No.38 予想外
「いや...あの...それは」
突然の事に頭がパニックになる。
そうだった、“この人達”には誤魔化しようのないがないのだ。
幼い頃の感覚で、母の存在を話しても理解してくれないだろうと思っていた私の間違いだった。
私が焦っている事に気づいたタマミちゃんとシュン君が咄嗟にフォローしてくれた。
「でも、この状況でカンナちゃんのお母さんに会うのは難しいんじゃないかなー?」
「カンナさんは今体調が悪いんだ。これ以上彼女を困らせないでくれ」
「あら?誰か呼んだ?私を」
聴き慣れた声の方へ振り向こうと思いながらも恐怖で振り向けない。
しかし、母は私の気持ちを無視して私の側によってきた。
「皆んな此処にいたのね。探しても中々見つからないんだもの。心配したわ」
母の姿を見た、ダイスさんとシュウマ君は口を押さえている。
良く見れば、ツギハギだらけの母を見て叫びそうになったのかもしれない。
この容姿を見れば誰もがそう思うだろう。
「ママ、余計な事をしないで。邪魔するつもりなら私達の前から消えて。貴方は此処にいちゃいけないの。今すぐ死んで」
「そうね...そうね」
頭を垂れながらそう呟く母に違和感を覚えた。
だって、自分で言ったのではないか?
“生き返えせ”なんて言ってないと。
「ねぇ、カンナ」
「どうしたの?ママ」
「貴方が幼い頃言った事、覚えてるかしら?“わたしのそばにいてくれる?”って言ったのを」
「...うん」
「でも今は反対の事を言われてる。私の前から消えろって言われたの。それが“答え”よ。お父さんは貴女の為に私を生き返らせようとしているのに、肝心の貴女はそれを望んでいない」
「そうだよ。私に貴女は必要無くなった。それ以上に怖くなったの。視界に入れたくない、幽霊の時より怖いかも」
そう、皮肉な笑みを浮かべる私とは対照的に母は穏やかな笑みを浮かべていた。
「死人に口無しと言うけれど、私は例外でしょうね。さっきの話を聞いていたけど、貴方達は10年前、私を殺した犯人を探しているんでしょう?」
「カンナ殿の母上は、それをご存知で!?いや、被害者なのだから当然でござるな」
そのあと、母はペルケレ先生のいる校舎の19階を指差した。
「でも、あの人を逮捕するのは難しいかもしれないわね。...まぁ、何とかなるでしょう。案内するわ、ついてきて」
No.38を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.39「対面」をお送りします。




