No.43 捕獲
「...八咫烏さん、剣を縮小させて」
小声でそう呟き、ペルケレ先生の足元を狙う事にした。
ペルケレ先生の狙いが母なら、私には見向きもしないはずだ。それに賭ける。
瓦礫の山の中に上手く隠れながら、襲撃の隙を狙う。
もし、母がシュウマ君と共にいるのならそれでもいい。
2人の居場所を先に突き止めなければならない。
「(シュウマ君ならどこに隠れる?)」
彼は、隠れるのが大の得意だ。
夜間や死角を利用してベストな隠れ家を探すだろう。
だとすれば...
自分の直感を信じ上を見上げれば答えは出た。
さぁ、ここでどうするか?
「パリンッ!!」
「タマミちゃん!シュンくん!3人で早く逃げて!ママを早く逃して!」
武器を入り口の自動ドアに投擲する。
センサーが上手く反応すれば勝手にドアは開くだろう。
「(ペルケレ先生はどう出る!?)」
大袈裟に言ったのが間違いだったのかペルケレ先生は動こうとはしない。
ただじっと、その場に立ち尽くしている。
良く考えれば当たり前の話だ。
彼は慎重な性格をしている。
全部自分の思い通りにする為にこれまで色んな事を遂行してきた。
彼の意思が揺らがない限り、私達に目を向けようとはしないだろう。
「オッツォ、ここに彼女はいましたか?いないなら移動しましょう」
『懲りないな、お前も』
彼が去ろうとした時、一言こう言われた。
「皆さん、武器を解除してください。私の願いが成就すれば皆さんを解放しましょう。邪魔するのでしたら、徹底的に潰して差し上げますが?」
武器を解除され、余計な事をするなと釘を刺されてしまった。
母を大衆の前で殺し、自身に罪が下るまで辞めないつもりなのだろう。
そう思うと彼の事が哀れに思えて仕方がなかった。
どんな方法であれ、ペルケレ先生の願望を叶えなければならない。
諦めるしかない。結末は変えられない。そう思った。
No.43を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.44「断念」をお送りします。




