No.37 昔話
オクトール諸島・北の島
砂埃が顔に触れ、自分が地べたに寝かされている事に気づいたのを合図に目を覚ました。
目を開いた時、涙が溢れ落ちた。
「カンナちゃん!?大丈夫!?」
枕元にはタマミちゃんとシュン君がおり、目を泳がせているのでかなり心配させてしまったみたいだ。
「...大丈夫。ゴメンね、心配かけて...」
倒れる前後の記憶を思い出したが、自分は何をしてるんだろうと正直思った。
でも、もう既に心も体も限界まで来ており泣き叫びたかったというのが本音だ。
この手で一体何人の人を殺してきたのだろう。
何人の命が失われる所を見てきたのだろう。
当時は自分の事に必死で罪悪感など無かった。
しかし、それが今になって現れた。
込み上げてくる罪悪感、失望感、後悔。
自分の中で変化した感情に意味はあるのだろうか?
そのあと、突然風が吹き荒れ3人の人影が現れた。
「あっ、良かった。丁度起きてる」
「うっ、これは酷いでござるな」
ダイスさんとシュウマ君の声に気づき慌てて起き上がる。
ポートマンさんは一言言った後、その場を去ってしまった。
「ねぇ、カンナ。一つ質問したい事があるんだ。いいかな?」
「は、はい?」
「君は犯罪者の娘なのかな?」
その言葉に動揺したのは私ではなく、タマミちゃんとシュン君だった。
私は疑惑を払う為に即答した。
「えぇ、そうですよ。私も両親も酷い事をこれまでしてきましたから」
「うーん、君はどちらかと言うと被害者じゃない?シュウマとリリィから聞いたんだ。君の母親が殺されたって」
「あぁ...なるほど。“そっちの話”ですか。もう15年前の事ですよ?何で今更」
「カンナ殿は知らぬのか?犯人が国外に逃亡していれば、時効も無効。今でも一部の人達が犯人を探しているでござるよ」
確かにシュウマ君の言うように“犯人は国外”しかも“此処”にいる。
だが、そんな簡単に逮捕出来る人ではない。
私も彼を捕まえようとなんて今更思わないし、罪を償えとも言わない。
しかし、中途半端な事を言ったら彼を庇っていると思われるかもしれない。
「ごめんなさい。当時、私も小さかったし何の手がかりも持ってないの。でも、犯人が見つかるとお母さんも喜ぶんじゃないかな?」
それが“一般人”であれば言葉通り受け取ってくれるのだが、この2人は自分達ならではの言葉を発した。
「なら、直接母親に聞いて見ればいいんじゃない?簡単な話でしょ?僕達には霊感があるんだから」
No.37を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.38「予想外」をお送りします。




