してきた。中間待機していたオフェンスが探鉱者の救助へ向かっているのが受難で見える。祭司が北ゲートを開け終わったようなので、三人は出れそうだ。


(あとは俺がハッチから出れば4逃げだ!)


 レッドカーペットの窓枠で窓割れ理論を発動させて距離を一気に離す。

 ここでオフェンスが救助を成功させた。

「地下室はこっち!」と念を送る。これで他の三人にハッチ逃げの意思が伝わるはずだ。

 窓割れ理論で南壁まで来れたが、ハッチがなかなか開かない。最後の板で攻防する。ここで板気絶させて、ハッチ逃げだ!

 ハンターが板に突っ込んで来たので,板を倒そうとした時、自分が虚弱であることを思い出した。

(ああ、終わった...負けか...)

 マリーがニタァと笑いながら身を引き、板気絶をかわして攻撃を振ってくる。引き打ち。絶望だ。

 ああみんなごめん。sugar,LAのみんな、「すみません!」


 絶望の淵に立っていた俺だが、その時何処からか梟が現れた!いつのまにかハンターを25秒見ていたのか、梟が1匹産まれていた。ギリギリで梟ガードを試みる。未来が逆転する。板貫通を防ぎ、ハンターの攻撃硬直を利用して俺はハッチに飛び込んだ。

 その瞬間目の前が真っ黒になった。









大歓声が聞こえる。


「COA7th 優勝チームはLAです!!!!!」



(ああ良かった...戻ってこれたんだ...)


俺から言えることはただ2つ。応援ありがとう。


もう一つは、皆さん、自分の顔がキャラ選択画面にあったら注意してください。もしかしたら荘園のゲームに巻き込まれてしまうかも...?


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