No.9 正義と我が儘
シャトランス・校舎 地下2階・3階
「なんだろう?資料室かな?これって」
地下2階に移動し、母の行方を探す私達だがフロアに入ると静寂に包まれていた。
そんな事から母がここにいない事は分かっていたが、複数のファイルが収納された資料室を無視出来なかった。
本棚から一冊抜き取りペラペラとページをめくるが、私には難しい単語が並び、理解出来なかった。
しかし、パパの手記もある事から母を生き返らせる手段を模索していた事は想像出来た。
10年以上も掛け研究をしてきたパパの結晶が“あれ”なのだ。
若者の体の一部を引き抜いた作った体はどんな人間よりも歪で醜い物だった。
険しい顔をしているとタマミちゃんが既視感のある新聞記事を見せてくれた。
「カンナちゃん、これって…」
「うん、私が幼い頃にお母さんが亡くなったの」
そのあと、話を続けようと思ったのだが母を殺したペルケレ先生の事を思い出した。
この戦いが終われば、誰でも大小責任を負わなければならない。
今、彼はこことは間反対の19階にいる。
今この状況をどう思っているのだろうか?
「カンナちゃんー?どうしたのー?」
目の前で手をヒラヒラされたので、資料を慌てて閉じ、彼女の方に向き直った。
「ううん、何でもない。じゃあ、他の階に行こうか?」
シャトランス・校舎 地下4階
4階に着いた時、「ゾッ」と鳥肌が立つような空気が流れた。
シュン君も気づいたのか瞬時に武器を展開した。
「間違いなく、レイカさんは此処にいるな。2人とも気を付けてくれ」
少しずつ扉を開けると、自分の視界に母の姿があった。
「あら?カンナ、どうして此処にいるの?此処にいたら危ないわ。島の外に逃げなさい」
2人に待機するように命じて自分だけ部屋の中に入った。
しかし、疑問に感じる。
5階に爆弾を仕掛けたのも関わらず、私達を襲おうともしない。
母は何を考えているのだろうか?
「パパから、ママが此処にいるって教えて貰ったの。ママだって、此処にいたら危ないよ?一緒に逃げよう?」
手を優しく差し伸べたはずなのだが、なぜか彼女は首を横に振った。
「私は此処にいるわ。私は元々死人だもの。ニホンに帰っても周りが混乱し迷惑かけちゃうわ、ごめんなさいね」
「…ねぇ、ママ」
「どうしたの、カンナ?」
「被害者面しないでよ。ママは悲劇のヒロインじゃないんだよ。加害者なの?分かってる?自覚、してよ。子供じゃないんだから」
「…えっ」
No.9を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.10「飽和」をお送りします。