No.35 救済
「なんなんだよ!もう!皆、自分勝手過ぎ!」
しかし、ダイスが激怒しようと返事が返ってくる訳ではない。
周囲にいるタマミとシュンは突然倒れたカンナに駆け寄っている。
カンナは息をしているが目を覚さない。
今までの心身の疲労がここに来てしまったのだろう。
目を覚ますのはもう少しかかりそうだ。
この混乱の中、経験の薄い2人は思考停止してしまい目を泳がせ、どうしたらいいのか分からず戸惑っていた。
いつも、カンナが気を張りながらも2人を導いて来たからだろう。
司令塔を失い、自分達がこれからどうしていけばいいのか分からなくなってしまったのだ。
その様子を見たダイスは2人にこう話しかけた。
「ねぇ、彼女がさっき言ってたけど。僕は外側の人間に助けを呼べばいいの?君達は誰か知ってる?誰か助けてくれる人がいるの?」
そう言われると、シュンは戸惑いながらもこういった。
「イギリスにシャトランスの教師や生徒が避難しているんだ。...カンナさんはその事を言っているんだと思う」
「イギリス...あぁ、ペルケレ先生の姉妹校の事か。君達はここで彼女が目を覚ますのを待ってて。僕が言ってくるから」
すぐさま、ペルケレに連絡しポートマンがこちらへとやってきた。
「全く、今日で何度目ですか?」
「わー、凄い!本物のテレポーターだ!僕を避難場所に連れてって!」
イギリス ガレッジ 中庭
ダイスとポートマンが降りたったのはカレッジの中庭だった。
避難した生徒と教師が犇きあっておりダイスの目と数百人の目が向かい合う。
異変に気づいたのか人混みの中から小柄な女性が出てくる。トワコ先生だ。
「ダイス君?」
「リリィ!君もここにいたんだ。見つからないから何処に行ったのかと思ったよ」
その言葉に彼女は気まづそうな顔をする。
「...まぁいいや。それより、助けが欲しいいいだ。今、最悪の状況でね。それを招いたのは僕だけど、カンナの願いでもあるからさ」
「カンナちゃんの?」
その時、木の影から何かが飛び出してきた。
「レディ。《数字指定:10 盾》」
投擲された武器の正体を見れば、星形に近い鉄製の武器だった。
すぐさま消えた事からこれも守護霊だろう。
その主をダイスは見逃さなかった。
「ねぇ、そこに隠れている君。僕に何か恨みでもあるのかな?」
ダイスの見つめる先には彼を睨みつけるシュウマがいた。
No.35を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.36「調査報告」をお送りします。




