No.39 対面
校舎・エレベーターの中
ずっと引っかかっていた事がある。
彼は私に過去を意図も容易く打ち明けた。
普通、人間というのは自分の都合の良い事しかしない。
自分を守る為に嘘を吐いたり、捏造したりするものだ。
「...嘘をつかない事がペルケレ先生にとって都合が良かったの?」
上手く頭の中で処理しきれなかった自分の考えが口に出てしまった。
この人が密着した状態であれば、私の独り言など筒抜けだ。
気づいた母は私の独り言に反応した。
「ペルケレ先生は良くも悪くも真面目な人よ。若い頃から研究者として、世界を練り歩いて調査して来た人だし、出世欲もあった。正義感もあった人だしね」
「...ママがペルケレ先生の事を「正義感がある人」って言うの意外」
「そう?だって、わざわざ容疑者にされたパパをシャトランスに匿った人よ?濡れ衣を着せても良かった筈なのに、そうしなかった。カンナ、人は言葉で判断しちゃダメ。行動でその人を判断しなさい」
「行動で、か...」
その時、過去に私がクラーケンに襲われた時、ペルケレ先生が助けてくれた時の事を思い出した。
あれは、クラーケンが私と父を合わせる為に行った事だった。
イギリスに行った時にペルケレ先生と同じ話をしたのを覚えている。
自分なりの答えを導き出したと同時にエレベーターは19階に到着した。
辺りはすっかり夕方となり、ガラス越しにオレンジ色の空が見える。
「まさか、もう一度此処に来るとは思わなかったな」
「ペルケレ先生、凄いよねー。こんな状況なのに椅子に座って落ち着いてたしー」
「それってある意味当然なのかもね。だって、自分は舞台を作ったら傍観者でいれば良いだけだし。手を下さなくても仕掛けを作れば役者は勝手に動いてくれる」
その言葉にシュン君とタマミちゃんは目を見開くが、私は淡々と校長室の扉を開いた。
その拍子に風が吹き荒れる。
「良かった。皆さん無事で何よりです。これで全員ですか?」
「いいえ、まだ何人か地上にいます。近々合流する予定です」
「そうですか。なら、話が終わり次第、全員大広間に集めましょう。位置なら大体把握してますから。空港にいる来客もね」
「ご存知なんですね。国際警察が来てる事に。どう対処するつもりですか?」
「対処も何も歓迎するつもりですが?」
あぁ、成る程。
その言葉でペルケレ先生の狙いは大体把握出来た。
彼は自分の罪を償いたいのだ。
...その時、彼が過去に言った事を思い出した。
「“彼女を殺す為なら、何だってする”」と
No.39を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.40「狙い」をお送りします。




