No.42 犠牲
目を覚ますと、目の前には崩壊した階段があった。
運がいい事に倒れた階段の瓦礫と瓦礫の間に体があり、動けないと言う程ではなかった。
動こうとした時、校舎の照明が急に明るくなり、エレベーターが動き出した。
「(不味い、ペルケレ先生がこっちに来る!早く皆んなを探してここから逃げないと)」
瓦礫から抜け出し、周囲を見渡すとタマミちゃんのシュン君が壁際にもたれ掛かり苦しそうにしている。
しかし、母とダイスさんの姿が見えない。
探しにいかなければ。
周囲の瓦礫をかき分けると、誰かの手と広がった血液が見えた。
「…っ。ダイスさん」
瓦礫の中でグッタリと倒れ、頭を強く打ちつけたのか出血している。
周りに守護霊もいなく、脈もないことからこの瓦礫のしたで即死したのだろう。
彼の目の前で手を合わせ母を探す事にした。
「ママ、何処なの!?」
ペルケレ先生が来る前に母を見つけなければならないのに中々見つからない。
タマミちゃんやシュン君は命の危険はないが、無数のかすり傷を負い傷口が開くことを考えると今ここで動いてもらう訳にはいかない。
「不味い、ペルケレ先生が来た!タマミちゃん、シュン君。隠れて!?」
その声に反応し、2人が必死に瓦礫の中に隠れる。
私も同じように隠れ、息を殺し、様子を見守っていた。
エレベーターの扉が開き、カツカツと足音がする。
「…誰もいませんね。死んでしまったのでしょうか?やり過ぎたかもしれませんね」
「…」
「オッツォ、彼女の血の匂いを今でも覚えてますか?死体だけでも回収して欲しいのですが」
「…!」
不味い事になった。
母の居場所を突き止めていないのに、先に見つけられては困る!
何かいい手はないだろうか!?
No.42を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.43「捕獲」をお送りします。




